オーバーロード~至高の人形使いと自動人形~   作:丸大豆

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一六話

リ・エスティーゼ王国 エ・ランテル―――――

 

 

時間帯は日が沈みかけ、都市の大通りに魔法に依る街灯が灯り始めた頃、其処を歩いていた通行人は自分達の常識を覆す存在を目にして“それ”から距離を置き、小声で驚きと賞賛、そして僅かな恐怖の視線を向けていた。

 

“それ”とは彼等が今まで目にした事が無い、力強さと知性を併せ持つと一目で理解出来る魔獣の姿……では無く、その魔物に颯爽と跨る大柄の黒騎士の姿にだ。

彼の何処を見ているのか分からない超然とした態度も、あれ程の強大な魔獣を手懐けたとしても不思議ではないと感じさせる一因となっている。

果たして恐ろしくも威厳を感じさせる魔獣を従えている彼は何者か?

そしてそんな彼の隣に居て平然と会話しているフードを深く被り、顔を隠している男の正体とは?

 

通行人達の興味は現在、そんな謎の二人に注がれていた。

明らかに常人の枠を超えているであろう彼等は一体、どんな話をしているのだろうか―――――

 

「……ウェストさん、滅茶苦茶恥ずかしいんですけど」

 

「モモンさん…此処に戻って来るまで何回、同じ事言ってんですか。

皆が『騎乗するべきだ』って言葉に納得して乗ってるんだからいい加減、開き直りましょうよ」

 

僕等は森の賢王を従属させたお陰で彼(?)の縄張り内の高価な薬草類を大量に手に入れる事が出来、カルネ村で一泊した次の朝に出立したのだがその際に漆黒の剣の皆さんや森の賢王自身からアインズさんに「是非とも乗って帰ってみては?」と提案されたので騎乗し、現在に至る。

 

「だってこれ、乗り方がもう完全に“跳び箱を飛ぶ姿勢”じゃないですか。 

約十年振りですよ、こんな格好……それなのに皆「格好良い」って言うし、勘弁して欲しい…」

 

「ウチの三人娘も「至高の存在が歩くべきでは…」って遠回しに僕にも騎乗を勧めて来たけど、

君にも負担が掛かるだろうし遠慮して正解だったかな。 大丈夫? 疲れてない?」

 

僕はそう言いながら森の賢王のわき腹をポンポンと叩きながら体調を訊いた。

折角、僕等のペットになったのに酷使しちゃ可哀そうだからね。

ちなみにこの子の名前は本人からの希望でアインズさんが「ハムスケ」と名付けたのだが、僕が「相変わらず全く捻りが無いですけど下手に凝ってもいない名づけ方ですね」と評価したら「どうせ私はネーミングセンスないですよ…」と拗ねてしまったので慰めるのに時間を要してしまった。

 

「何と…それがしの身を気遣って頂きありがとうでござる! 御大老!!

ですが、それがしは御二人に乗られても全く問題無い故、今からでも構わないでござるよ?」

 

いやいや、君が大丈夫でも僕が乗る事になったらとんでもなく窮屈な体勢になるからね?

男二人が体を密着させて巨大ハムスターに乗るなんて事になったら僕はガチで自殺しかねないよ?

 

しかし、う~ん…「大老」かぁ、アインズさんを「殿」と呼ぶから僕の現在のギルドに置けるポジション的にはそれで良いのかもしれないけど、どうにも分不相応なんだよなぁ…。

その理屈ならアルベドの事を「老中」と呼ばなきゃいけない訳だし……言ったら絶対、

確実に殺処分されそうだ、普通に役職である「守護者統括殿」に留めさせよう。 うん、決定。

 

「いや、大丈夫だよ。 僕が乗ったら必要の無い注目を浴びてしまうからね。

どうしてもと言うならナーベに乗って貰った方が良い位さ」

 

「そ、そんな!? 私程度の者がモモンさんと相乗りなど恐れ多―――ふぐぅ!」

 

僕は彼の“相棒である”ナーベラルの立場を考えてない発言に軽めのデコピンで黙らせる。

全く…兄妹設定のマキナとシズはともかく君はもう少し“パートナー”っぽく振舞いなさいって。

 

「痛いの痛いの飛んでけ、っと。 ナーベちゃんもその反射的に喋る癖、直した方が良いよ?」

 

「うぅ~……はい」

 

「………ナーベ、ドンマイ」

 

マキナとシズの二人に慰められるナーベラルに「やれやれ」という思いはあったが、それ以上に仲良さげな三人娘を見てほっこりしているとアインズさんから声を掛けられる。

 

「良いじゃないですか、ウェストさんも乗りましょうよ……男一人、真顔でメリーゴーランドに乗っている感覚を共に味わいましょうよ」

 

「例えからして、それもう最悪のシチェーションじゃないですか。

だから、裏方である僕が目立つ訳には行かないんですから我慢して下さいって」

 

「俺…この状況で心が平坦化しないんですよ、自分はS寄りだと思ったのに……Mじゃ無いと思ってたのに……これならウェストさんの人形に乗った方がまだマシだと思ってるのに……」

 

「オイコラ、僕は嫌いになっても良いけど、僕の作品は嫌いにならないで下さい。

そこまで言うのなら帰還後にアリヴィエイト・ゴウランドでソロ五十周して貰いますからね?」

 

「じょ、冗談ですよ……本気にしないで下さいって…」

 

僕達の漫才染みたやりとりを余所に同行していたンフィ―レア君が漆黒の剣のリーダー、ぺテルさんと依頼完了の話を済ませていた様で、それを伝える為、僕等に話しかけて来た。

 

「お二人とも報酬の件ですが、森の賢王のお陰で高価な薬草を大量に手に入れられたのでその分の追加報酬をお渡ししたいのから、組合に寄った後でお店に来て貰っても良いですか?」

 

「あぁ…確か、街に魔獣を連れ込むとなると組合に登録する必要があるんだった…了解だよ。

しかし、ンフィ―レア君も“ソレ”が似合うようになってきたね」

 

僕がそう言って指したのは彼の十指の第二関節に嵌められている僕が自作したアイテム(指輪)、〈糸が紡ぐ絆(デスモス・クローステール)〉だ。

これは僕の様な人形使い(ドールマスター)が使う繰り糸とは違い、“糸で戦う”事を目的とした頑強な糸を出す物で、僕が繰り糸を鞭状にするのもコレの技術を応用している。

最初は“物を掴む”、“切り離して罠にする”位の使い道しか無いが、錬度が上がれば“相手を切り裂く”、“広範囲の索的が可能”というギルドに人形使い(ドールマスター)志望の追加メンバーが入った時の為に用意した入門編的な一品だったが、誰も居なかったのでアイテムボックスの隅に封印されていた物だ。

それをンフィ―レア君にあげる事になったのだから、人生何が役立つか分からない。

 

「…まだウェストさんの様に大木を切断は出来ませんけど、漆黒の剣の皆さんと良い勝負が出来る位には使える様になれました。 これもウェストさんの御指導のお陰です!」

 

「ンフィ―レアさんは機転が効く方なので私達の思いもよらぬ戦法を取って来ますからね、

そこは本人の実力もあってこそですよ」

 

「つーかさ……装備が良過ぎるんだよ! 正直、このまま錬度を上げたら開けた場所以外で俺等に勝ち目ねーからね!?」

 

「そんな事言って、開けた場所でわたし達、ウェストさんに完封負けだったじゃないですか」

 

「加減されているというのがハッキリと伝わって来たのが無念であったが……圧倒的な格上であるウェスト氏との手合わせが出来た事は正に僥倖だったのである!」

 

僕はそんなダインさんの言葉に「こちらこそ勉強になりました」と返す。

実際、ンフィ―レア君の練習に付き合うついでに彼等と手合わせしたのだが、ガゼフさんの様な“武技”こそ使えない物のその動き……いや、連携は現役時代の僕等程では無いとは言え見事な物でカルネ村を襲っていた騎士達よりは遥かに良い“訓練相手”になってくれた。

 

「それでは僕等はこれから組合に行きますが、皆さんもご一緒しますか?」

 

僕が未だに「俺はSだ、Mじゃない…」等と呟いてるギルマスの突き出されたケツを叩いてから

今後の予定を漆黒の剣の皆さんに訊いてみる事にした。

 

「いえ、今回の仕事はモモンさんとウェストさんの一行に御世話になり通しだったので、

ンフィ―レアさんの家に伺って薬草の積み下ろしを手伝わせて貰う事にします。

でなければ、貴方達と同じ額の報酬を受け取れる資格がありませんから」

 

「僕等三人は今回、モモンさんの手伝いなので正直な話、報酬は要らないのですが……」

 

その言葉にアインズさんとンフィ―レア君が「とんでもない!」という視線を向けて来た。

分かってますって、前振りですって……大物になろうとしてるのに意外とセコイなギルマス。

 

「そういう訳にも行かないでしょうし…僕等の分はモモンさんの追加報酬分に色を付けて貰う形で構わないかい? 出来る事なら僕等は目立つのが嫌いなので今回の手伝いも秘密にして欲しいからその口止め料と言う事で」

 

「それは……別に構いませんが、名声を得られるチャンスなのに本当に良いんですか?」

 

「冒険者組合に登録してない時点で分かってるでしょ? 束縛されるのが嫌いなんだ。

今現在、この世で僕に命令できるのはモモンさんだけだからね」

 

「ウェストさん……」

 

僕の言葉にアインズさんは喜びに体を震わせている様子だ。

うん、中身美女だったアルベドと違って全身鎧のアラサ―が体を震わせてるのは普通に怖い。

しかも巨大なハムスターにケツを突き出して乗っている状態なら尚更だよ。

 

その後、僕等は組合に寄ってから工房へ向かい、ぺテルさん達は工房に寄ってから組合へ向かうという最終確認を行い、アインズさんが最初にぺテルさん達から受けた依頼の報酬については明日、また組合で落ち合うという形で纏まった。

ちなみにその時は僕も同席するつもりだ。 だってギルマスはまだ読み書きが出来ないし念の為。

 

「では皆さん、私達は先に組合に行きますので後は宜しくお願いします」

 

「ンフィ―レア君、僕等が用事を済ませたらまた会おう」

 

「はい! 皆さん、お待ちしています!!」

 

 

そして僕等五人は組合に向けて進みだした。

するとナーベラルがアインズさんに近づいて質問をして来る。

 

「明日報酬を渡すと言う彼等の言葉…信じて宜しかったのですか?」

 

「別に構わん、裏切られたとて損失は今回の報酬に比べれば微々たる物だ。

むしろ、そんな物に固執して評判を下げる方が大きい損失に他ならないからな」

 

「成程……至高の御方がその程度の金額に固執するというのもおかしな話…大変失礼しました」

 

「……う、うむ。 ナーベ、お前の失言を許そう」

 

その答えに納得してか、自分の言葉に反省しながらナーベラルは深く頭を垂れる。

 

またアインズさんったら、上げなくても良いハードル上げちゃって……来たばかりの状況でお金は必要だろうに、支配者の仮面を被るのも本当に大変だよ…。

どれ、そろそろ先行していた僕等の成果を渡すとしようかな。

 

「そうそう、お金と言えば……」

 

「『そうそう』……やっぱり、狙って言ってますよね?」

 

「違うわ、この全身鎧!! アイテム売却で得たお金ですよ。

全く、そんな事言うんだったらもうあげませんからね(プイッ)」

 

「す、すいません。 謝りますから、そのアラサ―がやっても可愛くない仕草はやめて下さい」

 

アインズさんの容赦無いツッコミに僕は若干、不貞腐れた様に金貨が半数以上を占める、併せて百枚程が入った革袋を彼に渡す。

絶対にS寄りだよこの人……僕も決して人の事は言えないけどさ。

 

「……ふむ、結構な額で売れたんですね。 程度の低いアイテムしか無かったと思ったが……」

 

「ユグドラシルじゃ価値が低くてもこの世界じゃそうでもないらしいですよ?

業者さんに見せたら皆、目を丸くして驚いてましたし」

 

「ちなみに流通ルートの把握は? ウェストさんの事ですから心配はしていませんが」

 

「バッチリです。 何処に流れるかは誓約書と業者さんの口振り、店のランクでほぼ確定済みなので、比較的危険度が高い所はアルベド達に報告してあります。

今頃はニグレドの探知でバラけた場所の特定も終わってリストを製作中でしょう」

 

「流石ですね。 これでセバスに命じた巻物(スクロール)収集も捗りますよ」

 

「セバスと言えば、暇を見つけて簡易的な言語表を製作してみたのでそれは最古図書館(アツシユールバニパル)の司書長、ティトゥスに複写を頼んでおきました。 終わり次第、外での任務を行っている者達に優先して配布する予定なので、帰ったらモモンさんもどうぞ」

 

「それは……助かります。 ウェストさんには本当にお世話になり通しですね」

 

「モモンさんや皆の助けになるのならこれ位、何の苦でも無いですよ」

 

僕等のフランクな会話の後に始まった任務報告の流れを聞いたナザリック三人娘は感嘆の息を吐き、尊敬の眼差しを向けて来た。

 

「流石はソウソウ様です。 この世界の知識を既に我が物とし、アインズ様の御要望に万全の成果を上げられるとは……これが、至高の御方の平均的な水準なのですね」

 

「………ソウソウ様、やっぱり凄い」

 

「ナーベラルちゃん、シズ、私達もお父様程とまでは行かなくても、十全の成果を上げなくちゃね」

 

…普通です。 事前の打ち合わせ通りに事を進めているだけなので本当に普通の事なんだよ?

それにね……君等、感動のあまり呼び方が戻ってるんですけど……?

アインズさんに「良いんですか?」と訊くと、「人が聞いてなきゃもう、良いです」と諦めの声を出し、お陰で僕等は内心でガックリと肩を落とす事になった。

そんな僕等にナーベラルは空気を読まずに話しかけてくる。

 

「それにしても、あの下等生物(ババヤスデ)達はアインズ様とソウソウ様の圧倒的な御力の前に平伏していましたね」

 

「平伏はしていないだろうが…ソウソウさんは兎も角、私の場合は力任せに剣を振っていただけだ。 あの程度の遊びで私の力が感じられるとは到底思えんがな」

 

「でも、様にはなってたんじゃないですか? この世界ではあれ位の方が現実味がありますし、僕だって初級のスキルで驚かれたんですから何事も程々が一番ですよ」

 

僕等の会話にハムスケはほんの少しだが体を震わせる。

アインズさんの乗り心地的にはどうなんだろう?

 

「でしたらアインズ様、魔法で戦士になられては如何でしょうか?

現在の御力を隠された状態よりも幾分かは戦士としての能力を得る事は出来ますが」

 

「マキナ、その案はメリットよりもデメリットの方が大きいから却下だ。

槍の扱いならばお前が、銃の扱いならばシズが、人形の扱いであればソウソウさんの方が上の状況で私がわざわざ本来の力を封じるのは愚策、常に余力を残しておく事こそが重要なのだ」

 

「成程………アインズ様、私の考えが足らぬ発言をお許しください。

そしてお父様は当然として私とシズの能力を高く評価して頂き、誠に有難う御座います」

 

「………(ペコリ)」

 

「まぁ、戦士の姿はあくまで擬態ですからね。 あまり気にしなくても良いと思いますけど?」

 

「―――っ!?」

 

ハムスケはびくりと体を跳ねさせ、驚いたように僕とアインズさんを交互に見てくる。

 

「ご、御大老…先程の言葉は本当でござるか? 殿の本来の姿が戦士では無いというのは……」

 

その言葉に傍に居た三人…正確には二人が若干、得意げに説明を始める。

 

「アインズ様の本来の御姿は魔法詠唱者(マジック・キャスター)、その力は天を裂き、地を砕き、万の軍勢を滅ぼす事など容易な程でしょうね」

 

「お父様…ソウソウ様も君を抱きしめた時の力なんて小指の爪の垢位しか無くて、本来なら人形使い(ドールマスター)としての能力で君の縄張りに居た連中全てを瞬時に操り人形に出来たんだよ?」

 

「………(コクリ)。 それ位、二人なら出来て当然」

 

あのさぁ……君等そういうキラキラした目で僕等のハードル上げるのいい加減やめよ?

お陰で僕もアインズさんもその言葉に「頑張れば出来なくも無いけど」って返し辛いんだけど…。

 

「……うん、まぁ…ね。 今回、手加減していた状況の僕等に会えたのは幸運だったと思うよ」

 

「……確かに、ソウソウさんの言うとおりだ。

我々が本気になればお前は一瞬で骨どころか存在が消滅していただろうからな」

 

「な、何と…御二人の力がそれ程とは……このハムスケ、より一層の忠義を尽くす所存ですぞ!」

 

ハムスケは僕等のハッタリ(と言う訳でもないが)をそのまま受け取ったらしく、畏まった態度を取っているが少なくとも僕にとってはその姿と名前の可愛さに頬が緩みかけてしまう。

騎乗しているアインズさんも「やはりハムスケは安直過ぎたか…大福とか…」と若干、後悔している様子だけど名づけてしまった以上、開き直るのが吉だと思うんだけどね。

 

さて、ンフィーレア君達は今頃、工房に着いた頃かな……?

僕はそんな事を考えながら大切な家族達と一緒に組合へと歩を進めた。

こんな穏やかな時間が何時までも続けば良いと願いながら…。

 

 

――――――――――

 

 

同時刻 ポーション工房―――――

 

 

「……痛いなぁ~。 餓鬼が随分と物騒な玩具(オモチャ)持ってるようだけど、ちょっと調子乗り過ぎだよねー」

 

「皆さん、ウェストさんに教えて貰った通りの方法で糸の結界を張りました!

今の内にモモンさん達の所に向かいましょう!!」

 

「ダイン、ルクルット! ンフィ―レアさんとニニャを優先的に逃がすぞ!!」

 

「うむ! 任せるのである!!」

 

「オラ! 年長者がしんがり務めてやっから、さっさとケツまくって逃げんぞ!!」

 

「……は、はい! 行きましょう! ンフィ―レアさん!!」

 

ンフィ―レアと漆黒の剣の四人が工房の中に入ると、そこには軽薄な笑いを携えた女が待ち構え、彼の持つ異能(タレント)を利用して大がかりな儀式を行うから攫いに来たと宣言すると同時にンフィ―レアは即座に糸を操り、女の頭に一撃入れようとしたのだが躱され、頬を傷つける事しか出来なかった。

その瞬間、その場に居た全員が逃げの一手を選択した……のだが。

 

「……まさか、そんな道具(アイテム)を所持しているとはな。 油断し過ぎだ」

 

「ほーんと、お陰で遊ぶのは一人だけにしようかと思ってたけど……この子、痛めつけちゃっても構わないよねー?」

 

「儀式に問題無い程度であらば、後は勝手にするが良い……」

 

彼等の後ろにはアンデッドの様な雰囲気を纏った男が挟撃する形で立っており、自分達が逃走出来る確率は最早、限りなく低いのだと言う事を悟らされた…。

 

そして女…「冥土の土産に」と名乗ったクレマンティーヌはンフィ―レアが張った糸を自前のスティレットで触れながら、さらに絶望的な一言を放つ。

 

「この糸……生半可な武器じゃ切れなさそうだけど、私の武技を使えば―――」

 

彼女が少し距離を取り、武技を発動した瞬間―――――糸の結界を“突き破り”、そのまま剣先をンフィ―レアの喉元に突き付けた状態で静止させた。

 

「この程度の物で本気で逃げられると思ってたのなら、仕入先を恨むんだね…糞 餓 鬼 が」

 

クレマンティーヌが初めて見せた怒りの眼差しに震えながら、ンフィ―レアは目を瞑って自分が心から愛する女性、そして心から尊敬する二人の男性の顔を思い浮かべた―――――

 

 

そしてその後に彼等が蹂躙されたという事実に気付けた者は誰も居ない…そう、それはこの世界で神に等しい能力を持っている至高の存在、アインズとソウソウの二人であっても…。

 

 




糸が紡ぐ絆(デスモス・クローステール)は錬度が上がればこの世界のそこらの英雄級の武技では太刀打ちできないアイテムという設定。
つまり、今回は本当に運が無かったという話だったのです。

そして、遂に火遊び大好きなクレマンティーヌがソウソウの導火線に火を点けてしまいました。
それが爆発するのは次次回辺りになる事でしょう。
決して、楽には死なせない事は確定済み。

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