2人の教官と最弱の小隊 growth record 作:トランサミン>ω</
「お願いします…試合に出てくださ…ひゃうっ!」
「ったく、何やってんだよ」
カナタは小隊室にはいったとき驚いた。
ミソラがリコに跪きお願いをしていたからだ。
レクティの説明によれば2人が訓練にでてくれるよう
リコに頼んだらしいのだが断られ、せめて試合に
だけでも出てもらおうとしていたらしい。
それを知ったカナタは
「そうだな、勝てない試合に挑んで負けるのはたしかにかっこ悪いよな」
「ほらみろ、彼もそう言っている」
「でもな、勝てる可能性もあるってのになにもしないのは、俺の性分にはあわねーよ。ミソラ、俺がお前に勝利の鍵を与えてやる」
ミソラに勝利の鍵を授けるようだった。
「あのぅ…カズキさん…カナタさんはミソラさんに何か教えるらしいんですけど、私にはなにかないんですか?」
「んー、レクティはあがり症は治ってきただろ?だからもう本来の力が出せるはずだ」
「そ、そうですか…」
自分も何かさずけて欲しいと思っていたレクティは
少し気が沈んでいた。
「でも…」
「で、でもっ?」
「レクティ手を出してくれ」
「は、はいっ!わ、わかりましたっ!」
おどおどしながらも手を差し出すレクティ
するとカズキはレクティの手を握り話し出した。
「レクティ、俺の手の温度はどうだ?」
「あ、あたたかいですっ!」
「じゃあこれはどうだ?」
「っ…!なんだか熱くなりましたっ!」
「これはな?魔力の流れを少しだけ手に集中させたんだ
これを武器に応用すると、面白いことになるぞ?」
「そ、そうなんですかっ?」
「レクティはアイゼナッハ流魔双剣術飛炎衝天撃わかるよな?」
「は、はいっ!もちろんです…で、でもつかえる自信はありません…」
「昔戦った、アイゼナッハ流魔双剣士に俺もそれを使われてな、考えたんだよ少し見ててくれ」
そう言うとカズキは魔双剣を構え
「魔双剣技、蒼炎衝天撃っ!」
そう言い放つとレクティは目を疑った。
彼の放った魔双剣技は自分の流派のそれと類似しているが、炎が蒼かったのである。
「まぁ、こんなことだよ」
「い、いまのはなんですかっ!」
「んー、原理的には飛炎衝天撃と同じだな、ただ魔力の
練り方がちがうんだよ。自分の魔力を緩やかに練り上げるイメージかな、時間がかかるから予め準備しとかないと使えないけどな」
「で、でもっカズキさんは使えたじゃないですかっ!」
「まぁ、それは日頃の鍛練の成果って奴だ」
そういってカズキは微笑んだ。
「わ、わたしもっ飛炎衝天撃が使えるようになったら
ためしてみることにしますねっ!」
「おう、じゃあ訓練頑張ろうな」
「ひゃぅ…はぅ…」
そういってカズキはレクティの頭を撫でている。
レクティも恥ずかしがってはいるが嫌ではなさそうだ。
そんな2人の姿を見つめる者がひとり。
「ふむ、カナタといいカズキといい彼らはスキンシップをとらずにはいられないのか…?しかし…レクティがあそこまで心を開くとは、私も彼らに指導をされればあの女を越えられるのか…いや…」
そういって再び視線を二人に戻すがそこにはダミーと
戦っているレクティの姿しかなかった。
「誰かと思ったらリコだったのか」
「き、君っ、ど、どうしてここにっ」
「見られてる気配がしたからな」
「そ、そうか」
気づかれていたのだと理解し、リコは不覚だとおもった
「それにしても…、リコお前それ」
「こ、これはなんでもないっ!」
カズキはリコが普段かけていない眼鏡について問いかけた。
「まぁ、千里眼を使うのに必要なんだろ?じゃなきゃこの距離で俺らのことを認識できないしな、それにしてもリコ、似合ってるぞ、眼鏡かけても綺麗だな」
「そ、そうか。ありがとう…、そういえばだが何故千里眼のことを知っている?」
「自分の生徒のことは、把握しなきゃな、それでどうだ、訓練受ける気になったか?」
「ふっ、そんなものは女神な私には必要ないだろう」
「確かにお前は女神な実力の持ち主だと少なくともおもってるよ、なんで普段千里眼を使わないのかも事情を予想すればすぐにわかることだ」
「ま、まてまてまて、いいからまちたまえ」
純粋に褒められたリコはほほを染め照れているようだ。
「まぁ、訓練がいやっていうならさ試合だけでもでてくれよ。俺さガーディアンリーダーに目にもの見せてやりたくてさ」
そういってカズキは悪戯っ子のような笑顔をみせる。
「君はいろいろと知っているようだな」
「そうだ、リコ、そのためにはお前の力が必要だ
お前が欲しい」
「…っ!」
さっきとは打って変わって真剣な表情のカズキにリコは
ドキリとする。そして
「君に興味が湧いた、汗をかくのは嫌いだが試合にはでてやろう」
「おう、頼んだ!」
そう2人が約束するとレクティがやってきた。
「カズキさんもういいですか?」
「おつかれさまレクティ」
そういってカズキはまた頭を撫でた。
リコが難しそうな顔をしているがカズキは気にせず
「よっし、レクティはこれまで頑張った御褒美
リコは試合に出てくれることへのお礼だ、アイス奢ってやるからついてこい」
「あ、あいすっ!」
レクティは目を輝かせてカズキについていく
「ふっ、こういうのも悪くないな」
「おーいリコ、置いてくぞー?」
「ああ、わかっている。すぐにいくぞ」
そういってリコは微笑を浮かべつつカズキとレクティのもとへ、ゆっくりと歩いていった。