2人の教官と最弱の小隊 growth record   作:トランサミン>ω</

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皆さん、新年あけましておめでとうございます。
投稿が不定期で申し訳ないです(〃・д・) -д-))ペコリン
拙い文章ではありますが、今後ともこの作品をよろしくお願いします。


カズキの過去

「カズキ!はやくはやく!」

 

 

「リューネ、待ってくれよ〜」

 

 

ここは《ミストガン》上空訓練空域、逃げる茶髪ショートカットでクリクリとした大きい青い目をした少女エクセリア・ローズを、淡い空色の髪をした長身痩躯の少年カズキ・アルカラスが追いかけている。

 

 

「もー!カズキはいつもゆっくりさんなんだから!」

 

 

「あはは、ごめんごめん。でもエクセリアが速いもんだから」

 

 

「これでもC―357小隊の隊長だもん!」

 

 

「知ってるよ。いつもさんきゅな」

 

 

魔剣を構えたエクセリアは、ふふんと胸を張る。

そんな様子を見たカズキの表情は自然と穏やかなものになっている。

2人の様子は傍から見れば恋人同士に見えるのかもしれないが、彼らはただの幼馴染みでありチームメイトだ。

そんな2人に近づく少女が1人。

魔弓を構えながらゆっくりとやって来た銀髪で童顔の少女はリューネ・エスカマリである。

 

 

「2人とも!訓練が終わったからって気を抜きすぎよ?この後も小隊室に戻ってミーティング」

 

 

リューネのセリフにエクセリアの表情が強ばる。

 

 

「リューネ〜今日はもうちょっと遊ぼう?」

 

 

「だめよ、明日は大事な任務があるんだから」

 

 

「うー、カズキも何か言ってよ!」

 

 

「ごめんな、明日の為に戻ろう」

 

 

「はーい…」

 

 

3人は《ミストガン》へ向けゆっくりと降下していく。

この時の彼らは知る由もなかった…こうして3人で遊び、訓練に励むことが最後になるということを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ明日の任務について説明するね。私たちC―357小隊に課せられてるのは消息を絶った小隊の捜索及び周辺空域の警戒よ」

 

 

リューネが明日の任務について淡々と2人に説明する。

それを聞いているエクセリアとカズキの表情は真剣その物なので説明するリューネにもチカラが入る。

 

 

「変位種の目撃情報もあるから、遭遇した場合は《ミストガン》へ即撤退、撤退不可能な場合は援軍が来るまで持久戦ね」

 

 

「そうか、じゃあフォーメーションはどうする?いつも通りエクセリアが前衛、俺が中衛でリューネが後衛か?」

 

 

カズキの言葉に反応したのは隊長であるエクセリアだ。

 

 

「うん!いつも通りが一番だよ!慣れないことをして怪我したら大変だもん!」

 

 

「そうね、エクセリアの言う通りよ。普段通り行きましょう」

 

 

「了解だ」

 

 

「じゃあ今日のミーティングはここまでね!アイス食べに行こ!」

 

 

エクセリアはミーティングを強制的に終了させ、2人の手を引いて走り出す。

そんな彼女に引っ張られる2人は「「やれやれ」」といった表情をしていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、3人は担当空域を飛行しながら消息不明の小隊を探していた。

昨日までの明るい雰囲気とは打って変わってピリピリとした緊張感の中での任務、それぞれが魔装を構えながら周囲を警戒する。

1通り捜索をし終えた3人は《ミストガン》へと通信結晶で報告しき帰還ようとしたのだが次の瞬間…ゾクリとした悪寒が3人の背筋を走った。

現れたのである、報告にあった変位種が。

キメラ・アステロイド、蜻蛉の様な姿をしておりその羽音は三半規管に異常を来すという。

 

 

「2人とも!退路を拓くよ!」

 

 

隊長であるエクセリアの掛け声に合わせ魔甲蟲と対峙する。

魔双剣のフローラを構えたカズキはどの方向から襲われてもいいように神経を研ぎ澄ます。

魔剣のラ・ピュセルを構えたエクセリアは退路を拓くべく魔甲蟲の中へと突入、魔弓のシルヴィを構えたリューネは変位種の足止めを行っていた。

 

 

「エクセリア!そっちは大丈夫か?」

 

 

「わたしは大丈夫!リューネは!」

 

 

「《ミストガン》への援軍の要請は終わってる!あと数分で到着予定よ!」

 

 

3人はC―ランク小隊とは思えないコンビネーションで魔甲蟲を殲滅していく、彼らの運命の歯車が狂ったのはこの次の瞬間だった。

 

 

「えっ?」

 

 

先程まで遠くにいる事を確認していたキメラ・アステロイドがリューネの背後、至近距離に迫っていたのである。

 

 

「(嘘…!羽音は聞こえなかったはず!?)」

 

 

「リューネ!逃げて!!!」

 

 

「あぐっ…かっ…」

 

 

次の瞬間、キメラ・アステロイドの羽がリューネを襲った。

キメラの羽はリューネの腹部を貫通し、上半身と下半身は断裂、絶命は確実でリューネは広大な海へと墜ちて行った。

 

 

「そん…な…。えっ…」

 

 

突然の仲間の死に絶望するエクセリア、そんな彼女の元に恐ろしいほどのスピードでキメラが迫る。

 

 

「エクセリア!危ない!」

 

 

魔双剣戦技―千年氷牢(エンドレスフリーズ)

 

 

間一髪の所で和生が魔双剣戦技を放ちキメラを吹き飛ばす。

カズキは脅えるエクセリアの元へと超速飛行で近づき、彼女を抱える。

 

 

「カズキ…?どうするの」

 

 

「俺が今からお前を抱えて全力であのキメラを振り切る、もし無理だと思ったらお前だけでも逃げるんだ」

 

 

「でも…」

 

 

「お前は隊長だっ!!隊長を守るのは俺達の使命なんだよ!」

 

 

カズキはエクセリアの答えも聞かずに超速飛行を開始、展開していた魔装を魔双剣のフローラから魔剣のジノビオスに変更し、目の前に立ちはだかる魔甲蟲を薙ぎ払う。

しかし全てを捌き切れる筈もなく彼の身体には傷が絶え間なく刻まれていく。

 

 

「ねぇ…カズキ」

 

 

「なんだ!?」

 

 

「わたし…思うの。隊長だからこそ隊員をちゃんと帰還させなきゃいけない…」

 

 

「エクセリア…」

 

 

「わたしね…ずっと言いたかったの…」

 

 

「何をだ!それは帰ってからでいいだろ?」

 

 

カズキは速度を下げることなくエクセリアにそう告げる。

 

 

「ううん…今じゃなきゃダメ。カズキ…」

 

 

「なんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大好きだったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

次の瞬間エクセリアはカズキの腕からスルリと抜け出し、追ってくる魔甲蟲へと立ちはだかる。

 

 

「何をやってるんだ!早く来いよ!エクセリア!」

 

 

「ううん、ここでわたしが頑張るの」

 

 

その言葉と共にエクセリアの構える魔剣のルーン文字が輝きを放つ。

 

 

「じゃあね…カズキ」

 

 

魔剣戦技―白龍の逆鱗(ディバインアウラ)

 

 

ラ・ピュセルから白い火焰が放たれ、周囲にいる魔甲蟲を焼き尽くす。

エクセリアの全力の一撃がキメラを襲い、撃墜に成功したと思われた。

しかし、キメラは顕在でエクセリアは魔力を使い果たしたのかリューネと同じく海へと墜落していく。

カズキはエクセリアのもとへと直ぐに向かい、彼女を受け止める。

 

 

「エクセ…リア…?目を覚ませよ…なぁ…お願いだ」

 

 

しかし彼女は目を覚まさない、そして次の瞬間…彼女の体は突如光に包まれ、その光と共に霧散しカズキに入っていった。

その直後だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カズキの力のリミッターの枷がはじけ飛び…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。てめぇらだけは絶対に許さねぇ!!」

 

 

カズキの手には漆黒の刃、ブラスター・ダークが握られていた。




感想待っております。
この文を読むと、カズキの中に生まれたジョーカーであり、話しかけてきた人物がわかるかも知れませんね。

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