2人の教官と最弱の小隊 growth record   作:トランサミン>ω</

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来週に試験があるので投稿を控え…ません笑


歪んだチカラ

「ふふっ、ユーリ。かわいい、かわいいよユーリ」

レアルはユーリへの想いの丈を不気味な笑みを浮かべながら紡いでいく。

「かは……っ!」

声にならない擦れた悲鳴。

レアルはまるで瞬間移動したかのようにユーリの背後に周り首を締め付ける。

ユーリも必死に痛みを堪えながら、気丈にも、キッと睨みつける。

そんなユーリの行動にレアルの欲望はますます満ちていく。

絶対に逃げられないのにもかかわらず、まだ抵抗しようというその姿勢。

その光景は、決して出ることの出来ない籠の中で必至に足掻く小鳥そのものを思わせる。

「ああ、僕は今ユーリと愛し合っている」

ぺろり。

嫌がるユーリの首筋から左耳にかけてレアルは思わず舌を這わせた。

湿り気のある不快な感触に、ユーリは思わず頬を強ばらせる。

「…てめぇっ!」

「おおっと、動くなよ。カナタ・エイジ」

レアルは右手に持つ魔剣を、ユーリの喉元へ突きつけた。

「もし1歩でも動いたら、ユーリがどうなっても知らないよ?あは、あははははっ!」

不気味な笑い声を漏らすレアルに、躊躇したカナタは固唾を飲む。

仮にここで崩力を解放したところで、レアルの警戒心を増すだけだ。

そうなればユーリを救うことは出来ない。

そんな時突如として白銀色の砲撃がレアルを襲った。

そのタイミングを逃さずカナタは殺気を伴って接近。

状況把握に戸惑ったレアルはユーリを離して後方へ跳躍した。

「誰だい、僕とユーリの仲を引き裂いたのはっ!?」

「あ、当たっちゃった…」

そこには威嚇射撃のつもりだったのだろうが当たってしまったことに戸惑うミソラの姿があった。

「お前ら、なんで逃げてねーんだよ…」

カナタは再び頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナタはミソラたちになぜ残っているのか問い詰める。

「馬鹿なミソラが教官を助けに行くと聞かなくてな」

「それであのぅ…ミソラさんを一人で行かせるくらいならって…」

「あー、わりぃ。ミソラが馬鹿なことを忘れてた」

「誰が馬鹿よっ!」

「「「お前だよっ!」」」

「で、でも。あんた1人じゃあんなのに勝てないじゃない」

「まぁ、助かったよありがとな。でも仲間ならいるじゃんか」

カナタがそういった時何の前触れもなく天から、赤い光条が降り注ぎレアルがいた場所を串刺しにする。

そこにいたのはクロエ・セヴィニー。

《ミストガン》最強の攻撃力を誇る魔杖使いである。

躱しきれなかったレアルは右腕を亡くしていたが、右肩の付け根にある巨大化したガン細胞のようなものから腕が再生される。

「《寂滅姫》の砲撃は厄介だからね、ご遠慮願うよ」

突如としてレアルが指揮者のように手を振り回すと、カマイタチが沸き起こり閉鎖空間を作り出した。

クロエがどんな砲撃を繰り出すもその空間を突き破ることは出来ない。

「クロエが無力化された、か」

それと同時にカナタは決心していた。

この状況を打開するには崩力を使うしかない。

ミソラやカズキたちは薄々感づいてはいるが、ユーリにもカナタが病気療養となっている理由がバレるだろう。

しかし迷っている暇などない。

カナタは目を閉じて意識を集中させた。

 

 

 

 

カナタは呼吸を整えて全てを空にする。

万物の流れを無意識に感じ、潜在的な意識の中でふたつのチカラを意識する。

ひとつは魔力。もうひとつは呪力。

人間のチカラ。人外のチカラ。

纏め、練り上げ、捏ね繰り回し、収斂させる。

カナタの体内の奥底で、黒いうねりの様なものが生じる。

そしてそれらすべてが混ざり合い次第に一体化したチカラが生じる。

生み出されたのは《崩力》

本来合わさるのことない相反するチカラの合成物であり、未だその存在が証明されていない世界の理を破壊する叛逆のチカラ。

 

 

 

 

 

 

 

放たれる禍々しい気配。

それを出すカナタにユーリは己の目を疑った。

「な、何なんですかそのチカラはっ!?」

「話は後だ、今はあいつを片付ける」

そんな言葉を言いながらカナタはレアルへ向かって悠々と歩き出した。

まるで自分の勝利をかくしんしているかのように。

次の瞬間カナタの左上上腕部より先が残像の速度で動く、握られたグラディウスはレアルの皮膚を斬り裂き血を吹き出させる。

制限戦技ー閃光剣を放ったのだ。

「ふーん、人間にしては君もやるね。その感じ高々人間が魔甲蟲に選ばれたって訳だね?」

「魔甲蟲に選ばれた、ね。俺は生憎お前ほど楽天家じゃねーから、自分のことを特別視はしてねーよ」

「君が裏切り者になったのはそのチカラのせいかい?人類の敵のチカラを宿した人間がいるなんて知られたら不味いもんね」

「……黙れよ」

カナタは閃光剣を連発。

腕の筋繊維がちぎれるのを厭わずに幾度も繰り返し放ち続ける。

「そんなの効かないよ?」

そう言ってレアルはカマイタチを放ち相殺しようとする。

しかし、カナタの一撃が右肩へ当たりそうになると体を捻って間合いを取った。

次の瞬間

「サポートします!カナタ先輩っ!」

「待てユーリっ!」

カナタの静止も虚しくユーリは構えた魔剣でレアルに切りかかる。

しかし…

「えっ!」

気づいた時にはもう遅い。

人外のチカラを宿したレアルの瞬発力を持ってすれば反撃など容易いのだ。

しかし次の瞬間ユーリが軽く突き飛ばされると同時に左脇腹を貫かれ、負傷したカナタの姿があった。

「ど、どうして…っ!?」

「さーな。体が勝手に動いちまったんだよ…」

チカラなくカナタが崩れ落ちる。

思わぬ儲けにレアルはゲラゲラと笑った。

「あははは、危ないところだったよ。…ねぇユーリ、裏切り者が君を庇ったおかげで僕は君を愛することができる」

ユーリは絶望した表情。

その様子を見てレアルは嬉々として続ける。

「ここで君が僕の愛を受け入れてくれないとこの男が犠牲になるよ?ほら僕の腕に飛び込んでおいで」

「カナタ先輩…ごめんなさい…」

ユーリは涙を流しながら武装を解除する。

自分が犠牲になればいいとユーリが足を進めた次の瞬間。

「おい、俺のかわいい教え子たちの晴れ舞台を台無しにした挙げ句。俺の仲間にまで手を出すとはいい度胸してるじゃねーか」

「なんだって?」

レアルが声のする方へ振り返るとそこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「覚悟しろよ?」

レアルを冷たい瞳で見下すカズキ・アルカラスの姿があった。




次回は久しぶりにカズキの出番ですね。
オリジナル展開なので頑張りますっ!
感想まってます!

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