2人の教官と最弱の小隊 growth record 作:トランサミン>ω</
大勢の人間が会場を埋め尽くす。
《ミストガン》最弱の小隊の試合でありながらこの熱狂ぶりなのはロイヤルガードのユーリ・フロストル率いるAランク小隊が裏切り者のカナタ・エイジ率いるFランク小隊を成敗するという内容であるからだ。
しかし大衆は気づいていない。
あの裏切り者は逆境でこそ輝きを増すことを。
かつて名を馳せた《黒の剣聖》が全てを覆せたのは、最後まで勝負を諦めなかったからであることを。
ミソラ、レクティ、リコの3人はソーサラーフィールドの中で相手の小隊が現れるのを待っている。
暫くして《ミストガン》のホープとも言われるA227小隊が姿を現した。
アクロバット飛行をしながら現れた彼女たちに会場はどっと湧き上がる。
会場全員が彼女たちの味方の様な雰囲気にミソラたちは寧ろ闘争心を燃やしている。
彼女たちの教官がそうであったように。
一方その教官たちはというと…
「赤っ恥を書く前に会場から姿を消した方がいいんじゃないですか?」
「へっ、ぬかせ。お前こそ、吠えづらかかせてやるよ」
通例であれば対戦する小隊の教官が隣あわせに座ることはないのだが2人は平然と腰を下ろした。
ちょうどその時、赤色の発煙弾が上空に高々と打ち上げられた。
ミソラはひたすら逃げ回る持ち味の飛行能力と魔力量でどんどん加速し距離を開けていく。
「逃げているだけでは勝てませんよっ!」
A227小隊の小隊長であるリリィはそう言いながら魔銃を構えミソラを追いかける。
ガキィィィン。ミスリル同士が激しくぶつかり合う音が鳴り響く。
レクティは魔剣使いのサーシャへ流麗な動きで魔双剣の連撃を繰り出す。
『サーシャさん援護するよ!』
魔弓使いのグレッグがレクティへ矢を放つが、
『ふっ、わたしの仲間へは手出しはさせん』
リコが狙撃でその矢を撃ち落とす。
一進一退の攻防を繰り広げる中、逃げ回っていたミソラが反撃に転じた。
逃げながら収束させていた魔力をリリィへと放つ、しかし移動しながらの砲撃などミソラに出来るはずもなく外れる。
リリィが体をそらして飛行速度が下がった一瞬の隙にミソラは体を反転させペンダントを奪いに襲いかかった。
だが…
「きゃっ!?」
「ふふん、あなた達がペンダントを狙ってくるのは読んでますよっ!」
リリィは左手に魔剣を展開し斬り上げてきた。
ミソラは魔力障壁を展開し辛うじて防ぎきった。
「期待はずれですね」
「ん?なにがだよ」
「どんな戦い方をしてくるのかと思えば単純なペンダント狙い。もう勝負はつきましたね」
「まぁ、あながち間違いでもねーな。でも誰がペンダント狙いなんて言ったんだ?」
煽るユーリにカナタは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
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