2人の教官と最弱の小隊 growth record   作:トランサミン>ω</

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実力差とご褒美

「そろそろくるんじゃねーかな」

「カナタさん…?」

「何をしたいのよっ!」

カナタはリコに動かされてフラフラのミソラとレクティを残らせた理由をまだ話していない。

「まー見てろって」

そうカナタが言うと、隣の訓練空域でA-227小隊が訓練をしていた。

ミソラたちが相手していたダミーの倍の量をやすやすと殲滅する。

その戦いは洗練されていて全く無駄がなかった。

「ねぇ、あんな人たちにほんとに勝てるの?」

「わたしたち大丈夫なんでしょうか…?」

「何言ってんだよ。今の特訓はあいつらに勝つための特訓じゃんか。勝てるに決まってる、でもそれはお前らがちゃんと気付けたらの話だ」

そう言い残しカナタは地上に降下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃小隊室では

「リコのご褒美ってことは、あいつが合格するってカナタはわかってたんだろーな」

カズキは1人小隊室で合格者の登場を待っている。

「でもまぁ、リコなら1回で合格してもおかしくないか」

カズキがいろいろなことを考えていると。

ガラガラッと扉が開く音がする。

カズキが視線を扉へ向けると…

「待たせてすまなかったな」

「何言ってるんだよ、合格おめでとう」

カナタの予言通りリコがそこにはいた。

「ふむ、あの特訓はなかなかのものであったぞ。それで褒美なのだが場所を移そう」

「カナタの特訓だもんな。いいよ、どこにいけばいい?」

「ついてきてくれ」

リコに誘われるままカズキはついていく。

行き先は告げられていないがリコを信頼しているカズキは何も言わない。

「ここだ」

「ここってことはマッサージ?」

「そういうことだ、女神な私に触れることを許そう」

カズキが連れてこられたのは更衣棟のマッサージ室。

リコは入るとワイシャツ姿になり、診療用のベッドにうつ伏せになる。

「どこからやればいい?」

「先ずは足から頼む、むくんでしまうからな」

カズキはリコのしなやかで美しい足に手をかける。

訓練で疲れているのだろうと丁寧にもんでいく。

もみもみもみ。凝り固まった筋肉をほぐす。

マッサージで上機嫌になったリコが話し始めた。

「こういうのも悪くないな」

「ん?どうかしたか?」

「特務小隊のエースをこき使うのも悪くないと言うことだ」

「まぁ、ご褒美だからな。それに女神様に触れられるなんて、ご利益ありそうだよ」

カズキはそう笑ってマッサージを続ける。

「今日の訓練でな。ミソラにこんなことを言われた。『がーっと動き回って敵の注意を惹きつけたらいいじゃないっ!』とな」

「ミソラらしいけどリコは後衛だから動かなくていいんじゃない?」

「今はポジションを変えていてな、中衛なんだ」

「あー、その特訓俺もやったよ」

「む、そうなのか?」

「特務小隊って言われたって最初はDランク小隊だったんだよ。」

カズキは話を続けながらマッサージする手を足から腰へ動かした。

肘を垂直にぐりぐりと当てて筋肉をほぐす。

「やっぱり強くなるには仲間のことをよく知らなきゃいけないし、認めなきゃいけない。それにこの特訓はぴったりだろ?」

「んっ…。そうだな、私も少し彼女たちへの認識を変えねばならない」

リコはマッサージに甘い吐息を漏らしながらも話し続ける。

「そうだな、みんな頑張ってるよ」

リコの言葉に機嫌を良くしたカズキはリコを仰向けにして、さらにマッサージを続ける。

「んっ…あっ…。な、なんだ?そんなに私の顔を見て?」

「いや、リコはいい女だなって思っただけだよ」

「ああ、この顔のことか。褒められ慣れているからなんとも……」

「容姿のことじゃないって。性格だよ。リコはさ、あの3人の中で1番仲間想いなんじゃないか?相手のことをよく観察してるってことは気にかけてるってことだろ?」

「むっ、わたしをおちょくってるのか?」

「おちょくってなんかないって。リコみたいに相手をよく見てて、適切な判断ができる女は絶対周りから好かれるよ。あとはほかの2人がリコのいいところに気づくといいんだけど」

「…本気か?」

「ああ、本気だよ」

自分を見つめるカズキの嘘偽りなく真っ直ぐな瞳に、リコの造形美の極致のような顔が赤く染まる。

「ふ、ふんっ!そんなことを言っても惚れてやらないぞっ!」

「いや、別に惚れろとは言ってないけど」

「そ、そうか…。そういえば、そうだったな」

ふむ、どうも彼といるとペースが乱れるな。

どこかしゅんとしたリコをカズキはマッサージし続けた。


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