2人の教官と最弱の小隊 growth record 作:トランサミン>ω</
「昨日は嫌なものをみたね」
「ええ、あまりいい気はしませんでした」
クロエとユーリは昨日の出来事を振り返りつつ。
「それで傷害事件のことなんだけど」
最近起きている事件について話している。
しかしユーリは気の抜けた返事しかしていない。
そこへ…
「最近物騒なことが起きてんだな」
「よー、2人とも」
「事件のお話ですか?」
カナタ、カズキ、ロイドの3人がやってきた。
「なぜカナタ先輩がここに!?」
「カズキに始末書任せちまったからな。奢りだよ」
「それに僕も便乗したわけです」
「ロイドにも迷惑かけてっからな」
「いやー、カナタのおかげで元気でたよー」
3人は和気あいあいと話している。
ほんとうに仲がいいとわかるだろう。
「そういえばカナタ先輩。Aー227小隊の教官に赴任しました。覚悟しておいてください」
「あーいいぜ、どうせ俺が勝つけどな」
「コテンパンにしてやりますから!失礼しますっ!」
「ロイド、頼めるか?」
「奢ってもらいましたからね」
そういってロイドはユーリを追いかけていく。
「もー、あんまりユーリをいじめちゃダメだよ」
「あれでいいんだよ。ユーリに悩み事は似合わねーって」
「カナタとユーリはずっと一緒にいたもんな」
カナタとユーリの関係は先輩と後輩。
しかし生涯連れ添った伴侶のようにわかりあっている。
「んじゃ俺は特訓行ってくるわ」
「レクティたちによろしく言っといてくれ」
「あ、カズキ。お前はあとで小隊室にいてくれよ」
「なんで?」
「お前はリコのご褒美になるだろーよ」
「そうなの?」
「まーそーゆーこった」
カナタはその場をあとにした。
「今日からの訓練はポジションはくじ引きで決定。演習E4に挑戦だ。確実仲間に指示を出していいからな」
「なんでそんなことをするのよっ!」
「仲間をよく見て動けってことだ。んじゃ頑張れよ」
《ミストガン》上空高度4000第3訓練空域。
『ふむ、こういうものか』
中衛となったリコは、腕を組み前後を見ていた。
アルケナル級のダミーはやすやすとミソラの前衛をとっぱする。
リコも眺めているのみなので後衛のレクティが慌てて迎撃するのだが。
「やれやれ、タチの悪い特訓だな」
「なんでだよ」
「この特訓を終えたあと、わたしは2人を認めざるを得ない」
『なぁミソラきこえるか?』
『なによっ?』
『キミの左翼から接近する集団を足止めしてくれ』
『なんであんな遠くのやつを殲滅するのよ?』
『キミにしかできないことだ、レクティでは力不足だからな』
『えっ!そうなの!?』
『だから頼めるか?』
『そ、そこまでいうならやってやるわよっ!』
リコに頼られたのが嬉しいのかミソラは上機嫌で殲滅に向かう。
リコはニヤリと笑った後通信結晶をレクティと秘匿回線に切り替えた。
『レクティ、嘘とはいえ力不足といった済まなかったな』
『えっ?嘘だったんですかっ!?』
『もちろんだ、ミソラを持ち上げるためにな』
リコはその頭脳と巧みな二枚舌を駆使してこの演習を乗り切った。
慣れないポジションであったのにも関わらずだ。
「なかなかやるじゃんか」
カナタは不敵に微笑みそういった。
「今日の合格者はリコだけだ。リコは小隊室にいけよ」
「なぜだ?」
「カズキに褒美を頼むんだろ?待たせてあるぜ」
「なっ…。ふん、待たせているのなら行かないわけにはいかないな」
リコは頬を染めながら歩いていく。
空中に残されたミソラとレクティはカナタから指示を受け待機している。