2人の教官と最弱の小隊 growth record   作:トランサミン>ω</

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少女たちは何を見る

カナタの雰囲気が変わった。

それはまだ未熟な3人であっても容易にわかることだった。

「ねぇ2人とも」

「なんですかミソラさん?」

「ふむ、どうしたというのだ?」

「ここから先の戦い…。絶対見逃しちゃいけないと思う」

「そうですねっ!私たちの教官さんの本気ですからっ!」

「奇遇だな、私のそう思っていたところだ」

3人が話していると彼女たちの教官2人から声がかかった。

「ここから先は悪い戦い方の見本みたいなもんだ。絶対真似すんじゃねーぞ?」

「絶対そこから動かないようにな。」

3人は息を呑む。

そして次の瞬間…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女たちの教官の戦いが始まった。

「カナタは真っ直ぐ飛んでくれ。道は俺が切り拓く」

「あぁ、わかった。任せたぜ」

「それじゃあいこう」

その言葉を合図にカナタは全速力でキメラ・アンタレスへ飛んでいく。

「とりあえず雑魚どもにはもう1回退場願おうか。」

カズキがブラスター・ダークを一振りするとカナタの前にいたアルケナル級が全てを消滅した。

キメラ・アンタレスにも剣戟は届いたようだが、あまり効果はないようだった。

その光景を見た3人は

「て、敵がいなくなっちゃいましたっ!」

「で、でもなんであんなのを喰らってもあのデカイのはピンピンしてるのよっ!」

「ふむ…」

レクティとミソラが声を上げる中リコはなにやら怪訝そうにしている。

一方カナタはカズキが拓いた道を進みキメラ・アンタレスへとたどり着いた。

カナタの接近にキメラ・アンタレスは至るところに設けられた赤い眼から、大小合わせて二十数本の光線をカナタへと掃射する。

目視してからでは確実に被弾してしまうそれを、カナタは平然と掻い潜り大空に浮かぶ鋼の城砦のような巨軀を飛び回る。

カズキの一撃を持ってしても傷つけることが出来なかった、キメラ・アンタレスの甲皮を舐めるように飛ぶカナタの軌跡には、ありうる筈のない緑の液体が飛び散っていた。

3人は目を疑った。

何故なら、カナタの左腕より先が一瞬消えたように見えたからだ。

「あ、あれって…」

ミソラが困惑していると

「あれもリミットスキル、《黒の剣聖》と呼ばれたカナタ・エイジの閃光剣だ」

ミソラはリコの話に感心しつつもカナタの表情に不安を抱く。

彼の戦いぶりにはとてつもないが、彼は顔面蒼白。唇まで真っ青でいかにも調子が悪そうだ。

遅せーな。

カナタはそんなことを思いながら自分へ向けて放たれる光線を躱していた。

それがやけにスローモーションに映る。

グラディウスを片手にカナタは閃光剣で攻撃を続ける。

「そろそろ終わりにしなくちゃな」

そういってカナタはさらに速度を上げていく。

キメラ・アンタレスはあまりの戦力の差に後退を始める。

そこでカナタは気付く。

いや…俺が速ーのか?

すると突然カナタが咳き込んだ。

口からは鮮血、体が崩力についていけず限界が近いようだ。

カナタは勝負を着けようとグラディウスに魔力を注ぎ込む。

「わりーけど…。俺には守らなくちゃなんねーもんがあるんだよ」

カナタは魔砲を放つモーションに入る。

その時ミソラが声を上げる。

「あいつに魔砲なんて効かないわよっ!さっき見たでしょ!?」

「ミソラ、それは間違いだ」

「えっ?」

魔砲を放とうとするカナタの元へカズキがやってくる。

「カズキ、遅かったじゃねーか」

「カナタ1人でも勝てそうだったからな」

「じゃあなんで来たんだ?」

「俺達は二人揃ってロイヤルガードのエースだろ?」

「そうだったな。そんじゃあいくぜ!」

そんな2人にキメラ・アンタレスは光線を放つ。

「あ、あんたちにげなさいよっ!」

「ミソラ、大丈夫だ」

リコが焦るミソラを諭す。

「で、でもっ!」

ミソラが抗議しようとしたとき…

「なぁ、言ってなかったか?」

「えっ?」

ミソラは2人に再び目を向けると驚愕する。

「俺達が本気を出した時点で勝利は決まってるんだよっ!」

カナタが声を上げるとグラディウスから魔砲が放たれる。

魔砲剣戦技ーストライクブラスター

ストライクブラスターはキメラ・アンタレスの光線を全てを弾き飛ばし被弾する。

そして、その上から…

「それってつまりは、俺達の勝ちってことだろ?」

大空を覆い尽くす程の魔力が注ぎ込まれた、ブラスター・ダークを構えたカズキがキメラ・アンタレスへと振り下ろす。

幻影剣戦技ートリーズンディスチャージ

「「とっとと消えろよ、ここは俺達の空だっ!!」」

2人の攻撃を受けキメラ・アンタレスが爆発する。

爆風に巻き込まれ2人の姿も確認することは出来ない。

3人は急いで2人の安否を確認する。

3人が見たのはチカラを使い果たして自由落下している2人の姿。

3人は残っているチカラを振り絞って2人を支える。

「あんたたち大丈夫っ!?」

「おふたりとも大丈夫ですかっ!?」

「女神な私が心配しているのだ、大丈夫だろうなっ!?」

「お前ら大丈夫か?」

先に声を出したのはカナタだった。

「何がよ?」

「怪我とかしなかったか?」

青ざめた表情を見ればどちらが具合が悪いのかは一目瞭然だ。

「カナタさんの方が怪我が酷いですっ!」

「それってつまり、お前らは無事なんだな?」

カズキも3人に声をかける。

「君たちの戦闘に比べれば大したことはないっ!それより君は大丈夫なのか!?」

いつもは冷静なリコが声を荒らげる。

「ちょっとした魔力の使いすぎだ。すぐに良くな…」

「か、カズキ!」

「カズキさんっ!」

リコとレクティがカズキが意識を手放したことを心配して焦る中

「どうしてあんなチカラを隠してたのよ…!?」

ミソラはカナタの謎の力について問い詰めていたが、既に意識を手放していたカナタが答えることは無かった。


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