2人の教官と最弱の小隊 growth record 作:トランサミン>ω</
市街地で戦闘を繰り広げるミソラは魔砲剣を構えアルケナル級と対峙していた。
未だ砲撃が満足に出来ていないミソラはカナタの教え通り、ギリギリまで引き付けて砲撃を行う。
飛翔を停止し、真っ直ぐに向かってくるアルケナル級に魔砲剣の砲口を向け、魔砲を放った。
手応えはあったが命中判定は不可能。
「ど、どうなったのよ!?」
ミソラがこわごわと後ろを振り向くと、彼女と交差したアルケナル級は胴体から体液を噴出しながら力なく市街へ落下していった。
「やっぱ命中率はまだまだだけど、よくやったじゃんかミソラ」
ホウキに乗るカナタは巧みに魔甲蟲を避けながらミソラの雄姿を褒めたたえた。
ミソラの長所はスタミナと加速力。そしてそれらの根源である魔力量。まだ高度な飛行技術や砲撃の命中精度など問題は山積みだし、無闇やたらに砲撃する癖があるが、確率は収束する。つまり数撃ちゃ当たるのである。
それにミソラは魔砲剣戦技も未熟ながら習得している。
「や、やったあああーっ!!!」
不敵な笑みを浮かべるカナタの視線の先には喜ぶミソラの姿があった。
魔甲蟲を初めて撃墜できたことが余程嬉しいのだろう。
しかし調子に乗ったミソラは迫り来るアルケナル級に砲口を再び向け、魔力をチャージし始めた。チャージ、チャージ、チャージ。ホバリングしたまま、まるでプロキオン級を撃破するかのような魔力を練り上げた。
「げっ、そんなもん街中でぶちかましたら…っ!」
ミソラは魔砲剣戦技ーストライクブラスターを放った。
威力は絶大、アルケナル級を街諸共吹き飛ばした。
それを見てカナタ、リコ、レクティは
「最悪だな」
「最悪だぞ」
「最悪です」
そう言い放つ
「どうしてだれも誤射だっていってくれないのよ〜っ!」
「街を吹っ飛ばしといて何言ってんだよ…、ってかお前んちの喫茶店吹っ飛んだけど大丈夫か?」
それを聞いてミソラは、はっと青ざめた。
その後しばらく交戦していると、変異種を討伐せよとの連絡が入ったが。
「なぁ、お前らがキメラデネブを倒せよ」
いきなり突拍子もないことをカナタが言うものだから三人とも目を見張り驚いた。
「あ、あたし達ランキング戦でも勝ててないのよ?いきなり変異種なんて…下手すれば死んじゃうかもしれないのよっ!」
「ミソラの言う通りだ、正気の沙汰ではないな」
「そ、そんなの無理です…」
三人が思い浮かべたのは敗北する姿。
彼女立ちにカナタが声をかける。
「死ぬために訓練してるわけじゃないだろ?生き残って大勢の人々を守るために訓練してるんだ。お前らはキメラデネブを倒せるくらい強くなったよ。俺が保証してやる。…ん?」
カナタが話しているとカナタの通信結晶が鳴った。
「カズキか、どうした?」
『もし、3人が変異種と戦うなんてことがあったら伝えてくれ。ミソラは小隊長だまだ頼りないところはあるけどちゃんとみんなを見てる。レクティ、お前は俺の一番弟子だからな?自身を持てよ。リコ、無理に試合に出させるのに闘わせてごめんな?帰ったらマッサージでもしてやるよ。そんで勝ったらみんなでアイスでも食おうぜ、俺の奢りだ。じゃあ俺は戦闘に戻る、またな』
「だってよ?」
「「「……っ!?」」」
二人の教官からのエールに3人は奮い立つ。
「覚悟は決まったみたいだな?空の上では常に警戒、指示は小隊長のミソラが出せよ。俺はお前らを死なせるつもりはねーし、《ミストガン》の市民を殺らせるつもりもねーよ。……お前らならできる。」
3人は今までにないほど自身に満ちた顔で頷いた。