2人の教官と最弱の小隊 growth record   作:トランサミン>ω</

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初陣

都市郊外三番区。

もとより人気のない郊外だが、住民が避難したためゴーストタウンのように静まり返っている。

避難誘導任務に就いていたミソラたちが報告する。

「こっちは逃げ遅れた人がいないか確認終わったわよ」

「ふっ、私の持ち回りも完了した。逃げ遅れた人はいない。まったくこんな地味な作業をする羽目になるとは甚だ心外だな」

ドーム付近に位置する郊外はもとより人気のないため、避難も比較的円滑に進んでいたのだが

「俺の方も終わったけど、そういやレクティは?」

カナタたちが捜すとレクティは猫を抱えて戻ってきた。

「あのぅ…、カナタさん」

「シェルターまでつれてってやれよ」

「ありがとうございますっ!」

元気よくシェルターへ駆けていくレクティを見守りながらリコは疑念を抱き尋ねる。

「なぜキミがここにいるんだ?」

「逃げ遅れた人がいないか見回ってるからに決まってるじゃんか」

「そんなことを訊いているのではない。キミの実力をわたしは知っている。元エースならとっとと前線に出撃して、敵を蹂躙してくればいいだろう」

本当はカナタも今すぐに戦闘に参加したいところなのだが

「俺にもいろいろ事情があるんだよ。裏切り者だからな」

そんなやりとりを見ていたミソラは不審に思っていた。

飄々としていてとらえどころが無いカナタだが、一本芯が通った人物であることを知っているからだ。

なぜ彼は出撃しないのか、もしかしたら出撃できない理由があるのではないか、それはもしかして…。そう考えていると

「あのぅ、無事に猫ちゃん届けてきました」

「おう、レクティご苦労さん」

シェルターから戻ってきたレクティはやけににぱにぱしていた。

吊られたカナタも普段の表情に戻る。

「なんだよ?いいことでもあったか?」

「はいっ!猫ちゃんを届けたらシェルターの中にいた人たちに凄く応援されました!」

きっとガーディアンの学生を信じているのだろう。

「そっか。ならその期待に答えてやらなくちゃな」

そんな時だった。《ミストガン》直上に飛行警戒中の部隊が急に忙しなくなり、周辺から無数の存在が黒い霧のように立ち込めてきたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳をつんざくような翅音。それが幾重にも幾重にも積み重なって、大地が唸るような轟音となる。

人を喰らい、屠り、殺し尽くせ。それが魔甲蟲の意思。

その身に宿す力は呪力。人類の理解が及ばない滅びの力。

大空を埋め尽くすように飛翔しながら襲い来る数千の群れ。それの群れが存在する一角だけが暗雲が立ちこめているかのように錯覚してしまう。

それらが《ミストガン》を目指す中、その群れを殲滅しつつ《ミストガン》に全速力で戻る存在が一人

「流石に多すぎだろこれ、さっさと戻ってカナタにしらせねーと」

カズキは魔剣を構え全速力で飛翔していく。

彼が通った場所だけが晴れ間のようにポッカリと空いている。

それほどまでの損害を受けても魔甲蟲は真っ直ぐ《ミストガン》へと猛り狂ったかのように襲いかかっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『市街地で避難誘導に十時しているガーディアンの学生は全員戦闘体制を取るように。可能な限りの技能を全て使い、市街地へ降下しつつある魔甲蟲を殲滅しなさい』

有無を言わせぬフロンの声。それだけで差し迫った状況だと理解できる。

避難誘導に当たっていたのはEランク小隊のみ本当は闘わせたくない小隊なのだ。

「いきなり実戦になるってのは想定外だけど、どうやらFランク小隊にもお呼びがかかったようだな」

「ねえ、これから初出撃なのに士気が下がるじゃない!Fランク小隊ってやめてよ!」

「ふっ、やれやれ。雑魚の相手は性に合わないんだがな」

「が、がんばりますっ!」

それぞれの瞳が覚悟を決めた輝きを放っている。

「市街戦だと建造物があるから気をつけろよ。飛行中に頭ぶつけたりしたらやべーからな。後ろは俺が守ってやるよ、教官として危なくなったら必ずフォローに入る。だから普段通り戦ってこい!」

そう告げるとカナタは何も無い空間からホウキとダガーを取り出し悠々と構える。

ミソラたちは巌のようにそびえ立つカナタにこくりと頷いたあと、それぞれが飛行魔術を発動し、魔甲蟲との戦闘に入った。




《ミストガントーナメント》の話を書くかどうか悩んでいます。
書くとなるとアニメが進むまで待たなければなりません。
原作とアニメのどちらに沿って勧めていった方がいいか、ご意見いただけると嬉しいです。
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