2人の教官と最弱の小隊 growth record 作:トランサミン>ω</
ランキング戦当日
Eランク小隊同士の戦いなど好んでみるもの
物好きな人間は少なく観覧席はガラガラだった。
相手のE571小隊はミソラたちをみて笑っている。
「これでDランク昇格は決まりだな」
「相手がFランク小隊でよかったよ。安心して戦える。」
「帰ったら祝勝会だな祝勝会」
Fランク小隊と蔑まれるミソラたちを脅威だと
思うものはいなかった。
「へっ、思いっきしこっちを見下してるじゃんか」
これから起こる何かを想像して愉しむかのように
カナタは不敵に笑っている。
「すっごいムカつくっ!」
「ふっ、矮小な人間ほど他人を見下したがるからな」
「それだとあんたも含まれるんだけど…」
「ふむ、女神なわたしは既に人間の目で測れる存在ではないからな」
「き、きんちょうしてきましたっ!」
それぞれの思いを口にするミソラたちにカナタは
声をかける。
「お前ら知ってるか?こういう状況をひっくり返すのが一番楽しいんだぜ?それに見てみろよ、ここにいる…」
そういって3人の緊張をほぐそうとしたのだが
〈ウゥーン、ウゥーン〉
突如鳴り響いた警報に邪魔される。
「何が起こってるの!?」
ミソラたちが戸惑っているとカナタはこういった。
「このタイミングでくるかよ…魔甲蟲…」
しかしカナタには焦りが感じられない。
流石元エースなだけあって修羅場にはなれているようだ。
同じS128小隊の仲間は哨戒任務に専念するように指示されているはずだから今日ここ瞬間も都市外空域で任務中のはず…
ま、クロエたちは大丈夫だろヘマするようなやつらじゃないし
いざとなったらカズキも本気出すだろうしな。
そう思いつつ不安げな表情のミソラたちを見やり静かな決意をしたカナタは彼女たちと共に避難誘導区域にむかった。
「なぁ、クロエ。いやな予感がする」
「カズキも?」
「どうしたんですか?クロエ先輩、カズキ先輩」
右方向を飛行するユーリが尋ねた。
現在は哨戒飛行中。高度は3200程度。
先日還らざる小隊が発生したためロイヤルガードを中心に哨戒ローテーションが組み直されたばかりなのである
カズキもロイヤルガードの1員、ミソラたちの試合を
見てやりたかったが役職上任務を優先していた。
「あのねユーリ、なんだが肌がざらつく感覚がしたの」
理解出来ないという顔のユーリを無視しクロエは濃密な雲海の合間を睨みつけている。
この距離ではわからないとユーリが調査をこそ見るべきだろうと周囲の仲間へ警戒を促そうとした時だった。
ガシャン。隣でメカニカルな機構か作動する音が聞こえた。振り向くとクロエが魔法杖を構え砲撃を行った。
その威力は射線上にあった雲塊を捻り取るかのように切り取っていた。
「消滅したようですね」
だがクロエは寧ろ警戒心を強めていた。
「違う、まだ終わりじゃないのよ」
「……はい。失言でした」
すると耳元の通信結晶にロイドからの通信が入った。
「どうしたの?」
「どうやら悪い報せのようです」
ロイドが努めて冷静に告げる。
「ミストガンへと近づく変異種(キメラ)の姿を確認、ミストガンでは非常事態宣言を発令したそうです。至急戻るようにと」
「戻れって言われてもね…」
「まぁ戻れる状況じゃねーのはわかってるだろうし。
念のための報告だろうな」
「いいんですか?クロエ先輩、カズキ先輩、ロイド先輩も…!」
「でもねユーリ。これを全部連れて帰る訳にはいかないでしょ」
「そんなことわかってるつもりですっ!でも皆さんが戻らなければ変異種の相手をする者がいなくなるじゃないですかっ!だからここは私が引き受けますから」
「ユーリだけでは無理でしょう。現状ならまだしも不慮の事態には対応出来ない」
そう2人が話しているところにカズキが口をはさむ。
「仲間を守るために1人で残ろうとするなんて。カナタそっくりだなユーリ」
「なっ……!」
カズキにいわれほほを染めるユーリ
「クロエ向こうは俺に任せろ。いざとなったらあれを使う」
「わかったよ、でも無理はしちゃダメだからね?」
「い、いくらなんでも無理ですよっ!カズキ先輩は強いですけど、あの量を1人なんて…」
「誰がひとりっていったんだユーリ」
「そうよ、ミストガンにはカナタがいるじゃない」
「裏切り者の先輩なら真っ先に逃げ出すはずです」
「ユーリ、カナタのこと………信じてあげて」
「……クロエ先輩?」
「カナタは困ってる人を放っておけるような性格じゃないよ」
「そうですね。単純なくらい人の危機になると体が動く人ですから」
「ってことで、お前らここは任せたぞ」
そう言い残しカズキは全速力でミストガンに戻っていった。
クロエとロイドはカズキを見送ったあと魔甲蟲の迎撃戦を展開。
ユーリもそれをサポートするために混戦へと引きずり込まれた。