GOD EATER 2 RB 〜荒ぶる神と人の意志〜   作:霧斗雨

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第16話です。
ギルの過去とコウタ救出。


第16話 命の重さ

最近、ギルの様子がおかしい。

具体的に言うと、ハルオミと飲むと言ったその次の日から。

何の話をしたのかさっぱりわからないレイは、ラウンジのカウンター席に座って、ジュースを飲みながらどうすべきか悩んでいた。

ギルは、おそらく何かを背負っている。

それはなんとなくわかる。

経験があるからだ。

ただ、それに、足を踏み込んで手を出してもいいものなのだろうか。

レイ自身、そういう事には踏み込まれたく無いので、おそらくは嫌なのだろうが、このまま放置するというのもいただけない。

何故なら、ギルの不調がチームにわずかではあるが影響をもたらしている。

連携が、ぎこちなくなり始めている。

このままでは、チームから怪我人が出るかもしれない。

最悪、誰かが死ぬかもしれない。

それだけは避けたかった。

 

「……マジでどうすっかなぁ」

 

こういうのは昔から苦手だった。

相手の気持ちを察し、対応すること。

今迄面倒くさくてなあなあでやってきたことを後悔する。

相手の顔色を伺い、察することは用心棒をしている時にある程度身についた。

しかし、その先は盛大にやらかしたりする事が多く、自信なんてものは皆無である。

 

(ちっとはマシになってると思いたいけどなぁ……)

 

シエルの時はたまたま上手くいった。

ただ、シエルにぶつかって考えを伝え、向こうのぶつけてきた物を受け止めただけ。

言ってしまえば、それしかやっていない。

今回もそれでいけるとは思えないが、原因がわからない限りどうすればいいのか見当がつかないのだ。

 

「よう、副隊長さん」

 

不意に声をかけられ、レイは顔を上げる。

そこには、ハルオミがいた。

 

「ああ、ハルオミさん」

 

「ハルでいいよ。横、いいか?」

 

「え」

 

「心配するな、流石に男を口説く趣味はねぇよ」

 

一瞬固まるレイを笑い、ハルオミは隣に座った。

 

「ギルから聞いたぜ。ここに来る前も、随分無茶したんだってな。「赤い雨」の中、ポンコツ神機兵に乗って仲間を助けに行ったんだって?」

 

「ああ……もしあれが傲慢な局長とかだったら行ってねぇっす。仲間は誰1人だって、死なせてたまるか。つかあの、敬語にした方がいいっすか?」

 

「ハハハッ、やっぱり、なかなか愉快な奴だ。気に入ったぜ。今更だな、そのままでいいよ」

 

ハルオミは、バンバンとレイの肩を叩いて笑った。

 

「ふー……どうせ、ギルのことだ。アイツ、自分のこととか詳しく話してないんだろ?……聞きたくないか?」

 

「ふー、じゃねぇよ痛いわ。何をっすか」

 

「グラスゴー支部で……何が、あったとか」

 

「……まぁ、少しは」

 

実際は少しどころではなかった。

ギルの不調の始まりは、ハルオミと飲んだこと。

ならば、考えられる原因は二人の共通点であるグラスゴーでの出来事である。

 

「そうだな……どこから話すべきかな……」

 

ハルオミは、椅子に座り直す。

 

「グラスゴー支部はな、俺とギルを含めて神機使いが三人しかいない小さな支部だったんだ。んで、そのもう一人の神機使いが、俺たちのチームの隊長を務めていた。名前は、ケイト。ケイト・ロウリー……、ま……俺の嫁だったんだけどね」

 

「嘘だろ、マジかよ」

 

レイは驚愕した。

既婚者なのかこの人。

 

「ここに比べりゃ、グラスゴーはアラガミの被害が少なくてさ。俺たち三人でも、何とかうまいこと捌けてた。その日も、いつもの通り簡単な討伐任務のはずだったんだ……。んー、悪い!ここから、結構重い話になるんだが、それでも……聞いてくれるか?」

 

「……聞きます」

 

急に真剣になったハルオミの顔を見て、レイも覚悟を決める。

これは、聞いておかないといけない。

 

「ん……オーケー、まあ要するに……そのミッション中にギルは……ケイトを「手にかける」羽目に、なっちまったんだ」

 

「……まさか」

 

「……ああ、そのまさかだ。腕輪が壊れて、アラガミ化が始まったんだ。チームの誰かがアラガミ化した時の対処法……聞いたことあるだろ?」

 

メンバーのアラガミ化。

対処法とは、その介錯ただ一つ。

つまりは、人殺し。

しかし、それは神機使いならば誰でもやる可能性のある出来事だ。

そもそも、選択肢が残酷なのだ。

介錯を行うか。

その神機使いをアラガミ化させてしまうか。

この場合、後者をとることは許されない。

後者の場合、対処することが極端に難しくなってしまい、自身の命はおろか、他メンバーの命も危険に晒す事になってしまう。

 

「……ええ。だけど、それは」

 

「ああ。誰の目にも、他の方法はなかった。もちろん軍法上も無罪だった……けど、騒ぎ立てるやつもいてな。それ以来あいつには、上官殺しのギル……フラッギング・ギルって名前がついて回るようになった。誰もあいつを責めることなんて、できやしないのにな……。……話を戻すか」

 

ハルオミはフゥ、と息をついた。

 

「そのミッションではいつも通り、ケイトはギルとペアで行動し、俺は別ルートから回り込む形で、アラガミを撃破していったんだ。その時だ……あいつが現れたのは……」

 

ーーーー

 

「ぐわっ!」

 

『どうした!?』

 

無線にハルオミの声が響く。

ケイトは、それに応答した。

 

「ハル、すぐに合流して……これは……新種……?」

 

目の前にいるのは、赤いカリギュラだった。

カリギュラは本来蒼い。

普段こんな強敵が出ることなんてないのに。

ギリ、とケイトは歯噛みした。

 

「グオオオオッ!」

 

赤いカリギュラは、左のブレードを展開してケイトに切りかかった。

バックラーを展開してガードするが、吹き飛ばされた挙句着地してから一度転がった。

 

「コイツ……強い!ハル、合流して!聞こえてる?」

 

『了解!今そっちに向かうから、持ちこたえろ!』

 

この会話の間にも、赤いカリギュラはケイトに襲いかかる。

 

「くっ……」

 

初撃を食らったギルが立ち上がると、ケイトは即座に指示を飛ばした。

 

「ギル、側面に回って!」

 

「了解!」

 

二手に分かれて走る。

ケイトが牽制の一撃を放った後、ギルは赤いカリギュラに切りかかるが、右手のブレードでガードされてしまった。

 

「防いだ!?」

 

その事実に、ギルは、驚いた。

アラガミに、防がれた。

赤いカリギュラは、ギルの方を見ると蒼く冷たいブレスを吐いた。

ギルは、それを食らって再び吹き飛ばされる。

ギルに追撃をかけさせまいと、ケイトは赤いカリギュラを射撃し、注意を引き、ブレードに変化させる。

赤いカリギュラの突進を避けると同時に、一撃見舞うが弾かれる。

 

「硬い……!」

 

赤いカリギュラがブースターを起動させ、高速でケイトに切りかかった。

避けきれない、そう判断したケイトはバックラーを展開して踏ん張る。

しかし、赤いカリギュラの攻撃はあっさりとバックラーを損失させた。

それと同時に腕輪にも損傷が起きてしまう。

 

「うっ、うぐぅっ!」

 

侵食の苦しみに耐えながらもケイトは立ち上がった。

 

「ケイトさん……逃げてくれ……」

 

「ギル……回復に集中して……」

 

ギルはケイトに逃げるように諭したが、ケイトはそれを聞き入れなかった。

腕輪から、黒い煙が立ち上る。

 

「ケイトさん!アンタの腕輪、侵食が……」

 

「いい……から……!ギル、回復に集中して……!コイツは、私に……任せて!」

 

そう言うと、ケイトは迫り来る赤いカリギュラに向き直り神機を構える。

赤いカリギュラの攻撃を二度回避すると、ケイトは赤いカリギュラの右手に斬撃を放つ。

着地と同時に向きを変え、赤いカリギュラに向けて駆けた。

 

「うおおおおおっ!!」

 

飛び上がって赤いカリギュラの右肩に神機を突き刺した。

 

「グギャアアアアッ!」

 

赤いカリギュラはケイトを振り落とそうと悶えるが、ケイトは神機を離さなかった。

赤いカリギュラは、ケイトを掴むと地面に叩きつける。

ケイトの体が、何度もバウンドしながら転がった。

ギルはギッと歯を食いしばると、赤いカリギュラめがけて走る。

 

「うおおおおおっ!!」

 

チャージグライドを赤いカリギュラめがけて放つ。

しかし、当たる寸前に赤いカリギュラは飛び跳ね、ギルの攻撃は外れた。

赤いカリギュラはギルの攻撃を避けたあと、何処かへ走り去っていってしまった。

ギルは、その場に持っていた神機を落とす。

 

「届かなかった……」

 

「あっ……ぐっ……うぐううっ!」

 

ケイトのうめき声に、ギルは慌ててケイトに駆け寄ってその体を抱き上げた。

 

「ケイトさん!」

 

「ごめんね……侵食が進み過ぎた……アラガミ化が、始まった……みたい……」

 

ケイトは、苦しそうにギルの顔を見る。

 

「ギル……わかってるよね……私を……」

 

「できません!今から、すぐに戻れば……」

 

「多分、無理かな……ギル……ほら……」

 

ケイトは苦笑しながらギルに右手を見せた。

その手は、醜悪なアラガミのものと成り果てている。

ギルは、目を背けた。

 

「俺には……できないです……」

 

「ごめんね……本当に、ただのわがままなんだけどさ……私……ギルを……襲いたくないんだ……」

 

ケイトは、ギルを優しく諭す。

その顔をじっと見つめながら。

 

「だから、お願い……ギル……私を……殺して……」

 

ギルは、ケイトの真剣な表情を見て、歯を食いしばる。

するしないのだ。

やらなければ、ケイトの思いが無駄になる。

ゆっくりとケイトを抱き抱えて近くの岩の前にそっと座らせた。

そして、自らの神機を取ってくると、ケイトの前に立つ。

覚悟を決め、ギルは神機を構える。

ケイトの体は、ドンドンアラガミへと変わっていく。

ギルの口から嗚咽が漏れた。

そして、ギルの槍はケイトの体を貫いたのだ。

最後の彼女の表情はー笑顔だった。

 

ーーーー

 

「俺が駆けつけた時……もう、ケイトの姿はそこに無かった……ケイトが身につけていた服は……ギルの槍で、岩肌に縫いとめられていて……ギルは、ケイトの腕輪を大事そうに抱えて……ずっと……泣き続けていたんだ」

 

「……」

 

レイは、黙って聞いていた。

何も、言えなかった。

 

「湿っぽい話を聞かせて悪かったな。お前さんはずいぶん聞き上手だな……そんな真剣な表情をされると、ついベラベラと話しちまう……多分ギルも、お前さんのその真っ直ぐな瞳を見て、ケイトのことを思い出しちまうんだろうな」

 

そう言って、ハルオミはゆっくりと立ち上がる。

 

「楽しかったぜ、じゃあな」

 

レイの肩を一度軽く叩くと、ハルオミは去って行った。

去り際の笑が、とても悲しそうに見えた。

 

「楽しかったわけが、ないだろ……」

 

ーーーー

 

ハルオミの話を聞いて、気分が沈んでいる時に、緊急の呼び出しがかかった。

レイは即座に気持ちを切り替える。

内容は、第一部隊隊長のみの救助。

 

「状況は!?」

 

ヘリに駆け込みながら、レイはヒバリに聞いた。

既に、ヘリの中には第四部隊と第一部隊が乗り込んでいる。

コウタを覗いて。

エリナとエミールは既にボロボロだった。

 

『ブラッド隊及び第四部隊はエイジス跡に取り残された藤木コウタ隊長の救出をお願いします。第一部隊を奇襲した大型アラガミは既に撤退したようですが、周囲にはまだ複数のアラガミが確認されています。皆さん、どうかお気をつけて!』

 

(コウタさん……!)

 

レイはギリ、と歯噛みをする。

あのエイジスに取り残された。

危険すぎる状況だ。

ジュリウスは、即座に指示を出す。

 

「レイとシエルは藤木隊長の救出班に加われ。その後は真壁隊長の指示に従うように。ほかのブラッドは救出班のサポートだ」

 

「「了解!」」

 

レイはチラッとギルを見る。

俯いて腕を組んだまま、動かない。

 

(……?)

 

「よう、副隊長さん。お前さんと任務に出るのはこれが初めてだな」

 

「あー、そっすね」

 

「ブラッドの実力、期待してるぜ」

 

「う、うっす」

 

満面の笑みを浮かべるハルオミに対し、レイは苦笑いを浮かべた。

 

「あ、そうだハルさん、俺先行っていいっすか」

 

「ん?いいけど?」

 

「あざっす。しゃ、久々にやるかぁ」

 

ハルオミからの返事を許可と受け取ると、レイは嬉々としながらアタッシュケースから神機を取り出して展開する。

 

『ミッション地点上空に到着しました!降機地点に向かいます!』

 

パイロットからの連絡を受け、レイは待ってましたとばかりに一人神機を持つと、ヘリのドアを開けた。

 

「んじゃ、先行ってますんで。シエル、下で合流な。後、ドアよろしく」

 

「了解しました」

 

シエルの返事を聞くと、レイは何の躊躇もなく飛び降りた。

 

「おいおい!」

 

慌てたのはハルオミをはじめとしたブラッド以外の面子である。

先に行ってもいいとは言ったが、まさか飛び降りるとは。

 

「大丈夫です。いつものことですので」

 

ブラッドのメンバーからしたらもう日常茶飯事である。

もとより、レイは危ない戦い方をする癖にほぼ怪我をしないのだ。

心配している方が疲れてしまうことから、レイの多少の無茶を気にしないことにしている。

最初のダイブ時は流石に全員飛び上がりそうになったけれども。

 

「それ、いいんですか?」

 

「ええ。最近、このての事を控えていたようですので。ストレスがたまっていたのでは」

 

「……絶対ヘン」

 

ごもっともだった。

 

ーーーー

 

「いやっほーぅ!!」

 

空中に身を踊らせながら、レイは笑顔だった。

最近、ヘリに乗っても知らないうちに降機地点についていたりすることが多く、やれていなかったのだ。

この、落ちる感覚が実に爽快で、一度怪我を承知してやってみたところはまってしまった。

アラガミの相手をしている時も割と楽しんでいるのだが、これはまた別の面白さである。

 

「やっぱ楽しみがないとねぇ。ちゃんと働くんだし、これくらいは許してくれよな!」

 

落下の直線上に浮いているザイゴートを串刺しにし、そのまま自由落下に身を任せ、ザイゴートをエイジスの廊下に縫い付けた。

ただそれだけでザイゴートは沈黙する。

落下の衝撃と人一人のクッションとなったことで、無残な肉塊となり果てたのだ。

 

「いやぁ、楽しかった。さて、行くか」

 

神機をアサルトに変化させ、群生したコクーンメイデンとザイゴートに乱射する。

的確にアラガミの急所に当てながら、レイはシエル達と合流するために駆けた。

コクーンメイデンとザイゴートの攻撃を飛び回ってかわし、斬撃を叩き込んではバレットを乱射する。

思っていたよりも数が多い。

 

「あー、めんどくせぇ!」

 

レイは装填していた弾を、BB連鎖弾に切り替える。

シエルにあれだけ教わり、モジュールをいじろうと試みたが、さっぱりわからなかったため、オリジナルバレットを作るのは諦め、ブラッドバレットとして組み上がった弾丸を使っているのだが、コイツは中々乱戦に使えた。

なにしろアラガミに当たった後、近くのアラガミを攻撃してくれるのだ。

おかげで効率よくダメージを与えることが出来た。

 

「っし、いっとけ!」

 

コクーンメイデンに当たった弾丸が、近くのザイゴートを強襲し、地に落とす。

それを、レイは思いきり薙ぎ払うと、コクーンメイデンに止めの刺突を放った。

 

「このへんは終わりか?んじゃ、いっちょ探しますか」

 

シン、と静かになったので聴力と、普段なら索敵に使う感覚ををフル稼働しながら走る。

僅かな戦闘音、人とアラガミの気配を捉えた方向に向かうと、シエルたちが交戦していた。

まだ距離があるので、アサルトでザイゴートを落としていく。

 

「副隊長!遅いですよ!」

 

「悪い、ちょっと迷ってた。広いのと落ちた場所が悪かったなぁ。次は気をつけるわ」

 

シエルに叱責され、レイは苦笑しながらアラガミの殲滅に勤しむ。

アラガミの数は急速に減少していった。

 

「やるねぇ。こりゃ、俺らの出番ねーかな?」

 

「きゃあっ」

 

「エリナ!怪我してんだから無茶すんなよ!」

 

ハルはザイゴートに吹き飛ばされたエリナのサポートに入ろうとするも、別のザイゴートに邪魔され進めない。

 

「ジャマだっての!」

 

そのザイゴートを、ワックマックで圧殺する。

その間にもエリナは別のザイゴートを刺殺するが、コクーンメイデンの連撃に合ってしまう。

 

「きゃあッ」

 

「おい、大丈夫か?」

 

ギリギリ、レイはエリナの前に滑り込んでバックラーを展開し、攻撃を回避した。

 

「あ……えっと、あ、ありが」

 

エリナの謝礼を聞き終わる前に、レイはバレットを発射し、ハルオミの後ろに迫っていたザイゴートを沈黙させる。

 

「お、さんきゅ」

 

『中型種のアラガミが作戦エリアに侵入!!』

 

ヒバリの声を聞くと同時に、レイは駆け出した。

一番広い広間に飛び出すと、即座に状況を確認する。

コクーンメイデン4体、コンゴウが1体。

着地と同時に身を低くして突っ込み、それぞれに一撃ずつ、しかし重い一撃を御見舞し、振り返る。

 

「シエル!殺れ!」

 

追いついたシエルが、五体に止めをさした。

相変わらずの正確な射撃である。

 

(一瞬で三人のサポートを……!)

 

「回復柱、ここに置くから。使ってもいいぜ」

 

(じ、自分にはまだ回復錠も使ってないのに……っ!)

 

そして、レイはコウタの捜索を開始する。

戦闘能力も周辺把握能力の高さに、エリナは驚愕した。

自分とレイの実力の差を思い知らされてしまう。

 

「……なーるほど。戦い方まで似てやがんなぁ……あそこまで突貫したりしないけど……」

 

レイの戦い方をみて、ハルオミは苦笑した。

ギルが気にかけるのもよくわかる。

そんな風に見られているとはつゆ知らず、レイはしばらくキョロキョロしていたが、一点に向けて走り出し、近くの瓦礫をのかせ始め、ハルオミたちに手を振りながら叫んだ。

 

「おい、見つけたぞ!」

 

ーーーー

 

「隊ちょ」

 

「隊長ぉーーーーッッッ!!!よくぞ無事でッ!!ああ、それこそ神の思し召し!!しかし僕は信じていた……!!いや、わかっていた!!心優しき戦士の剣は!!闇の眷属どもなどに決して折られることはないと!!」

 

「うるさいっ!!」

 

「やかましいっ!病室で騒ぐな!」

 

「あー、今帰ってきたって実感したわ……」

 

病室で騒ぐエミールを、エリナとレイは同時に怒鳴った。

それを見て、コウタは苦笑する。

 

「救援ありがとな。あのまま喰われちまうかと思ったぜ……見慣れないアラガミが襲いかかってきてさ。撤退しようとしたんだけど負傷しちゃって。隠れてやりすごしたと思ったら今度はアラガミに囲まれてるんだもんなぁ」

 

「こっちこそ、遅くなってすんません」

 

「でも本当にそのアラガミ肩に神機なんか刺さってたんですか?」

 

「ほんとだって!それにしても、ハルオミさんのあんな顔初めて見たよ。エイジスでの状況を話したら急に表情が険しくなってさ。あの「赤いカリギュラ」のこと何か知ってるのかな……」

 

「え……?」

 

レイはハッとしてコウタの顔を見た。

 

「え、なに?」

 

「……肩に、神機……?……赤い、カリギュラ……まさか」

 

今、コウタは確かにそういった。

肩に神機の刺さった赤いカリギュラ。

そして、コウタはそれをハルオミに伝えている。

ということは、ギルにも伝わっている筈だ。

 

「すんません、失礼します!」

 

レイは、病室を飛び出した。

 

ーーーー

 

事のあらましをハルオミから聞いたギルは、1人部屋で覚悟を決める。

立ち上がって、部屋を後にした。

 

「神機が刺さった……赤いアラガミ……ついに見つけた……今度こそ逃がしはしない」




ルフス・カリギュラ編、言うなれば中編と言ったところでしょうか。
いやぁ、難しい。
そして、今回長かった。
7000字オーバー。
中々大変でした。
上手く書けてたらいいなぁ。
そう思う今日このごろです。
さてさて、今回レイ君のまさかの凶行。
これはですね、あれですよ、やらしたかった。
ほら、プロモーションアニメに合ったじゃないですか、ツバキさん、リンドウさん、ソーマさんがヘリから飛び降りて戦うシーン。
あそこかっこよくて私すごく好きでして。
ぜひやらしたいなと。
レイ君が気に入ってくれて何より。
次あたりでルフス・カリギュラ編は終わらせるつもりです。
ああ、次も長くなりそう……。
感想、お待ちしています。

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