GOD EATER 2 RB 〜荒ぶる神と人の意志〜 作:霧斗雨
リッカさん登場。
あの後、サツキがユノを呼びに来て、レイはそれについて行った。
と言うのも、サツキがレイもついてくるように言ったのである。
どうやら、歓迎会の準備ができたらしい。
大型のラウンジに入ると、沢山のゴッドイーター達がいた。
既にナナは用意されたご馳走に、目を輝かせながら食らいついているし、ジュリウスとシエルは積もる話でもあるのか談笑をしている。
ギルは、部屋の隅で1人静かにスコッチを飲んでいる。
とにかく、フライアなど比べ物にならない人数が、このラウンジに集まっていた。
何せ、フライアにはレイたちと職員くらいしかおらず、はっきり言ってしまえば、人が居ないのである。
「うお……久々の大人数」
「最前線だからね。人も多いみたい」
久しぶりの大人数に驚くレイに、ユノは笑いながら言った。
一体何がそんなに面白いのか、レイにはさっぱりわからないが、本人が楽しんでいるならそれでいいだろう。
よほど間抜けな顔をしたのかもしれない。
ジュリウスとシエルの横まで移動すると、ユノがレイに質問を始めた。
「レイさんは、フライアから来たんだよね?」
「ん、ああ。と言っても、俺は極東出身で、最近フライアに行ったんだけどな」
「そうだったんだ。じゃあ、里帰りだね」
「んー、厳密に言えば、壁の外の出身だから、ここにいても里帰りにはならねぇよ。仕事だ、仕事」
ユノの言葉に、レイは苦笑を浮かべながら返した。
帰る故郷など、もう無くなってしまった。
今はもうアラガミの巣窟で、しようものなら任務のついでにチラッと見る程度になるだろうし、なんの面白みも懐かしさもない。
そもそもしたくても出来ないのである。
「おー!すげー!極東って、こんなたくさん人がいるんだー!」
「おお、ここは同じ反応」
遅れてやってきたロミオが、嬉しそうに言った。
弾けるような笑顔が、とても眩しく見える。
「あー、あー、てす、てす……うっし、オッケー!はいっ、皆さんご注目〜!」
突然、コウタの声が響き、全員が注目した。
「本日は足元のお悪い中、極東支部にお越しくださいまして誠にありがとうございます!まずはブラッドの皆さん!改めて、ようこそ極東支部へ!」
ぱちぱち、と拍手が聞こえる。
こういうのが苦手なレイは、仏頂面になりそうになるのを我慢し、肩をすくめてみせた。
「これから一緒に戦う仲間として、ジュリウスさん!何か一言ご挨拶いただきたいと思う次第です!」
ジュリウスが、えっ、という顔をしながらレイの方を見た。
こんなジュリウスの表情は見たことがない。
吹き出しそうになるのをこらえながら、レイが1度頷いて見せると、ジュリウスは仕方が無いというようにマイクの前に立った。
「ご紹介にあずかりました、極致化技術開発局所属ブラッド隊長、ジュリウス・ヴィスコンティです。極東支部を守り抜いてきた先輩方に恥じぬよう、懸命に任務を務めさせていただきます。ご指導、ご鞭撻のほど……何卒よろしくお願いいたします」
「あいつすげぇな」
レイは思わず呟いた。
用意もなく、何故あんなスピーチができるのか。
「すごーい、隊長っぽーい……コウタ先輩も見習ってほしいなー」
「エリナ、うるさいよ!はぁいっ、ジュリウスさん、ありがとうございました!」
エリナの一言に即座にツッコミ、コウタはジュリウスを開放した。
そして、ユノの方を見る。
「えー、続きましてー!ユノさん、お帰りなさい!どうぞ、ユノさんも何か一言!」
「え?」
ユノもレイの方を見る。
何故こっちを見るのかわからず、レイは少々疑問に思いつつも、ユノに拍手を送る。
早く行け、との催促の意味も込めて。
「あ、その……ありがとうございます。こんなに歓迎してくれて、嬉しいです……」
マイクの前にたったユノは、さっきのジュリウスとは打って変わって、おどおどと礼を述べた。
しかし、言葉が見つからないのかすぐに黙ってしまう。
普通はそうだろう、さっきのジュリウスが凄いのだ。
「えっと……あの……すみません、こういう挨拶は慣れてないので……もし、よかったら……歓迎会のお礼に……」
「はーいっ!ごめんねー!ぶっちゃけ、それ待ってた〜!実は、すでにマイクは準備してあるんだー!」
ユノが全て言い切る前に、コウタが割って入る。
コウタの指す方を見ると、ピアノとマイクが用意してあった。
「それでは皆様、お待ちかね!極東の歌姫!葦原ユノさんのソロ・コンサートです!はりきって、どうぞ〜!!」
ユノは少し恥ずかしそうにしながら、ピアノの前に座ると、一つ深呼吸をした。
ゆっくりと鍵盤の上に手を置き、曲を奏で始める。
♪〜♪♪ ♪〜♪♪
初めて聞くその歌に、レイは耳を奪われる。
ロミオが騒ぐ理由もわかる気がする。
綺麗な歌だった。
優しいメロディに、ユノの声がよく響き、凄いとしか言いようがない。
よく音楽を聴くのだが、この手の音楽に触れることはあまり無いので、すこし後悔した。
♪♪♪♪〜♪♪♪〜♪♪♪〜♪♪
ユノが歌い終わるまで、ラウンジにいる誰もが喋らず、その声に耳を傾けた。
終わると、ユノは立ち上がり、全員に向かって礼をする。
「……ありがとうございました!」
わっ、と拍手が巻き起こる。
ロミオなど、涙を流しながら盛大に拍手をしていた。
それほど、嬉しかったに違いない。
「ユノさん、ありがとうございました!そして、皆さん!これから極東支部、一丸となって仲良くやっていきましょう!以上、歓迎会を終わらせていただきます!ありがとうございましたぁっ!」
ーーーー
歓迎会のあと、レイは極東の人に色々なことを聞かれた。
まあ、どこ出身かとか、ゴッドイーターに何故なったかとか、ありきたりなものばかりだったのだが、あまりの量に思わず逃げ出した。
追いかけては来なかったので、ホッとしながらロビーをフラフラしていると、フライアでブレードはどうだとか神機について詳しく教えてくれたダミアンがいた。
最近話さないなと思い声をかけてみたところ、ダミアンはどうやら最新技術のリンクサポートデバイスにご執心のようだった。
フライアでしてくれたように、今度はリンクサポートデバイスとやらについて熱心に語ってくれた。
曰く、欲しいならリッカと呼ばれる女を口説けばいいらしい。
何故口説くのかを疑問に思いながらも、ひとまず言われた通りにリッカを探す。
案外すぐ見つかったのだけれども。
リッカは、銀髪をポニーテールにしてゴーグルを装着、作業着のようなものを着込んでおり、顔には油汚れがついていた。
「やあ。君は、ブラッドの人だね?」
「ああ。俺は朽流部レイ。えーと、アンタは」
「楠リッカだよ。リッカでいいよ、よろしく。で、どうしたの?」
「じゃあ俺はレイでいいや、よろしくリッカ。ええとだな、あんたを口説けばリンクサポートデバイスだとかいうやつがもらえると聞いてさ」
「あはは!ダミアンに聞いてきたんだ」
リッカは思わず吹き出した。
レイは苦笑を浮かべる。
「それじゃあ、あとでリンクサポートデバイスの試作品をあげる。でも、いくつか守って欲しいことがあるんだ」
とくに口説く事なく、リッカはリンクサポートデバイスをくれる約束をしてくれた。
おいこら、誰だ余計な事言ってきた奴は。
「試作品ということは、まだ試作段階だから動作の保証はなし……これは覚えておいて」
「成程」
「それと、試作品の開発に協力して欲しいんだ。実験およびデータの提出、それに、必要な素材の確保とかさ」
つまり、試作品のデータを取るために動けということらしい。
「つまり、俺にモルモットになれと」
「人聞き悪いなぁ……君で実験するわけじゃないから大丈夫だよ。今のところ……」
最後の言葉を聞き、レイは一層不安になる。
レイに聞こえないように小さな声で言ったようだが、生憎、レイの聴覚は全てをとらえていた。
何が大丈夫だ、する気満々じゃないか。
「おいこら、最後のところ、バッチリ聞こえてるからな」
「あはは。じゃあ、説明するよ。今回、君に試してほしいのは新しいタイプのリンクサポートデバイス……。いま運用されてるリンクサポートデバイスは、神機の機能とは排他関係にあるから、戦闘か、支援かのどっちかしかできないんだ。でも、君に渡す試作品は、普通の神機としての機能を殺さずにリンクサポートデバイスの機能を発揮できる!って、理屈としてはスグレモノなんだけどね……」
「ほぉ、そりゃ凄い。期待させてもらうぜ」
「急ぎじゃないから、いつでも大丈夫だよ。都合がいい時に、また声かけて」
そうリッカが言ったので、レイは今すぐに行くと提案した。
これを聞いて、リッカはキョトンとした後、腹を抱えて笑った。
ーーーー
結局、シエルからバレットの件で呼び出しがかかり、リッカとのリンクサポートデバイスの実験は暫しおあずけとなった。
シエルからの要件を済ませたあと、レイはリッカの元へ戻り、検証実験へと向かった。
急がなくてもいいと言われていたが、なんとなく気になっていたのである。
黎明の亡都にやってきたレイの無線機に、リッカの声が響いた。
『リッカだよ、聞こえる?神機は使えてるみたいだね。ちょっと説明するけど、そのまま聞き流して』
聞き流せとはまたそれは難しいことを言う。
そう思い、レイは苦笑した。
『いま、君の神機にはリンクサポートデバイスの試作ユニットがついてる。それは神機とは無関係に作動して、体内のオラクルを活性化させて……簡単に言うと、君自身が「攻撃力が高い状態」になってる』
「ほう。確認出来てるか?」
『……うん、ちゃんと機能してるんだ。神機も、リンクサポートデバイスも、両方ともね!私はモニターしてるから、このまま戦ってみて。面白いことになりそうだよ……!』
「ノリノリだな」
ブン、と神機を振り、レイは眼下にいるシユウを睨む。
そのまま、地面を蹴ってシユウに飛びかかる。
シユウの両手羽を切り裂き、顔面にブレードを叩き込む。
振り下ろされる手刀を身をひねって避け、力任せに下半身に向けて振り下ろし、手首を返して切り上げる。
更にもう一発切り下ろすと、そこからライジングエッジに繋げ、シユウの頭部を切る。
普段通りの動きが、やりやすい。
神機が軽く感じ、ダメージもしっかり与えられているようだ。
「セイッ!」
ブラッドアーツ、ダンシングザッパーを繰り出し、シユウの頭部と両手羽を粉砕した。
「ガアアアアッ!」
「そんななりで威嚇されてもねぇ。とっとと終わりにしたいんだよ、俺はっ!」
思い切り踏み込み、一気にシユウの懐に飛び込む。
そして、シユウの胸部をコア諸共捕食した。
ーーーー
「おかえり!まさか、本当に機能するとは思わなかったよ」
「ただいま。って、動かねぇモンだったのかよ」
レイは思わず突っ込んだ。
そんな不良品を渡されているとは思っていなかった。
試作品と言っていたので、何かしらの欠陥はあるかもしれないと覚悟はしていたが、まさかそもそも動かないものだったとは。
「実はそうなんだ。他の人に試してもらってダメだったから、失敗作かなって、あきらめかけてたんだけど……不思議だね」
そう言って、リッカは微笑んだ。
「でさ、先に帰ってから君のこと、少し調べさせてもらったよ。君はブラッドで、中でも「喚起」能力を持ってて、それが何か……触媒になった、と大雑把に仮定してみた」
「おい待てこれもか。さっきから思ってたんだけどな、俺の喚起能力ってマジでなんなの……?」
人だけではなく、機械にまで影響するのか。
この前行ったのと、ついさっき行ったシエルのバレットエディットの研究の際も、この喚起能力は神機に影響してブラッドバレットなるものを作ってしまっているのだ。
新しいものができてそれが役に立つ分にはいい。
だが、何でもかんでも干渉しすぎでは無かろうか。
そんなことを考えるレイを、リッカは笑った。
「あはは、いいじゃない。で、そうなると今後は、君が使うときだけ機能する原因を調べながらリンクサポートデバイスを改良していきたいんだ。さしあたって、素材を集めてもらったりお願いすることになるけど……いい?」
くい、とリッカが小首をかしげる。
はは、とレイは笑った。
「何を今更。乗りかかった船だしな。やってやるよ」
「助かるよ。おかげで、可能性が見えた。んんー、やる気出てきたなー!」
リッカが嬉しそうに言った。
レイの手をつかみ、目を輝かせる。
「次に向けてプランを錬るからさ。しばらくしたら、また声かけてほしいな!」
主人公がリンクサポートデバイスを使えるようになった!
というテロップがでるのではないでしょうか、という物語でした。
ユノさんが歌ってくれました。
ロミオ良かったね。
※ユノの歌は歌詞を削除しました。
教えてくださいました方、ありがとうございます。
感想、お待ちしています。