悟飯in川神学園   作:史上最弱の弟子

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今回は割りと早く投稿できました。
マヤリト大陸編と言いつつ、足を踏み入れるのは次回からになります。
次回からはマヤリト大陸入りです。


旅立ち

 期末テストの結果、悟飯は学年首位を無事にキープ。続いて2位は葵冬馬、ここまでは何時も通りである。しかしそれに継ぐ3位、ここで異変があった。ここ悟飯が転校してきて以来、九鬼英雄の定位置となっていたこの場所に直江大和の名前があったのである。

 

「おめでとう大和君」

 

「大和凄い、結婚して。凄くなくても別にいいから結婚して」

 

 友人の急上昇に悟飯が賞賛の言葉を送り、京が何時もどおりの言葉を送る。

 

「お友達で」

 

 まずは京を軽くかわし、悟飯の方を向いて言う大和。

 

「まあ、今回はこんなもんだけど、次こそはお前を……」

 

「うん、でも、僕だって簡単に負けないよ」

 

 真剣な表情で言う大和に悟飯も笑顔のまま真剣に答える。

 

「よっ、弟。おめでとうと言うべきか? それとも残念だったと言うべきか?」

 

「まあ、今回としては上出来だったと思うよ。何事も行き成り成果を期待するなんて調子良すぎるだろ?」

 

 百代の言葉に対し、負け惜しみでは無く、本心からの気持ちとして伝える。

 打倒悟飯を掲げたものの、急にやる気をだした人間が行き成り学年トップに立てると思える程、彼は甘い考え方をしていない。過程で負けても最後に笑えば勝者と言うのが戦略を睨む者の考え方。大和に取っての本気の勝負の舞台は3年になってからともう一つ別の機会だった。

 

「まあ、確かにな。しかしお互い大変な奴を目標にしちゃったもんだ。まっ、目指し甲斐はあるが」

 

「ははっ、そうだな」

 

 苦笑する百代に、大和も苦笑で返す。1位である悟飯の5教科の合計点数はこう書かれていた。『500点』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、大変なことになっちゃたね。よりにもよってこの時期に」

 

「まあ、俺が自分の勉強に集中して皆の面倒を見れなかったのもあるけど、これは確かにまずいな」

 

「うっ」

 

「すまない。自分は情けない」

 

 溜息を吐くモロに対し、フォローなのかとどめなのか分からない言葉を放つ大和。

 それに対し気まずそうな声を漏らす二人。それは岳人とクリスだった。風間ファミリーのメンバーはそのほとんどが2-Fに在籍する。F組と言うのは型に嵌らない特殊な生徒を纏める意味合いもあるが、原則的は学業面において、劣等生の入れられるクラスである。

 つまり風間ファミリーには成績の悪い生徒が多いと言うことだ。これまでは、大和を初めとした学力優秀なメンバーが彼等をフォローすることで、最低限の点数は確保していたのだ。ところが今回のテストは大和が自分の勉強に集中したため、岳人とクリスがは赤点を取ってしまったのである。赤点の数はクリスは1教科、岳人は3教科である。

クリスは不得意科目にケアレスミスを多く重ねてしまったこと、岳人は旅行のためにバイト等を入れてしまったり、旅行が楽しみで集中力が欠けてしまったことも赤点の原因であった。

 ちなみに川神姉妹も普段はあまり点数がよくないのだが、今回は二人揃ってそこそこいい成績を取っていた。

 

「一子さんは今回、良かったんですよね?」

 

「うん、悟飯君に教えてもらったの。教え方凄く上手かったわ」

 

「モモ先輩はあのヒュームとか言う爺さんに絞られたんだよな」

 

「ああ、きつかったが、赤点を取ったりしたら修行をつけてもらえないからな」

 

「二人だけなのはまだマシ。でも本当にどうするの? これじゃあ、マヤリト大陸行けないよ?」

 

 赤点を取ってしまうと冬休みに補習が課せられる。しかし冬休み期間中は丸々マヤリト大陸に行く予定である。期間が重なることになるが、流石にさぼるのはまずい。それをした場合、最悪は留年の恐れすらある。

 

「くそー、金髪美女との出会いがー!!」

 

「岳人、そんなこと言ってる場合じゃあ。後、マヤリト大陸はそんなに金髪の人は多く無いみたいだよ」

 

「まったく、弟~。なんとかしてやれよ~。居残りが居るじゃあ、思いっきり楽しめないじゃないか」

 

 仲間内や家族内の旅行の時、参加できない人が居ると言うのは微妙な後ろめたさを感じるもので、旅行のテンションは確実に下がる。そうでなくても、メンバー内で仲間外れをつくるようなことはしたくない。何とか状況を回避したいと大和に無茶振りをする百代。

 その無茶振りに対し、大和は溜息をついて答えた。

 

「わかった。なんとか先生に交渉してみるよ」

 

「おおー! 頼むぜ大和!!」

 

「すまん! 頼む大和!」

 

 最後の希望にすがりつく岳人とクリス。

 

「ああ」

 

 そして結果から言うと、教師と交渉した大和は見事に補習免除を勝ち取った。

 補習に出られない理由が単なる海外旅行であれば難しかったであろうが、マヤリト大陸は一般人は滅多に行くことができない場所である。貴重な経験であること、今回の大会は友好を掲げたイベントであることなどから、いい人生勉強と認められたのであった。

 ただし何もペナルティが無しでは他の補講生徒に対し不公平であるとはため、代わりに課題をすることが補講を免除する条件となった。

 

「そう言う訳で問題は無くなった」

 

「よっしゃあー!!!」

 

「ありがとう、大和!」

 

 叫ぶ岳人とクリス。そこで二人に課題の内容を告げる。

 

「それで課題の内容だけど感想文だそうだ。マヤリト大陸での経験したことの感想を書けってさ。クリスは原稿用紙3枚以上。岳人は倍の6枚以上な。後、SNSとかのコピーも無しって釘さされてるから」

 

「うげっ」

 

 めんどくさい課題に呻く岳人。

 とは言え、これで予定のメンバーは全員そろってマヤリト大陸に行けることになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 2学期の終了式を終えた21日、悟飯と風間ファミリーに加え、源忠勝、燕、清楚、九鬼兄妹、義経、弁慶、与一、従者部隊数名と言った大会参加選手と応援メンバー、大会運営メンバー、それに護衛をあわせたちょっとした大所帯、約20名のメンバーが成田国際空港に集まっていた。

 

「うーん、大和との新婚旅行、素敵」

 

「新婚旅行じゃないだろ。てか、こんな大勢で新婚旅行とかないだろう!」

 

「大勢じゃなければいいの? じゃあ、今度は二人っきりで」

 

「お友達で」

 

 平常な運転な京と大和の兼ね合い。ところがそこで珍しい人物が口を挟む。

 

「大和君もいい加減、観念したらいいのに。僕は色恋とかあまりよくわからないけど、大和君と京さんはお似合いだと思うよ」

 

「おっ、珍しくいいこと言うね」

 

「おい、悟飯、余計なこと言うな」

 

 食いつく京と焦る大和。それに対して快活に笑う悟飯。それを少し離れた所に居た一子が見てぽつりと呟く。

 

「悟飯君、私達以外とも大分打ち解けたわよね」

 

「そうだな。京達の方が前ほど排他的じゃないのもあるが」

 

 微笑ましそうな表情で頷く百代。そんな和やかなやり取りをしばし繰り広げた後、大和が気になっていたことを集団を引率する九鬼に尋ねた。

 

「そう言えば九鬼、この時間にマヤリト大陸行きの航空機って無いよな? どうするんだ? チケットとかも貰ってないし」

 

 伝えられた日時に対し、下調べをした結果見つかった疑問。それに対し九鬼は答える。

 

「うむ、今回の遠征では九鬼家のプライベートジェットを用意してある」

 

「すげぇー、プライベートジェット!?」

 

「流石はお金持ちだねえ」

 

 通常、庶民には一生縁の無い乗り物である。食いつき、目を輝かせる学生達。

 

「うむ、参加者の安全を考えてのことでもある。マヤリト大陸との交流はただでさえ、様々な問題を抱えている上、最近は物騒な輩も居るからな」

 

 マヤリト大陸と外の世界は人種の問題から長い期間隔絶されていた。その間に、マヤリト大陸で独自に発達した科学技術を盗もうとする産業スパイは多い。勿論、逆のケースも存在する。

 そして元々の問題であった人種についても、大きな問題が起こっていた。

 

「そういえば、過激派集団のニュースが最近話題になってたな」

 

 クリスが口にしたのは国際的にも大きな宗教、その中でも”行き過ぎた”信仰の持ち主を中心としたテロ組織である。その宗教の教えでは人間は神に作られた特別な生物であり、その教えからすればマヤリト大陸の獣人と言うのは神の意思に反した生き物だと言うことになる。鎖国前には中世に起きたような魔女狩り的行動が横行したと言う歴史さえも存在している。

 

「まったく、とんでも無い奴らだよな」

 

 流石に現代ではそう言った過激な行動を取るものは少ない。少ないのだが、全く居ない訳では無い。個人単位の愚か者はどこにでも居るし、そう言った者達が集団になってしまうこともある。そうして誕生してしまったのが件の過激派集団である。

 それでも未だ、最初はまともな行動をしていたと言えるかもしれない。

 彼らの主張、それはマヤリト大陸の封鎖、つまりは開国を認めないと言うものであった。その主張を要約するとこうなる。『獣人を人間、自分達と対等の存在とは到底認められない。しかしだからと言って滅ぼすのは野蛮な考えである。マヤリト大陸と言う牢獄に閉じこもっているのなら、我等も神も慈悲を持って許すであろう』。更に要約すれば『目障りだけど目に付かない所に居る分には我慢できる』と言うものになる。

 勿論それでも十分に傲慢で言われた方からすれば憤慨ものであったであろうが、直接的な暴力行為に出ない分、未だ理性的なものであった。しかしここに来てタガが外れたような行動が目立ってきたのだ。

 

「困った人達よね」

 

「だな。宗教とか俺等日本人にはわからない感覚だよな」

 

「そう言えば、予選の時も変な奴らが暴れてたけど、関係あるの?」

 

 テロのような行為ということで、ガーリックJr達のことを思い出し、関連を疑う疑問。それについてメイドのあずみが猫かぶり状態で答える。

 

「あいつ等については背後を調査しましたが、如何なる組織とも繋がりは無く、大会でのあれは愉快犯的な行動だったようです。まったく、迷惑な奴らです」

 

「あの件では我等九鬼も警護が甘かったと反省し、本大会では警護を強化することとした。プライベートジェットを用いることもその一環と言う訳だ」

 

 九鬼が言葉を続ける。テロなどと言う話に若干不安そうな表情をする数名。それを見て義経が宣言する。

 

「心配するな!! 万一何かあった時は義経達が皆を守る」

 

「まあ、この中には私達より強い人も居るけどね」 

 

「それを言ってやるなよ姉御」

 

 弁慶の非情な突っ込みで情けない表情へ変わる義経。同情の言葉を放つ与一。しかしそれが皆の緊張をほぐす。

 

「まっ、私達ならテロ位余裕で撃退できるからな。世の中にはとんでも無い奴も居るから油断はできないが」

 

「ああ、ねえさんが居るし、それに……他のみんなも強いしな」

 

 百代と悟飯が居ればまあ、無敵だろうなと思う大和。

 

「うむ、それではそろそろ出発しよう。我について来るがよい」

 

 そこで九鬼が場を締め、先導されプライベートジェット機に移動する。

 そして、その後の道中は特に何事もなく、優雅な空の旅を満喫するのであった。


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