悟飯in川神学園   作:史上最弱の弟子

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悟飯の怒り

「ば、馬鹿な。これではまるで、神の奴と融合したピッコロのようではないか!?」

 

 悟飯のあまりに強大な気、嘗て勝利を諦め逃亡した相手にも匹敵すると感じられた力を目の前にして、ガーリックJrは思わず一歩後ずさった。

 通常であれば、後ろに下がれば相手との距離が広がる筈である。しかし現実はそれとは逆に、彼の直ぐ目の前に悟飯が迫っていた。

 

「はああ!!!」

 

 超スピードによって一瞬にして間合いをつめた悟飯。

 そして放たれた拳の一撃がガーリックJrの腹に突き刺さる。続いて顔面、脇腹。連続の拳が次々と叩きつけられていく。

 まさに滅多殴りの状態であった。

 

「てりゃあああああ!!!!!」

 

 そしてとどめとばかりに放たれた強力な蹴りを喰らい数十メートル吹っ飛び、壁に叩きつけられるガーリックJr。二人の実力差はあまりにも圧倒的であった。百代達の戦意を喪失させる程の力を見せた筈のガーリックJrは、より強大な力の持ち主を前にして弱者へと成り下がっていた。

 

「ぐっ……」

 

「降参しろ。もう、お前に勝ち目の無いことはわかっただろう」

 

 無駄な殺生や暴力を好まない悟飯はガーリックJrに降伏を勧める。何度も殴りつけたのも力の差を理解させ戦意を折るためと言うのが大きい。

 そしてこれについては悟飯は知らないことであるが、父であるガーリックはともかく、Jr自身はピッコロを恐れ、これと言って大きな悪事を行って来ていない。故にこの時ならば未だ更正の余地はあったかもしれない。

 しかし彼の魔族としてのプライドはそれを許さなかった。

 

「うおおおお!!」

 

 両手を突き出し気を集中させる。すると生み出された力の影響により周囲の空間が歪み、全てを吸い込む穴が生じた。

 

「はははははっ。一条の光も射さぬ異空間に送り込んでくれるわ!!」

 

 デッドゾーンと言う異空間へと相手を送り込む、より分かりやすく言うならば擬似的なブラックホールを作り出す奥義。

 自らの切り札と言える技を使用し、形成逆転とばかりに高笑いをあげるガーリックJr。

 しかしこの技を目にしても悟飯は慌てることなく平然と立ち余裕の表情を浮かべた。

 

「この程度の吸引力、僕には通用しないぞ」

 

 無駄であると言う宣言。デッドゾーンの吸引力も悟飯の圧倒的な力には適わなかったのだ。しかし今度はガーリックJrが余裕の表情を返した。力の差を見せられ、切り札も通用しないと言う絶望的な筈の宣言を聞いてもガーリックJrは揺るがなかったのだ。

 その理由は最初からこの技で悟飯を倒すことは出来ないと言うことを彼は理解して使ったことにあった。

 

「だろうな。だが、お前には通じなくても、他の者達はどうだ?」

 

「!!」

 

 その言葉にはっとして振り返る悟飯。この会場にはまだ百代達と避難しきれていない観客達がいるのだ。彼にとって直接的な脅威にならなくても、それはそれだけの話に過ぎない。

 

「うぐぐ」

 

 振り返った視線の先、そこで百代達は何とか抵抗し堪えていた。しかし他の観客達、そして避難誘導をしていた風間ファミリーの者達にそれは不可能である。勿論、彼等も手すりに掴まったりして彼等なりに何とか抵抗しようとはしていた。しかしデッドゾーンの力に堪えきれず手を離してしまったり、手すり自体が崩壊してしまい次々と吸いよせられていく。

 

「う、うおおおお」

 

「きゃああああ!!!」

 

「みんな!!」

 

 慌てて飛び、救助していく悟飯。観客の大半は既に退避済み、とは言え会場内にはまだかなり多くの人が残っていた。如何に彼とてその全てを助けることは出来ず、逃してしまった大勢の人が吸い込まれてしまう。

 

「くっ」

 

 悟飯はそれを歯噛みしながら、少しでも多くの人達を助けようと動く。そのため、彼の意思は完全にガーリックJrから外れてしまった。無防備になった彼に対し、しかも彼が救助のためデッドゾーンに近づいた瞬間を狙ってガーリックJrからの攻撃が放たれる。

 

「がああああ!!!」

 

 無防備な背中に強烈な一撃を受けてしまい、一瞬、力が緩んでしまう悟飯。この状況ではその一瞬が命取りであった。抵抗力を失ったその瞬間に、彼の身体はデッドゾーンの吸引力に吸い寄せられ、救助のために抱えていた人達ごと吸い込まれてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、ここは」

 

 悟飯が目を覚ますとそこは一切の光の無い暗闇の中であった。周囲には一般人サイズの気を多数感じるが他には何の気配も無く、音も存在しない。

 

「観客の人達は気を失ってるみたいだな。ここはあいつが産みだした空間の中か」

 

 観客達は意識を失ってはいるものの、気を感じることから死んでは居ない。流石に正確な数は分からないので全員かどうかは分からないが、少なくとも多数は無事のようだった。

 その事実に少しだけほっとする悟飯。

 そしてそこで悟飯の呟きに対し、反応する者が居た。

 

「その声、悟飯君?」

 

「この声は、一子さん!! よかった、一子さんも無事だったんですね。怪我とかは無いですか?」

 

 それは一子だった。彼女もデッドゾーンに吸い込まれており、ウルトラナメックマンの正体も知っていたので、変声した声からも彼の正体を見抜き、声をかけてきたのだ。

 

「うん、大丈夫。それからキャップ達もみんな無事よ」

 

 言われて気を探ると確かに一子の周辺に風間ファミリー全員の気を感じ取れた。

 

「そうかよかった」

 

 少なくとも知り合いの無事が確認でき、再び安堵する悟飯。彼と再会できたことに一子も喜びを露にする。しかし直ぐに不安そうな表情になった。

 

「けど、これからどうしたらいいのかしら」

 

「うむ、困ったな」

 

「正直、手詰まりだね」

 

 クリスと京の声。どうやら二人も意識があるようである。空間に吸い込まれた時、全身を揺さぶられるような強い衝撃があった。その衝撃で大半は気絶し、一定以上の実力を持った4人だけが耐えることができたのであった。

 

「ねえ、あなたは考えが何か無いの?」

 

 京が悟飯に問いかけてくる。

 真っ暗な異空間、出口等あるのか、あるとしても辿り付けるのか、希望を失っても仕方が無く、考え等思いつかないのが普通の状況である。しかし規格外の力を持つ悟飯ならばあるいはと思ったのか、京の問いかけに対し悟飯は考えこむように黙り、そして言った。

 

「試してみたいことがあります。皆さん、ちょっと離れて……、いや、僕の方が離れます」

 

「えっ、どうするの? 悟飯君」

 

「少し派手なことをします。周りの人を巻き込むといけないので」

 

 理由を告げると悟飯は暗闇の空間の中飛び上がり、少し飛行して吸い込まれた人達から距離を置いた。

 そして意識を集中し、気を高めていく。

 

(思い出すんだ。あの時の感じを)

 

 頭の中にイメージするのはセルとの戦いの時のこと。悟飯のやろうとしていること、それはその時にやったことを再現することだった。

 今の自分は技も力も子供時代を凌駕している。ならばできない筈は無い、そう信じ悟飯は力を高めていく。

 

「はあああああああああ!!!!!!」

 

 再びスーパーサイヤ人に変身し、気を限界にまで高める。この時点で一子達にはあまりに力の差が大きすぎてどの位凄いのかも漠然としか理解できない程の次元にあるが、今、必要なのはそれ以上の力。この空間を知り尽くしたガーリックJrならばこれ以下の力でも脱出が可能だが、その術を知らぬ悟飯にはその手は使えない。

 故に彼に取れる手段は一つだった。

 

「うわあああああ!!!!」

 

 すなわち、超サイヤ人の限界を超え、その超パワーでこの空間そのものを砕くことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はははっ、やったぞ!!私の勝ちだ」

 

「くっ」

 

 悟飯が吸い込まれた後、即座にデッドゾーンを閉じ、勝利宣言をするガーリックJr.

 

「やはり、最後には悪が勝つのだ。目の前の相手を見捨てられず失敗を犯すそれが奴等のような腐りきった正義の限界よ」

 

 逆転の勝利、その愉悦にひとしきり酔った後、ガーリックJrは百代達に目をやった。

 

「さてと、もう一度だけチャンスをやろう。お前達、この私に仕え魔族になるのならば命は助けてやろう。どうだ?」

 

「くっ、誰が貴様などに。ワン子や大和の仇だ!!」

 

 デッドゾーンに吸い込まれた中に風間ファミリーの仲間達の姿があったのを百代は見ていた。例え、適わずとも自分にとって最も大切な人達の命を奪った相手に従う程、彼女は腐ってはいない。

死ぬことになったとしてもせめて一矢報いてやると気を高める。

 

「こうなったら付き合うよモモちゃん」

 

「ああ、俺もだ」

 

「やるだけはやってみよう」

 

 無論、腐っていないのは燕、清楚、ヒュームも同じだ。彼女達も適わないことを承知で抵抗を選ぶ。そんな彼女達の覚悟を嘲笑うガーリックJr。

 

「ふっ、愚かな。ならば死ねぇぇ!!」

 

 百代達の命を奪おうと手を突き出す。その瞬間、彼の背後で空間が爆発した。

 

「なっ!?」

 

 突然の異常事態に全員の視線が爆発の起こった方へと行く。そこには虚空に巨大な穴が生まれており、そしてその穴から大量の何かが落下する。

 

「!!」

 

 あまりの自体に呆然としてしまう百代達であったが、その落下物の正体が吸い込まれた人達であることに直ぐに気づく。

 そしてその下を飛行するものの姿に。

 

「悟飯!!」

 

 悟飯は地面に着地すると楕円系にバリアーを展開にした。

 そしてその上に観客達が落下。するとバリアーはまるでクッションのように優しく観客達を受け止めた。平行世界において、ゴテンクスと言う戦士はブウとの戦いで気で作ったボールの中に敵を閉じ込めたことがある。そうボールである。ゴテンクスはその後、そのボールを使いバレーをした、つまりそのボールは弾力を持っていたと言うことになる。気のコントロール次第では気で作った代物にそのような性質を持たせることも不可能では無く、日本に来て色々な気の使い方を目にした悟飯はこのような小技を実現する想像力を身につけていたのであった。

 

「よし、上手くいった」

 

 後はバリアーを変形させて、観客達を地面に降ろすだけである。しかしそれをガーリックJrが黙って見ていてくれる筈も無い。観客達と言う足手まといが解放される前に何とかしようと悟飯に攻撃しをしかけようとする。

 

「させないわ!!」

 

「てい」

 

 しかしそれに気づいた一子がバリアーの上から薙刀を投げつけ、京が指弾を撃ち込む。勿論、ガーリックJrからすればその程度の攻撃なんとも無いが、それでも集中を逸らす位のことはできる。

 

「ぐっ」

 

 弾丸を多数持つ京はぴしぴしと攻撃を続け、続いてクリスもレイピアを投げる。一子は気を集中するとかわかみ波を放つ。

 降り注ぐ攻撃の嵐。

 そしてそこで更に、バリアーに落ちた衝撃で目を覚ました男達も加わる。

 

「何か目を覚ましたらワン子達が攻撃してるぞ」

 

「ああ、状況は良く理解できないが、取り合えず俺達も攻撃しよう。丁度、石みたいのが転がってしるな」

 

「砕けた会場の欠片とかだね」

 

「よっしゃあ、投げてやれええ!!」

 

 風間の掛け声に答え、力自慢の岳人が大きめの岩を他の男達もそれぞれ自分達に投げられるサイズの石を掴み投げつける。

 

「よくわかんねえけど、あたし等あいつの所為で酷い目にあったみたいだしぃ」

 

「私等も投げちゃえ」

 

 そしてその行動も見て、観客達も加わり始める。集団心理も合って恐怖心も理性によるブレーキも鈍り、どんどん石を投げる者が増えていく。

 無数の石をぶつけられ、額に青筋を浮かばせるガーリックJr。

 

「き、きさまらあああ」

 

 その仕打ちに切れて飛びかかろうとするガーリックJr。しかし、そこで彼の背中が爆発した。

 

「ぐはっ」

 

 予想外の不意打ちに落下するガーリックJr。爆発の正体は百代とヒュームの気功波であった。まるで、先程の悟飯をなぞるように今度は自分が攻撃を受けてしまったのだ。

 

「くっ、どいつもこいつも、この私を本気で怒らせたいようだな」

 

 ダメージはほとんど無いものの、自身への度重なる攻撃に怒りを高めるガーリックJr。しかし、そこでその怒りを一瞬にして沈静させる声が放たれた。

 

「怒っているのは僕の方だ」

 

「しまっ!!」

 

 その声の主は観客達を地面に降ろし終わった悟飯であった。その声には観客達を巻き込んだガーリックJrに対する怒りが滲み出ている。

 

「くっ!!」

 

 苦し紛れに破られたデッドゾーンを再度展開しようとするガーリックJr。しかし、それが許される筈も無い。

 

「がっ……」

 

 ガーリックJrが技を放つよりも早く、手加減を大幅に緩めた悟飯の強烈な一撃を受けた彼はその意識を手放し、その場に崩れ落ちるのであった。




今回の悟飯の技、ちょっとDBぽくなかったですかね?(今更、そんな細かいとこ気にしてどうすると言われそうですが)
けど、真剣恋とのクロスなら悟飯がこういう技を開発するのもありじゃないかと思うんですが、どうでしょうか?

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