「うおおおおお!!!!!」
百代達の勝利に歓声が沸く。この戦いを日本代表VSマヤリト大陸代表のエキシビジョンマッチ程度にしか思っていない観客達は気楽に盛り上がっいた。
しかし、そんな彼等に冷や水を浴びせかけるような反応が起こった。
『会場の皆様にお知らせです。会場内に爆発物を仕掛けたという脅迫の電話が入りました。現在、調査中ですが、念のため係員の指示に従い、避難をお願いします』
「えっ、ちょっと大丈夫なの!?」
「まじぃ~、やばいんじゃね~」
「はわ、す、直ぐに避難しないと」
その言葉に騒然となる観客達。先程のガーリックJrの宣言の時とは大違いの反応である。
危険性、脅威の度合いであれば、実際はガーリックJrの方が単なる爆発物よりも遥かに危険である。あるのだが、観客達にはそれが伝わっていなかった。平和ボケした日本人にとって、自国内で犯罪者による巨大施設占拠が起きると言うのは現実感の伴わない出来事であったのに対し、爆発物程度は逆にリアリティが感じられる出来事であったのだ。
更に理由を付け加えるならガーリックJrの台詞がいささか芝居がかったようなものであったこと、川神市の住人は規格外の力を持つ武術家に対し、感覚が麻痺しているのか危機感を感じていないと言うのもある。
そんな訳でようやく危機感から避難を開始する観客達。それを見てガッツポーズを取るものがいた。
「よし、上手く行った!!」
「うむ、見事だ」
その人物とは大和であった。となりには九鬼揚羽の姿もある。実はこの爆弾騒動は彼が考えた策で、虚言であった。実際には爆発物も脅迫声明も存在せず、観客達を避難させるための方便であった。その策を提案された揚羽が、ガーリックJrの危険性をきちんと理解していたため賛同し、協力をし、嘘のアナウンスを流したと言う訳である。
そして他の風間ファミリーのメンバーは協力を申し出て、九鬼のスタッフ達と共に避難誘導を行っていた。
「よし、皆が逃げるまで時間を稼ぐぞ」
「時間を稼ぐのはいいが。別にあいつを倒してしまっても構わんのだろう?」
「清楚ちゃん、それ死亡フラグ」
状況の変化を知った百代達3人は観客達の安全を確保するため、ガーリックJrを前方から囲いこむようにして分散し、構えを取った。
「相手はさっきの奴等のボスだ。間違いなく手強いぞ」
「んじゃ、三人同時に行っちゃう?」
「ふん、いいだろう」
そして3人は意思を統一し、タイミングを合わせ同時に必殺技を放った。
「川神流、星砕き!!」
【フィニッシュ】
「覇王咆哮拳!!」
気の砲撃2発と黒いエネルギー砲が同時に放たれ、ガーリックJrを飲み込む。一撃、一撃が強力な攻撃を同時3発である。仮に倒せなかったとしても、最低でも大ダメージを受けた姿、百代達はそれを想像する。しかし、爆煙が晴れた時、そこには無傷のガーリックJrが立っていた。
「くくくっ、何かしたかね?」
「なっ!!」
その異常に気づき、思わず足を止めた観客達もいたが、直ぐに誘導され避難に戻る。
一方、百代達は緊張の姿勢のまま、ガーリックJrに対し向かい合い続ける。
「っと、まあ、馬鹿にするようなことを言ってしまったが中々大した威力だったよ。魔凶星で強化されたこの私の部下達を破っただけのことはある。お前達ならば優秀な魔族となるだろう。どうだ、無駄な抵抗はやめ、私に仕えないか?」
「はっ、誰がお前の言う事なんか聞くか」
百代達を勧誘するガーリックJr。それを拒否する百代。とはいえ、内心では余裕が無い。
(まさか今の攻撃が通じないなんてな。こいつも化け物か!?)
悟飯、クリリン、ヒューム。自分よりも遥か上の領域の存在にまた一人新たな者が加わったと感じる百代。自分一人ではどうあがいても勝ち目が無いことを悟る。しかしそれでも3対1ならば少しは勝機があるかもしれないと考えていた。仮に勝ち目が無いにしても時間稼ぎ位はできる。そうすれば悟飯やヒュームも救援に来るだろうと戦意を振るわせた。
「そうか。ならば見るがいい、この私の力を」
しかしそんな気持ちをへし折る圧倒的な絶望が訪れる。ガーリックJrが巨大化したのだ。
そしてその見た目の変化など、気の変化に比べればまるで些細なことであった。その気が桁違いのレベルにまで膨れ上がったのだ。
「なっ」
「嘘……」
呆然とする3人。観客達の大半はその変化に気づかずそのまま退避を続けている。しかし、気を感じることの出来る達は百代達と同様に驚愕していた。それ程にガーリックJrの気は凄まじかったのだ。それは少し前に彼等の常識を覆したヒュームすらちっぽけに感じるレベル、嘗て宇宙の帝王と呼ばれたフリーザの第3形態すらも超える程であった。
「ははっ、流石にこれはふざけ過ぎだぞ……」
3対1なら勝てるとかそういう次元では無い。嘗てフリーザの気を始めて感じた時にテンシンハンやヤムチャがそうであったように、あまりに大きな絶望的な力の差に心が折れかけ、膝をつきそうになる。
「待った!!」
だが、そんな彼女達を救うようにその場に現れた者が居た。まるで絶望の中、現れる救世主、ヒーローのようである
「それ以上の非道な行為は。このグレート……じゃなかった。ウルトラナメックマンが許さないぞ!!」
それは怪しいコスチュームを着た少年。ウルトラナメックマンであった。しかしそんな救いの手に対し、百代が叫ぶ。
「悟飯!? 無理だ幾らお前でも」
「大丈夫ですよ百代さん。僕に任せてください」
悟飯でもガーリックJrには勝てない。そう考える百代に対し、優しく落ち着かせるように言う悟飯。そんな彼に対し、彼の後ろからついてきたヒュームが突っ込みを入れた。
「孫悟飯、普通に会話してしまっているが、お前は本当に正体を隠す気があるのか?」
「あっ、しっ、しまった!!」
既に一子には正体を明かしてしまったし、百代だけならば後で伝える気であったが、ここには燕と清楚も居るのである。慌てて二人に向かう悟飯。
「燕さん、清楚さん、あの僕の正体については黙っていてください」
必死に頼み込む悟飯に思わず目の前の危機も忘れ苦笑いする燕。
「ははっ、事情はわからないけど、了解。私も友達は出来る限り売りたくないからね」
「なんだか分からんが、約束してやろう」
そしてそのコントのようなやり取りに不快感を覚える者がいた。放っておかれたガーリックJrである。
「おい、何時までこの私を無視している」
「あっと、そうだ。よーし、ここからは私が相手だ。覚悟しろー」
仕切り直しとばかりにヒーロー演技に戻る悟飯。再び制止しようとする百代に対し、ヒュームが彼女の肩を掴んだ。
「心配いらん。あの男に勝てる者などこの世には居ないだろう。この世には……な。この俺も驚いた。まさか、あの歳で父親と同じ領域に辿り着いているとはな」
「父親と同じ領域?」
ヒュームが嘗て悟空と出会った時、その力の真髄を一度だけ見せてもらったことがある。
そしてその瞬間に彼は悟った。その領域には自分では辿り着けないと。
「百代、世界と言うのは貴様が思っているよりも遥かに広い。お前はマヤリト大陸を知ることで世界の広さを知ったつもりだろうが、更に上の更に広い世界があるのだ。奴の父親はそこで頂点を極めた」
世界の広さを語るヒューム。
そして彼は語る。第7宇宙の頂点を極めた男の話を。その男と出会い自分が抱いた想いを。
「お前が今から見るものを追いかけるのは或いは不可能なことなのかもしれん。だが、折れるなよ。追いかけるつもりがあるのならば俺が積み重ねたものは全てお前にくれてやろう。そうすれば、少なくともこの俺の先には行けるだろう」
年齢的に今のヒュームは限界にまで達している。悟空に合うのがもう少し速ければもっと先に行けた。そういう悔しさを感じる部分はあるが、己の歩んだ道、自身の成長にヒュームは満足した上で、次世代にバトンを渡そうと決意しての言葉であった。
「ヒュームさん、一体何が起こると言うんですか?」
ヒュームの真剣さ、熱意は感じ取ったものの、その真意までは辿り着けない百代。
その真意を知りたいと願い彼女に対するヒュームの答えは簡潔だった。
「直ぐに分かる」
そして彼は付け加える。
「松永燕に清楚。先程の言葉はお前達にも言ったものだ。やる気があるのならば俺の所に来るがいい」
会話はそこまでだった。
そして彼女達の前に答えが、宇宙の頂点を極めた力示される。
「はああああ!!!」
気合の掛け声と共に、通常は白く薄い光のように見える悟飯の気が金色へと変化する。
今はマスクに隠れて見えないが、その内側の髪の色も同じように変化していた。
「なっ!?」
ガーリックJrの驚愕の声、そして他の者達は声すら上げられなかった。
あまりにも強大過ぎて、今の百代達ではどの位凄いのかさえも分からない、それ程の力。
ヒュームはそれを見て呟く。
「あれが、あの男の真の力……」
それは1000年に一度現れると言われる伝説の戦士。
戦闘民族と呼ばれる宇宙の種族の中でも一握りの者だけが辿り着ける領域。
宇宙の帝王と呼ばれたフリーザさえも下した力。
「超サイヤ人だ」
36話にしてようやく超サイヤ人登場。
そろそろ大会予選編も終了です。
キャラ崩壊が著しい気がするので、仕切りなおして本戦につなげたいと思います。