悟飯in川神学園   作:史上最弱の弟子

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今回は早く投稿しようと思ったのですが結局時間がかかってしまいました。
すいません。


サイヤ人ハーフVS地球人

「その技、石田さんが使ったのと同じものですね」

 

 見た目の変化だけを見れば超サイヤ人への変身にも似たその変化を光龍覚醒と見抜く悟飯。ヒュームの力量を考えれば扱えること自体に不思議は無い。しかし何故わざわざその技を使ったのか、そのことに対し悟飯は不思議に思う。

 

「けど、それでは僕には勝てませんよ」

 

 光龍覚醒のパワーアップ倍率は2倍程度。気のコントロールが精密でエネルギーの無駄が無いのか石田が使用した場合よりも大きく強化されているようにも見えるがそれでも1割増し程度の差である。3倍以上の界王拳を使った方が遥かに強い。どの道、悟飯には届かないにしてもわざわざパワーダウンする理由は無い。

 その疑問に対し、ヒュームはそれを当然の指摘とばかりに頷いて見せた。

 

「だろうな」

 

 しかし言葉とは裏腹に勝利を諦めたようには見えない様子。その余裕の態度に悟飯は軽く警戒を強めた。

 

「お前の地力はこの俺を遥かに上回っている。お前の父と同じくな。今から見せるのは俺が貴様の父を目指し、10年をかけて編み出した奥義だ」

 

 そして驚きの光景が目に入る。何と彼は光龍覚醒を解除せずに、そのままの状態のまま界王拳を使用して見せたのだ。金色のオーラと赤いオーラ、2色のオーラがその身体の周りを包み込む。

 勿論変わったのは見た目だけでは無い。光龍覚醒の状態を基準にして、その気が更に3倍に上昇、フリーザ軍No.2であったギニューを上回るレベルにまで高まったのだ。

 

「そ、そんな、まさかこんなことが」

 

 気の強さでは無く、気を増幅させる技を二つ組み合わせて使える。そのことに驚愕する悟飯。表情は仮面に隠れていても、驚きは伝わったのか、ヒュームはその反応に笑みを浮かべる。

 

「驚くのは実際に俺の力を味わってからにしてもらおう!!」

 

 言葉と共に悟飯に対し、再度突撃し仕掛けるヒューム。

 

「はっ!!」

 

 その攻撃に対処する悟飯。

 凄まじいパワーアップをしたヒュームだったが、逆転まではしていない。とはいえ、差はかなり詰まっていた。本来であれば悟飯の方がまだまだ圧倒的に大きな力を持っているのだが、ある制約により悟飯は今、全力を出せない状態にあった。

 

「はっ、はっ、はっ!!」

 

 ヒュームの連続攻撃を裁く悟飯。そこで電撃を纏った攻撃が混じる。

 

「ぐっ」

 

 防御した腕に流れる電撃。痺れを感じ一歩引く。そこで追撃を防ぐため、バリアーを広く展開し、防御と共に弾き飛ばす。

 

「たあっつ!!」

 

「マスターウェイブ!!」

 

 両者が同時に気功波を放ちぶつかり合う。結果は相殺。そこで今度は悟飯の方が接近し、飛び蹴りを放つ。

 

「ふん!!」

 

 しかしその飛び蹴りは力を上手く受け流され軌道を逸らされてしまう。そこでカウンター気味に放たれる肘打ち。

 

「ぐっ」

 

 それを両手の掌で受け止める。勢いによって空中に飛ばされ、そこで舞空術を使い体勢を立て直す悟飯。

 

(まさか予選からこんなに強い人が居るなんて、もう少し訓練しておけばよかった)

 

 悟飯の制約、それは正体がばれないように瞬間的にパワーをあげる以外はゼロパワーに抑えているということである。無駄なエネルギーの浪費をさけるため、攻撃や防御時の瞬間にだけ、パワーを上げるのは悟飯や仲間達の基本的な戦い方だ。しかし平常時のパワーをゼロにまで下げようとすると逆にエネルギーの消費や身体への負担は大きく跳ね上がってしまうのである。

 一歩毎にダッシュと身体の完全硬直を繰り返すようなものとでも言えばその大変さはイメージできるかもしれない。訓練を積めば多少の改善は可能だが、現状ではこの戦い方を続ける限り実力の極一部しか使えない状態であった。

 

「うおおおおおおお!!!」

 

 パワーとスピードでは悟飯、駆け引きではヒューム、しばらくの間は互角のぶつかり合いが続いていた。だがそこでヒュームが雄叫びをあげ、それと共に界王拳を4倍にまで引き上げる。

 

「ぐっ!!」」

 

 ヒュームの突きを喰らい弾き飛ばされる悟飯。舞空術を使い、空中に静止し、そのまま舞台の端に着地する。しかし体勢を立て直す隙を与えまいとしたヒュームの飛び蹴りがそこに迫った。

 

「くっ」

 

 空中に跳び上がり逃げる悟飯。かわされた蹴りが舞台に直撃し、その衝撃で砕け破砕された欠片が飛び散った。当然の如く足場を失い地面に落下するヒューム。しかし彼もまた舞空術を使い、空中に静止する。

 

「はあっ!!」

 

 そこでヒュームに向けて溜め無しの気功波を放つ悟飯。それに対し、ヒュームは前方に半円系のシールドを展開。そのシールドに気功波が触れた瞬間、攻撃が跳ね返される。

 

「うわっ」

 

 身体を捻り跳ね返って来た気弾をなんとか回避する悟飯。しかしそこで隙が生まれてしまった。

 

「しまっ!!」

 

 気弾に気を取られた隙にヒュームが悟飯の頭の上にまで飛び上がったのだ。

 上方向から叩き付けられる蹴り。それに対し、悟飯は何とか防御するものの勢いを殺しきれず地面に叩き付けられる。その衝撃は凄まじく、叩きつけられた勢いによって、試合舞台にクレーターが発生する程であった。

 

「ぐっ」

 

 流石にダメージを受けながら10カウントが告げられる前に立ち上がる語飯。その間、空中に浮かぶヒュームは界王拳のみを解除し、光龍覚醒の状態で彼を見下ろしていた。

 そして立ち上がった悟飯に対し、評価の言葉を告げる。

 

「今の一撃を防御、いい反応だった。どうやら会ったばかりの頃とは違い、錆びは取れているようだな」

 

「はは、おかげ様で」

 

 ヒュームの言葉に同じ相手から数ヶ月前に言われた言葉を思い出し苦笑いを浮かべる。確かに川神に来たばかりの頃の悟飯は鈍りまくっていた。

 

「それでいい。力だけが強い赤子に等興味は無い。孫悟飯、お前となら締めくくりをうてそうだ」

 

「締めくくり?」

 

 気になった単語に対し問い返す悟飯。それに対し、ヒュームは短く答えた。

 

「この試合が俺の武術家としての引退試合と言うことだ。悪いがこの状態は身体に負担がかかる。これ以上の話が聞きたければ試合の後にしてもらうぞ」

 

 マヤリト大陸外の武術関係者が聞けば衝撃を受ける言葉を紡ぐヒューム。悟飯にも驚きはあったが、この場でそれ以上の会話は許されなかった。ヒュームが界王拳を再び使い、戦闘が再開される。

 

「うおおおおおお!!!!」

 

 更にパワーをあげ、5倍にまで界王拳を引き上げたヒューム。それにより跳ね上がった速度で悟飯の背後をとり、彼目掛けて突きを放つ。それは完全に捕らえたタイミングであった。

 しかし次の瞬間、吹っ飛んだのは攻撃を先に放った筈のヒュームの方であった。舞台に叩きつけられ界王拳が途切れる。

 

「ぐっ、なるほど、力を隠していたのはお前もと言うことか」

 

「ヒュームさん、あなたは僕が思っていたよりもずっと強い。だけど僕もこのまま負けるつもりはありません」

 

 ヒュームを吹き飛ばした悟飯の動き、それは今までの彼の動きよりも明らかに速いものであった。先程までの時点で既に彼は「自信の気を察知されないようにする」「肉体に負担をかけない」この両方の条件を満たした上での全力を出していた。ならばどうやって力をあげたのか。答えは簡単である。二つの条件を両立できないならどちらか片方を諦めたのだ。

 

「一気に決めさせてもらいますよ」

 

 宣言し、その言葉通りの猛攻をしかける悟飯。ヒュームは界王拳を使い対処しようとするが、光龍覚醒と5倍の界王拳の重ね掛けですら力が届かず、悟飯が圧倒、ヒュームは凌ぐのが精一杯であった。

 

(くうっ、思ったよりきついなあ)

 

 しかし悟飯も余裕なばかりではない。彼が諦めた条件は「肉体に負担をかけない」こと。先程も説明したようにパワーを瞬間的にゼロにするのは急ブレーキと同じだ。

 パワーを上げた分はそのまま彼の身体にダメージとなって返って来ており、決着を急ぎたいと言う思いを抱く。

 

「ぐうっ!!」

 

(ヒュームさんが体勢を崩した!!)

 

 悟飯の猛攻を受け続けたヒュームが片膝を崩す。それをチャンスと判断した悟飯は一気に勝負をつけようと大振りの拳を放った。

 

「この辺はまだまだ赤子のようだな」

 

 だがその一撃は空をきる。

 ヒュームは瞬時に立ち直り、攻撃を回避したのだ。そもそもが体勢を崩したように見えたのは演技であり、罠だったのだ。悟飯の焦りを見抜いたヒュームがわざと隙をつくり誘いをかけたのである。

 身体に負担をかける戦い方をしていたとは言え、それはヒュームも同じ、いや比べれば彼の方が大きな負担を抱えた状態であった。にも関わらず冷静さで勝ったのはヒュームの方であった。このあたりは年季の差が出てしまったと言わざる得ない。

 

「うおおおおお!!!!」

 

 気合の方向と共にヒュームの必殺の蹴り、ジェノサイド・チェーソーが悟飯を襲う。全身全霊の力が込められたその一撃は現状の悟飯を叩きのめすのに十分な力が込められていた。

 

「!!!」

 

「!!!」

 

 そしてその一撃に対し、悟飯は回避することが出来ず頭部に受けてしまう。その瞬間、ヒュームは勝利を確信した。

 

「なっ!?」

 

 だが、悟飯は倒れなかった。理由は二つ。一つは百代達との修行の時、悟飯は気を大きく制限しており、彼女達の攻撃であっても十分にダメージを受ける状態で組み手などをしていた。その中で急所を外してダメージを抑えると言った技法を身につけていたのである。しかしそれだけならば耐えられなかった。倒れることを免れたのにはもう一つの要素が関わってきている。その要素とはサイヤ人の耐久力であった。

 

「やああああああ!!!」

 

 サイヤ人は戦闘民族と言うだけあって、戦闘に向いた多くの素養を持っている。

 そしてその中の一つに身体の頑丈さがあった。悟空、べジータ、ナッパ、バーダック等サイヤ人の多くはその戦闘力以上にタフであった。通常、戦闘力が格上な相手の攻撃を直撃させられた場合、一撃で戦闘不能に陥るのがほとんどである。しかし彼らの場合同様の状態に陥っても異常な耐久力を発揮し、その後も戦闘を継続して見せている。

 ラディッツのようにやたら脆い例外もあるが、サイヤ人の頑丈さは地球人どころか宇宙の基準と比べてさえ、非常に高い水準なのだ。

 そしてその素養はハーフである悟飯にも受け継がれていた。

 

「ふっ」

 

 小さな笑みを浮かべるヒューム。先程の一撃、それに彼は全ての力を費やしていた。そのため、もはや抵抗する余力も無く攻撃をうけ、そして場外にまで弾き飛ばされるのであった

 

「……はっ!! そ、それまで!!」

 

 一瞬の沈黙の後、審判の宣言が告げられる。その瞬間、ウルトラナメックマンの勝利が確定し、あまりに凄まじい戦いに声も出せずに居た観客達から大歓声が湧き上がった。

 

「まるで、優勝が決まったかのような騒ぎだな」

 

 そんな歓声の中、場外に落ちたヒュームがゆっくりと立ち上がると、気力だけで体を支えながら試合舞台へと戻ってきた。

 そして悟飯の前に立つと彼に向かって手を差し出したのである。

 

「どうした。マヤリト大陸にも握手の風習は伝わっている筈だろう」

 

「あっ、はい」

 

 ヒュームの行動に一瞬呆気に取られる悟飯。しかし促され、慌てて自分も手をだす。

 そしてがっちりと握り合い、お互いの検討を称える握手に観客席からは再度歓声が沸きあがった。

 

「流石はあの男の息子だな。満足する試合ができた」

 

 賞賛を述べるヒューム。それに対し、悟飯も素直な気持ちを変える。

 

「ありがとうございます。僕も楽しかったです。戦いを楽しいと言っていたお父さんの気持ちが少しだけですけど、分かったような気がしました」

 

 悟飯の父、悟空は未知なる強敵に出会った時、何時も「わくわくする」と言っていた。その気持ちは悟飯にはまったく理解できないものであったが、今、ほんの少しだけ悟飯は同じ気持ちを抱いていたのだ。

 嘗てセルゲームでセルが言ったように戦い、勝負事とはある程度実力が近くないと楽しくないものである。勝つか負けるかわからない緊張感があってこそ楽しくなる。更に相手がどんな手をうってくるか分からない戦いでは驚きが楽しみを更に大きくするものである。故に悟空は未知の強敵や久しぶりに出会い、大きく成長した仲間達との戦いを「わくわくする」と表現し、そんな戦いを数多く経験してきた。

 そんな父と比較すれば、悟飯は全くと言っていい程戦いに恵まれなかったと言っていいだろう。彼がこれまで戦ってきた相手はその殆どが格上、もしくは格下の物が殆どである。それにそもそもの問題として責任感が強く優しい悟飯の性格では殺し合いを楽しむのがそもそも難しく、殺し合い以外の戦いは顔見知りとの修行ばかり。未知の驚きなど滅多に経験できるものではない。

 そんな今までの戦いと比較すれば、ヒュームとの戦いは楽しいものであったのだ。ハンデ付きとは言え、勝敗が確定せず、相手がどんな手を使ってくるかも分からない戦いだったのだから。

 

「ふっ、そうか。血は争えないようだな。最も、程度の差はあれ、それは武術家ならば誰もが味わう気持ちだ。今までそれを知らなかったお前の方が異端ではあるのだがな」

 

「ははっ、そうかもしれませんね。あっ、それでヒュームさん。お父さんとは……」

 

「ここで長話は試合の妨げになる。続きは外ですることにしよう」

 

 互いに同意し、舞台を去る二人。こうして特大のバトルが終了し、大会は次の試合へと進むのだった。




[スーパーサイヤ人ブルー+界王拳を初めて見た時の作者の感想]

ネタ被ったー!!!!!!!

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