悟飯in川神学園   作:史上最弱の弟子

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今回はあまり筆が進まず、あまり出来がよくないかもしれません。
後、今回はマヤリト大陸に関して色々と設定を盛り込みましたが、致命的におかしな点とかあれば指摘いただけるとありがたいです。


マヤリト大陸の話

「ううん」

 

「あっ、百代さん、目を覚ましましたか?」

 

 クリリンとの戦いで気を失った百代が目を覚ますとそこには悟飯の顔があった。その状況に3秒程思考し、顔を僅かにだけ赤くするとその照れを隠すように呆れた声をだす。

 

「この状態は色々と逆じゃないのか?」

 

「逆?」

 

 百代の言葉に対し、不思議そうな声を出す悟飯。彼女の今の状態、それは悟飯に膝枕をされていた。一般的には親しい関係にある女性が男性に対してするのが普通とされる行為だ。

 

(こいつのことだから他意は一切無いんだろうな。殴られて気を失った人間を地面に寝かせるのも不味いと思ってこうしたんだろうが……)

 

 出会ってから半年、既に悟飯の性格をおおよそ掴んだ百代は彼の行動の意味を正確に当ててみせる。しかし理解は出来ても自分が美少女であると言う自負を持つ彼女としてはこうも異性であることを意識されないのは少々プライドに触れた。

 

「いや、何でもない。もう大丈夫だ」

 

「あっ、もう少し休んでいた方が」

 

 制止する悟飯の言葉を無視して勢い欲起き上がる百代。そこで彼女は気づかれないように笑みを浮かべると、立ちくらみを起こした振りをしてわざとよろけリ悟飯に向かって倒れこみ、彼女の狙い通り受け止められる。その結果、二人は抱き合うような形になる。

 

「わわっ、あ、あの、百代さん、大丈夫ですか。その大丈夫なようでしたら、少し離れて。あの、胸が……」

 

(ふむ、さすがにこれなら反応があるか。大サービスをした甲斐があったな)

 

 胸板に豊満な胸を押し付けられ、流石の悟飯も動揺を示す。その反応を見て満足し離れる百代。

そこで彼女は周囲を見渡し、周囲に他に誰も居ないことに気づく。

 

「ワン子とクリリンさんはどうしたんだ?」

 

「二人なら百代さんを起こさないように少し離れた所で修行してますよ。クリリンさんに一子さんの指導をお願いしたんです」

 

「そうか。あれだけの実力と技量を持った人に指導してもらえるならワン子にとっていい勉強になるだろう。お礼を言いにいかないとな」

 

 悟飯の答えを聞いて早速一子達の所へ行こうとする百代。勿論、悟飯も同行する。

 そして歩きながら彼女は頼み事にも近い相談事を持ちかけた。

 

「なあ悟飯。ちょっと聞きたいことがあるんだが」

 

「私達が今、3人で行っているこの土曜の修行に他に人を加えたいと言ったらどうする?」

 

「他の人ですか。正直、あまり気がすすまないですけど。一体誰を?」

 

 一緒に修行をする人数が増えればそれだけ隠している実力がばれ易くなる。予想通りの回答に百代は気を少し重くしながらその名を告げた。

 

「ああ。燕だ。この間、私と戦ったな」

 

「あの人ですか。燕さんがそう希望したんですか?」

 

「いや、私の希望だ。あいつはかなりの素質を持ってる。鍛えれば多分もっと強くなれる。目標であるお前とはまた違った形のライバルになれるんじゃないかと私は期待してるんだよ」

 

 自分の心の内を告げる百代。お人よしの悟飯はその真摯な想いを聞いて自分の都合と友人の願いを天秤にかけ悩み、最終的に出した答えは保留だった。

 

「まずは燕さんの意見を聞いて見ましょう。その上で改めて考えてみます」

 

「そうだな。私一人が突っ走っても意味は無いか」

 

 約束があることもあり、百代としても最初から無理強いはできないと考えていたため、曖昧な答えに対し責めることは無く、寧ろ少しでも希望がある答えに嬉しそうに言う。

 そしてこの話題は一旦終わり、そのまま足を進める、一子達の居る場所へと合流を果たした。

 

「お姉様、目を覚ましたのね!」

 

「ああ、心配かけたな。クリリンさん、一子に指導をしていただけているとお聞きしました。姉妹共々お世話になり感謝します」

 

 百代に気づき駆け寄る一子。百代はそんな彼女の頭を撫でた後、クリリンに向かって頭を下げる。

 

「ははっ、別にそんなたいしたことしてる訳じゃないさ。人に物を教えるなんて初めてでおっかなびっくりやってる位だから、改まって礼なんて言われると緊張しちまうよ」

 

「ううん。クリリンさんの教え方凄く上手だったわ。教えてくれた技、ちょっとだけどさっき成功したんだから」

 

 謙遜するクリリンに対し、一子が弁護する。そして彼女は新しい技を覚えたと語った。

 

「へえ、1日で凄いですね!」

 

「ほう、どんな技なんだ?」

 

 感心する悟飯と興味を示す百代。一子に詰め寄りその正体を知ろうとする。

 

「えと、まだ秘密。折角だから完成させてから見せて二人を驚かせたいの」

 

 なかなか自信がありそうな表情で秘密と答える一子。そんな妹の姿を見て、慈しむ感情から百代は目を細め、彼女の意を汲むことにした。

 

「そうか、それじゃあ、楽しみにしてるぞ」

 

「うん!!」

 

 微笑ましい姉妹の触れ合いをかわし、その後修行を再開する。それかれしばらく4人は稽古を続け、段々と日が暮れてきたため締めとすることにした。

 

「それじゃあ、俺はそろそろ行くよ」

 

「クリリンさん、今日はどうもありがとうございました。すいません、付き合っていただいて」

 

「お前まで遠慮するなよ悟飯。それにこっちに来たのも仕事のついでだしな」

 

 悟飯と言葉をかわすクリリン。その言葉の中に百代は気になる単語があった。

 

「仕事ですか? クリリンさんはどんなお仕事を?」

 

 武術家は一定以上のレベルを超えてしまうと逆にそれ自体を仕事にし辛くなる。気を使う武術家は暗黙の了解となっているし、一般向けに道場などを開いても、実力や才能に差があり過ぎて指導が難しいからだ。

 これはあくまで日本での話しであるが、マヤリト大陸で壁を越えた武術家がどう言った方法で生計を立てているのか興味があった。

 

「普段は肉体労働とかが多いけど、今回はちょっと特別でさ。アルバイトなんだ。九鬼って知ってるか?何か、こっちでは有名なとこらしいんだけど」

 

 そしてクリリンの口から飛び出したのは予想外の名前。その名前は百代や一子にとって勿論、聞き覚り、二重の意味でよく知った名前だった。

 

「ええ、世界一の大企業でうちの学校にその御曹司がいます」

 

「へー、そりゃ偶然だな」

 

 百代の答えに驚いた顔をしながら説明を続けるクリリン。それは大きなニュースであった。

 

「それでその九鬼ってとこと、マヤリト大陸で一番でかい会社なカプセルコーポレーションってとこが友好を兼ねて、技術交流って奴を始めたらしいんだ。何て言ってったっけかな。両世界の最大の企業が率先して友好的な関係を見せることで、共に手を取りあえることを証明したいとかそんなようなことを九鬼って会社の一番偉い人が言ったらしいぜ」

            

「なるほど。確かに英雄《ひでお》のお父さんならそんなこと言ってもおかしくないかも」

 

 一般市民を『民』と呼び、まるで王のように振る舞い、しかし暴虐だったり横暴だったりする訳では無く、周りを導くのが役目と日頃から主張しそれを実践する人間。九鬼財閥の御曹司にして、同級生である九鬼英雄と言うのはそういう人物である。そんな彼を日頃から見ている悟飯はクリリンの言葉に納得する。

 ちなみに悟飯と英雄は友人である。元々、悟飯は九鬼の周りを引っ張るカリスマ性と誇り高さに、九鬼は悟飯の能力の高さとその勤勉さにお互いに一目置くような感じではあったが、直接の接点は殆どなかった。しかしある事件を切欠に英雄は悟飯を『友』と呼ぶようになり、悟飯もそのように接するようになったのである。

 

「それで、その技術交流の結果できた発明品第一号をこの国に輸送するってことになってさ。それを運ぶ人達のボディーガードを頼まれたんだよ」

 

 マヤリト大陸の外と中、それぞれにおいて最高の技術力を持つ企業同士の技術交流、聞く人が聞けばとんでも無いスクープなのであるが、何でも無いことのようにさらりと語るクリリン。

 そしてこの場にはその重大さを真に理解する者は彼以外にもいなかった。凄そうな話と言うのは流石にわかるのだが、現実感があまり無い感じである。

 

「貴重品の輸送ですか。クリリンさんはそういう依頼をよく受けるんですか?」

 

「いや、今回だけだよ。俺や悟空は元々ブルマさん、カプセルコーポレーションの社長の友人なんでその縁で頼まれちまってさ」

 

「へえ、凄い人と知り合いなのね。あっ、でも、九鬼君と知り合いの私達も同じようなものなのかしら?」

 

 マヤリト大陸最大の企業の社長と友人と聞いて驚く一子だったが、直ぐに自分達も同じようなものだと気づく。

 

「しかし、ブルマとは。何と言うか凄い名前だな。いや、人の名前を、ましてや言葉も文化も違うところの人の名前を笑うのは流石に失礼だとわかってはいるが」

 

 妙な所で礼節に厳しかったりもする百代が自分自身の発言に対し戒めの言葉を付け加える。ところがそこで悟飯がその戒めの言葉を否定するような驚きの発言を返したのだ。

 

「あっ、マヤリト大陸の言葉って日本語とほとんど同じですよ」

 

「えっ、そうなの!? そう言えば悟飯君もクリリンさんも日本語凄く上手ね」

 

 その驚きの発言に驚愕の表情を浮かべる姉妹。

 そして外国どころか、最後の秘境とまで呼ばれている地域から来た悟飯達と普通に言葉を交わしている奇妙さに改めて気づく。

 

「マヤリト大陸は鎖国前は日本や中国と凄く交流が深かったらしいです。だから言語や文化の影響が強く残ってるとか。それとアメリカ大陸から移住してきた人が居て、その縁もあって鎖国中もほんの少しだけ交流があったとか。お互いに最低限の動向を把握して置きたかったって言う理由もあるらしいですけど。ともかくそういう訳でマヤリト大陸では日本語に近い言語が公用語で一部で英語も使われている感じなんです」

 

 悟飯がマヤリト大陸の歴史と成り立ちを説明する。その説明に二人は興味深げに耳を傾け、聞き終えた所で色々なことに納得する。

 

「なるほどな。言われてみればお前の苗字なんか中国人そのものだもんな」

 

「悟飯君のお父さんの名前が悟空なのも西遊記から取ったのかしら?」

 

 そして疑問が解消した所で、百代は再びクリリンに視線を戻して問いかけをした。

 

「それで話は戻りますが、護衛の道中はどうだったんです? 何か事件とかありましたか?」

 

「ああ、心配し過ぎだったみたいだな。いたって平穏なもんだったよ」

 

「まっ、そんなものですよね」

 

 武勇伝が聞けるかと少し期待した百代は返ってきたことに軽く肩を落とす。

 

「それじゃあな。っと、忘れるとこだった。チチさんからの伝言だ。夏休み位には帰って来いとさ」

 

「はい、わかりました」

 

 最後に伝言を伝え、今度こそ立ち去っていくクリリン。その後、悟飯達も解散し、その日はそれ以上、特に何事も無く終わった。

 そして後日、彼等は知ることになる。クリリンが語った発明品が百代に取って大きく関わることになるものであることを。




次回は悟飯が英雄と友人になった時の話で番外的な本筋にあんまり関係無い話になる予定です。

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