悟飯in川神学園   作:史上最弱の弟子

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1日に2話投稿


クリリンVS百代

「はああああああ!!!!!!」

 

 百代が気を全開にする。それに対してクリリンは特に気を上昇させず、そのままの状態で応戦の構えを取り、その内心では感嘆の声を漏らしていた。

 

(はー、悟飯には聞いてたけどサイヤ人でも無いのにこの年で凄い才能だな)

 

 彼が百代と同じ年の頃には彼女よりも遥かに弱かった。神や界王の指導も無くここまで辿りついた彼女に対し、賞賛の感情を抱く。

 

「川神流、無双正拳突き!!」

 

 そんなクリリンの内心の声を知らない百代は戦いの火蓋を切る。自身の最も得意とする一撃を繰り出し、その攻撃に対してクリリンは掌でそれを受け止めて見せた。

 

「川神流、無双回し蹴り!!」

 

 初撃を防がれた百代は即座に腕をひくと、間を置かずして次の攻撃をしかけた。中段回し蹴りを頭部目掛けて打ち込む。クリリンはその攻撃腕をあげてガードし、更に反撃を仕掛ける。ローキックで百代の脛を狙い、素早く綺麗なその一撃は見事に狙いを捕らえた。足に激しい衝撃を受け、辛うじて転ぶのを堪えるものの体勢を崩してしまう百代。

 

「ぐっ」

 

「足元がお留守になってるよ」

 

 それは絶好のチャンスだったが、クリリンは攻め込もうとしなかった。挑発的な台詞を放と余裕を見せる。それに対し、百代は体勢を立て直すとこれが挑発に対する答えだと言わんばかりに無数の拳を撃ちこんだ。

 

「川神流、無双正拳乱れ突き!!」

 

 間断無く繰り出される拳の乱舞。しかしクリリンはその全てを捌いてみせる。

 そして百代の攻撃が止んだ所で、今度はクリリンの方が連続攻撃を仕掛けた。

 

「てりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」

 

 またもや攻守が逆転する。自分に向かって繰り出される乱舞に対し、防ぎきれず何発かは被弾しながらも、その大半を防ぎ、攻撃に耐える百代。

 

「とりゃあああ!!!」

 

 そこで放たれる止めをささんとするの強攻撃。しかしそれを待っていたとばかりに百代はそこで超加速を発動させた。強い攻撃はそれだけ隙も大きくなる。加速したスピードでクリリンの攻撃をかわすとそのまま彼の背後を取りその背中に向けて蹴りを放った。

 

「はっ!!」

 

 しかしその一撃は空を切る。その蹴りよりも高くクリリンは飛び上がり、更にバク転のような動きをして百代の頭上を通り過ぎて彼女の背後に着地したのだ。

 そして着地したクリリンはすぐさま背中に一撃を放つ。その攻撃まともに受け、受け飛ばされた百代は地面に叩き付けられる。

 

(やはり強い。ならば!!)

 

 起き上がり継戦の意思を見せる百代。しかし正攻法では勝てない相手であることを悟った彼女はは策を練ると、その策を実行するための初手として再び無双正拳突きを繰り出した。最初と同じように受け止められる拳。しかしそれは彼女の狙い通り。その状態から追加で技を使用する。

 

「川神流、炙り肉!!」

 

「うわっち!!」

 

 燃える拳に慌てて手を引くクリリン。初めて隙が見える。悟飯相手の時もこれらの気の性質を変化した使う技が効果的であったことを覚えていた百代はその弱点を突いたのだ。

 

「はっ!!」

 

 その隙を逃さず攻撃をしかけ、百代の攻撃が初めてクリリンにヒットする。胴体に蹴りを受けて吹っ飛ぶクリリン。しかし彼は空中で体勢を立て直すとそのまま地面に着地した。

 

「いてて、やるじゃないか!!」

 

「こっちも一方的にやられっぱなしではいられませんからね」

 

 痛がってはいるが明らかにダメージの軽いクリリン。とはいえ、一矢報いたのは確かである。反撃に成功した百代は戦いはこれからだと言わんばかりにそこで更に瞬間回復を使用し、それまでに受けたダメージを回復して見せる。

 

「えっ!?」

 

「瞬間回復、あらゆるダメージを一瞬で回復してみせる技です」

 

「そんな技まで使えるのかよ。ちょっと反則過ぎるだろ」

 

 傷が治る光景を見て驚くクリリン。しかし驚きはしても焦ってはいないようだった。寧ろ未だ余裕があると言わんばかりに不敵な笑みを浮かべて見せる

 

「それじゃあ、こっちも武闘家の先輩としては意地を見せるとしますか」

 

 そう言って気功波を放つクリリン。百代はそれを飛び上がって回避するが、そこで驚愕させられることになる。気功波が軌道を変更し、まるでホーミングミサイルのように彼女に向かってついてきたのだ。

 

「まさか誘導弾!? そんなことができるのか!!」

 

 百代は未だ舞空術を教わっておらず空を飛ぶことは出来ない。自由の効かない空中。逃げることの出来ない彼女は気功波で迎撃を試みる。

 

「川神流、星砕き」

 

 気功波同士がぶつかり合い、両方が消滅する。何とか相殺に成功したようだった。しかしそこでクリリンが再び気功波を放つ。

 

「くっ、星殺し!!」

 

 先程と同じく誘導弾だと思い迎撃を行おうとする。しかし両者の気功波がぶつかり合う瞬間、何とクリリンの放った気功波が百代の放った気功波を避けるように曲がり、そして再び軌道を変え百代へと迫ったのだ。

 

「ぐああああ!!」

 

 流石にこれは対処が間に合わず直撃を受けて吹っ飛ぶ百代。一方、彼女が放った気功波の方はあっさりと回避されていた。

 

「ぐっ、瞬間回復」

 

 ダメージを回復させ立ち上がる百代。その表情には驚嘆と敬意が浮かんでいた。

 

「エネルギー波をただ放つだけでなく、放った後、自動誘導と手動操作の二つの手段で操れると言う訳ですか。本当に驚きました」

 

 気を必要以上に高めることをせず、テクニックで百代を圧倒するクリリン。その強さには熟練の武術家らしい巧みさが感じられ、百代は幼い頃にルーや釈迦堂に戦いを挑んだ時のような感覚を思い出していた。

 

「折角ですからもっと色んな技を見せてもらえませんか」

 

 次々と見せられる技に戦う楽しさとは別のサーカスや手品を見せられているようなわくわく感を感じる百代。次にどんな技を繰り出してくるのかという期待感とそれを破ってやるという挑戦心にこれまでに無い興奮を覚えていた。

 

「それじゃあリクエストにお答えして、武天老師様から教わったばかりのとっておきの新技をお見せしようかね。ただしちょっとばかし痛いけど覚悟はいいかい?」

 

「望むところです。意地でも破ってみせますよ」

 

 危険な技だと警告をするクリリンに対し、百代は正面から挑んで見せると答える。両者の間に緊張の雰囲気が漂うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらずクリリンさんの技は多彩だな」

 

「信じられないお姉様よりも強いなんて。マヤリト大陸の武術家って凄いのね」

 

 戦いを観戦し、クリリンの技の多彩さに感心する悟飯とその強さに驚嘆する一子。先日、百代と燕の稽古を見た時の悟飯と大和が交わしたものと同じような流れの会話であった。この辺りが両者の認識の違いと言えよう。

 

「クリリンさんは僕が生まれるずっと前から厳しい修行や激しい戦いをしてきた人だしね。技の数なら僕どころかお父さんよりも多いかもしれない。例えば……」

 

 クリリンが強い理由を説明し、他に彼がどんな技を持っているか話して聞かせようとした悟飯はそこでふと思いつく。彼の技の幾つかを一子に教えてもらえないかと。正直な所、一子の才能では百代に追いつくことは不可能に近い。百代が今の実力留まるのなら一抹の可能性もあるが、彼女は今後更に強くなっていくことはほぼ間違いないからだ。しかしクリリンは格上にも効果的な技を持っている。それを覚えれば、姉の力になりたいと言う彼女の願いが適うかもしれない。

 

(何とかお願いできないかな?)

 

 試合を観戦しながら悟飯はそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああああ」

 

 クリリンの両手に気が集中していく。それはこれまでに無い大技の気配を感じさせるのに十分であった。どのような技が来ても対処できるようにと百代もまた全身に気を巡らせる。

 

「萬国驚天掌(ばんこくびっくりしょう)!!!!」

 

「がああああああ!!!!」

 

 クリリンが技を放った、その瞬間に技は百代の警戒など無視するかのように命中していた。0.001秒の一瞬で攻撃を繰り出す鉄心の毘沙門天すらも遅く感じる程の超速の攻撃。体内に流れる微弱な電流を気によって増幅させ、放出する亀仙流の奥義。その一撃を受け、全身に走る激痛に彼女は絶叫をあげる。

 

「うぐぐ」

 

 攻撃を受け空中に浮き上がられる百代の体。何とか弾き飛ばそうとするが攻撃の威力が強すぎて抵抗できない。

 

(こうなったら一か八か人間爆発を使って……)

 

 自爆して逃れようとする百代。しかしそこで電撃が止まる。どうやらクリリンが攻撃を止めたようであった。

 

(手加減されたのか)

 

 技を止めた理由に対し、そう気づくが百代の心に大きな悔しさは無かった。実力も経験も相手は格上の相手、そう素直に認められる位に彼女も成長を果たしていたのだ。

 

「驚きました。マヤリト大陸にはこう言った技は無いと思っていましたが」

 

 炎や冷気を出す技に驚いていた悟飯やクリリンの反応を見て、百代はマヤリト大陸の武術家は気をそのままの状態で使用する以外の技を使えないと思いこんでいた。それだけに今、受けた技は完全に予想外で不意を突かれたものとなったのである。最も予想していたとしても今の技は速過ぎて防げなかっただろし、体内の電流を増幅する技なので炙り肉等とはまた原理の違う技なのであったが。

 

「見逃されておいてなんですが、こんな楽しい戦いを自分から辞めたくは無い。まだまだ戦わせてもらいますよ」

 

 瞬間回復を使用し、ダメージを回復しようとする百代。しかし何故か技は発動しなかった。

 

「これは……もしかして体の奥底に残るような痺れの所為か?」

 

 電撃の影響で気が練りづらいことに気づく。気功波等は問題ないが、瞬間回復やその他にブラックホール生成など高度な気のコントロールを必要とする技は無理そうであった。

 

「まさか瞬間回復にこんな弱点があったとは。本当に勉強になるな」

 

 予想外に自分の技の弱点を知ることになった百代。しかしこれで彼女は絶体絶命の状況に追い込まれたと言える。しかし、そこで諦めることなく彼女は構えを取る。それを見てクリリンも構えを取った。

 

「久々に武闘家の血が騒ぐな。ははっ、これじゃあ悟空のことを笑えないか」

 

 若さ故の百代の情熱にクリリンも刺激されたようだった。悟空のことを本気でライバルと思い一番を目指していた頃の情熱を思い出し、闘気を張り巡らす。

 

「それじゃあ、最後は武闘家らしく体と体のぶつかり合いと行こうか」

 

「体と体のぶつかり合いって何かエロいですね」

 

「ガクッ、勘弁してよ百代ちゃん。嫁さんに聞かれたら冗談でも俺、殺されちゃうよ」

 

真面目に言ったつもりの言葉に対し、返ってきた突込みに思わずこけるクリリン。そんな彼の姿を見て百代は笑って謝る。

 

「ははっ、すいません」

 

(こんな強い人でも奥さんのことが怖いんだな)

 

 まさか戦闘力的な意味でも嫁の方がクリリンよりも強いとは思わず百代はそんな感想を抱くのだった。

 

「はあ、まっ、いいや。それじゃあ、気を取り直して」

 

「はい!!」

 

 再び真面目な表情になったクリリンに百代も今度こそ真剣に応じる。

 そして両者は同時に突撃した。

 

「はあー!!!」

 

「たああああ!!!」

 

 両者共に攻撃を繰り出し、数度の攻防を巡らせた後、クリリンの拳が百代の腹に突き刺さる。

 

「ぐっ、参り……ました」

 

 その一撃が決着となった。敗北を認めた百代はそのまま意識を失い背中からばったりと倒れるのだった。




感想を見て没シナリオの方が評判よかったので最後の百代とクリリンの会話の部分を差し替えてみました。(差し替え前はエロいだのなんだのの台詞が無くて真面目な流れでした)
よく考えたオイルレスリングの相手とか対戦相手を茶化すことも結構してましたし。

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