悟飯in川神学園   作:史上最弱の弟子

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今回は「悟飯in川神学園」のタイトルに相応しい学園での日常会です。


雑談

「ねえねえ、悟飯君、義経達見に行かない?」

 

「うん、僕も義経さん達には会いたいしね」

 

 一子の誘いに応える悟飯。他に大和、風間、京、クリス、岳人等、風間ファミリーのメンバーも一緒である。

 転校から約半年、悟飯と風間ファミリーとはかなり良好な関係を築けていた。

 元々仲のよかった一子、百代、大和に加え、リーダーの風間はその強い好奇心からマヤリト大陸のことを知りたがりそれをきっかけによく話しをするようになっている。

 岳人は最初、童顔とは言えイケメンの悟飯を敵愾していたが、彼があまり女生徒に興味を示さないことでそれを無くし、彼の筋肉質な体を見て親近感と対抗心を合わせもった感情を抱くようになっていた。まあ、そう悪い関係では無い。

 排他的な性格をしている京やモロも裏表の無い彼のことを嫌ってはいなかった。まあ、仲間達が仲良くしていることに多少の嫉妬心を抱いてはいるようだが。

 そして新しく風間ファミリーに加わったクリスや黛の二人は元々の性格上、真面目で礼儀正しい悟飯の性格に好感触を抱いているようだった。

 そんな訳でまあまあ仲良くなった彼等は特に学内であれば時々一緒に行動することもあるようになっていた。

 

「あれ、マルさんが居るな」

 

 7人が2-Sのクラスを訪れるとその廊下にはマルギッテの姿があった。彼女はクリスの姉的存在でドイツ軍人である。彼女の父親であるフランク中将の公私混同によってクリスの護衛としてこの学校に通っているのだ。

 

「検問だ。ここは通れないと知りなさい」

 

 そして彼女は悟飯達の行く手を塞ぐ。話を聞くと、興味本位で義経達を見に来るものが多く、2-Sのクラスメート達は迷惑をしてるらしい。

 

「私は防衛戦も完璧だ。諦めて帰りなさい」

 

「あの、だったら義経さんに聞いて見てもらえませんか?僕、彼女とは前に会ったことがあるんで、会いに来たと伝えて欲しいんです」

 

 そこで悟飯が単なる野次馬では無いと主張する。その言葉を聞いてマルギッテは少し考えるそぶりを見せる。

 

「孫悟飯。その言葉に偽りはないでしょうね?」

 

「勿論です」

 

「いいでしょうここで待っていなさい。本人に確認を取ってきます。ただし、私がここを離れてる間に入ろうとすればトンファーの錆びと消えると知りなさい」

 

 悟飯の言葉が虚言で、自分をどかすのが目的の可能性を考え、殺気をぶつけて警告をするマルギッテ。そうしてから教室の中へ入っていく。

 そして教室の扉が閉まり、彼女の姿が見えなくなった所で大和が小声で悟飯に確認を取る。

 

「義経と知り合いだったのか?」

 

「知り合いって程じゃないけどね。こないだの東西戦の時に偶然会って話したんだよ」

 

 それから1分もたたない内にマルギッテが戻ってくると、彼女は悟飯達が教室に入ることを許した。

 

「義経に確認しました。彼女も会いたいそうです。教室に入ることを許可しましょう」

 

「ありがとうございます」

 

 マルギッテに礼を言い教室へと入る悟飯。他のメンバーも同乗する。彼が教室に入ると義経は直ぐに見つかった。義経の側も悟飯の姿を確認し、満面の笑みをもって彼等を出迎えた。

 

「義経さんお久しぶりです。っと、言っても数日ぶりですけど」

 

「ああ、来てくれて義経は嬉しいぞ!!」

 

 旧知のものを除けば未だ友人の居ない義経は多少なりとも親しくした悟飯との再会を喜んでいるようである。

 そして義経の側に居た弁慶が言葉を漏らす。

 

「ふーん、この人が義経と互角に戦った人なんだ」

 

 どうやら義経から悟飯のことを聞いていたらしい。悟飯が百代に近い位の強さと思っている風間ファミリーの面々はそれを聞いても驚かないが、聞き耳を立てていた2-Sのメンバー達は当然驚いた表情を浮かべた。できる限り自分の戦闘能力を低く見せたい悟飯は慌てて弁明の言葉を発する。

 そしてその行動が結果的に思わぬ所へと波及することになる。

 

「あっ、いや、互角って言っても僕は義経さんの攻撃を必死に防いでいただけだから」

 

「聞いたよ。義経が敵と間違えて攻撃しちゃったんだってね。主に代わって謝罪するよ」

 

「べ、弁慶」

 

 予想外な恥をさらされ情けない表情を浮かべる義経。彼女の哀れな姿に何かフォローしようとする悟飯。だがそこで彼の目にふとある物が入った。それは義経の席の机の上に置かれた。野鳥の観察日誌のレポートだった。義経が自己アピールとして自己紹介の場で披露しようとし、当然と言うか見事に不評を喰らった代物である。

 

「あっ、それは!!」

 

 悟飯の視線の先に気づき、ますます慌てる義経。彼女自身は何が悪かったのか理解していなかったが、それが不評だったことはわかっている。そんな代物を見つけられてますます慌ててしまう。しかし悟飯は彼女の様子に気づかずそれを手に取って言った。

 

「ちょっと見せてもらっていいかな?」

 

「あわわわわわ」

 

 動揺する義経。見せたくないと思いつつも性格上、拒絶の言葉を言うことができなかった。顔を真っ赤にしながら肯定の意を示すように頭を下げてしまう。

 

「おっ、なんだ」

 

「野鳥の観察日誌?」

 

 悟飯が手に取ったことで興味を持つ岳人達。資料を除きこみ、そしてそのつまらなそうな内容に直ぐに興味を失った。唯一悟飯だけは真剣にそれに目を通し続ける。

 そして彼が資料に目を通す間、義経が緊張と恥ずかしさから行動不能状態になってしまったため、彼女を一旦放って、弁慶や与一の方に話しかける風間ファミリーのメンバー達。弁慶に試合を申し込む一子や、彼女にアプローチをかけて当然振られる岳人。与一の厨二病を見て古傷の痛みに悶え、それを愛でる京と言ったやり取りが繰り広げられる。

 

「義経さん」

 

 そうしている内に資料にひととおし目を通し終わった悟飯、彼は義経の方に向き直った。

 

「な、なんだ」

 

 何を言われるのかと不安と緊張で一杯な義経。そんな彼女に向かって悟飯は真剣な表情で言った。

 

「これ凄くよくできてるね。着眼点もいいところをついてるし、面白いよ」

 

「「「えっ?」」」

 

 悟飯の感想に義経と弁慶、そして与一、主従の驚きの言葉が重なった。三人ともまさか褒められるとは思って居なかったのだ。

 

「幾つか質問したいことがあるんだけどいいかな?」

 

「あ、ああ、何でも聞いてくれ!!」

 

 冗談やお世辞でなく悟飯が真剣に興味を持っていてくれることに気づき、自分の努力の成果が評価されたことに嬉々として応じる義経。

 そして二人の間でしばらく質疑応答が繰り広げられる。

 

「どうもありがとう。義経さん」

 

「気にしないでくれ。いや、寧ろ義経は嬉しい!!」

 

 一度はこき下ろされたものが評価されたことに感激する義経。そんな彼女に聞こえないようにして弁慶が悟飯の側により囁く。

 

「よくあんなずれまくったものに興味を持ったね」

 

「いや、凄くいい出来でしたよ。僕は将来は学者を目指しているので、よく論文を読んだりするんですけど、もう少し詰めれば大学の卒業論文としても出せるレベルのものだと思います」

 

 理解できないと言った声で言った弁慶に対し、答える悟飯。義経の作ったものは自己紹介でアピールに使うものとしては的外れでも真面目な研究レポートとして見ればよいものであったようである。

 

「ふーん、強いだけじゃなくて、頭もいいんだね」

 

 それを聞いて馬鹿にしてしまった義経に対し、内心でちょっとだけ謝りながら、自分達が気づかなかったことに気づいた悟飯に感心した様子を示す。一方悟飯の方も彼女を褒める言葉を発した。

 

「それは弁慶さんの方もじゃないですか。確か学年5位以内に入らないと退学になっちゃうんですよね?」

 

 弁慶は川神水と言うアルコールの入っていないのに何故か酒のように酔っ払うことのできる不思議な水を常飲している。ノンアルコールとは言えそのようなものを学校内で飲むのは本来なら許されないのだが、成績テストで学年5位以内に入ることを条件に特別に許可を得ているのだ。

 

「最初は3位以内にする予定だったんだけどね。条件を出す前に前回の定期テスト上位者の点数を確認しておいてよかったよ」

 

 1位の悟飯と2位の葵冬馬はほぼ満点。3位の九鬼英雄も普通なら学年トップでも何の不思議も無い点数であり、流石にこの3人に勝つのは難しいと判断した弁慶はキリのいい5位以内を条件として希望し、学園側もこれを認めたのであった。

 

「よーしつーねちゃん、たったかおー☆」

 

 そこで唐突に新たな乱入者が現れる。川神百代であった。彼女がこの場に現れるのはある意味当然、強者との戦いに餓えている彼女が義経に注視しない筈がなかった。

 ちなみに一緒に修行するようになって1ヶ月の間、彼女は悟飯とは戦っていない。それは一子には未だ悟飯の真の実力は隠した状態なためだった。実力がばれないように彼女の目の前では戦えないのだ。これは一子は決して秘密を他者にばらすような性格はしていないが、同時に上手く隠しておける性格でもないと判断したからだった。

 

「…来たかやっぱり」

 

 百代の襲来に難色と警戒を示す弁慶。そこで場を収めるために九鬼家の執事、クラウディオが現れる。

 

「武神は、義経様達に勝負を挑みたいとお見受けしました。しかし今はお断りします」

 

「そうですか、じゃあ仕方が無いですね。……なんて引っ込むような性分じゃないんですよ。戦わせてくださいよ」

 

 しおらしく素直にひくような態度を一旦見せた後、直ぐにそれをひるがえして詰め寄る百代。それに対し、クラウディオは冷静さを崩さず理由を説明する。

 

「勿論戦いから逃げているわけではありません。しかし何せ源義経、学内外から挑戦者が現れるでしょう。学園内の人間を相手にするのはいいですが、外部からの挑戦者は膨大な数になるでしょう。そこで数を絞る必要があります」

 

「人気者ですからね。いちいち外の人間まで相手にしていてはきりが無いのはわかりますが」

 

 納得行く理屈を突きつけられ詰まる百代。そこでクラウディオが提案する。

 

「そこでこういうシステムを作ります。義経と真剣勝負で戦いたい外部の人間は、まず武神と一戦交えて、認められた人間に限定する、と。力を貸して頂けますか?」

 

 それはとにかく戦いたい以前の百代であれば直ぐに食いつく提案だった。しかし今の彼女はまだまだ雑食気味とはいえ、以前よりも戦いに質を求めている。少し考え、彼女は別の提案をあげた。

 

「そうですね。その条件、私に認められるか、私の妹に勝つことが条件と言うのに変更してはもらえませんか?」

 

「えっ、アタシ!?」

 

「ほう」

 

 行き成り自分に話題が振られ驚く一子と興味深そうな表情を浮かべるクラウディオ。

 

「身内びいき抜きでも妹は大分強くなってきています。妹に勝てるなら義経に挑む資格はある。私がそう保証します」

 

「武神のお墨付きならば問題ないでしょう。その条件で了解致します。一子様もそれでよろしいですか?」

 

「は、はい!!」

 

 本人の意思を確認するクラウディオ。一子はそれに肯定の意を返す。

 そしてそこで悟飯が百代に尋ねた。

 

「百代さん、どうしてあんな提案をしたんですか?」

 

「一子にも出来る限り経験をつませてやりたいと思ってな。まあ、弱い奴の相手ばかりしても詰まらないから数を減らしたかったのもあるが」

 

 現在、一子は悟飯と百代の両方から指導を受けている。そんな彼女にとって、吸収した技術を試す場である実践経験を多く積むことは成長を促進させる可能性が高い。

 そして百代自身は雑魚相手でも良いので少しは戦いたいと思うが、同時に弱い奴の相手ばかり沢山するのは飽きて面倒なだけとも考えている。

 ならば半分ずつ位に分けて戦えば姉妹揃って幸せではないかと思ってのアイディアだった。

 

「百代さんも結構色々考えてるんですね」

 

「んー、なんだ悟飯。その言い方だと私は普段、何も考えていないみたいじゃないか」

 

 悟飯の失言に絡む百代。無論、本気で怒っている訳ではないが、このままではめんどくさいことになると焦った悟飯は話を逸らす何かいい話題は無いかと必死に考え、とっておきのものを思い出す。

 

「そ、そうだ。実は、こんどマヤリト大陸から知り合いがこっちに遊びに来るそうなんですよ!」

 

 その発言に百代ばかりでなく、その場に居た者達が皆、彼に注視した。マヤリト大陸はその外に住む者にとっては地球最後の秘境。そこに住んでいる住人と言うだけで注目を集める対象になるのだ。興味津々な態度を表面に出して一子が尋ねる。

 

「ねえねえ悟飯君、その人ってどんな人なの?」

 

「その人は僕のお父さんの親友で、僕にとってはお兄さんみたいな人ですよ」

 

 その人物に対し、自分との関係を簡単な説明をする悟飯。しかしその説明には百代と一子に取って一番重要な点が含まれておらず、その点について百代は問いかけをする。

 

「その人は武術家なのか?」

 

「ええ。武天老師様って言うマヤリト大陸では伝説的な武術家の弟子だった人で、僕のお父さんのライバルでもあった人です」

 

 その答えを聞き、百代は興奮を隠せなかった。マヤリト大陸から来るという人物が嘗て悟飯から聞いた自分よりも強い武術家の一人なのだと確信したからである。

 

「なあなあ、悟飯、俺もその人に合わせてくれよ」

 

 冒険家であり、メンバーの中でも最もマヤリト大陸に興味を持っている風間が悟飯に詰め寄る。しかし、それに対し悟飯は申し訳無さそうな顔をした。

 

「すいません、こっちには1日しか滞在しないそうなので。上手くあえるかどうかは」

 

「おいー、期待させといてそれはないだろー」

 

 露骨に不満そうな顔をする百代。それを見て悟飯は慌ててフォローする。

 

「あっ、いえ、一子さんと百代さんに会ってもらうお願いはしました。二人ともマヤリト大陸の武術には興味があるでしょうし」

 

「ええー、ずりぃー」

 

 悟飯の言葉に今度は風間が不満を上げる。

 そして岳人がジト目になって言った。

 

「悟飯、二人だけにゴマするあたり、おまえやっぱ一子とモモ先輩に興味あるんじゃねえ。てか、まさか姉妹丼とか狙ってるんじゃ「教育的指導!!!」」

 

 危ない発言をしようとした岳人が百代の一撃を受けて遥か、遠くへと飛んで行く。

 それに対し、一子は不思議そうな顔をした。

 

「姉妹丼? それってどういう食べ物なの?」

 

「ワン子は知らなくていいよ」

 

 姉妹丼を鶏肉と卵を使った親子丼の類似品か何かなのかと考える一子に対し、京は彼女の耳を塞ぐジェスチャーをしながら知らなくていいと諭す。

 

「そう言えば孫はマヤリト大陸の出身なんだってね。折角だから色々教えてよ」

 

 そしてそこで弁慶が話題を振ってきた。そうしてその後はマヤリト大陸のことも含め、色々と雑談をし、親交を深めるのであった。


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