悟飯in川神学園   作:史上最弱の弟子

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悟飯、爆弾発言をされる

「さあ、これでお前を守るものは誰も居ないぞ。僕達は帰らせてもらう」

 

 ミソカッツンを倒し、敵は全て倒したと立ち去ろうとする悟飯。しかしそこで不気味な声が響き渡った。

 

「そうはいかん。お前はこの私の体になるのだ」

 

「なっ、誰だ!?」

 

 驚く悟飯。そしてその声した方を見るとそこには壁に埋め込まれた何かの装置があった。その装置は周囲が透明で中には得体の知れない液体が満たされており、人間の脳みそが浮かんでいた。

 

「このお方こそ偉大な天才科学者Dr.ウィロー。事故で失った体の代わりとして世界最高の頭脳に相応しい世界最高の体を手に入れるためにお前達をここに呼び寄せたのだ」

 

「つまり僕達の体にその脳を移植しようってことか!」

 

「はっ、この美少女の体をそんな風に使おうとはとんだ変態だな」

 

 ウィローの目的、その自分勝手な理由を聞き、嫌悪感を滲ませる二人。

 

「ふん、そんなことを言っていられるのも今の内よ。Dr.ウィローの偉大さ、その目に焼き付けるがいい!!」

 

 声高に叫ぶコーチン。研究所がまるで地震でも起きたかのように激しく揺れる。そして脳の周りの壁が崩れ、そこから巨大なロボット、否、中に臓器を埋め込んだ全長10メートル程のサイボーグ体がその全身を現したのだ。

 

「ゲームで言うならこいつがラスボスって訳か」

 

「体が機械の所為か気を感じない。気をつけてください百代さん」

 

 異様な姿の相手に対し、警戒する二人。何せ気を感じられないため、強さの予測がつかないのだ。しかし相手が敵意を持っている以上、何時までも動かずに居る訳にもいかない。相手の強さを探る意図も込め、百代が先行して攻撃を仕掛ける。

 

「川神流、星砕き!!」

 

 百代の手から放たれたエネルギー弾。それに対し、ウィローは蟹のハサミのような形の腕を振るい、攻撃を弾き飛ばして見せる。

 そして無造作に弾かれたそのエネルギー弾は運悪く側に居たコーチンに向かって直撃した。

 

「なっ、Dr.ウィ、ウィロー」

 

 エネルギー波を受けコーチンの体の表面は全て吹き飛ばされる。するとその中より機械の体が露出した。

 Dr.ウィローの作ったロボット。それがコーチンの正体であった。

 そして損傷は表層に留まらなかったらしく、彼はその動きを永遠に停止するのだった。

 

「ロボットだったのか。それにしても、自分のために尽くした味方を……。なんて奴だ」

 

「外道だな。だが、私の全力の攻撃をああ簡単に弾くとは厄介だぞ。悔しいがこいつも私より強いらしいな。本当に世界と言うのは憎たらしい程広いな」

 

 ウィロー外道さに怒り、またコーチンに多少の同情を抱きながらも、今はそれよりも自分達の身の安全を確保しなくてはいけないと百代は警告し、つい少し前まで世界が狭いと感じていた者が言うとは思えない言葉を漏らす。

 そして悟飯は百代を下がらせ、一人で戦うことを選んだ。

 

「百代さんはさがっていてください。さっきの戦いであまり気が残っていない筈です」

 

「わかった。だが、お前が危なくなったら援護位はさせてもらうぞ」

 

 悟飯指示に対し、彼の言う通りに力を消耗していた百代は大人しく引き下がる。その時、彼女は一つの思惑を秘めていた。それを悟飯の力を改めて見ること。

 

(前回との私との戦い。思い返してみればあの時ですらお前は未だ全力を使わず力を残しているように見えた。折角の機会だ。お前の真の力を見定めさせてもらうぞ)

 

 百代が下がり、一対一でウィローと退治する悟飯。そんな彼目掛けてウィローのハサミ型の腕が振るわれる。それに対して悟飯は自らの右手を出し、それだけで受け止めて見せた。

 

「何!?」

 

 巨大なサイボーグ体と生身、圧倒的な質量差を無視し自らの腕が受け止められたことに驚愕の声をあげるウィロー。一方、悟飯は相手の攻撃を必死に受け止める振りをしながら伝わる圧力でウィローの力を推し量っていたのである。

 

(それ程のパワーじゃない。多分、ナメック星で戦ったリクームって奴よりも少し弱い位だ。これなら!!)

 

 相手の力量を見切ると悟飯は指の形を受け止めるものから掴むものへと変える。そしてそのまま片腕だけでその全身の巨体毎、ウィローを宙空へと持ち上げて見せた。

 

「何!?」

 

「てりゃあああああ!!!!!!!」

 

 またもや驚愕の声をあげるウィロー。しかしそんなものは無視し、勢いよく振り回し、そのまま壁に叩き付けた。高速で投げ飛ばされたため、単にぶつかるだけでなくその全身が壁にめり込む。

 

「たあああああ!!!!!!!」

 

 振り回された勢いで片方の腕が半分取れかけた状態で壁に貼り付けられた状態のウィローに対し、そのボディに両足を揃えた悟飯の飛び蹴りが放たれる。装甲が大きく陥没。その後、更に連続パンチをお見舞いされる。この続く攻撃でウィローの金属でできた体をボコボコにする。そこで一端攻撃を止め、地面に着地する悟飯。

 

「グレートサイヤマン!!!」

 

 攻撃が止んだことでウィローが反撃をする。サイボーグ体故、恐らく痛みは感じないであろうが一方的にぼこられた屈辱からかその声には激しい怒りがこもっていた。

 全速で接近しながらその勢いを乗せて残っているもう片方の腕を振るう。これならば流石に受け止めきれないと考えたのだろう。

 

「はっ!!」

 

 それに対し悟飯はその腕を蹴り上げた。無理やり進行方向を変えられたことにより、加わっていた勢いがそのまま負荷となる。その結果、関節からへし折れてちぎれ、ちぎれた腕の先は悟飯達の横を抜けて壁にまで吹っ飛んでいった。

 

(そろそろ決着をつけるか)

 

 両腕が使えない状態となり、胴体を陥没させられ、これ以上戦えるような姿には見えなくなったウィロー。悟飯はとどめの一撃を放とうとする。しかしその瞬間にウィローの胴体が光を発した。

 

「!!」

 

 胴体から全力のエネルギー砲を放出したのだ。

 それはべジータと戦った頃の悟空の3倍界王拳を使ったかめはめ波さえも上回る程の威力。百代と戦った頃の悟飯であればその一撃を受けてしまっていたかも知れない。そうなった場合、悟飯自身はともかく、その背後に居た百代の命は無かっただろう。しかし修行を再開したことによって彼の戦いの感は以前よりも戻っていた。瞬時に反応し迎撃の動きを取る。

 

「波!!!」

 

 エネルギー砲に対し、かめはめ波をぶつける。

 ウィローの放ったエネルギー砲の2倍を超える威力で放たれたその一撃は、そのままウィローを飲み込み、そのサイボーグボディは跡形も無く消し飛ばすのであった。

 

「ふぅ、終わりましたよ百代さん」

 

 こうして戦いは終わった。そして悟飯が百代の方を振り返ると彼が勝利したにも関わらず、それを喜ぶ様子が見られない。変わりに何か考え込んだ表情を浮かべていた

 

「あの、百代さん?」

 

「あっ、いや、それじゃあ、帰るとするか」

 

 色々な意味で心配そうに尋ねる悟飯に帰ろうと返す百代。気になりながらも悟飯はそれに同意する。

 

「ええっ、そうですね。一子さん心配してますよ」

 

「一子に伝わってるのか? もしかしてじじいにもか?」

 

 自分が誘拐されたことの脅迫が伝えられたことを知らない百代に悟飯は彼女にとって残酷な答えを返す。

 

「ええ、勿論」

 

「うわー、じじいの奴、怒るだろうな。」

 

 待っているだろう説教を予想し、一気に憂鬱になる百代。

 

「はははっ、まあ、それはしょうがないですよ」

 

「まあっ、確かに今回は私が迂闊だったからな。仕方ない、大人しく説教を受けるとするか」

 

 流石に今回は自分の行動がまずかったと理解しているらしく、珍しく愁傷な態度を見せる。そこでふと表情を変えた。

 

「ところでどうやって帰るんだ」

 

「あっ、考えてなかった。百代さん一人位なら抱えて飛べるけど……」

 

 武空術で百代を抱えて飛ぶのが一番簡単だが、女の人相手には色々まずいと言う位の常識は流石に悟飯にもある。胸などの際どい部分をさけて両脇の辺りを抱えて飛ぶと言う手もあるが、その状態で速く飛ぶのは危ないため帰るのに相当時間がかかることになる。

 何かいい方法は無いかと考えある存在を思いつく。

 

「あっ、あれがあった!!」

 

 そこで悟飯が取り出したのは小さな白いカプセル、ホイポイカプセルだった。中には川神学園編入時に入学祝としてブルマから貰ったジェットフライヤーが入っている。

 

「おっ、お前もそれ持ってたのか? ホイポイカプセルって奴だろ?」

 

 それを覗きこみちょっと得意気な顔で言ってみせる百代。それに対して期待通り驚いた悟飯を見て彼女は満足そうな顔になる。

 

「あれ、百代さん知ってるんですか? こっちじゃ、珍しいと思ってましたけど」

 

「コーチンの奴が持ってたんだよ。こっちに来る時に使ったのもそいつだ。あっ、そう言えばあいつ死んでもう使わないだろうし、探してもらって言っちゃてもいいんじゃないか」

 

「だ、駄目ですよ!! 持ち主が死んだからって勝手に持って言ったら泥棒です!!」

 

「わかったわかった。冗談だって、そんなことはしないさ」

 

 百代の言葉に慌て、怒る悟飯。半笑いの困り顔で彼を宥める百代。

 そして彼が落ち着いた所で彼女はある決意を持って爆弾を投下した。

 

「そう言えば礼を言うのが未だだったな。助けに来てくれて感謝するぞ”悟飯”」

 

「いえ、どういたしまして」

 

 衝撃的なことを言ったつもりだったのに普通に返事を返され、百代は軽い頭痛を覚えた。

 そして気を取り直して改めて口を開く。

 

「……さらっと言い過ぎたか。今、私はお前の名を呼んだんだが」

 

「えっ、百代さん元から僕のこと悟飯ってよんでましたし……」

 

 そこでようやく気づく。今、ここに彼は孫悟飯としではなく、グレートサイヤマンとして居ることを。

 

「ど、どうして僕の正体を!!」

 

「そりゃあ、声でまるわかりだからな。後、気でもわかるぞ。はっきり言えば気づかない振りをしていただけで最初からバレバレだったな」

 

「そ、そんな。あの、このことは」

 

 最初からばれていたということに二重にショックを受け止めながら、何とか口止めをお願いしようとする悟飯。そんな彼に百代の方から提案する。

 

「黙っていて欲しいって言うんだろ。いいぞー、それどころか今後、他の奴に秘密がばれないよう協力してやってもいい。ただし……」

 

「いぃぃぃぃぃぃぃーー!!!!!????」

 

 百代の口から飛び出した条件を聞いて、そのあまりに予想外な内容に悟飯は大声を出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、百代が誘拐されてから1ヶ月が過ぎた。その間に風間ファミリーに2名の新メンバーが加わったり、その関係者が2-Sに転校してきたりと色々と変化が起きたが、悟飯にとってはもっと大きな変化があったのである。

 その変化はと言うと。

 

「それじゃあ、今日も修行頑張りましょう!! 悟飯君、お姉様!!」

 

「お、はりきってるな妹。しかし悟飯の名が先に来るとは姉、ちょっとジェラシー」

 

 百代が土曜の修行に加わったことである。ウィローとの戦いを見て、自分と悟飯との力の差に改めて気づいた百代はこのままでは追いつけないと判断し、悟飯の強さの秘密を盗むことにしたのである。ちなみにその辺は隠さず伝え、きちんと悟飯の了解を取っていた。

 

「ははっ、じゃあ、今日は何時もどおりランニングから行きましょうか」

 

 さてこの先、彼等3人、それぞれがどこまで強くなるのか。

 そして3人の関係がどう変化して行くのか、それはまだ先になって見なければわからない。




これにてDr.ウィロー編終了です。
次回より武士道プラン編になります。

PS.本文最後の一行は作者にも真剣にわからないです。

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