インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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暗躍する者

side一夏

 

楯無と簪の決闘後、

俺は独り管制室に籠り、データの解析を行っていた。

 

アイツらの関係がどうなろうと、俺が知った事では無い、

俺が最も知りたいこと、それは兵装の特徴、そして欠点だ。

 

簪が見せた装備、アイツはライオットストライカーと言っていたが、

この際、名称なんぞどうでもいい。

 

遠近の組み合わせが可能なタイプと来ている、つまり、ソード系とランチャー系を同時に装備し、使用すると言うことだ。

 

しかもよく見てみれば、どちらとも干渉しない様な配置になっているときている、

これを造った奴は、相当腕の立つ技術者なのだと察する事が出来る。

 

両方の特徴を備えているタイプがあるという可能性も否定出来ない、

もし破壊された時の予備に使えるからな。

 

コンソールを弄り、解析を続けている内に、

モニターに解析結果が表示される。

 

「出たか・・・。」

 

やはりな、拡張領域内にもう一つ反応がある、

これで裏は取れた。

 

大体の装備、特性は理解した。

大容量サブバッテリー、もしくはエネルギーが切れた時にリレイズする為の緊急バッテリーが搭載されていると見て間違いない。

 

つまり、バッテリーパックさえ破壊してしまえば、ただエネルギーを喰うだけのポンコツに成り下がると言うわけだ。

 

そして、俺の力量があれば破壊すること等造作もない。

 

「これで戦う事になったとしても、負けん。」

 

ふっ・・・、俺は何を言っているんだか・・・、

仲間と殺し合うような愚かな真似はするはずが無い、が・・・、

備えあれば憂いなしって奴だな。

 

そう思った時、モニターがさざ波を打った様なノイズが走り、

特徴的な髪型をした、巻き眉毛の男の姿が映し出された。

 

『よぉ御大将、元気そうだな。』

 

「久しいな、ルキーニ、先日の件は、巧くやってくれた様で大助かりだ。」

 

奴の名はケナフ・ルキーニ、裏社会では知れ渡った情報屋だが、

今はアクタイオンが抱える情報部のメンバーの一人だ。

 

今は俺にその力を貸してくれる人物の内の一人であり、

信の置ける人物でもある。

 

先日の、亡國企業への情報の意図的なリークも、

彼の手腕を大いに活用させて貰った。

 

お陰で仕事が捗る。

 

『久し振りに腕がなった物でな、

今日はその礼がてら、面白い情報を幾つか仕入れて来たぜ。』

 

「面白い話か、良いだろう、聞こうじゃないか、話してくれ。」

 

恐らく一つ目は亡國企業に関連する事だろう、

本当に重要な事柄は最後の方まで伏せるのがルキーニと言う男だ。

 

『まず一つ目だ、亡國が篠ノ之 束の力を借り、

全世界に対して宣戦布告を近々行う様だぜ、これはガセでは無いという裏も取れている。』

 

「やはりな・・・、堪え性の無い連中の事だ、

早々に仕掛けてくるとは思っていたが、これ程早い時期とはな。」

 

まぁ良い、お陰でこちらも予定を早める事が出来る、

既にこちらの準備は整っている。

 

『二つ目だ、ロウ・ギュール以下数名の技術部からだ、

オーダーしていた代物が完成したとの事だ。』

 

モニターにある装備のデータが表示される。

 

一見、特殊な小型ロケットに見えなくも無いが、

この形状はまさしく・・・。

 

「ほう!あれが完成したのか!素晴らしい!」

 

あれが完成したというならば、

この戦いに勝利は間違いない!!

 

「近い内にアクタイオンに戻る、その時に礼は俺の口から直接伝える。」

 

『分かった、三つ目は亡國企業実働部隊と篠ノ之 束が潜伏していると断定出来た場所だ、

内面図と位置まで判明している。』

 

そんなものまで手に入ったのか・・・、

ルキーニの腕が良いのか、それとも相手がわざと撒いた罠か・・・。

 

『一応、何度もリサーチしたが、疑いのある事は拭いきれんな、

御大将ならば大丈夫かと思うが、そういった兵器の存在があると留意した方が良いだろうな。』

 

「承知した、引き続き調査を続けてくれ、

こちらも対応策を用意しておこう。」

 

他の諜報員にも探らせるとするか、

こういう事は、何事も万全の状態でなければならないからな。

 

『それから・・・、以前から頼まれていた情報だが、

八割片集まって来ている、マティスも御大将に依頼された事の準備を行っている、

その時までには必ず十分、いや十二分な情報を集めてくる。』

 

「了解した、アンタの手腕を、俺は信頼している、

必ずやり遂げてくれると信じている。」

 

『それじゃあな。』

 

ルキーニからの通信を切り、

送られてきたデータを全てストライクEに移す。

 

そして、コンソールを操作し、

使用した経歴、データを削除する。

 

これでこの情報を知るのは俺だけだ、

監視カメラも切り、尚且つ扉もロックしておいた、

盗聴器の類いも捜し、破壊しておいたから憂いは無い。

 

さて・・・、そろそろ次の一手を打つとしようか・・・。

 

さぁ、漸く序章が始まる・・・、

本当の恐怖の序章がな・・・。

 

sideout

 

noside

 

管制室付近の曲がり角に身を潜めていた影が、

一夏が管制室から立ち去った事を確認し、

静かに部屋に入っていく。

 

モニターを作動させ、コンソールを操作し、何か打ち込み始める。

 

「やっぱり・・・、データは消されてる・・・、抜かりない・・・。」

 

その者が調べていた物、

それは先程、一夏が行っていた事の裏を取るための、

通信経歴及びモニターに表示されたデータだ。

 

だが、一夏は抜かりなく漏洩を防ぐためにデータを全て消去していたのだ、

いくら探そうとも、いっこうに見付かる気配が無かった。

 

「やっぱり・・・、これを使うしか無い、か・・・。」

 

垂れていた袖の中から、

USBの様な物を取り出し、コンソールに差し込んで操作を再開する。

 

差し込んだ物、それは失われたデータを復元する為のキットであり、

端末無いに僅かに残留する破片から再生することが可能である。

 

モニターに表示される物が変わり、

0%と言う表示が現れる。

 

恐らくは、データの復元率の表示であるだろう、

数字が徐々に増えていくに従って、データも復元されていく。

 

そして、遂に数字が100%に達した時、

その者は別のUSBをコンソールに差し込み、データを移す作業を開始した。

 

「これで、あの男を葬れる・・・!!」

 

自身の誇りを踏みにじった男を、

地獄へと落とす為には、日本政府に彼のやっている事をリークすれば良いだけの事だ。

 

そうすれば、日本政府は彼を捕らえ、モルモットとして使う為の口実を獲られる、

彼女にとっても、邪魔者が消えて都合が良い。

 

データの移行率が100を示そうとした、まさにその時・・・。

 

一発の銃弾がその者の左脚を撃ち抜いた。

 

「ギャァァァッ!?」

 

焼ける様な激痛が走り、

その者は絶叫しながらも床に倒れこみ、踞った。

 

「やはり、待ち伏せと言うものは良い、

油断した相手を捉えるには実に有効な手段だったな。」

 

その者が扉の方を向くと、

そこには小銃を構えた一夏が立っていた。

 

「織斑・・・、一夏ぁぁ・・・ッ!!」

 

「クックックッ・・・、お前は実に都合良く動いてくれたよ、

俺の望むシナリオ、そのままにな。」

 

追撃とばかりに、二発立て続けに撃たれた銃弾は、

反撃できない様に見事に両腕を撃ち抜いた。

 

「やはり、尻尾を自分から出したな、

亡國の決起を待ち、俺を戦いに出してから日本政府をけしかければ良いものの、

実に愚かで扱い易かったよ、お前は。」

 

コンソールを操作し、何かを実行しかける。

 

無論、USBデータは破壊済みである。

 

「日本政府にデータを送信できる直前まで設定しておいた、

どういう事かは、愚かなお前でも理解できるだろう?」

 

「・・・!!お前ぇぇぇッ!!」

 

「クックックッ・・・、ハーッハッハッハッ!!

残念だったな!!お前の策略敗けさ!!

俺が欲しかったのは、日本政府に対しての戦闘的口実だ!!

間違いなく日本政府は篠ノ之 束を取り込もうと、亡國企業に着くだろうよ!!

あぁ実に愚かだ!!」

 

一夏の狙いの一端に触れたその者は叫ぶ事しか出来たかった。

 

彼はその者に歩みより、

武器になりそうな物は全て取り払い、腕に手錠をかけた。

 

「おっと、ここで死んでもらっては困るんだよ、

お前にはまだ大事な役目が残ってるんだよ・・・、なぁ、布仏本音?」

 

sideout

 

noside

 

「遂に・・・!!遂にこの時がやって来た!!」

 

薄暗い格納庫の中で、亡國企業実働部隊のトップ、

スコール・ミューゼルは両手を高く掲げ、宣言する。

 

その眼前には、静かに佇む一般兵、IS操縦者の女性、

そして百を優に越えようかというほどの無人機の数々だった。

 

「この仮初めの平和に腑抜け、腐りきった世界に鉄槌を喰らわせる時が来たのだ!!

我々は絶対的な力を持ち、世界をこの手で救済するのだ!!」

 

力強く演説を行うスコールには、

強いリーダーシップを垣間見る事が出来る。

 

「我々の力を!世界に示すのだ!!」

 

『青き清浄なる世界のために!!』

 

彼女の突き上げられた拳に呼応するように、

彼女の眼前に立つ者達は、雄叫びをあげ、拳を突き上げた。

 

それに満足したかのように、スコールは彼等に背を向け、

その場を歩き去った。

 

「ふ~ん、やっぱりすーちゃんは凄いねぇ~。

この世界の頂点に立つに相応しいよ~♪」

 

「あら、見ていたのね束、そんなにおだてても何も出ないわよ?」

 

通路で束と会った彼女は、

軽口を言い合いながらもゆっくりと通路を進んでいく。

 

「アマツの調整も完璧だよ~!!何時でも戦える様にカスタマイズしておいたよ!!」

 

「ありがとう、本当に助かるわ、ところで、ペル・グランデのデータ、

あれを使った機体は出来上がった?」

 

「もう完璧!!私が操るための調整もバッチリ!!」

 

スコールと機体の状況を確認しあい、

モニターが大量に設置されている部屋へと入った。

 

「これからよ、織斑一夏への復讐、そして世界をこの手に収めるための聖戦は。」

 

「にひひ~、楽しくなりそうだね~!!」

 

モニターを操作し、

とある区画の映像を表示させる。

 

そこには、人間が乗っているかの如く、

機体の形状を完全に維持した金色のフレームを持つ機体と、

同じく形状を維持した紫の機体があった。

 

「・・・、ところで、束?本当に彼女は来るの?」

 

その美しく整った顔を僅かに歪め、スコールは束に小さく問うた。

 

スコールがいう彼女とは一体誰なのかは、全くもって見当がつかないのだが、

彼女の様子から察すれば、あまり快く思っていない相手なのだろうか・・・。

 

しかし、それは彼女にしか分からない事なのである。

 

「来るよ、きっとね・・・、きっと、力を求めてね・・・。」

 

静かに、だが何かを確信した表情で、

ある一つのモニターに目を移した。

 

そこには、特徴的な翼を背負う漆黒の機体が、静かに佇んでいた。

 

その様子はまるで、いまだ見えぬ主の来訪を、

心待にしているかの様でもあった・・・。

 

「さぁ・・・、始めようよ、新たな世界の始まりをね・・・。」

 

 

この翌日、亡國企業は全世界に対して宣戦を布告した。

 

誰かの思惑が、そうさせた事にも気付かないままに・・・。

 

sideout




次回予告。

亡國企業の宣戦布告に対し、
一夏達は行動を興す準備を始める。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
処刑

お楽しみに!!

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