インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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姉妹喧嘩 後編

side楯無

 

「「はぁぁぁっ!!」」

 

タクティカルアームズを振り、

簪ちゃんの機体とぶつかり合う。

 

威力が高いタクティカルアームズは、

その巨大さ故に取り回しはそこまで良くない。

 

それに対して、簪ちゃんのビームトンファーはリーチは短いけど、

素早い攻撃が出来る・・・!!

 

一長一短が出やすい装備な分、

力量に左右されやすい事は重々承知している。

 

だけど、ちょっとこれは予想外ね・・・。

 

重さと威力で押し込んでるんだけど、

簪ちゃんはあまり切り結ぶ事をせずに、

受け流す事に徹している。

 

なんとか体制を崩されない様に意識はしてるけど、

本当に厄介ね・・・!

 

「そこっ!!」

 

簪ちゃんは両肩から新たにビームサーベルを新たに二本引き抜き、

四刀流で攻め立ててくる。

 

手数が多い分、捌くのが本当にキツいわね・・・!

 

でも、なんとかしてみるわよ!!

姉としても、一人の戦士としても負けたくないから!!

 

タクティカルアームズを押し込んで、

簪ちゃんの体制を僅かに崩して、胴に蹴りを入れて距離を開く。

 

「くぅっ・・・!負けない!!ライオットA!!」

 

って!?

ちょっとちょっと!?二つのストライカーを同時に使うってアリィ!?

 

遠距離攻撃も近距離攻撃も強いって卑怯じゃない!!

 

と言うか、これだけバカスカ撃って、尚且つ格闘戦の装備、

エネルギーがどうして保っているのか疑問ね・・・!

 

「そこっ!!」

 

「くぅっ・・・!!」

 

右側の大型ビーム砲が火を噴き、ビームの奔流が迫ってくる。

なんとかタクティカルアームズで防ぐけども、体制を崩しそうになる。

 

本当に厄介ね・・・!

どう戦おうかしら・・・!?

 

そう言えば・・・、

ブルーフレームのカタログスペックに目を通した時に、

セカンドLとセカンドリバイには面白い機能があったわね・・・。

 

理論上は出来る、って言う前提は付くんだけども、

やらなきゃこのまま悪い流れになりそうだからね!

 

「これで、どうよっ!!」

 

後退しながらも、タクティカルアームズを回転させながら投擲する。

 

スラスターが一緒くたになってるから、

そんじゃそこらの事じゃあ止まる事は無いらしい。

 

「ッ!!」

 

簪ちゃんはスラスターを吹かして、

タクティカルアームズを回避して、こっちに向かってくる。

 

かかった!!

思考を集中し、タクティカルアームズのスラスターを噴射して、

簪ちゃんの背後から攻撃を仕掛ける。

 

タクティカルアームズは、一定の距離の範囲内なら、

セシリアちゃんが操るドラグーンの様にコントロールが出来るらしい。

 

もっとも、出来ると言うだけで、

私の能力が足りてなければ全く無意味で終わるんだけどね。

 

「嘘っ!?」

 

反応するけど時既に遅しと言うべきか、

背中に直撃して、残っていたコンテナと基部をも破壊した。

 

それらしく見せるためにアーマーシュナイダーを握ってて正解だったわね。

 

「これで、チェックメイトよっ!!」

 

手元に帰って来たタクティカルアームズをしっかりと保持し、

スラスターを全開にして一気に迫る。

 

体制を崩してる今の簪ちゃんでは、

避ける事も儘ならない筈!!

 

そう思いながらも振り抜こうとしたタクティカルアームズは、

冗談ではないかと疑いたくなるほどの出力のビームサーベルに止められ、

二秒経たない内に焼ききられようとしていた。

 

「ヤバッ・・・!?」

 

本能的な恐怖を感じ、

タクティカルアームズを手放して距離を開く。

 

なんて出力なのよ・・・!!

あんなの反則どころの話じゃないわよ!

違法ってレベルよね・・・!!

 

と言うか!?

あんな出力を続けてたら速効でビームサーベルの柄が焼けただれるわよ!?

いいえ、それどころか、エネルギーが持たないわよ!!

 

だとしても、あんなの喰らったらエネルギー処か、

私の身体自体がどうなるか分かったもんじゃないわよ!!

 

あれ・・・?

私凄いピンチじゃないかしら・・・?

 

タクティカルアームズ壊されて、

アーマーシュナイダーであんなのとやりあうなんて無謀も良いところ。

 

サード?リバイ?

どっちにしてもあんなのと切り結ぶには、耐ビームコーティングの効き目が足りない・・・!!

 

でも・・・!やるしか無い!!

 

セカンドLをサードに変更して、

左背のビームライフルを引き抜いて発砲しながらも、

右腕の耐ビームソードを展開、スラスターを全開にして簪ちゃんの機体に向かっていく。

 

簪ちゃんも超ハイパービームサーベル(命名私)を構えて、

こっちに向かってくる。

 

こっちのエネルギーもやや心許ない。

恐らくはこれが最後の一撃になる!!

 

なら、私は私が持てる全ての力をぶつける!!

 

「「はぁぁぁっ!!」」

 

私が撃ったビームは、全て超ハイパービームサーベルに切り裂かれ、

光刃はブルーフレームに直撃、耐ビームソードも簪ちゃんの機体に突き刺さった。

 

ブルーフレームのエネルギーは瞬く間に底を突き、

簪ちゃんの機体のエネルギーも同時に底を突いた。

 

PICが切れるけど、

推進剤を積んでるから、スラスターを調整して吹かし、地面に降り立った。

 

『試合終了!!両者エネルギー残量0!戦闘続行不能と判断し、引き分けとする!!』

 

ファイルス先生のアナウンスが響き渡り、

試合の終了を悟らされる。

 

負けなかった、でも勝てなかった・・・、

簪ちゃんは、ちゃんと私の隣に立っている、それを改めて思い知らされた。

 

「強くなったわね、簪ちゃん・・・。」

 

「お姉ちゃんも、凄く強かったよ、

今回は勝てると思ってたのに・・・。」

 

「意地があるからね、まだ負けられないわよ。」

 

姉として負ける訳にはいかなかった、

だけど、それ以上に妹の力を知れて、楽しかったのも事実。

 

「だけど、凄く楽しかったわ・・・、

簪ちゃんは、私の後ろじゃなくて、隣に立ってるって分かったから。」

 

そう、分かったからこそ、寂しい気持ちも勿論ある、

だけど、いい加減妹離れしなければいけないのだと、言われてる様な気がするのよね。

 

「今まで分かってあげられなくて、ゴメンね?」

 

「ううん・・・、私も・・・、お姉ちゃんの事、避けちゃって・・・、ごめんなさい・・・。」

 

私が謝ると、簪ちゃん頭を下げてくれた。

 

蟠りが、これで解けてくれるといいな・・・、

そう思いながらも、私は簪ちゃんを抱き締めた。

 

sideout

 

side秋良

 

楯無と暫くの抱擁を続けた簪が、

ピットに戻って来た。

 

「お疲れ様、簪。」

 

彼女を労いながらも、

用意しておいたドリンクボトルとタオルを手渡す。

 

「ありがとう、秋良・・・。」

 

体力を消耗しての疲れた色と、

何処か満足げな表情が混在してるけど、

どうやら望みは叶った様だね。

 

ドリンクボトルから口を離し、簪はポツリと語り始めた。

 

「お姉ちゃんは・・・、私の事を思ってやってくれたのは、

前から分かってたつもりだった・・・、でもね・・・。」

 

「でも?」

 

「分かってたつもりだったけど・・・、

やっぱりなんでやるのか、今まで理解出来なかった・・・、

だから、今までお姉ちゃんを避けてたの・・・。」

 

やっぱりね・・・、理解できないのは、

暗闇の中で手探りしてるようで、心許ないし怖い。

 

それだから、なるべく恐怖から遠ざかる為に、

自己防衛本能が働いていたんだと思う。

 

これが長いすれ違いの大きな原因なんだと思う。

 

「でもね、今回の戦いで全部スッキリした、

お姉ちゃんは私の事を、本当に想っててくれたんだって分かったから。」

 

「そっか、簪がそう思ってるなら、楯無もきっと、そう思ってくれてるよ。」

 

「うん♪」

 

そうだよ簪、君が笑っていれば、

楯無もきっと笑い返してくれる。

 

それを忘れないでいれば、君達はずっと仲の良い姉妹でいれるよ。

 

「なら、今日は楯無も誘って、皆で夕食を採ろう、

あぁ、でも兄さんと楯無は離さないとね。」

 

「そうだね。」

 

あの人達、すんごい仲が悪いからねぇ・・・。

原因はなんなんだか全く知らないけどさ・・・。

 

「それじゃあ、着替えて来なよ、

俺は外で待ってるからさ。」

 

「うん、それから・・・。」

 

簪が俺の方に歩いてきて、

柔らかいその唇を、俺の唇に重ねた。

 

「ッ!?」

 

おいおい・・・、俺は兄さんと違って奥手なんだよ。

それも身長差キスなんて浪漫だよね・・・。

 

「えへへ・・・♪ありがと、秋良。」

 

少しはにかみながらも、簪は小走りで更衣室に入っていった。

 

「・・・、まぁ・・・、嬉しい、よ・・・。」

 

今日は良いことずくめだね・・・、色んな意味でさ。

 

そんな事を考えながらも、

俺は荷物を片付けて更衣室の外に向かった。

 

sideout

 

side雅人

 

簪との試合を終え、楯無がピットに戻って来た。

 

「お疲れさん、惜しかったな。」

 

用意しておいたタオルケットと、スポーツドリンクが入ったドリンクボトルを手渡し、

労いの言葉をかける。

 

「ありがと、いただくわ。」

 

ドリンクボトルを受け取り、彼女は喉を潤す。

 

「簪は強かっただろ?」

 

「えぇ、とっても強かったわ。」

 

「でだ、何かを掴んで来れたんだよな?」

 

俺の問い掛けに、楯無はドリンクボトルから口を離し、

何処か哀愁が漂う表情を見せた。

 

「私・・・、ずっと勘違いしてたのかも・・・、

簪ちゃんは妹だから、私が守り続けなきゃいけないって・・・、

でも、それは間違いだった、簪ちゃんも、ただ一人の人間、

独り立ち出来るし、しなきゃいけない・・・。」

 

「そうだ・・・、俺達は一人の人間、いつかは独り立ち出来る、

でもな、お前が簪を想った事は、決して間違っちゃいねぇさ。」

 

妹を想っての事なら、相手にも伝わる、

喩え時間がどれだけかかってもな。

 

「それに、簪がお前を想ってくれてたのも、解っただろ?」

 

「えぇ、もうスッキリしたわ、全部ね。」

 

「良かったな、さ、着替えて来いよ、俺は外で待ってるからな。」

 

このままだと身体が冷えてしまうだろうし、汗も拭いたいだろうから、

俺はさっさと退散しますかね。

 

「あ、待って雅人!」

 

楯無が俺の制服の裾を掴み、呼び止めて来た。

 

「どうした?楯無・・・、ッ!?」

 

振り返った俺の唇に、彼女の柔らかい唇が押し当てられた。

 

冷静にそう伝えてはいるが、かなり衝撃的で、

思わず手に持っていた荷物を落としてしまった。

 

「た、楯無・・・!?」

 

彼女の唇が離れた後も、俺の頭の中はやはり混乱したままだった。

 

「ふふっ・・・、今まで、私は雅人に支えられて来たわ・・・、

私と簪ちゃんを会わせようとしてくれた事も、護ってくれた事も、

今日発破をかけてくれたのも、全部貴方のお陰なの。」

 

「そんな事は・・・。」

 

俺は何もしてないぞ・・・。手柄は全部楯無の物だ。

 

「気付いちゃったの・・・、

私はずっと雅人に分からない内に頼ってたって・・・、

でも、それだけじゃ無いって、今日、はっきり分かったの・・・!」

 

彼女は、何かを決心したかの様に顔をあげ、

俺の目を見つめてくる。

 

その瞳に吸い込まれそうになるが、

意識だけは彼女の言葉を待った。

 

「私は・・・、雅人が、好きです・・・、

ずっと支えてくれた・・・、貴方が好きです・・・!」

 

真摯に、ただひたすら真っ直ぐな眼差しが、

彼女の言葉を嘘ではないと物語っている。

 

「た・・・、楯無・・・!」

 

俺は彼女の名を呼びながらも、

彼女を抱きすくめた。

 

「俺も、楯無が好きだ・・・!

頑張ってるけど、空回りするお前を助けてやりてぇ!

ずっと、お前の傍らでだ!!」

 

この空回りしても、めげずに何度も立ち上がる楯無を、

俺は支えたい、護りたい!!

 

それが俺の本心だ!!

 

「ほ・・・、本当に・・・、私で良いの・・・?」

 

「あぁ、俺は楯無じゃなきゃ嫌だな。」

 

「嬉しい・・・!雅人・・・!」

 

俺の背中に腕を回してくれる楯無をしっかりと抱き締める。

 

その身体は、鍛えられているとは言えども華奢で、

少しでも力を加えてしまえば壊れてしまう様な錯覚に陥る。

 

そうだ・・・、俺がこの世界に来たのは、

こいつを、楯無を支えるという役目を承けているからだ。

 

なら俺は、身体張って、全力でやり抜いてやる、ただそれだけだ。

 

sideout

 




次回予告

姉妹決戦後、
一夏はある人物と密談を執り行う。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
暗躍する者

お楽しみに!

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