インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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姉妹喧嘩 中編

noside

 

エールストライカーを装備したアウトフレームDは、

ショートレンジアサルトを装備したブルーフレームセカンドGに向け、

ビームライフルを撃ちかける。

 

「はっ!」

 

楯無はアーマーシュナイダーを引き抜き、

ビームを切り裂きつつも、自身もショートライフルを撃ちかける。

 

「くっ・・・!」

 

専用のシールドを持たないアウトフレームDでは防御も儘ならないため、

簪はエールストライカーの出力を使い、銃弾を回避する。

 

「遅い!」

 

スラスターを全開にしたまま、

楯無はアーマーシュナイダーを両手に保持し、

簪が回避した先に向かう。

 

「ッ!!」

 

エールストライカーよりビームサーベルを引き抜き、

楯無が切りつけたアーマーシュナイダーと切り結ぶ。

 

「えぇい!!」

 

拮抗状態を破るべく、体制を立て直した簪はビームサーベルを押し込んでいく。

 

その判断は、恐らく正しい。

いかに耐ビームコーティングが施されているとは言えど、

普通の実体剣とはなんら変わり無い、

つまりはビームで焼き切ってしまえば、後は直撃させるだけなのだ。

 

「はぁぁッ!!」

 

だが、楯無は押し込まれる刃を逸らし、

簪の体制を崩した。

 

「えっ!?」

 

「もらった!!」

 

しかし、刀剣の扱いに置いては楯無に一日の長があるため、

重心をどうずらせば相手の体制を崩せるかを理解している。

 

「ッ!!」

 

しかし、簪は咄嗟にスラスターを吹かし、

楯無の腕を足場にして、なんとか離れる。

 

(今のは決められると思ったのに・・・!

本当に強くなってるのね、簪ちゃん!!)

 

(今のは押し込めると思ったのに・・・!

流石はお姉ちゃん!一筋縄じゃ勝たせてくれない!!)

 

簪の成長に、楯無は内心舌を巻き、

楯無の技量に、簪は改めて驚愕していた。

 

心が離れていた期間だけ、

互いが互いの実力、成長を知らないでいたのだから、

この反応は仕方がないと言えるだろう。

 

(でも、私は姉として負ける訳にはいかないの!)

 

(お姉ちゃんに成長を見せつける為にも!私は負けない!!)

 

だが、互いに負けられない理由、意地があるため、

己の力をぶつけ合うのだ。

 

「「はぁぁッ!!」」

 

楯無はアーマーシュナイダーを手に、

簪はビームサーベルを保持し、互いに相手に向かっていく。

 

大出力があるエールストライカーを装備したアウトフレームDの方が瞬発的な加速には向いているが、

格闘戦では小回りを求められるため、余分な装備を施していないブルーフレームセカンドGに分があった。

 

簪が振るうビームサーベルを回避した楯無は、

簪の上を取り、アーマーシュナイダーをエールストライカーに突き立てた。

 

「きゃあぁっ!?」

 

簪は咄嗟にエールストライカーを排除するが、

推進剤の誘爆により体制を大きく崩し、爆煙に包まれる。

 

「まだよッ!!」

 

楯無は残ったもう一本のアーマーシュナイダーをしっかりと保持し、

爆煙に包まれている簪に向け、追撃をかけようとした。

 

しかし・・・。

 

爆煙の中から一際大きいビームの光条が飛び出してきた。

 

「っ!?」

 

咄嗟にスラスターを吹かし、

ビームの光条を回避するものの、アーマーシュナイダーを一本犠牲にする。

 

「い、今のは一夏君が使ってた・・・!」

 

楯無は自身の経験から類似した兵器を思い浮かべた。

 

(でも、あれよりは出力が低い、

もしかしたら連射が利くタイプなのかも・・・!)

 

だとすれば面倒ね、と小さくボヤいた楯無の頬には、

一筋の冷や汗が流れていた。。

 

「私は、負けないよ、お姉ちゃん!」

 

爆煙が晴れ、そこには特殊な形状を持ったバックパックを背負う、

アウトフレームDの姿があった。

 

「それは・・・、新しいストライカー、という訳ね・・・!」

 

「アストレイアウトフレームD+ライオットストライカータイプA!!」

 

sideout

 

side一夏

 

簪の機体の装備に、俺は顔には出さないが、

内心、かなり驚いていた。

 

背中に大きなコンテナを左右に背負っていることと、

先程のアグニの様なインパルス砲のビーム・・・。

 

この二つの情報を統合して考えてみると、

あの装備は遠距離兵装主体の装備だと判断できる。

 

もし、俺が兵器の開発者ならば、

接近されないためのミサイル系の装備を積むだろう。

 

コンテナの上部のカバーは、恐らくはミサイルポッドのハッチなのだろう。

 

(後は・・・、この試合での動向を見極めれば、

装備の性質を把握仕切れるだろう。)

 

「セシリア、シャル、簪の装備をよく見ておけ、

俺達の立場上、何があるのか分からんからな。」

 

「かしこまりました。」

 

「分かったよ。」

 

俺の指示に真剣に頷き、二人はアリーナに視線を戻した。

 

さぁ、そのストライカーの力を、

この俺の眼前に曝せ!

 

sideout

 

side簪

 

「行くよ!!」

 

向こうの世界で貰った装備、

ライオットストライカータイプA(アーチャー)の左側のコンテナから、

ビームライフル<プロトン・ライフル>を取り出し、

ブルーフレーム目掛けて発砲する。

 

アクタイオンの技術も凄いと思うけど、

相原技研の技術も本当に凄い。

 

エネルギーの消費も少ないし、連射力も高い、

ガンナーにとってはかなり嬉しい事だよね。

 

まぁ、私はオールラウンダーだからどっちもアリなんだけどね。

 

「くぅっ・・・!」

 

お姉ちゃんはビームを回避しながらも、

別のパックに換装していた。

 

右背に折り畳まれた砲身が見えるから、

多分ランチャーストライカーみたいな砲撃型の装備だと判断できる。

 

「行くわよ!ブルーフレームセカンドGスナイパーパック!!」

 

お姉ちゃんの掛け声と共に、折り畳まれていた砲身が展開され、

こっちに向けられる。

 

砲口からビームが迸り、私の方に向かってくる。

 

まっすぐ向かってくるだけなら、

一夏風に言えば避ける事なんて造作も無いこと。

 

だと思ってたけど、

私が避けた方に向かって、ビームが僅かに屈折してきた。

 

「えっ!?」

 

咄嗟に機体を動かすけど、

避けきれなかったビームが、左側のコンテナを破壊していった。

 

「い、今のは一体・・・!?」

 

迂闊だった・・・!

未知の兵器を侮ってはいけなかったんだ・・・!

 

「まだまだっ!!」

 

私との距離を一定に保ちながらも、

ビーム砲とハンドガンで攻撃を仕掛けてくる。

 

「くっ・・・!」

 

なんとか状況を打開しようとして、

両方のコンテナからミサイルを発射して、

プロトン・ランチャーとプロトン・ライフルを連射し続ける。

 

「くっ・・・!やるわね、簪ちゃん!!」

 

「お姉ちゃんも・・・、やるね!!」

 

正直、ここまでの腕があるとは思わなかった・・・!

この装備を使って苦戦するなんて思ってもみなかった!!

 

それにしても、ビームが曲がるなんて・・・!

どんな原理なのかは分からないけど、

ビームに当たるとエネルギーを大きく削られてしまう!!

 

(いっそ、ミサイルで牽制して、プロトン・ランチャーを撃ち込む!!)

 

そう思うのは簡単なんだけど、

どう考えてもお姉ちゃんが一度喰らったトラップに引っ掛かる筈が無い。

 

と言うか、それで勝てるなんて、一瞬でも考えた私も、

まだまだ思慮が浅いね・・・。

 

って、そんな呑気に考え事してる場合じゃないよ!!

 

私が戦術を考えている間も、

ブルーフレームから撃ちかけられるビームや実弾の雨は苛烈さを増し、

アウトフレームの装甲を掠める弾丸も増え始めた。

 

(やっぱりお姉ちゃんは凄い・・・!射撃も、近接戦でも強い・・・!)

 

私が撃ちかけるビームは避けたり、相殺したりしてるから、

本当にそう実感できる。

 

これでシスコンさえなければ完璧なんだけどなぁ、

なんて思ってしまうのは仕方無い事だよね。

 

そんな事を考えていると、

お姉ちゃんの機体にまた変化が起こった。

 

頭部のヘッドアンテナの形状が変わり、

背中に大きなスラスターを背負ったフォルムが特徴的なスタイルだった。

 

「あれは・・・!?」

 

明らかにさっきまでの狙撃形態とは別の戦闘用途の為にあるフォルムね!

 

「ブルーフレームセカンドL!これで決めるわよ!!」

 

そう言うや否や、背中のスラスターが機体から分離して、

瞬く間に大型のバスターソードに形を換えた。

 

「嘘っ!?」

 

一体どういう機構になってるの!?

 

分からない事ずくめの中で、一つだけ分かった事がある。

あんな攻撃に当たったら、ひとたまりも無い!!

 

「えぇい!!」

 

ミサイルを乱射しながらも、プロトン・ランチャーを撃ちかける。

 

プロトン・ランチャーは、ランチャーストライカーのアグニよりも威力が若干低い代わりに、

この手の兵装にしては燃費が良い事が利点なの。

 

ミサイルとビームは一直線にお姉ちゃんに突き進む。

これに全て当たれば、戦闘不能になるのは目に見えている。

 

「そんなものっ!!」

 

だけど、お姉ちゃんはバスターソードを身体の前に持ってきて、

盾の様に構えていた。

 

バスターソードとはいっても、恐らくは普通の刀剣に用いられる装甲となんら変わりはないはず、

ビームに当たってしまえば破壊されるのにどうして・・・!?

 

まず最初にミサイルがバスターソードに直撃し、

爆煙が立ち込める中にビームが突き刺さった。

 

だけど、ビームが弾かれ、爆煙の中から傷一つついていないバスターソードを構えたお姉ちゃんが飛び出してきた。

 

(そんな・・・!ビームを弾いた・・・!?)

 

まさか・・・、耐ビームコーティングが施されていたの・・・!?

 

驚きで動けない私に、お姉ちゃんがもう目の前まで迫っていた。

 

sideout

 

side楯無

 

「甘いわよ!!」

 

スラスターの推力で加速したタクティカルアームズの突きを、

簪ちゃんの機体の胴に叩き込む。

 

「キャァッ!?」

 

防御も儘ならなかった簪ちゃんは、

後方に大きく弾き飛ばされて行った。

 

簪ちゃんは、昔とは比べ物にならないぐらいの力と、

意志を持っていた。

 

これまでの認識を改め、一人の女として向き合っていかなければならない事は、

頭を叩かれた様に理解させてもらった。

 

だから、これまでの詫びと、礼儀を込めて、

ここは私も本気でかかり、トドメを刺す!!

 

バスターソードを構え、

一気に簪ちゃん目掛けて突き進む。

 

体制を崩してるから、回避する事も儘ならないでしょう!

これで、チェックメイトよ!!

 

上段から唐竹割りの要領で振り下ろし、

簪ちゃんの機体を捉える筈だった刃は、火花を散らして止められた。

 

「!?」

 

「私は・・・!負けたくないの!!」

 

歯を食いしばりながらも、

両腕下部から発生しているビームサーベルの様なもので、

タクティカルアームズを受け止めていた。

 

「また、新しい装備という訳ね・・・!」

 

そうこなくちゃ・・・!

私の妹なら、やっぱりこの程度で終わる筈なんてないわよね!!

 

「良いわ!何度でも向かって来て!!何度でも私が受け止めてあげる!!」

 

「アウトフレームD+ライオットストライカータイプB!!行くよ!!」

 

sideout

 

side一夏

 

ほう、また武装を換えやがったか。

 

今度のストライカーモドキは、ゲイルストライクの様に両肩にスラスターが着き、

両腕下部に何やら追加装備が見受けられる。

 

いや、よく見れば肩部のスラスターの一部に、

何やら取っ手の様な物が見える、つまり、ビームブーメランやそれに近い格闘兵装だと察知できる。

 

先程の装備とは異なり、近接格闘用の装備ということか・・・、

ここはパイロットの腕が試されるところだな。

 

だが、贔屓目無しで格闘戦能力を見れば、

確実に楯無に歩がある。

 

そこでこの換装と来たと言うことは、

恐らく、何やら特殊な能力を有する装備だと言うことだ。

 

それを見極める事が出来れば、

この試合を観た価値も上がると言うものだ。

 

さぁ、簪、

お前が得た力の全てを、楯無にぶつけろ!!

 

そして、俺の戦闘における糧になれ!!

 

sideout

 

 




次回予告

長きに渡る姉妹の関係に、
新たな兆しが見える。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
姉妹喧嘩 後編

お楽しみに!!

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