インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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破壊者と運命

sideシャルロット

 

管制室のすぐ近くまで機体を移動させて、

僕はファイルス先生の方を向いて身構える。

 

僕の目の前には青紫の機体、デスティニーインパルスが佇んでいる。

 

色とか背中のウィングスラスターとか武装とか、

なんだか色々とド派手な機体だね。

 

まぁ、派手さなら僕のヴェルデバスターも負けてないんだけどね。

 

そんなことは別にどうでも良いかな、

大事なのは、目の前にいるファイルス先生の実力なんだよね。

 

臨海学校の時、散々苦しめられた福音のパイロットだった彼女は、

贔屓目無しで見てもかなりの腕を持ってる筈なんだ。

 

機体に慣れてないからといって油断したら、

逆に僕が負けちゃうね。

 

「それじゃあ、デュノアさん、相手を頼んでも良いかしら?」

 

「僕でよろしければお相手します、

先生を相手に手加減なんて出来ませんけど、構いませんよね?」

 

僕は一夏程強く無いからね、

教師が相手じゃこんな模擬戦でも本気出さないと負けちゃうよ。

 

僕とセシリアの力は一夏から貰った物、

だから、この力を使って負ける訳にはいかないんだ。

 

「そうね、その方が私もありがたいわ。」

 

僕の言葉に頷き、ファイルス先生は右背から対艦刀を抜き放ち、

切っ先を僕に向けて構えた。

 

心地の良い闘気だね、サファイア先輩といい、この人といい、

本当に強い意志を持ってるから向かい合ってて気持ち良いよ。

 

さぁてと、僕も戦おうかな。

右手にハイパービームサーベルを保持して、彼女と同じ様に切っ先を相手に向ける。

 

さぁ、始めようよ、ガンダム同士で行う、御祭りをね!!

 

sideout

 

noside

 

向かい合った二機は、弾かれた様に同時に飛び出し、

まったく同じタイミングで己の得物を振るう。

 

ビーム刃がぶつかりあい、周囲に火花を散らす。

 

「へぇ、良い腕ですね、射撃専門だと思ってましたけど、

格闘戦の実力もあったんですね。」

 

「伊達にテストパイロットやって無かったからね!」

 

シャルロットの軽口に少しおどけた様な表情を見せるが、

模擬戦中だと思い出し、エクスカリバーを握る腕に力を込める。

 

(それにしても、結構力が強いね、僕も割りと力入れてるのに押し込めないなんて、一夏とセシリア以来だよ、こんなこと。)

 

(なんて力・・・!私より腕が細い娘がこんな力を持ってるなんて・・・!!)

 

シャルロットはナターシャの力量に感心し、

ナターシャはシャルロットの腕力に驚愕していた。

 

(これは楽しめそうだね、残り物には福があったね!)

 

かなり失礼な事を考えながらも、

シャルロットはナターシャと距離を取り、

ヴェルデバスターに搭載されている火器の砲門を全て開く。

 

「さぁ!これをどう凌ぎますか!?」

 

ナターシャが捌ききる事を期待している様な口調で、

シャルロットは嬉々として一斉発射した。

 

「ッ!!」

 

それに反応したナターシャは、

左背に装備していたエクスカリバーを引き抜き、

元から右手に保持していた物と連結させ、回転させる事で全て防ぎきる。

 

(へぇ!この数の砲撃を捌ききるなんてね!

良いもの見れたね、期待して撃って良かったよ!!)

 

自分の期待に見事に答えてみせたナターシャの行動に、

シャルロットはその麗しい顔を悦楽に歪めた。

 

(咄嗟に防いだけど・・・!あの火力は要注意ね・・・!!

あんなの喰らったら一回で終わってしまうわ・・・!!)

 

知らず知らずの内にシャルロットの期待に応えていたナターシャは、

ヴェルデバスターの高火力に冷や汗を流していた。

 

(遠距離戦、近距離線も強いときてる・・・、それにデュノアさんの技量も確か・・・!!

でも、あの手の機体には一気に詰めればやり様はある!!)

 

自身の経験を基に判断を下したナターシャは、

両手にエクスカリバーを保持し、

光の翼を展開してシャルロットに迫る。

 

「ッ!!速度が上がった!?」

 

「行くわよ!!」

 

驚きながらも、シャルロットはヴェルデバスターに搭載されているミサイルポッドを開き、

高速で接近してくるデスティニーインパルスの接近をミサイルの弾幕を張ることで防ごうとする。

 

しかし、ナターシャは直撃コースの物は対艦刀で切り落とし、

当たらないと判断した物は極力機体を動かさずにやり過ごし、

遂にシャルロットとの間合いを詰めた。

 

「貰ったわよ!!」

 

対艦刀を振りかぶり、シャルロット目掛けて振り下ろす。

近接装備を構えていないシャルロットは、

避ける事も出来ないまま直撃する時を待つしかないと思われた。

 

「こっちのセリフ、ですよ?」

 

バヨネット装備型ビームライフルの下部からバヨネット振動剣が展開され、

ナターシャの左手に保持されていたエクスカリバーを逸らし、

シャルロットの左手に保持されていたビームライフルが彼女の腹部に突き付けられた。

 

「この距離なら外しませんよ?」

 

「ッ!?誘い込まれた・・・!?」

 

シャルロットの冷たい微笑みを見て、

ナターシャは自分が誘い込まれた事を悟り、愕然とする。

 

その間にもシャルロットの指がトリガーを引き、

ビームライフルの砲口から閃光が迸った。

 

sideout

 

sideシャルロット

 

トリガーを引いた直後、何かに弾かれる様な感覚で僕は大きく後ろに弾き飛ばされた。

 

一体何が起こったのだろう・・・?

完全に誘い込んだカウンターを撃ち込んだ筈なんだけどなぁ・・・?

 

そんな事を考えながらファイルス先生の方を見てみると、

左手の甲にビームシールドを展開しているデスティニーインパルスが佇んでいた。

 

嘘ぉ・・・。

まさかあの一瞬でビームシールドを割り込ませたっていうの?

 

非常識だねぇ・・・、僕も人のこと言えないとは思うけど・・・。

 

あはは~・・・、左側のビームライフルがボロボロになっちゃったよ・・・、

こんなこと、今まで殆ど無かったからね~。

 

「あはは、流石ですねファイルス先生、

ここまで気持ちが昂るのは気持ち良いですよ。」

 

「そう言うけど、なんだか悔しいわね、

年下の娘に負けそうになってるなんてね・・・。」

 

まぁ、素質と気質の問題ですよ、その辺はね。

 

それにしても、一夏が仲間に加えたくなるのも分かるね、

状況判断、それに戦闘能力、全てにおいて彼の期待値を越えてる。

 

でも、どうやって引き込もうかなぁ?

一夏もどうやって引き込むのか悩んでるみたいだし。

 

一応少し聞ける情報だけは聞き出しておこうっと、

一夏の目的の為にもね。

 

「ファイルス先生、少しお訊きしたい事があるんですけど、よろしいですか?」

 

「何かしら?私が答えられる話なら答えるわよ。」

 

さてと・・・、ここまでは良いんだけど、

ここからどうやって聞き出そうかなぁ?

 

僕は一夏みたいに人の心に上手いこと入る事が出来ないからねぇ。

 

どちらかと言えば、僕とセシリアは人の冷静さを欠かせる事の方が向いてるんだよね、

一夏は人を丸め込むのも、その気にさせるのも、冷静さを欠かせるのも上手だけどね。

 

そんなことは今は別に良いよね?

ストレートに聞いてみるのが一番だね。

 

「先生はどうして、IS学園で教師をやろうと決めたのですか?」

 

何の脈略も無いけど、ずっと疑問に思ってた事を引き合いに出してみる。

 

IS学園で教師をやるよりも、

米軍で福音の試験をやってた方が事件に巻き込まれないで済んだのに、

どうしてわざわざこんな所までやって来たんだろう?

 

階級とかは一応あるとは思うけど、

向こうでやってた方が確実に給料とかも良さそうな物なのに・・・。

 

「貴女には、多分分かると思うわよ・・・。」

 

「はい?」

 

僕に分かるって言われても・・・、

心当たりが全然無いなぁ・・・。

 

もしかして、他の専用機と福音を戦わせて、

データを取るためなのかな?

 

それが一番妥当だとは思うんだけど・・・。

 

「私の望みはね・・・、福音を汚した者に・・・、

一度はあの子を狂わせた者に、この手で裁きを与える事よ。」

 

「・・・。」

 

あはは、復讐なんだね~。

そう言えばこの人って、福音の事をスゴく大切に思ってるんだっけ?

 

なるほどねぇ~、

これは良いこと聞いちゃったよ。

 

一夏に教えてあげよっと。

 

「だから、そのためなら私はこの手を汚しても構わない・・・!!」

 

「その気持ち、痛い程伝わって来ます・・・、

僕達も協力します、貴女の敵を見付ける事をね。」

 

「ふふふっ・・・、ありがとう、その時が来たらお願いね・・・?」

 

じゃあ、止まってた戦いの続きを始めようよ、

僕の身体が疼いて仕方がないんだ!!

 

「いきます!!」

 

「えぇ!!」

 

僕はまた、ハイパービームサーベルを引き抜いて、

対艦刀を引き抜いて迫ってくるファイルス先生と切り結ぶ。

 

「その気持ち!今は僕にぶつけて下さい!!」

 

「予行演習?それも悪くないわね!!」

 

良いよ!そのビリビリくる闘気!!

まだまだ僕を昂らせてくれるんだね!!

 

拮抗状態から離れ、

右肩のガンランチャーと左肩のビームライフルで攻撃しながらも、

残った右側のビームライフルを撃ちかける。

 

「そんなものっ!!」

 

ファイルス先生はビームシールドを広げ、

全て防いでしまった。

 

ラウラのアルミューレ・リュミエールと同系統のシールド・・・!!

これじゃじり貧だね!

 

「そこっ!!」

 

ファイルス先生は、左背に格納されてたビーム砲をこっちに向け、

大出力のビームを撃ってくる。

 

「えぇい!!」

 

一夏程上手くは無いけど、僕にだってビームサーベルでビームを斬るぐらい出来るんだ!!

 

もう一本ハイパービームサーベルを引き抜いて、

二つ重ねして大出力ビームを切り裂く。

 

「まだまだ!!」

 

ここで勝負を決めておかないと、一夏の片翼の名折れだよね!!

 

フルスピードでデスティニーインパルスに突っ込み、

二つ重ねにしたハイパービームサーベルを振り下ろす。

 

「負けるものかぁぁぁ!!」

 

向こうも対艦刀を突き出して僕に向かってくる。

上等だ、ここで終わらせる!!

 

僕が突きだしたビームサーベルの方が後に届いたけど、

ファイルス先生が突きだした対艦刀は左腰のビームライフルを破壊しただけで終わり、

 

「はぁぁっ!!」

 

それにも構わず、

僕はハイパービームサーベルを押し込み、シールドエネルギーを全て奪い去った。

 

擦れ違い、追撃が無いことを確認して、

僕は盛大に息を吐いた。

 

それにしても、結構傷ついちゃったね・・・、

流石にちょっと本気出さないと負けてたよ・・・。

 

まぁ、色々収穫もあったから結果オーライかな?

 

さて・・・、これで新しい扉がまた開くね、

一夏、貴方の行く路に、僕達は着いていくからね?

 

sideout




はいどーもです!

次回予告
真耶が駆るグリーンフレームの性能を確かめる一夏だが、
何やら面白くない様で・・・?

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
黒と緑の拳法対決

お楽しみに!

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