インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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慣熟訓練 後編

sideセシリア

 

「「ハァァッ!!」」

 

五度目の衝突から距離を取りながらも、

私は箒さんの戦闘能力を分析いたします。

 

近接格闘能力は私やシャルさんに匹敵するレベルですが、

射撃が苦手なのがマイナスポイントですわね。

 

単純に機体の性能に振り回されている感は拭えませんが、

私が攻撃を仕掛ける度に、徐々に精度が上がって来ています。

 

(流石は一夏様が一目置く方ですわね、少し嫉妬してしまいますわ。)

 

それでも、私は一夏様の方翼として選ばれた女、

いくら一夏様が見込まれた相手と言えども、私は負けませんわよ!!

 

「行きなさい!ルーヴィアドラグーン!あなた達の力、存分に振るいなさい!!」

 

元から展開していました四基に加え、

機動力を確保するために残していた残りの四基も射出し、

合計八基による多角攻撃を仕掛けます。

 

「チィッ!!」

 

強化された速度を保ったまま、

箒さんは八基のドラグーンから撃たれるビームをかろうじて避けられていました。

 

見事な反射能力ですわね、

私とシャルさんには及ばないものの、

代表候補生のそれを遥かに上回っています。

 

あぁ、一夏様とシャルさんの他に、

ここまで私を興奮させてくださる方と戦えるとは思いませんでしたわ。

 

私を楽しませてくださったお礼に、

このセシリア・オルコットの本気を御見せいたしましょう!!

 

ドラグーンの操作により意識を割き、

オールレンジ射撃の精度を格段に向上させます。

 

「はぁっ!!」

 

フレキシブルショットのみならず、

バーストショットやビームスパイクでの突貫等を織り交ぜ、

箒さんのレッドフレームを攻め立てます。

 

「うわっ!?」

 

ビームスパイクの突貫に直撃し、

箒さんは大きく体制を崩しました。

 

そこに左肩のラックから引き抜いたスティレットを投擲し、

バイタルエリアに直撃させて一気に戦闘不能に追い込みました。

 

「うわぁぁっ!?」

 

「フィナーレ、ですわ。」

 

地面へと落下していく箒さんを見送り、

私は全てのドラグーンを戻します。

 

私に敗れはしましたが、

箒さんはこれから更に伸びる事でしょう。

 

楽しみですわね。

 

sideout

 

sideシャルロット

 

ミサイルを発射しつつ、

なんとか後退してフォノンメーザーを回避した僕は、

グランドスラムを格納し、ハイパービームサーベルを引き抜く。

 

さっきの攻撃で分かったけど、

あの装甲、実弾や至近距離からの攻撃には脆いみたい。

 

特に傷がついたからとかそんなんじゃ無いけど、

機体の直前でビームが曲がってるのを見たら何となく判断出来る。

 

つまり、このハイパービームサーベルなら、

あの特殊な装甲を突破出来る。

 

「行くッスよ!!」

 

サファイア先輩がトライデントを構えてこっちに向かってくる、

どうやら僕の本当の力を知りたいみたい。

 

その学ぶ姿勢、本当に共感出来るよ。

僕達も一夏から何かを学ぼう、そして越えようとしている女だから余計にね。

 

これまでの見立てで分かった事と言えば、

近接格闘能力は僕やセシリアに劣るけど、普通の代表候補生に比べたらかなり良い位だね。

 

もっとも、牽制がまだまだ甘い所が難点だね、

後でちゃんと指摘しとかなきゃね。

 

だから、ここで何かを掴んで貰うためにも、

この僕、シャルロット・デュノアの全力をぶつける!!

 

スラスターを全開にするのと同時に、

僕は向かってくるサファイア先輩に向けて、

ハイパービームサーベルを突き出した。

 

サファイア先輩もトライデントを突き出して来るけど、

リーチの差で僕の方が早く機体に届く。

 

「そのまま、貫けぇぇぇぇ!!」

 

「はぁぁぁッ!!」

 

フォビドゥンブルーの直前で、一瞬さざ波を打った様になるけど、

突撃で生じた勢いに負け、遂に突貫を許した。

 

「そんなっ!?」

 

「もらいましたよっ!!」

 

驚きながらも勢いを止められないサファイア先輩を他所に、

僕はハイパービームサーベルを押し込んだ。

 

光刃が絶対防御に直撃した手応えを感じながらも、

僕はそのまま背後へと抜けた。

 

これでシールドエネルギーは全部奪えた筈だね。

そう思いながら振り向くと、膝をついたフォビドゥンブルーの後ろ姿が見えた。

 

ふぅ・・・、やっぱり信念が籠ってる刃は重いね、

相手にしてて気持ちいけど気疲れしちゃうな。

 

セシリアの方も終わったみたいだね、

後は一夏の方だけだね。

 

sideout

 

side一夏

 

二つ重ねで振るったシュベルト・ゲベールは、

下段から振り上げたダリルのシュベルト・ゲベールを砕きながらも進み、

 

肩口に直撃したシュベルト・ゲベールを振り抜き、

一発でシールドエネルギーを全て奪い去った。

 

「勝負あったな?」

 

「くっ・・・!クソッ!ヤッパリ負けちまったぜ!」

 

悔しそうに、だが何処か清々しそうにしながらも、

ダリルはアリーナの地面に大の字で寝転がった。

 

コイツ、ホントに女か?

所々凄く豪快だから男と思っちまうぜ。

 

「だが、良い戦いだった、

こちらとしても有意義な戦闘だったぜ。」

 

「へっ!汗のひとつもかいてねぇ奴に言われても、

全然嬉しくもねぇよ。」

 

そんなに照れた顔で言われても説得力が無いぞ、

ま、清々しい気分は察する事は出来るがな。

 

「さてと、今回の模擬戦の講評だが、

シュベルト・ゲベールを蹴り飛ばす対処は良かったが、

闇雲に突っ込んで来たのは頂けんな、ま、そう言うのも良いとは思うがな。」

 

「そうかい、これからの訓練の指針にさせてもらうとするぜ。」

 

良い心掛けだ、その気さえあれば確実に強くなれるな。

 

ふと他の場所に目をやると、

こちらに戻ってくるセシリア達の姿があった。

 

どうやら、三戦とも終わった様だな。

 

「箒さんはもっと色々な武装に慣れる事から始めませんか?

いつまでも刀だけで戦えるとは限りませんもの。」

 

「サファイア先輩は牽制がまだ甘いですね、

あの装甲の利点は絶大ですから。」

 

「う、うむ・・・、精進させて貰う。」

 

「了解ッスよ、いや~、まさか抜かれるとは思わなかったッスよ。」

 

セシリアの指摘に箒は少しだけ苦い顔をし、

フォルテはシャルの指摘にやっぱりそうかという表情をしていた。

 

どちらとも自分の弱点を理解している様で、

こちらとしても教えやすい事この上無い。

 

「さてと、今回の訓練はこれぐらいにしておくか?

新しい客人も来たようだしな?」

 

新しい客人の存在に気付いた俺が、

ピットの方向を向くのにつられ、彼女たちもその方向に向く。

 

「こんにちわ~。」

 

グリーンフレームを展開した山田先生と、

デスティニーインパルスを展開したファイルス先生がいた。

 

戦う気満々だな、上等だ。

 

「皆さんお揃いで訓練ですか?」

 

「今終わった所ですよ、先生たちも今から訓練ですか?」

 

「まぁ、そんな所ね。」

 

なるほどな、機体に慣れるための訓練か、

この二人位のレベルになればどんな機体でも造作無く操れるとは思うがな。

 

「よければ、俺が相手になりましょうか?

ガンダムタイプに最も慣れている俺が相手なら、

その機体の全てを発揮できるかもしれませんよ?」

 

「それじゃあ、よろしくお願いします。」

 

「教師も含めた学園最強の実力、確かめて起きたい物ね。」

 

俺が戦闘に誘ってみると、

二人はかなり乗り気らしいのか、すぐさま己の得物を構えた。

 

「では早速、といきたい所だが、そろそろ出てきたらどうだ?」

 

いい加減、俺と戦いたいなら素直に出てくれば良いのにな、

もっとも、面と向かって申し込むのが嫌なのは分かるがな。

 

「流石ね・・・、ステルスで隠れてたのに、よく分かったわね。」

 

俺が向き直った方向の空間が揺らぎ、

ステルスを解除したブルーフレームが姿を現す。

 

「そんなもん、空気の微妙な流れの違いで判別出来る、

で?一体なんの用だ?」

 

大体は察する事ができるが、

やはり本人の口から聞き出せる事は聞いておきたいからな。

 

「もう分かってるんでしょ?前にヤられた借りを返しに来たわ。」

 

「はっ!ガンダムの力を持って図に乗ったか?

良いだろう、出る杭は打たせてもらうとするか、セシリア、シャル。」

 

「かしこまりましたわ。」

 

「ふふふっ、もう一回戦うんだ?」

 

またしても三対三だな、

どうやって分かれるとするかね?

 

「セシリア、楯無の相手をしてやれ、

俺はグリーンフレームの実力とやらを確かめたい。」

 

「ちょっと!私との勝負をすっぽかすというの!?」

 

「黙ってろ、お前ごときが俺に勝てるとでも思ってるのか?

俺の片翼に勝つことが出来れば考えてやる。」

 

とは言え、セシリアが負けるとすれば俺かシャルだけなんだがな。

 

「それじゃあ、今度は余り者同士、お手合わせ願いませんか?ファイルス先生?」

 

「そのお局様になったみたいな発言に訂正を求めたいわ・・・。」

 

シャル、悪気は無いんだろうが、

流石にこの残姉さんにその発言はダメージ判定あるからやめてやれ。

 

まぁ、事実だから庇う事自体が無意味な気がするんだがな。

 

「さて、それでは始めるとしようぜ?

ガンダム同士による、戦いというものをな。」

 

俺の言葉を皮切りに、

それぞれのペアは移動を始め、

箒達、先発組はとばっちりを喰わない場所まで移動した。

 

さぁ、楽しい宴の始まりだ、

心行くまで楽しんでいけよ!!

 

sideout

 




次回予告
セシリアと戦うことになった楯無は、
己の意地をかけて彼女に挑む。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
青と蒼

お楽しみに!

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