インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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慣熟訓練 前編

side一夏

 

襲撃事件、及び、箒達の覚醒の翌日、

俺は毎度恒例の書類作成を行っていた。

 

今回は報告すべき事は多いのだが、一部虚偽の報告を行っておく。

勘づかれては不都合な内容も含んでるからな。

 

つっても、あの好好爺の目を誤魔化せるとは思ってないが、

あの人の手腕は本物だ、俺の想像通り動いてくれる。

そのお陰で俺は俺の仕事だけをしていれば済むからホントに楽だ。

 

で、昨日の終結後からボチボチ始めてた書類作成は大体終わり、

後はバックアップを取っておけばミッションコンプリートだな。

 

そう思い、準備に取りかかろうとした時、

誰かが生徒会室の扉をノックした。

 

誰だ?

可能性としてはセシリアとシャルだろうな。

彼女達は理事長と話を着けに行っているから、帰ってきたと考えるのが妥当だろう。

 

ま、可能性だけだから、取り敢えずは事務的で良いか。

 

「どうぞ。」

 

俺が入室の許可を出した後、

扉が開いてセシリアとシャルが入ってきた。

 

「只今戻りましたわ、一夏様。」

 

「理事長との算段、着けれたよ。」

 

「ご苦労さん、俺の方もあと少しで終わる、少し待っててくれ。」

 

コイツらにも本当に苦労をかけてるな・・・、

申し訳無いのか、それともここまで尽くしてくれることに喜ぶべきか・・・。

 

「さて、と・・・、これで御仕舞いっと・・・、

セシリア、シャル、戻るぞ。」

 

「はい♪」

 

「うん♪」

 

俺が席を立ちながら言うと、

二人は満面の笑みを浮かべて俺の両隣にポジションを取る。

 

何時も通り二人が俺の腕に抱き着いた事を確認し、

生徒会室を出ようとした時だった。

 

「一夏、ここにいるのか?」

 

「失礼するぜ~。」

 

「どもッス~。」

 

何時から三人一緒に行動する様になったのか、

箒、ダリル、フォルテの三人がひょっこりと顔を覗かせた。

 

「今から帰ろうとした所なんだがな、

三人揃ってどうした?俺に何か用か?」

 

報告書の類いは昨日の内に事情聴取と言う形で収束させたし、

特に何も無い筈なんだがな・・・?

 

「いや、仕事が終わってるならで良いんだけど、

アタシらの事を鍛えて欲しいんだ。」

 

「ガンダムの力を得たと言っても、

所詮はまだ付け焼き刃ッスからね、少しでも慣れておきたいんスよ。」

 

なるほどな、流石は専用機持ちと言うところだな、

己の力量をしっかりと理解してるみたいで本当に助かる。

 

これで少しでも慢心があれば、これからの戦いには勝てそうにも無いからな。

 

「己の力量を把握してる様で見事だ、

よかろう、俺達三人が相手になろう。」

 

「新たなガンダムの力、私も体感してみたいですからね。」

 

「それにお互いの力と性能を知っておいた方が、

何かと便利だしね~。」

 

セシリアとシャルも乗り気なのか、彼女達と戦う意思を見せる。

 

ま、身体が鈍らない様に動かすのもよかろうしな。

 

「行くぞ、時間は有限だ、無駄にはしたくない。」

 

「うむ!」

 

「おっしゃ!」

 

「やるッスよ~!」

 

sideout

 

noside

 

生徒会室を後にした一夏達は、

各々ISスーツに着替えた後、第1アリーナに足を運んだ。

 

「さて、一対一でやろうと思うが、

誰か特定の奴とやりたいって希望は無いか?」

 

一夏が誰と戦うかという組み合わせを考えようとした時、

すかさず箒が手を挙げる。

 

「私はセシリアと戦ってみたい、ドラグーンの力の真髄を見てみたいからな。」

 

「構いませんわよ、箒さん、私とデュエットいたしましょう?」

 

箒の申し出を快く受け入れ、

セシリアは優雅に微笑みながらも機体を展開する。

 

「それじゃあ私は、デュノアに相手してもらいたいッス、

砲撃型機体との相性ってのを確認しときたいッスから。」

 

「僕で良ければ喜んでお相手しますよ、フォルテ先輩。」

 

シャルロットもフォルテの申し出を受け入れ、

互いに機体を展開させる。

 

「じゃ、余り者同士、戦おうぜ会長!」

 

「余り者という言葉は戴けんが、まぁ良い、相手になろう。」

 

ダリルの言葉に苦笑しながらも、

一夏も己の機体を展開する。

 

各々ペアに分かれた三組は、広いアリーナの各所に散らばり、

互いの相手と向き合った。

 

sideout

 

sideセシリア

 

私と箒さんは、アリーナの管制室の近くまで機体を移動させ、

その場でお互いに向かい合います。

 

赤と蒼の機体、私と箒さんの機体は対を成す色を持っている。

もっとも、それだけでは無いと思いますがね。

 

「箒さん、一つお聞きしてもよろしいですか?」

 

「なんだ?私に答えられる質問ならなんでも答えるが?」

 

「そんなに大層な質問でもありませんわ、

ただ、何故一夏様に相手を申し込まれなかったのですか?」

 

このブルデュエルを操る様になってから、

私の腕前は以前とは比べ物にならない程になっているという自負はありますが、

それでもまだ、一夏様に勝てる程の腕はありません。

 

私などに挑まれるよりも、一夏様に戦いを申し込まれた方が、

確実に身にもなります。

 

「深い意味は無いさ、ただ、私の友、セシリア・オルコットの腕を知りたいのだ、

まだまだ、私は弱い、だから、学べる事が絶対にあるから、私はセシリアに相手をして欲しいんだ。」

 

「ふふっ、嬉しいお言葉ですわね、

分かりましたわ、このセシリア・オルコットの腕前、

箒さんにお見せ致しましょう。」

 

こんな私から何かを学ぼうとされている友に、

私が出し惜しみをすることは失礼に値しますわね。

 

このセシリア・オルコット、出し惜しみは致しません、

篠ノ之 箒さん、貴女の気概を、私に示してくださいませ!

 

「セシリア・オルコット、ブルデュエルデーストラ、参ります!!」

 

「篠ノ之 箒、レッドフレーム改、参る!!」

 

私はビームサーベルを、箒さんは腰に装備していた日本刀を抜き放ち、

互いに間合いを詰めて振り、切り結びます。

 

実体剣で何故ビームサーベルと切り結べるのかは存じあげませんが、

今はただ、その様な雑念を払い、箒さんだけを見てこの刃を振るうだけですわね。

 

さぁ、私とデュエットを踊りましょう?

 

sideout

 

sideシャルロット

 

僕とフォルテ先輩は機体をピットの近くまで移動させて、

お互いに武器を保持して向かい合う。

 

フォビドゥンブルーかぁ、

一見鈍重そうだけど、あのリフターがどんな能力を持ってるか分からないから要警戒だね。

 

「そう言えば、デュノア、お前に聞きたい事があるんスけど、

聞いてもいいッスかね?」

 

「僕は構いませんよ?答えられる質問ならなんでも答えます。」

 

なんだろう?

特に関わりが無いから尋ねられる事に該当点が多すぎて分からないや。

 

「力って、なんなんッスかね?」

 

「また哲学的な質問ですね、一夏からの受け売りですけど、

力は時に人を傷付ける事があるかも知れない、

それでも護るのも力、使い手の意志がその有り様を変えると彼は言っていました。

僕とセシリアは、彼のそんな強さに憧れてますから。」

 

そう、僕はあの究極の力に憧れ、

僕自身を縛る鎖から逃れる事を夢見た。

 

彼の隣に立つのは単純な恋心だけじゃない、

僕が自由になるための力を着けるためだ。

 

「そうッスか、羨ましいッスね、そんじゃ、その力を見せてくれッス。」

 

「勿論ですよ。」

 

考えるのは此処まで、

此処からは力で語る時だね。

 

「シャルロット・デュノア、ヴェルデバスターシーストラ、行きます!!」

 

「フォルテ・サファイア、フォビドゥンブルー、行くッスよ!」

 

フォルテ先輩のフォビドゥンブルーが突っ込んで来るのに合わせ、

僕はビームライフルの照準を合わせてトリガーを引いた。

 

砲口から迸ったビームは、一直線にフォビドゥンブルーに突き進むけど、

どういうわけか、直撃する直前で軌道を変え、逸れていった。

 

まさかビームを屈折させる機能が備わってるというの!?

それじゃあエネルギー兵器じゃダメみたいだね!

 

「そこっ!」

 

「はあっ!!」

 

フォルテ先輩がトライデントを突き出して来るのに合わせ、

僕はグランドスラムを展開、突きを逸らす。

 

本当なら追撃をかけたい所だけど、僕の機体の領分は遠距離戦なんだよね。

ちょっと距離を開けさせてもらおうかな。

 

でも、ここまで背筋が冷えたのは一夏とセシリアの時以来だよ、

さぁ、もっと楽しもうよ!!

 

sideout

 

side一夏

 

セシリア達が離れた場所に移動した事を確認し、

俺はソードカラミティを操るダリルに向き直る。

 

格闘戦特化機には、

こちらも格闘戦に特化したストライカーを使うとしよう。

 

ノワールストライカーを量子格納し、

アナザートライアルソードに換装する。

 

大まかな装備は同じ条件だが、

俺にはシュベルトゲベールが一本少ないという若干のハンデがある。

 

ま、そんな些細な事、戦いでは無意味に近い。

 

「へぇ~、それがストライカーシステムか、初めて生で見たぜ。」

 

「これだけがストライカーじゃないんだよな、

ま、見たければ自分で俺に出させる事ですね。」

 

「ヘッ、言ってくれるぜ、なら、頑張んなきゃな。」

 

それでこそ戦う意味があるというものだ、

ソードカラミティの性能と、アンタの実力を計らせてもらおう。

 

「あ、そうだ、この際聞いときたい事あるんだが、良いか?」

 

「唐突ですが、まぁ構いませんよ、答えましょう。」

 

「ありがとよ、まぁ、なんでお前は戦い続けてんのか気になっただけなんだがな。」

 

あぁ、そう言うことか。

俺の戦いの根源を知りたいと言うわけだな。

 

本当の事はまだ、教える事は出来んが、

それに近い答えならば返せるな。

 

「ただ単に、強い相手と戦い、勝ちたいだけです、

そして力を着ける、それだけが望みです。」

 

「ヘッ、戦闘狂って所かよ?ま、そういう生き方も良いんじゃねぇの?」

 

俺の答えに納得したのか、

ダリルは右手にシュベルト・ゲベールを保持し、

切っ先を俺の方に向けてくる。

 

上等だ、こちらもそれ相応の礼を採らせてもらうとしよう。

 

バックパックからシュベルト・ゲベールを抜き取り、

両手で保持する。

 

「織斑一夏、ストライクE+アナザートライアルソード、行くぜ!」

 

「ダリル・ケイシー、ソードカラミティ、斬るぜ!!」

 

全く同じタイミングで地を蹴り、

相手との距離を詰めながらもシュベルト・ゲベールを振りかぶり、

間合いに入ったと同時に振り、拮抗状態に入る。

 

良い反応、そして太刀筋だ、

この俺の剣閃に着いてこれるとはな。

 

それでこそ、その力を託した甲斐があるというものだ。

 

「クッ・・・!流石は会長だ・・・!

同じ武器を振るってる筈なのにここまで刃が重いとはな!」

 

「貴女も中々の腕だ、そうこなくては倒し甲斐が無いというもの!」

 

腕に力を籠め、刃を押し込むが、

あちらもみすみすヤられるつもりは無いらしく、

上手いこと剣をずらして俺から距離を取った。

 

さぁ、戦え、戦って戦って!!

この俺の血をたぎらせてくれ!!

 

sideout




はいどーもです!!

今回は前編と言うことで導入のみになります。
本格的なバトルは次回からと言うことで。

それでは次回予告
慣熟訓練を開始した一夏達は、
互いの腕を知り合う為に苛烈な戦闘を繰り広げる。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
慣熟訓練 中編

お楽しみに!!

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