インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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誘われし者 後編

side一夏

 

「クックックッ・・・、流石の腕前だな、三人とも・・・。」

 

俺の視線の先には、

ダガーを蹴散らし続けるレッドフレームとソードカラミティ、

そしてフォビドゥンブルーの姿があった。

 

伊達に今まで苦汁を舐めてきた訳じゃ無いな、

振るう得物に強い意志を感じる。

 

あぁ、実に見ていて心地が良い、

是非とも手合わせ願いたい物だな。

 

まぁ、それは後で考えれば良い、

今は、コイツらを血祭りにあげる事を考えておけばそれで良い。

 

「グッ・・・、ガハッ・・・!」

 

「グッ・・・、グゥッ・・・!」

 

視線を移した先には、既に満身創痍のマドカとくーが俺を睨み付けていた。

 

クックックッ・・・、良い表情をしやがるぜ、

もっと切り刻みたくなるだろうが。

 

「どうした?俺を殺すんじゃなかったのか?

それとも、出来ない事と知っての、ただの虚勢だったのか?」

 

「だ、黙れ・・・!」

 

「殺す・・・!絶対に殺す・・・!!」

 

クックックッ・・・、まだちっぽけな復讐心に囚われているのか・・・、

憐れな物だな・・・、勝率は0に限り無く近いのになぁ・・・?

 

「どちらにしろ、そろそろダガーも片付く、

残るは貴様らの命のみだ。」

 

そう宣言した時、

アリーナの外からブルデュエルデーストラとブルーフレームセカンドL、

そしてヴェルデバスターシーストラとグリーンフレーム、デスティニーインパルスがアリーナの中に入ってきた。

 

それを認めてか、アリーナの中で戦っていたレッドフレーム改、ソードカラミティ、フォビドゥンブルーもこちらにやって来たため、総勢九機のガンダムタイプによる包囲網が完成した。

 

壮観だな、ここまで個性の強い機体が集まると余計にな。

 

「おい餓鬼ども、さっきまではよくもやってくれたな?」

 

「私らをコケにして、無事で済むとでも思ってるんスか?」

 

「貴様ら・・・、姉さんの差し金だな・・・!!」

 

散々苦汁を舐めさせられたダリルとフォルテと、

束を心底憎んでいる箒には、

今にも飛びかかろうとする気概が見てとれる。

 

好戦的、いや、敵には容赦しない奴等だな、覚えておこう。

 

「降参しなさい!命までは獲らないわ!!」

 

「機体をこっちに渡してください!」

 

楯無と山田先生はやはり命を助ける気があるのか投降を呼び掛けているが、

どちらか分からないのはファイルス先生か・・・。

 

出来ればこちら側に引き込みたい所だな。

 

手駒は一つでも多い方が得策だからな。

 

「クックックッ・・・、チェックメイトだ。」

 

降参するか、このまま退くか、選択肢を与えてやろう。

最も、どちらにしろ、結末は同じなんだがな。

 

デュエルのビームライフルを呼び出し、

グレネードランチャーの発射体制を整える。

 

さて・・・、どうするのか見せてくれよ?

 

「「・・・っ!!」」

 

流石に分が悪いと悟ったのか、

俺を射殺す様な視線で睨み付けた直後、

アリーナの外へと逃げ出そうとする。

 

「待て!」

 

「待ちやがれ!!」

 

「逃がさないッスよ!!」

 

血気盛んな三人が追いかけようとするが、

ここは止めておくとしよう。

 

「追うな、もし待ち伏せを謀っているのだとすれば、

まだ機体に馴れてないお前達では危険すぎる。」

 

「しかし、このままでは逃げられてしまうぞ!!」

 

納得がいかないのか、箒は俺に食い下がろうとしている。

心意気は良いのだが、状況を読んで欲しいものだ。

 

「セシリアとシャル以外はここに残り、守りを固めてくれ、

アイツらは俺達が追う、良いな?」

 

「分かった、ここは会長に従うとしようぜ?」

 

「そうッスね、私達をコケにした分をぶつけてくれッス。」

 

「すまない一夏、よろしく頼む。」

 

明確な任務を与えられれば弱いのか、

ダリルとフォルテ、そして箒はあっさりと身を退いた。

 

「そう言う事だ、そこの三人も理解してくれたな?

行くぞ、セシリア、シャル。」

 

「はい。」

 

「分かってるよ。」

 

楯無達の返事を聞くより先に、

俺達はスラスターを吹かし飛翔した。

 

クックックッ・・・、極限の絶望を与えてやろう。

 

sideout

 

noside

 

IS学園沖の洋上を、二機のISが飛翔していた。

 

だが、その二機とも全身から火花を散らし、

今にも瓦解してしまいそうな様相を呈していた。

 

「クソッ・・・!!何故だ!何故勝てない・・・!!」

 

その内の一機、ミラージュフレームを操るマドカは、

凄まじい恨み言葉を叫びながらも撤退していく。

 

「織斑一夏・・・!!次こそは私が殺す・・・!!」

 

もう一機の機体、テスタメントを駆るくーも、

一夏に対しての憎しみの言葉を口にした。

 

彼女達はつい先程、

織斑一夏が駆るストライクEに手も足も出せずに敗北、

現在敗走中なのである。

 

(こんな事がある筈が無い・・・!!私はまだ負けてないんだ・・・!!)

 

度重なる敗北を喫しようとも、

マドカは未だに敗北を認めようとしなかった。

 

むしろ、屈辱により彼への憎悪を募らせていく。

 

(次こそは、次こそは私がお前を殺してやる・・・!!)

 

自らの手で一夏を切り刻む場面を想像し、

彼女は口許に下卑た笑みを浮かべる。

 

だが、その時、彼女達の後方から極太ビームの光条が迫る。

ビームの奔流は彼女達の間を掠めて通り抜け、地平線の彼方へと消えていった。

 

「なっ・・・!?」

 

「まさか・・・!?」

 

驚愕しながらも振り返った彼女達の視線の先には、

平行連結させたバヨネット装備型ビームライフルを構えたヴェルデバスターシーストラの姿があった。

 

超ロングレンジからの射撃だったのか、

確認出来たのはズーム機能を使用しての事だった。

 

『惜しかったなぁ、あとちょっとでどっちか撃墜出来てたのに。

まぁ、どのみち今ここで人生終わるんだから、

逃げても歯向かっても良いよ?僕を楽しませてよ!!』

 

オープンチャンネルでシャルロットの哄笑が響き、

その直後、上空から更にビームの雨が降り注ぐ。

 

「最近殺しの依頼が少なくて血に餓えてるんだよ、

お前達の血、浴びさせてくれ。」

 

「と言っても、下衆の血など後で洗い流しますがね。」

 

漆黒の機体、ストライクノワールを駆る一夏と、

蒼い機体、ブルデュエルデーストラを駆るセシリアがビームライフルを発砲しながらも急降下してくる。

 

「もう追い付かれたのか・・・!?」

 

「有り得ない・・・!上に回り込んでるのになんで・・・!?」

 

突き付けられた事実に混乱しているのか、

マトモな反撃さえ出来ずに二人はビームの雨に晒される。

 

「分からないって顔してるな?

もっとも、教えたところで理解出来る事ではないんだがな。」

 

嘲る様に言いつつも、

一夏はくーに急接近、ビームブレイドの一閃で右腕を肩から切り飛ばした。

 

「グゥッ・・・!」

 

「お?そういえばお前の右腕は一度、

この俺が切り落としていたな、どうだい、二度目の屈辱はよ?」

 

「貴様ぁぁぁぁ!!」

 

一夏の挑発に乗せられたくーは、腰からビームサーベルを引き抜き、

彼のビームブレイドと切り結ぶ。

 

「くー!」

 

「余所見をしている暇がありまして?」

 

仲間意識があるかは別として、

共に同じ相手を憎む者を気にかける心はあるマドカは、

完全に劣勢に立たされているくーを心配するも、

自身もセシリアに圧倒されていた。

 

「グッ・・・!貴様・・・!!」

 

「フフフッ、良いお顔をしますわね、ゾクゾクしますわ。

さぁ、絶望の海に沈みなさい?」

 

マドカは激昂し天羽々斬を振るうも、ブルデュエルの右肩に装備されているシールドで防がれ、

体制を崩された所にリトラクタブルビームガンの連射を浴びせかけられる。

 

堪らず距離を取るが、

今度はヴェルデバスターのロングレンジからの射撃に当りそうになり、

再び体制を崩された。

 

「グゥッ・・・!」

 

「もっと足掻いてくださいな、そうでないと、

殺す価値も無いのですから!!」

 

体制を崩したミラージュフレームに向け、

セシリアは左サイドスカート裏からスティレットを引き抜き投擲する。

 

「チィッ!」

 

三発の内二発は弾いたものの、

最後の一発は脚部に突き刺さり、盛大に爆ぜた。

 

「グゥッ・・・!またこれか・・・!!」

 

以前喰らったものと全く同じ攻撃でダメージを喰らったのが癪なのか、

マドカは千冬に似ている顔を歪めた。

 

「マドカ!!」

 

「人の心配をしている場合か?

アイツよりもお前の方が断然死に近いと言うのにな。」

 

一瞬、マドカの方に気が逸れたくーの隙を見逃さず、

彼はビームブレイドでビームサーベルを弾き飛ばした。

 

「くっ・・・!」

 

「チェックメイト、これで終わりにするか、続けるか?」

 

首にビーム刃を切ったブレイドの刃を当て、

どの様に対処するかを見極める。

 

「くっ・・・!マドカ・・・!!逃げて・・・!!」

 

「くー!!」

 

「余所見をするなど、愚の骨頂!!」

 

くーの必死の叫びにマドカは一瞬気を取られるが、

セシリアに蹴り飛ばされ、大きく後方へと吹き飛ばされた。

 

「私の事は気にしないで!!マドカだけでも逃げて・・・!!」

 

「しかし・・・!!」

 

「速く!私が囮になる・・・!!」

 

「・・・!!くっ・・・、すまない・・・!!」

 

くーの必死の叫びに、

マドカは躊躇うも彼等に背を向け、

空域を最大加速で離脱していった。

 

 

(クソッ・・・!!くー、お前の仇は必ずとってやる・・・!!)

 

sideout

 

side一夏

 

クックックッ・・・、仲間を見捨てて行くか、

それしか生き延びる方法は無いだろうな。

 

実に賢明な判断だ。

 

「セシリア、気持ちは分かるが追うな、今アイツを追う必要は無い。」

 

「かしこまりましたわ、一夏様。」

 

「それで?この小娘はどうするの?」

 

ロングレンジから射撃を行っていたシャルが、

タイミング良くこちらにやって来た。

 

「織斑一夏・・・!貴様だけは喩え刺し違えても私が殺す・・・!」

 

俺に首を絞められながらも、俺を殺す事に拘るか・・・。

 

まったく、いい加減、自分の運命とやらは見えていないのか?

 

「それで?どうやって殺すんだよ?」

 

右脚のリミッターを解除し、くーの左脚に蹴りを叩き込む。

 

威力過剰な為、絶対防御すら発動しないまま、

くーの左脚は根元から千切れ飛んだ。

 

「ウァァアァァァァァ!!?」

 

その途端、くーは喉が張り裂けんばかりの声をあげる。

心地良い悲鳴だ、ゾクゾクするぜ。

 

ISの機能故か、出血は直ぐに止まったのだがな。

 

「クックックッ・・・、良い声で鳴くな、

もっとその声、聴かせろよ。」

 

首を掴んだまま半回転し、セシリアに小娘を投げ渡す。

 

「一夏様に刃向かった報い、受けて下さいな♪」

 

セシリアも俺と同じ様に首を掴み、

空いた右手でくーの残った左腕を引きちぎる。

 

一瞬、血が噴き出て、セシリアの肌にかかる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!?」

 

「本当に良い悲鳴ですわね、柄にもなく、興奮してしまいますわ、

それに、処女の生き血はお肌にも良いそうですし、

シャルさんもお試しになって下さいな?」

 

血を浴びながらも、セシリアはシャルへとくーを放り投げた。

 

「も・・・、やめ・・・。」

 

「何寝ぼけた事言ってるの、君?

一夏に逆らった君達が悪いんだよ?恨むなら自分の選択を恨みなよ。」

 

くーを受け取ったシャルは、

命乞いをするくーに冷たく言い放ち、残った右脚をもぎ取った。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!」

 

「本当に気持ちの良い悲鳴だね、濡れちゃうよ。」

 

噴き出る血を掌で受け止め、彼女から自分の首の周りに垂らす。

 

「本当だ、これはお肌に効くよ。」

 

恍惚の表情を浮かべながらも、

シャルは俺の方へとくーを投げ返してきた。

 

「さぁ、最後は心臓を引き摺り出してやろう、

篠ノ之 束に着き、俺達に刃向かった報い、貴様の命で受けろ。」

 

左手で首を掴みながらも、空いている右手でくーの胸を貫いた。

 

多少の血が飛び散り、俺の頬に付着する。

 

胸を貫かれたくーは、声もあげないまま、一瞬だけ痙攣し力尽きた。

 

引き抜いた俺の手に握られていたのは、

奴の心臓ではなく、鈍く光るISのコアだった。

 

「チッ、生の心臓を見れるかと期待していたが・・・、

まぁ、良い、これはこれで使い道がある、有効活用させてもらおうか。」

 

ふと海面に目をやると、先程切り落とした腕や脚に、

鮫が群がり、互いに奪い合いながら引きちぎっていた。

 

相当飢えてやがるのか?

なら丁度良い、ここに餌がある。

 

「さぁ、これで腹を満たすが良い。」

 

くーの亡骸を手放し、海へと落とすと、

鮫達は我先にと奪い合いを始める。

 

みるみる内に、奴の身体は引き千切られ、

海に大量の血が滲み出て、辺りを真っ赤に染め上げていた。

 

「ミッションコンプリート、帰って報告書を纏めるぞ。」

 

「かしこまりましたわ、一夏様。」

 

「良いもの見れて気分が良いし、頑張るね。」

 

セシリアとシャルに促し、

俺達はIS学園への帰路につく。

 

これから先の計画を胸の内に秘めたままに・・・。

 

sideout

 




はいどーもです!

次回は機体紹介その六です。
紹介する機体が多いので、三機ずつに分けたいとこっそり思ったりしてます。

それではお楽しみに!!

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