インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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誘われし者 楯無編

noside

 

ダガーに囲まれ、楯無は窮地に陥っていた。

 

一夏からの策略で渡されたタクティカルアームズⅡを用いて奮戦していたが、

性能と物量の差で徐々に追い詰められていったのだ。

 

体制を崩され、ビームサーベルで貫かれようとしたその刹那、

上空から数条のビームが飛来し、彼女の回りに展開していたダガーを貫いた。

 

「なっ・・・!?」

 

あまりに突然の事に、楯無は驚くものの、

好機と見てダガーより距離を取る。

 

「一体誰が・・・!?」

 

驚く楯無の眼前に、ブルデュエルデーストラを纏ったセシリアが降り立つ。

 

「まったく・・・、この程度の敵を相手に、手も足も出ないのに、

よくもまぁ、一夏様に宣戦布告出来た物ですわねぇ?」

 

セシリアはその麗しき顔にありありと侮蔑の念を浮かべ、

楯無に振り向きつつ言い放つ。

 

「悪かったわね・・・!!一体何の用!?」

 

セシリアの物言いにムッとした楯無は彼女を睨み返す。

 

楯無自身にとって、織斑一夏は自分を完全に凌駕する存在であると分かっていても、

他人を見下すそのスタンスが気に障ったのだ。

 

その敵意は当然、彼の隣に立ち、敵を討ち続けているセシリアとシャルロットにも向けられている。

 

女性至上主義者でない楯無から見ても、

彼の立ち振舞いは完全に相容れないモノだと分かっている。

 

「そんな顔をする位なら、とっとと何処かへ逃げてくださいな、

戦いの邪魔でしかありませんので。」

 

楯無の射殺す様な視線を物ともせず、

セシリアは彼女に背を向け、ダガー達に意識を向ける。

 

「さぁ、かかって来なさい?恐怖の中に沈めて差し上げましょう。」

 

スティレットを引き抜きつつルーヴィアドラグーンを射出、

単機、無数のダガー部隊に突撃していく。

 

「はぁっ!」

 

ダガーに対し、ドラグーンを乱舞させ、

スティレットで爆散させる。

 

楯無で一機倒すのがやっとだった敵を、

セシリアは表情を崩さないまま、むしろ余裕の笑みを浮かべながら次々に倒していく。

 

まさに圧倒的、格の違いを見せ付ける戦いぶりだった。

 

(この程度で止まる女に、この先を生き残る事は出来ませんわよ?

さぁ、その力を解放なさい?更識楯無?)

 

楯無を試す様な事を思いながらも、

セシリアは敵を引き付け続ける。

 

その先に待つ、新たな力の目覚めを期待しながらも・・・。

 

sideout

 

side楯無

 

セシリアちゃんに助けられた私は呆然と目の前の戦闘を見ることしか出来なかった。

正直言って、一夏君に馬鹿にされている様で癪だけど・・・。

 

(実際・・・、全然なのよね・・・。)

 

彼処まで圧倒的な力を見せ付けられて、

心でも折れたのかもしれない。

 

目の前では、セシリアちゃんのブルデュエルデーストラが、

ダガーと呼ばれる無人機を歯牙にもかけない様に葬っていく。

 

彼女も、そしてここにはいないけどシャルロットちゃんも恐ろしく強い、

一対一で彼に届きそうなのは今のところ、あの二人だけ。

 

それはもう分かってる、今の私では届くはずのない場所だと言うことも・・・。

 

『クックックックッ・・・、なら、お前は俺に負けたと認めるのか・・・?』

 

「・・・!!」

 

突然、私の背後のあるわけのない闇から、

彼の声が聴こえてきた。

 

何処までも不遜で、何処までも突き放す様な声だ。

 

『この程度で敗けを認めるとはな・・・、もっと足掻くと思っていたがな、つまらん。』

 

私を嘲る様な声だったけど、

何かを試している様な雰囲気を纏っている。

 

貴方は何が言いたいのよ!?

 

「黙りなさい・・・!!私はまだ負けてない!私はまだ生きてる!!」

 

生きてる限り、まだ負けたと決まった訳じゃない!!

私はまだ戦える!!

 

『ならば、その気概を俺に見せてくれよ、この力を使ってな。』

 

一夏君の声が消えると同時に、

新しく、青い背景に白い文字が書かれたウィンドウが表れた。

 

『汝、力を欲するか?』

 

そんなこと、尋ねられるまでもない!

私は私の正義を貫く為の力が欲しい!!

 

彼の正義と相反しても構わない!

私は私だけの力が欲しい!!

 

『ならば、受け取れ、我と共に正義を貫くが良い。』

 

上等!!行かせてもらうわ!!

 

「私に、力を!!」

 

そう叫んだと同時に、ウィンドウが切り替わった。

 

『CompulsionSift Ready・・・。』

 

何かの英語が表示されたけど、

それがなんの意味を持つかを理解するより先に、

私は青い光に包まれた。

 

sideout

 

sideセシリア

 

十機目のダガーを撃ち抜いた時、

私の視界の端に青い光が射し込みました。

 

漸くですか・・・、大分遅かったですわね。

 

一夏様が教えて下さった事なのですが、

楯無に渡したタクティカルアームズⅡにはある機体のデータが隠されていた様で、

そのデータが作用して、新しい姿へと生まれ変わらせる様です。

 

純粋なセカンドシフトでは無いものの、

ガンダムへと生まれ変わる為の移行・・・。

 

一夏様が予想された通り、

楯無の機体もその兆しを見せたと言う事は、

他の方の機体も革新することは間違いないでしょう。

 

「あぁ、一夏様、貴方様のお考えがもうすぐ実りますわ、

私は最後の最後までお供いたします。」

 

sideout

 

noside

 

青い光の繭が徐々に晴れ、

その中に佇む一機のISの機影が確認出来た。

 

背後にタクティカルアームズⅡの様な物を背負い、

全体的に人間の様なスタイリッシュなフォルムに、

特徴的なヘッドアンテナを装備した機体・・・。

 

「さっきまでの私と思わない事ね、

今の私は、かーなーり、強いから。」

 

パイロットである更識楯無は、ダガー達に向けて指さす。

 

セシリアに翻弄されていたダガー達は、標的を変えたかの如く、

楯無の方へと向き直る。

 

「機体のウォーミングアップを兼ねて、後の敵はお任せしますわね。」

 

楯無の機体の変化を認めたセシリアは、

ルーヴィアドラグーンを全て回収し、

巻き添えを喰わない様に若干離れた場所に佇む。

 

「覚悟は良いかしら?もっとも、そんなこと出来ないでしょうけどね。」

 

太股よりアーマーシュナイダー引き抜き、逆手に保持する。

 

「更識楯無、ガンダムアストレイブルーフレームセカンドL!行くわよ!!」

 

叫びと共にスラスターを吹かし、

彼女に意識を向けたダガー達に迫る。

 

それを察知したダガー達は、ブルーフレームに向け、一斉にビームを撃つ。

 

だが、楯無はその僅かな隙間を縫って飛び、

一機のダガーの懐に飛び込み、アーマーシュナイダーを突き立てる。

 

その一撃は悠々とコアに達し、ダガーを一撃で戦闘不能に追い込んだ。

 

「凄い性能ね・・・!!他にも色々装備があるみたいだし、

試させてもらうわ!!ブルーフレームサード!!」

 

頭部ブレードアンテナが更に長大化し、

タクティカルアームズが量子格納され、二丁のビームライフルがマウントされ、

両腕には折り畳み式の実体剣が装備される。

 

この姿こそ、ブルーフレームサード。

限定空間での戦闘を想定しており、腕の実体剣の他にも、

脚部にもビームブレイド発生装置を備えている。

 

「はぁっ!!」

 

周囲から迫るダガーに対し、楯無は自身の鍛練の中で身に付けた足技や、

トンファーの様に実体剣で切りつける。

 

先程まで苦戦していた彼女とはうって変わり、

暗部組織の当主に相応しい戦いを見せ付けていた。

 

「これがガンダムの力・・・!!凄い!!私も戦える!!」

 

自身が振るう力に驚きつつも、己の意志を貫く戦いを続ける。

 

「フフフッ、流石ですわね、それでこそ一夏様が一目置く存在、

力を得れば強いこと・・・。」

 

そんな楯無の様子を、少し離れた場所からセシリアが楽しそうに眺めていた。

 

彼女の盟主、織斑一夏が予測した変化の連続に胸を踊らせているのか、

それとも、目の前で繰り広げられる熾烈な戦いを楽しんでいるのか・・・。

 

「露払いは私が行ってあげましょう、

さぁ、存分に貴女の戦いを行いなさい!」

 

別方向より迫りつつあったダガー部隊を目敏く見つけ、

新たな獲物を見付けた獅子の様に牙を剥く。

 

一夏の望む先を見たいが為に、

彼女は戦い続けるのであった・・・。

 

sideout

 

side楯無

 

途中からセシリアちゃんと競う様にダガーを蹴散らし、

一通り片付いた後、周囲を警戒する。

 

その結果、このアリーナにおける戦闘は終了したみたいね。

 

それにしても、青いガンダムが二機も立ってたら紛らわしいわね、

何となくフレームが似てる気もするし・・・。

 

って、そんな事考えてる暇じゃ無いわよね。

 

「楯無、一夏様がいらっしゃる第3アリーナに敵の反応があります、

恐らく有人機も来ている事でしょうし、そちらで遊ぶと致しましょう?」

 

「一々鼻につく言い方だけどその通りね、他にも敵がいるなら戦わないとね。」

 

「では、参りましょう。」

 

セシリアちゃんのブルデュエルが飛び上がり、

私もブルーフレームをセカンドLの形態に変更して飛び上がる。

 

私のプライドに賭けて、絶対に護り抜いてみせるわ!!

 

sideout

 




はいどーもです!
楯無がブルーフレームで驚いた方もいらっしゃるとは思いますが、
次回予告

箒がレッドフレーム改で敵を倒している時、
ダリルとフォルテにも変革の時が訪れる。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
誘われし者 ダリル&フォルテ編

お楽しみに!

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