インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

72 / 116
誘われし者 箒編

noside

 

「織斑一夏ァァァァ!!」

 

アストレイミラージュフレームの主武装、

天羽々斬を引き抜き、マドカは一夏へと迫る。

 

「ふっ。」

 

ノワールストライカーからマガノイクタチストライカーに切り換え、

対艦刀をI.W.S.P.より一部具現化させた一夏は高速で距離を詰め、

刀で打ち合う。

 

相手の急所を狙い斬りあうが、どちらも互いに易々とヤられるほどの腕では無い。

だが、近接戦での戦闘能力は一夏が圧倒的に上、

そして二刀と一刀では攻め手に大きな差が出てくる。

 

一夏の左脇腹を狙い斬りつけるが、

左手に保持していた対艦刀を逆手に持ち変え防ぐ。

 

鈍い金属音が響くが、彼の表情は一切変わらない。

 

「この程度か、弱い。」

 

「グッ・・・!嘗めるなぁぁぁ!!」

 

全く同じ表情を崩さない一夏の態度に、

マドカは更に激昂し、がむしゃらに鉤爪状よBソードを突き出す。

 

しかし、一夏は対艦刀を一閃し、

Bソードを弾きマドカの体制を崩す。

 

「この程度で俺を殺すだと?世迷い言も大概にしておけ!」

 

冷めた物言いで言い放ち、一夏はマガノシラホコを射出、マドカの首に巻き付かせる。

 

「グッ!?」

 

「目障りだ、消えろ。」

 

マガノシラホコのサイドバインダーを外側へと開き、

首を絞めあげていく。

 

「グッ・・・!ガハッ・・・!!」

 

「マドカ!!」

 

完全に一夏に無視されていたくーは、

トリケロス改より拳銃の様なものを抜き取り、

一夏に向けて発砲しながら接近していく。

 

「賢しいぞ小娘、貴様はでしゃばるな。」

 

機体を回転させ、ワイヤーアンカーで拘束したマドカで弾丸を防ぎつつ、

スウィングしてくーにぶつける。

 

「グゥァッ・・・!!」

 

「くうっ・・・!!」

 

マドカはくーに直撃した時の衝撃で、

くーはマドカを受け止め、吹き飛ばされた衝撃に呻く。

 

「ぬるい・・・、この程度の力しか持っていないとはな・・・、

所詮は粋がりとただの餓鬼か・・・。」

 

「貴様ぁ・・・!!」

 

「調子に、乗るなぁぁぁ!!」

 

何処までも人を小馬鹿にしたような態度の一夏に、

完全に熱くなった二人は叫び声をあげ、彼に突進していく。

 

その様子はまるで、

ただ獲物へとまっしぐらに突進していく猪その物だ。

 

だが、憐れな猪は気付くことは無い。

織斑一夏は狩られる側ではなく、狩る側なのだと。

 

「(クックックッ・・・、愚か者が、

そこまで俺に殺されたいか、良いだろう、何度でも葬ってやる。)」

 

「死ねぇっ!!」

 

「はぁぁっ!!」

 

マドカとくーに分からない様に薄く笑んだ一夏に、

左右から斬撃とクローが迫る。

 

だが、一夏は回避する素振りすら見せない。

このままでは直撃を許してしまうだろう距離に入っても、

彼は一向に動かない。

 

「「死ねぇぇぇぇっ!!」」

 

積年の怨みを籠めた刃が両側から振り下ろされた直後、

鈍い金属音が響き渡った・・・。

 

sideout

 

side箒

 

「くっ・・・!!はぁっ!!」

 

一夏が敵の新手を相手にしに行ったため、

私達は残るダガー部隊を相手取っていた。

 

正直言って、第4世代機の紅椿よりも性能は上、

そして量産機を相手にして、勝てる道理等何処にも無い。

 

一夏の救援はあてに出来ない、彼も彼の敵で手がいっぱいなのだ。

秋良達もいない今、私達は圧倒的に不利な状況に追い込まれている。

 

絶体絶命とはまさにこう言う事を言うのだろうな・・・。

 

だが、諦めてたまるか・・・!!

たとえ勝てなくても、私がダガー達を引き付けておけば、

後は一夏達が何とかしてくれる。

 

私が倒れようとも、それは決して無駄ではない!

 

「だから、お前たちから逃げる訳にはいかないんだ!!」

 

向かってくるダガーの軍勢を相手に、

私はタクティカルアームズⅡLを横凪ぎして応戦する。

 

威力は確かに凄まじいが、やはり取り回しが難しい。

 

他の武装では傷を付ける程度にしか効果が無い、

その点で考えればやはりこの武装は凄いと純粋に思う。

 

「はぁっ!!」

 

私の死角から攻撃しようとしたダガーに気付き、

タクティカルアームズⅡLを振るった際の遠心力で回し蹴りを叩き込む。

 

しかし、それに気をとられ過ぎたせいで、

背後から飛び掛かってきたダガーの蹴りを喰らってしまった。

 

「ガハッ・・・!!」

 

不覚・・・!!

背後から圧迫される感覚に襲われ、

遂に地面に倒されてしまった。

 

そんな私に止めを刺すつもりなのだろう、

ダガー達は私を囲み、一斉にビームライフルの銃口を向けてくる。

 

此処までなのか・・・?

嫌だ・・・!まだ、私は生きている・・・!!

 

喩えこの窮地に誰も助けてくれなかろうと、

私さえ諦めなければきっと道は拓ける!!

 

頼む紅椿・・・!!

私に・・・!私に力を貸してくれ!!

 

その時、私の目の前に赤い背景に白の文字が書かれたウィンドウが新たに出現した。

 

『汝、力を欲するか?』

 

そんなこと、聞かれるまでもない!

力が欲しい!喩え誰かを傷付ける事になったとしても、

大切な仲間を護れる力が!!

 

『ならば行け、我の力を取り、力を護ることに使う、アストレイへと。』

 

行こう!

仲間と共に、その蕀の道、アストレイに!

 

決意を籠め、ウィンドウに記されているyesの文字をアイタッチした。

 

『CompulsionSift Ready・・・。』

 

何かのキーワードの様な物が標示された直後、

私は光に包まれた。

 

sideout

 

side一夏

 

「ふんっ!」

 

対艦刀を用い、マドカの斬撃を逸らし、

くーのクローでの突き、掻きを回避する。

 

コイツら、完全に冷静さを欠いているな・・・、

速い事は速いが、先が読めるから回避など造作ない。

 

だが、出来るだけ引き付けておきたい、

何せ、面白い事になりそうだからな。

 

「織斑一夏ァァァ!!」

 

クックックッ・・・、熱くなりやがって・・・、

そんなことでは勝てるものも勝てないぞ?

 

「ぬるい。」

 

突っ込んできたマドカの斬撃をやり過ごし、背後に蹴りを叩き込み、

左手に呼び出しておいたコンバインドシールドのガトリングをくーに撃ちかける。

 

「くっ・・・!織斑一夏ッ・・・!!」

 

クックックッ・・・、良い表情で睨みやがる・・・。

壊したくなるだろうが・・・。

 

そうでないと愉しくもなんとも無いからな。

 

そんな時だった。

視界の端に赤い光が煌めく。

 

「あれは・・・、箒か・・・。」

 

間違いない、あの光はcompulsionSift<強制移行>の光だ。

予想外の早さだったが、タクティカルアームズⅡLに仕込んでいたデータが遂に発動した様だ。

 

CompulsionSiftとは、その名の通り機体を強制的に新しい姿に移行させる、

アクタイオン・インダストリーで実験段階にあったシステムだ。

 

確証は無いが、理論上ではISにかかる負荷自体は大した物ではなく、

せいぜい移行した後の姿で固定されるというだけだ。

 

今回は箒の戦闘スタイルに合わせたデータを渡したため、

あのガンダムタイプの機体に生まれ変わる筈だ。

 

さぁ、見せてくれよ箒、

お前が望んだ進化の姿を、この俺にな・・・。

 

sideout

 

noside

 

地面に叩き付けられた箒にトドメを刺そうと、

ビームライフルを構えていたダガー達は、

突如として巻き起こった光に弾き飛ばされる。

 

人間が乗るISならば、搭乗するパイロットが慌てふためき、

少しでも情報を得ようと躍起になるだろうが、

心を持たぬ無人機に、その様な事をすることは出来なかった。

 

光が消え、膝を着く一機の赤い機体が姿を現した。

 

より人間に近いフォルムとなり、

両腰に鞘に収まった日本刀をマウントし、

タクティカルアームズⅡLを折りたたみ、背中にV字で背負う赤い機体だった。

 

「さて・・・、さっきまでの私と同じだと思うなよ、

私の仲間に手を出した事を後悔しろ。」

 

パイロットである箒は、機体の感触を確かめる様にゆっくりと立ち上がり、

左腰にマウントされている日本刀型実体剣、タイガーピアスを抜き、

正眼に構える。

 

その風格は正に武人と呼べるほどの覇気に充ちており、

害を為すなら切り捨てると言う雰囲気すら纏っている。

 

「篠ノ之 箒、ガンダムアストレイレッドフレーム改、参る!!」

 

決意を籠めた叫びと共に、スラスターを吹かし一気に駆ける。

 

一機のストライクダガーがビームサーベルを引き抜き、

彼女に一騎討ちを挑むかの様に迫る。

 

間合いに入り、ストライクダガーがビームサーベルを振り下ろすよりも先に、

箒はタイガーピアスの横凪ぎを一閃、ダガーを紙でも切るかの様に真っ二つに切り裂いた。

 

「なんて切れ味の刀なんだ!

紅椿の刀は叩き付ける事でダメージを与えていたが、これは斬るための刀だな!」

 

タイガーピアスの鋭い切れ味に驚きながらも、

撃ちかけられるビームを切り裂く。

 

タイガーピアスやガーベラストレートは、

刀身が人間の目では捉えきれない程の振動が起こっており、

装甲や弾丸等の実体がある物だけではなく、ビームすら切り裂ける。

 

「これが、私の新しい力・・・!戦える!仲間を護れる!!」

 

タイガーピアスを鞘に収め、右腰からガーベラストレートを抜刀、

突きの要領で構える。

 

「いくぞ!レッドフレーム!!」

 

彼女の気概に応える可能性如く、背部にマウントされているタクティカルアームズⅡLが動き、

V字からΔ<デルタ>をひっくり返した様な形に変わる。

 

「ヴォワチュール・リュミエール!!オープンデルタ!!」

 

タクティカルアームズⅡLの刀身が開くと同時に、

レッドフレーム改の背後に眩いばかりの光が溢れる。

 

ヴォワチュール・リュミエール、

光を推力とする緊急加速装置であり、ミラージュコロイドやゲシュマイディッヒパンツァーの技術が応用されている。

 

そのため、単なる加速だけではなく、アローフォーム時においては、

ビームアローを屈折させる事が可能となった。

 

「おぉッ!!」

 

その推力を活用したレッドフレームは、疾風を切り裂くが如く翔び、

攻撃を仕掛けようとしたダガーに接近、次々に斬り倒して行く。

 

「お前達などに、私の仲間を傷つけられてなるものか!!」

 

今まで護られていた分、自分が護るという気高き意志が、

ヴォワチュール・リュミエールの光に乗って空を駆け巡る。

 

仲間を護るという強き思いが、箒に大いなる力を与えているのだ。

ここに、篠ノ之 箒は革新の扉を拓いたのであった・・・。

 

sideout

 




はいどーもです!
ガンダム無双が始まりそうです(笑)

それでは次回予告
窮地をセシリアに救われる楯無、
自らの無力に怒り、力を欲する。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
誘われし者 楯無編

お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。