インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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優しさに包まれて

side一夏

 

クリスマスも終わり、年末までの4日間を報告書等で潰し、

年の瀬まであと1日と言う所で、俺達は実家に戻ってきた。

 

何故俺達なのかだって?

セシリアとシャルが着いてきたがったから、

日本式の年末年始を味あわせてやろうと思って連れてきたんだよな。

 

「久し振りに帰って来たな・・・、

かなりホコリがたまってやがるぜ。」

 

「それでは換気いたしませんと。」

 

「じゃあ大掃除からしないとね♪」

 

俺の家に上がると同時に、

セシリアとシャルは何故か掃除を始めようとしていた。

 

いや、有り難いのだが、客人にそんな事をさせる訳にはいかん。

 

「お前達はゆっくりしてろよ、わざわざやる必要は無い。」

 

「何を仰いますか一夏様、私達はもう貴方様に身も心も捧げると決めた女。」

 

「一夏の家族みたいな物だからね♪」

 

・・・、そうだったな・・・。

俺はまだそれに僅かながらの申し訳無さを感じてるんだろうな。

 

だが、彼女達の心に後悔はもう無いと見た。

ならば、俺は彼女達が望むことをさせてやるだけだな。

 

「分かった、じゃあ三人でやろうぜ?」

 

「はい♪」

 

「うん♪」

 

二人は笑顔で頷き、

何で持ってきてたのかは疑問だが、

エプロンを着けていた。

 

似合うから良し、

若妻が二人もって、俺はどんだけ幸せ者なんだか・・・。

 

「俺は水回りの掃除をしとくから、お前達は窓や床を頼んだ。」

 

「はい♪」

 

「分かった♪」

 

俺も袖を捲り、ゴム手袋を装着して掃除を始める。

 

さてと、主夫モード全開で行きますかね。

 

sideout

 

sideセシリア

 

ゴム手袋を装着して、私は一夏様に申し付けられた窓拭きをするために、

洗剤とから雑巾、そして濡れ雑巾を用意します。

 

なんでも、洗剤をかけた後に濡れ雑巾で満遍なく拭き、

その後にから雑巾で水分を拭き取ると、余計な汚れが目立たないそうです。

 

先日、一夏様に手取り足取り教えて頂いたお陰で、

私の家事スキルは並み程度には底上げさせて頂きました。

 

ですので、この程度の掃除でしたら苦になりません。

 

それに、意外と窓拭きと言うのも面白い物ですわね、

新鮮と言いますか、なんと言えば良いかは疑問なのですがね。

 

「これで・・・、綺麗になりましたわ♪」

 

大体30分程でリビングの窓全てを拭き終えました。

流石に二階は一夏様にお尋ねしてからの方が良いと判断しましたので、

先に一階を掃除させていただく事にしました。

 

(とは言いましても、シャルさんが掃除機をかけていますので、

流石にこれと言ってやることもありませんわね。)

 

紅茶でも淹れたい所ですが、

流石に掃除機がかかっている中では埃が入るかも知れません。

 

手持ち無沙汰とはこう言う事を言いますのね、

やることが無いのも考え物ですわね。

 

あ、やることがありましたわね、

まだ荷物をお部屋に運んでいませんでしたわね。

 

「一夏様~、私とシャルさんの荷物はどちらに置いておけばよろしいでしょうか~?」

 

「あ~、俺の部屋に置いといてくれ、二階に上がってすぐの部屋だ。」

 

「かしこまりました~。」

 

私とシャルさんの分の荷物を持ち、

階段を昇ります。

 

少し急ですが、これも中々に新鮮でちょっとだけ楽しく思えます。

 

ちょっとした嬉しさを感じているうちに、一夏様の部屋の前に到着しました。

 

<一夏's room>と下げられているプレートがありましたので、

すぐに見つける事が出来ました。

 

ですが、やはり入る事には少しながら照れがありますわね・・・。

愛しき御方のお部屋となると、緊張する物なのです。

 

何時も何の躊躇いもなく夜を共にしてるでは無いかですって?

IS学園の一夏様のお部屋は私達の愛の巣ですから、カウントしませんわ。

 

ですが、何時までも突っ立っている訳にもいきませんので、

覚悟を決めてお邪魔することにしました。

 

ドアノブに手をかけ、扉を開けてお部屋の中に入ると、

一夏様の残り香が届きます。

 

あぁ・・・、こうしているだけで一夏様に抱き締められている様な錯覚を覚えますわ、

そこまで強い匂いでは無いのですが、やはり好きな匂いだとこれ程までに敏感になるのですね・・・。

 

そこで立ち止まらずに、お部屋の隅に荷物を置き、

一階に戻る事にしました。

 

また後で来れるでしょうし、

今は一夏様とシャルさんと三人でこの一時を過ごしたい物ですから。

 

階段を降り、リビングに戻りますと、

掃除を終えた一夏様とシャルさんがソファに座っておられました。

 

「終わったかセシリア?」

 

「はい♪シャルさんの御荷物も運んで置きましたわ。」

 

「ありがとうセシリア、気が回らなかったよ。」

 

「いえいえ、構いませんわ。」

 

私も一夏様のお隣に座らせていただき、

一息つきます。

 

「手間をかけさせたな、お陰で予定より早く終わらせられたぜ。」

 

「それほどでもありませんわ一夏様。」

 

「僕達は手伝えただけでもちょっと楽しかったしね♪」

 

「そう言ってくれるとは思わなかったな、

ありがとなセシリア、シャルも。」

 

一夏様は私とシャルさんの髪を撫でつつ、

私達に謝辞を与えて下さいます。

 

この優しい手つきと、優しい言葉こそが、

私達に安らぎと幸福感を与えて下さいます。

 

この一時こそが、私とシャルさんが存在する意義なのだと思うことがあります。

 

「さてと、晩飯の買い出しと年越し蕎麦の買い出しに行くとするかね?」

 

「私も参りますわ一夏様♪」

 

「僕も行くよ♪」

 

買い物と言う、一般的な日常も味わいたい物ですからね♪

 

暫くの間のんびりしたあと、

私達は夕食のお買い物へと出掛けました。

 

sideout

 

sideシャルロット

 

一夏に連れられて、

近くにあるスーパーにやって来た。

 

なんだか懐かしいなぁ、こう言う所に最後に行ったのって、

もう何年も前のことだしね~。

 

フランスにいた頃はお母さんと来てたけど、

こうやって大好きな一夏と、大好きなセシリアと一緒に出掛けるのもやっぱり良いなぁ・・・。

 

「さてと、とりあえずは今日の晩飯の献立から考えるか、

蕎麦はダシと麺とネギさえあれば何とかなるしな。」

 

「お蕎麦って案外手間隙掛からないからね、

一夏とセシリアは何が食べたいの?」

 

「ん~?俺は何でも良い、あえて言うならば鍋も良いかもな。」

 

「お鍋、ですか?」

 

あの硬くてどう考えても陶器にしか見えないのをどうやって食べるんだろう・・・、

って思ってるんだろうねセシリア、それは間違いだからね?

 

「セシリア、お鍋自体を食べる訳じゃないんだよ?」

 

「へっ?そ、そうなんですの?」

 

「鍋にダシやら野菜やら肉やらを入れて煮込んで喰うんだよ、

お前達二人には馴染みの無い食いもんだろうし、ちょうどいい。」

 

僕がツッコんで一夏が説明すると、

セシリアは少し顔を紅くしていた。

 

そんなに恥ずかしがらなくても良いのに、やっぱりセシリアは可愛いね♪

 

「さてと、とりあえず肉団子に豚肉のスライスは外せんし、

野菜は白菜とか入れとけばOKだろ。」

 

一夏は野菜やお肉を選別しながら籠に入れていく、

三人分だから結構買い込まなきゃ足りないしね~。

 

「他に入れて欲しい具材はあるか?ただし、流石にこれはと言う物だけは俺が止めるからな?」

 

「じゃあ僕はウィンナーかな?カレー鍋も美味しそうだよ?」

 

パックで売ってあるカレー鍋の素って凄く気になるし、

読んでみたら〆はチーズたっぷりのカレーリゾット!

 

うん、本当に美味しそうだったからつい頼んじゃったよ。

 

「カレー鍋ですか、面白そうですわね、他には・・・、

はんぺんやお餅があると美味しいみたいですわね。」

 

「それで決まりで良いか?創作鍋は俺も初めてだし、良いかもな。」

 

あ、そんなノリで良いんだ、でもまぁ、一夏なら美味しそうな料理作ってくれるだろうし、

心配はしてないんだけどね♪

 

「さてと、蕎麦の材料を探して帰るか。」

 

「はい♪」

 

「うん♪」

 

三人で過ごす初めての年越しなんだ、

絶対に楽しもうっと♪

 

sideout

 

side一夏

 

てな訳で、買い出しから戻った俺達は早速調理を始めることにした。

 

二人の料理の腕は熟知しているし、

野菜を切ったり肉をカットするのは楽に出来るだろう。

 

俺は少々力がいる仕事、まぁ鍋やコンロを出したり、

ガスボンベを準備したりしてたんだがな。

 

で、カレー鍋の素を鍋に流し込んで、白菜や人参、それからはんぺんにジャガイモとかと一緒に煮込む。

肉は後で入れても大丈夫だ。

 

でもって、後は少し待つだけだな。

 

あ、忘れる所だったな、米炊いとかねぇと。

シャルはカレーリゾットを楽しみにしてたみたいだし、

忘れたら紳士の名折れだ。

 

キッチンに行き、ちゃちゃっと米を洗い、

炊飯器にセットする。

 

彼女達の手元を見れば、粗方準備は終わっている様だ。

 

「よし、下準備は終ったみたいだな?」

 

「はい、お肉の準備は終わりましたわ♪」

 

「お野菜もちゃんと切れてるよ♪」

 

なら、後は鍋の中に放り込んでグツグツ煮込むとしますかね。

 

「おし、とりあえず煮込むとするか、箸と取り皿は持っていってるからな。」

 

テーブルに用意しておいたコンロの上に鍋をセットし点火、

沸騰し、具が煮えるまで暫くの間待つ。

 

「セシリア、シャル、手伝ってくれてありがとな、

お陰で色々とはかどった。」

 

「こちらこそ、一夏様の御自宅に連れてきて下さって、

本当にありがとうございますわ♪」

 

「一度は絶対に行ってみたかったから、本当に嬉しいよ♪」

 

「これぐらいで喜んでくれるなら、何度でも来たら良い、

お前達なら、いや、お前達に来てほしい。」

 

セシリアとシャルといれるならば、

俺はどんなところでも彼女達を連れていってやりたい。

それが俺に与えられているもうひとつの役割だ。

 

「さてと、そろそろ出来上がるな、野菜もちゃんと食えよ?」

 

「子供扱いしないで下さいまし!」

 

「流石に今のは無いよ!!」

 

「ハッハッハッハッ!!冗談だ!ほれ、もう出来上がってるぞ!」

 

「もうっ!一夏の意地悪!」

 

「いけずな御方ですこと、でも好きですわ。」

 

二人と軽いやり取りをしつつ、

俺は彼女達の取り皿に肉や野菜、そしてはんぺん等を取り分けていく。

 

「それじゃあ、いただくか。」

 

「「いただきます。」」

 

三人で手を合わせ、食事にありつく。

 

カレー風味のスープが具材に絡まり、

いい感じの辛さで食が進む。

 

「ン!なかなか旨いな!これは当たりだな。」

 

「美味しい!カレー鍋も良いね!」

 

「美味しゅうございますわね♪」

 

「これはこれからもやっても良いかもな。」

 

野菜にもしっかり味がついてるし、

ポン酢とかゴマだれが要らんから手間も省けている。

 

掃除や片付け、買い出しで程好く腹も減っていたから、

箸が進む。

 

気がつけばすぐに鍋の中は出汁以外全て無くなった。

 

そろそろ米も炊ける頃だし、

チーズも出しとくかね?

 

「よし、リゾット作るぞ~、また暫くは待つとしますかね。」

 

米をカレースープに浸して、その上にチーズをたっぷり振りかける。

 

「あ~、良いにおいだね~。」

 

「待ちきれませんわね。」

 

「まぁ、待てって、もうすぐ出来るからな。」

 

コイツらも見かけの可憐さによらず、

結構な量を喰うからな。

 

そんな事を考えている内に、

リゾットが炊き上がったみたいだ。

 

うん、良い具合に染みてるな。

 

「ほれ、熱いから気を付けろよ、火傷なんてするんじゃねぇぞ。」

 

二人の取り皿にリゾットを取り分け、

自分の取り皿にも入れる。

 

「熱っ!でも美味しい~。」

 

「はふはふっ・・・、熱々が一番ですわね。」

 

「熱いな、だがこれは旨いぞ。」

 

〆にリゾットってのも悪くは無いな。

あ~、旨いな~。

 

出来上がってから五分も経たない内に、

俺達はリゾットを平らげてしまう。

 

や~旨かった。

 

「は~、僕もうお腹いっぱいだよ~。」

 

「美味しかったですわね~。」

 

「オラ、片付けが残ってるぞ、ダラッとするなよ。」

 

「「えぇ~・・・。」」

 

えぇ~・・・、じゃねぇよ、

ちょっとは手伝えや。

 

「セシリアは食器を運んでくれ、

シャルは机の上を拭いた後、俺が洗った食器を拭いてくれ。」

 

「「はーい。」」

 

ちょっとめんどくさそうにしながらも、

二人は立ち上がって片付けを初める。

 

なんかこういう然り気無い日常ってのも良いな。

ずっとこう言う事が出来たらどれ程幸せなんだろうな・・・。

 

「セシリア、シャル。」

 

「はい?」

 

「どうしたの?」

 

二人は手を止め、俺の方に振り返った。

伝えたいんだ、感謝の言葉をな。

 

「今年も世話になったな、来年もよろしく頼む。」

 

「こちらこそお世話になりました。」

 

「来年も三人で一緒にいようね♪」

 

二人は笑顔で答え、自分達の作業へと戻っていく。

さてと、俺もやりますかね。

 

この幸せな一時を無駄にしないためにもな・・・。

 

こうして、俺の年末は幸福に包まれながら終わりを迎えるのであった・・・。

 

sideout

 




さてさて、次回予告

年も明けた学園にて、
一夏は協力者を集めはじめる。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
力への誘い

お楽しみに!!

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