インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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光の目醒め 前編

side一夏

 

日は流れ、遂に専用機持ちのリーグ戦当日になった。

 

今日まで、俺はセシリアとシャルとの連携を集中的に訓練してきたが、

やはりと言うべきか、元々俺達三人の相性が良かった為に、

それほど苦労することなく、予想以上の連携プレーが達成出来た。

 

アクタイオン社から届いたストライカーを彼女達に渡したが、

問題なく使いこなしていた事には純粋に驚いた。

 

まあそれは良いとして・・・。

 

ずっと前から分かっていた事だが、

裏でコソコソ俺の周りを嗅ぎ回っている奴がいる。

 

そろそろ取っ捕まえて然るべき措置を採らせてもらうとするか?

 

まぁ、奴さんの事だ、

足裏に五寸釘で穴を空けられ、そこに火を着けた蝋燭を突き刺しても吐く事はないだろう。

つまり裏切り者は消す以外無いと言うことだ。

 

だが、まだ少しだけ早い。

大きな出来事が興る際に、そう言った小さい事も群発する物だからな。

 

さて・・・、

今日はどんな扉が開くのやら・・・。

 

sideout

 

side秋良

 

長ったらしい開会宣言を終えて、

俺は着替えを始めるべく、更衣室を目指す。

 

いやぁ・・・、まさかトトカルチョをやるとは思わなかった・・・。

賭事が好きなだけあるよ、あの人は。

 

因みに、一位は兄さん、セシリア、シャルロットチーム、

二位は楯無と他二名のチームだった。

 

で、俺達は堂々の四位でした・・・、

何でだよ・・・、ちょっと悄気るわ・・・。

 

まぁ大まかな順位は分かりきってたし、

こんな事で一々落ち込んでたらキリがない。

 

「おっ、やぁやぁ秋良君!落ち込んでるねぇ~?」

 

「どうも黛さん、あれって不正とかないですよね?」

 

「やだな~、私はこれでも自分が書く記事には嘘を書かないって事を信条にしてるんだよ?」

 

胡散臭いなぁ・・・、

なんか色々と捏造と欺瞞を混ぜ混んでそうだし。

 

信頼してない訳じゃないよ?

でも胡散臭いんだよね~・・・。

 

ま、知り合いの新聞部って、この人しかいないから任せっきりにするしか無いんだけどね・・・。

 

「あ!そうそう忘れる所だったよ、

試合に向けての抱負を一言ヨロシク!!」

 

「う~ん・・・、取り敢えず勝ちに行きます、

とだけ言っておきましょう、勝てるかどうかなんて分からないですしね。」

 

「弱気だね~?まぁ良いや、頑張って―――」

 

―ズドォォォォォンッッッッ!!!―

 

「うおっ!?」

 

とてつもなく大きな揺れが襲い掛かり、

よろけそうになる身体を立て直し、倒れかかってきた黛さんを支える。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「え、えぇ、なんとか・・・。」

 

チッ!襲撃か!!完璧に忘れてたよ!!

今の処皆バラバラだろうし、ちょっと厳しいかもね・・・!!

 

「皆の避難をよろしくお願いします!」

 

「わ、分かったわ・・・!!」

 

皆、無事でいてくれ・・・!!

 

sideout

 

noside

 

空を埋め尽くす程の数のダガータイプの大軍が、

一斉にアリーナのシールドを突き破り侵入、

手当たり次第に攻撃を開始し始めた。

 

「お、織斑先生!!また襲撃です!」

 

真耶は大慌てで千冬の元に襲撃者の映像を届ける。

 

ナターシャは生徒の誘導及び、警護に向かった為に今この場にはいない。

 

「ちっ、生徒の避難誘導を最優先、専用機持ちに援護させろ!」

 

「は、はいっ!!」

 

千冬からの指示を受け、

真耶は自分の機体を取りに走る。

 

「クソッ、一体何が起きているんだ!?」

 

自分の理解の範疇を越える事態に、

千冬は苛立つが、今の彼女に出来る事はなかった・・・。

 

sideout

 

side雅人

 

「退けよお前ら!!」

 

ドレッドノートをノーマル形態で展開し、

向かってくるストライクダガーを蹴散らしていく。

 

ガンダムタイプの機体ならば、

ストライクダガーを蹴散らす事は訳無いが、

箒やラウラ等、非ガンダムタイプの機体には少々キツいだろうな・・・。

 

彼女達を庇いながらだと、

攻撃パターンが限られてしまうからかなり戦い辛い・・・!

 

(だが、流石にこんな狭ぇ屋内でビームライフルを使ってこない事だけは有り難いな・・・!!)

 

近接戦を挑んでくれるだけ、まだ守り様はある!

 

「箒!ラウラ!アリーナに出ろ!

ここじゃいざって時に対処法が限られる!」

 

「「わ、分かった!!」」

 

ドレッドノートをイータ形態に変更し、

バスターモードによる大出力射撃でダガーを複数機纏めて、

控え室の壁ごと消し飛ばした。

 

「行けっ!!」

 

退路が出来た事で、

俺達はアリーナに飛び出した。

 

sideout

 

side秋良

 

「えぇい!!鬱陶しい!!」

 

俺はウィングソーを腰に格納したまま、

シールドストライカーからビームサーベルを引き抜き、

向かってくるダガータイプの機体を斬り裂いていく。

 

「クッ!このぉっ!!」

 

俺の近くでは簪が、前日に兄さんから渡されていたソードストライカーの、

シュベルト・ゲベールを振るい、二体のストライクダガーを斬り裂く。

 

クソッ、流石にキツいか!

なるべく広い所に出ないとね!!

 

「鈴!衝撃砲で壁を撃ち抜け!」

 

「ひみゃっ!?わ、分かった!!」

 

俺の指示を受けた鈴が、

衝撃砲最大出力で控え室の壁を撃ち抜いてくれた。

 

「今だっ!出るよ!」

 

俺達はアリーナに飛び出し、なるべく狙い撃たれない様に用心しながらも、

直ぐ様次の手を考えていく。

 

こりゃ、少し不味いかな・・・?

 

sideout

 

noside

 

「あらあら、凄い数ですわね?」

 

「そうだね、ちょっと多いかな?」

 

秋良達がアリーナ内部に出ようとしていた頃、

アリーナの一角にはズタズタに引き裂かれたダガーの残骸が転がっていた。

 

「右側は私が受け持ちますわ、左側はシャルさんが受け持ってくださいな?」

 

「僕もそう思った所だよ、お願いするね?」

 

緊急時の筈だが、セシリアとシャルロットの言葉には、

微塵も緊迫感がなかった。

 

それどころか、彼女達の表情は至って和やかであり、

戦闘中のそれとは言い難い。

 

「それでは・・・。」

 

「行こっか?」

 

その瞬間、彼女達の表情が一変した。

さながら、獲物を狩る猛禽類の様な雰囲気すら漂わせている。

 

だが、そんなものは無人機には理解できる筈もない、

二機のストライクダガーが彼女達の前後から迫る。

 

ビームサーベルを引き抜き、挟み込むかの如く振り下ろす。

 

しかし、その斬撃が届く事はなかった。

一瞬にして、セシリアに切りかかったダガーは切り裂かれ、

シャルロットに切りかかったダガーはズタズタに撃ち抜かれていた。

 

「早いお方は好きではありませんの。」

 

「それにモヤシみたいなのもね。」

 

セシリアのブルデュエルが翔び、

シャルロットのヴェルデバスターが地を駆ける。

 

「行きますわよ、ルーヴィアドラグーン!!」

 

ブルデュエルの背部に装備されていたルーヴィアストライカーより、

八基のドラグーンが分離、周囲を自在に飛び回る。

 

「行きなさい、私の可愛い猟犬達。」

 

主の意思を受けたドラグーンは、

周囲に群がって来ていたダガーの軍勢に襲い掛かる。

 

ある機体は後方から撃たれ、

ある機体は回避した所に飛来したビームに貫かれ、

またある機体は大出力ビームの奔流に呑まれて次々に数を減らしていく。

 

「震えなさい、恐怖の中で消滅なさい?」

 

本体であるセシリアも、

リトラクタブルビームガンを連射し、

瞬く間にダガーを墜としていく。

 

「あはは、セシリアってば、僕の獲物が無くなっちゃうよ、

だから・・・、そろそろ行くよ!!」

 

シャルロットはヴェルデバスターに装備されている全ての火器を展開、

それらを一斉に発射した。

 

それはまるで濁流の如く迫り、

ダガー部隊に避ける暇すら与えずに呑み込んでいった。

 

「あははははは!!そらそらぁ!壊しちゃうよぉ!?」

 

普段、淑やかなシャルロットからは想像もつかない様な笑いと共に、

彼女は向かい来る敵を薙ぎ払っていく。

 

「やってるな二人とも、だが、俺の獲物を残しておいて欲しいものだな。」

 

苦笑混じりの声と共に一夏が駆るストライクE+I.W.S.P.が飛来し、

対艦刀の一閃でダガーを斬り飛ばしていく。

 

「ま、この程度の敵が何体居ようが俺達には関係無いな!」

 

I.W.S.P.のレールガンが火を噴き、

二機のストライクダガーを瞬く間に撃ち抜いた。

 

まさに圧倒的、

心を持たない無人機は為す術なく葬り去られて行く。

 

「ハァ・・・、所詮は人形、他愛ないですわね。」

 

「一夏のデッドコピー如きで僕達に敵う筈もないのにね。」

 

セシリアとシャルロットは彼の傍に降り立ち、

一夏の力と無人機の戦力を対比し、無人機の弱さに落胆していた。

 

「どうやら、つまらない事もなさそうだ、新手が来たようだぜ?」

 

一夏の視線の先には、新たにアリーナのシールドを突き抜けてくる機体群が見てとれた。

 

どうやら二タイプあるらしく、

それぞれ似たようなフォルムながらも、用途別に特化している様にも見えた。

 

片方のタイプは、ストライクダガーに近いフォルムを持ちながらも、

増加装甲に覆われたタイプの機体。

 

もう片方は、砲撃手を思わせる力強いフォルムに、

背面に二丁の大型砲頭を装備した機体。

 

「ロングダガーにバスターダガーか、セシリアとシャルのデータを基に造られてるな。」

 

一夏は自身の記憶から該当する機体名を引き出す。

 

ロングダガー

 

デュエルガンダムの小数量産機。

ストライクダガーとパーツの大半を共通化している為、

生産性、性能共に優秀な機体である。

 

また、フォルテストラを追加装備することで、

防御力、火力の向上を獲得している。

 

バスターダガー

 

バスターガンダムの小数量産機。

ストライクダガーとパーツの共通化を図っており、

生産性、性能共に優秀な機体である。

 

基の機体であるバスターには装備されていなかったビームサーベルを、

腰部に左右一本ずつ装備している。

 

(けどなぁ・・・、どっちも制式量産されなかった不憫な機体なんだよなぁ・・・、

結構好きだったんだがなぁ・・・、っと、そんな場合じゃなかったな。)

 

自身の脳裏に過った思考を忘れる様にかぶりを振り、

一夏は改めて前を向く。

 

「セシリア、シャル、あれはお前達のデータを基に造られたデッドコピーだ、

本物の力を示してやれ。」

 

「かしこまりました、一夏様。」

 

「ストライクダガーの方をよろしくね?」

 

「分かった、抜かるなよ。」

 

一夏達は、敵を薙ぎ倒すべく、

機体を動かしていた。

 

sideout

 

side秋良

 

「ハァァッ!!」

 

広い場所に出れた為、俺はウィングソーを引き抜いて向かってくるダガーを斬り裂いていく。

 

だけど、劣勢にには変わりなく、

俺達は徐々に追い詰められていった。

 

「秋良!エネルギー量は!?」

 

「そんなに余裕は無いかな・・・!雅人は!?」

 

「レッドゾーンが見えてきたって位だな・・・!!」

 

ヤベェ・・・!

別動隊もいるみたいだし、兄さん達の救援はアテに出来そうも無い。

 

「きゃあっ!?」

 

「簪!」

 

クソッ!ガンダムタイプじゃない簪達にこの数はキツいか!

 

救援に行こうとするけど、それを阻むかの様にダガーが俺と雅人の周りに群がってくる。

 

キリがない!!

 

そう思った時、簪達が戦っていた所から盛大な爆発と、

土煙が巻き起こる。

 

恐らく、グレネードランチャーの類いを撃ち込まれたんだろう・・・。

 

「簪!鈴!ラウラ!?」

 

嘘だろ・・・!?返事をしてくれ!!

 

sideout

 

noside

 

「ここ、何処?」

 

「私に聞くな、ダガーに追い詰められて、囲まれた所にグレネードランチャーと、

ビームを立て続けに撃ち込まれた所までは覚えているんだがな。」

 

「え?えええ!?何処~!?」

 

何処までも白い空間が続いている場所にて、

簪は茫然と呟き、ラウラは彼女の呟きにそんなこと知るかと言う風に返し、

鈴は一人でテンパっていた。

 

彼女達は先程、運悪く密集した所を狙われ、

グレネードランチャーで狙撃されていたのだ。

 

「恐らく、地獄といった所じゃないか?現に撃たれた訳だしな?」

 

「だとしたら最悪ね・・・、まだ死にたくないよ。」

 

「ええ!?アタシ達死んじゃったの!?」

 

呑気に話すラウラとは対照的に、簪は嫌だ嫌だといった風に頭を抱え、

鈴はと言えば完全にパニックに陥りそうになっていた。

 

―更識簪・・・、ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・、凰 鈴音・・・―

 

「「だ、誰!?」」

 

「何者だ!?」

 

自分達以外誰もいない筈の空間に、

聞き覚えのない声が響き、彼女達は一斉に身構える。

 

―貴女達の世界に、大いなる闇が迫っている・・・―

 

「「「大いなる・・・、闇・・・?」」」

 

―世界を覆い、全てを葬り去る・・・―

 

姿なき声の言葉に、簪達は息を呑む。

 

―だから、秋良と共にいる貴女達に、力を貸して欲しいの・・・、

お願い・・・、世界を―

 

その続きを聞く前に、

その声は途切れ、聞こえなくなった・・・。

 

「・・・、ラウラ、鈴、行こう?」

 

「あぁ、誰だか知らないが、秋良を知ってるならそれで良いさ。」

 

「うん!」

 

言葉の真意を理解する事は出来なかった、

だが、それでも秋良を信じ、慕っている彼女達が迷う事など何も無かった。

 

「「「光よ!!」」」

 

決然たる意志を籠め、三人は叫んだ。

 

sideout

 

noside

 

土煙の中より、突如として三つの光の球体が出現し、

周囲に展開していたストライクダガー数機を弾き飛ばす。

 

「あれは・・・、セカンドシフトか・・・?」

 

偶々近くまでダガーの排除に出向いていた一夏は、

その光景を目にし、抑揚の無い声で呟いた。

 

まるで、最初から予測していたかの様にも見てとれる。

 

光が晴れ、そこにいたのは三機のガンダムタイプ・・・。

 

一機はストライクやドレッドノートを連想させるスタイリッシュなフォルムに、

ソードストライカーを装備したトリコロールの機体。

 

一機は重武装を施している様に見えるも、

鈍重さを感じさせることの無い灰色の機体。

 

一機はストライクに近いフレームを持ち、

背後に閉じられた翼を背負う血の様に紅い機体。

 

「さっきは良くもやってくれたね?」

 

「私達を怒らせた自分達の愚かさを呪うが良い。」

 

「こ、今度は負けない・・・、・・・多分!!」

 

簪、ラウラ、鈴は幼き瞳に決然たる意志を籠め、

ストライクダガーの軍勢を睨む。

 

「更識簪、アストレイアウトフレームD、出るよ!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、ハイペリオン、テイクオフ!!」

 

「凰 鈴音、ネブラブリッツ、行く!!」

 

新たなる三つの光が、

自らの仲間を護るべく飛び出した。

 

sideout

 




はいどーもです!
ガンダムタイプ増殖中です。

少なくとも、後二機は追加したいです。

それでは次回予告
ガンダムタイプに目覚めた簪達は、
仲間を護るべく戦う。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
光の目醒め 後編
お楽しみに!!

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