インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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クラス代表決定戦

side一夏

時は流れて一週間後、

ついに代表決定戦の日がやって来た。

 

「しかし・・・、なんでアリーナが満員になってるんだ・・・。」

どう考えてもおかしい、クラスの人間は多く見積もっても四十人程度、

その程度の数でアリーナが満席になる筈が無い、

つまり、クラスの女子共がこの事を広めたんだろう、

めんどくさいことこの上無いな・・・。

 

そんな事を考えていると、ピットに秋良が入って来た。

 

「兄さん、セシリアはもうアリーナに入ってるよ?」

「分かっている、そろそろ瞑想にも飽きたし、行くとするか。」

 

立ち上がり、首を回しながらストライクを起動させる。

 

「兄さん、負けたら承知しないよ?」

「無論だ、あの程度の小物、十分でケリを着けてくるさ。」

「一秒でもオーバーしたら?」

 

ちっ、嫌な事を嫌な笑顔で聞いてくる奴だな、

ま、慣れてるがな。

 

「晩飯奢ってやる。」

「ちゃんと聞いたからね?」

 

うるせぇなあ・・・。

嫌な奴だぜホントによぉ・・・。

 

そう思いつつもカタパルトへ機体を移動させ、

いつでも発進できる体勢を取る。

 

『進路クリアー、発進どうぞ!』

「織斑一夏、ストライク、行くぞ!!」

 

山田先生の合図を聞き、俺はカタパルトより飛び出し、

アリーナを舞う。

 

その瞬間、一気に歓声が湧き起こる。

良いねぇ・・・、まるでスターか何かじゃねえか、

注目されるのも思ったより悪くないな。

 

「なっ・・・!?フルスキンタイプですって!?

その様な機体は見たことがありませんわ!!」

 

ストライクを見たセシリアが、驚きの声を上げる。

 

「阿呆が、今まで見てこなかっただけだろうが、

科学は常に進歩している、ISもまたしかりだ。」

「くっ・・・、減らず口を・・・!!」

「なんとでも言え、どんな戯れ言でも、勝者が言えばそれは間違いなく名言だ、

そして、敗者が言う戯れ言は、ただの負け犬の遠吠えだ。」

 

弱肉強食、これこそいつの世界でも真理なのだと、

俺はそう考えている。

 

「っ・・・、ま、まあいいですわ、今この場で今までの非礼を詫びるのでしたら、

許して差し上げますわよ?」

「ふん、もう狙いを付けときながらよく言うぜ、

生憎だがその気はない、俺は俺の戦いをするだけだ。」

「そうですか・・・、それでは――――」

 

セシリアがそう言った直後、試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

sideout

 

noside

「お別れですわね!!」

そう言いながら撃たれた光条は一夏に向け走るが、

彼は全く動かず、I.W.S.P.の左側より引き抜いた対艦刀の側面で、

ビームの軌道を逸らした。

 

「なっ!?」

あまりにも常識外れの対処をした一夏に対し、

セシリアは驚いたような表現をする。

 

当然だ、普通なら避けるなり、盾で防ぐなりするはずだが、

一夏はわざとそれらをせず、直撃する可能性も孕んでいるのにも関わらず、

ビームを逸らしたのだ。

 

「ま、まぐれですわ!!」

その事を信じることが出来ず、セシリアは更にスターライトMrk-Ⅲよりレーザーを撃ちまくる。

 

「甘いな。」

だが、一夏は開始ラインから全く動かず、少ない動きでビームを全て逸らすか、

切り落とすかしてやり過ごす。

 

「この程度か?そんなものでは代表候補生もたかが知れてるな。」

一夏は大袈裟に欠伸までしてみせる、勿論それは挑発として行ったに過ぎない。

 

「っ!!も、もう許しませんわ!!」

それにまんまと引っ掛かったセシリアは、

そう言いつつブルー・ティアーズの腰元より、四基のビットを射出、一夏の周囲に展開させる。

 

「踊りなさい!私が奏でるワルツで!!」

「いや、踊るのはお前さ、俺の手の上でな。」

 

一夏はその顔に、邪悪な笑みを浮かべながらポツリと呟いたのであった・・・。

 

sideout

 

side秋良

俺は今、管制室にいて、兄さんの試合を見ていた。

う~ん、兄さん、完璧遊んでるな~。

 

つまんないなぁ・・・、本気でやってくんないかなぁ。

 

「ひゃ~、凄いですね~、織斑君!」

「あ?呼びました?」

「い、いえ、秋良君じゃなくて、一夏君の事ですよ!」

「わかってますって、真耶センセ。」

「ええっ!?」

 

うん、やっぱりこの人からかい甲斐があるなぁ・・・。

 

「その辺にしておけ、織斑弟、あまり教師を虐めるな。」

「嫌ですよ、人をからかうのが俺の楽しみの一つでしてね、

ま、そろそろ飽きたし、やめときます。」

「お前・・・。」

 

姉さんは呆れた様に溜め息をつくけど、

性分なんだし、しょうがないでしょ。

 

「しかし、一夏は何故あそこまで戦えている?」

「確かに・・・、いくら企業所属とは言っても、

動かした時間はオルコットさんより圧倒的に短い筈なんですけど・・・。」

 

姉さんと真耶先生が怪訝の表情を見せつつも、

ブルー・ティアーズのビットから撃たれるレーザーを、

少ない動きで全て避けきるのを注視していた。

 

と言うより、兄さんまだ遊んでるし・・・、もうすぐ五分経つよ、兄さん?

 

次の瞬間、

俺の考えが通じたのか、突如として兄さんの動きが変わった。

 

sideout

 

side一夏

飽きたな・・・。

どの攻撃も拙い上、攻撃が当たらない事による焦りで、

拙い攻撃に更にムラが出来てきた。

 

そろそろ五分経つな・・・、よし、真面目にやるか。

 

「な、何故当たりませんの!?」

「答えは単純、お前が下手だからだ。」

 

セシリアの叫びに答えつつもビームブーメランを投擲、

放物線上にあった二基のビットを破壊しつつ、

ビームブーメランはセシリアの方へと向かっていく。

 

「っ・・・!?」

 

セシリアは驚きつつもビームブーメランを避けるが、

そこには俺が予め撃っておいたガトリングの銃弾が襲い掛かる。

 

「オラオラどうした!?まだまだいくぜ!?」

体勢を崩したセシリア目掛け、肩のレールガンを連射する、

その隙に対艦刀を収納、ビームライフルを呼び出し残る二基のビットを破壊する。

 

「そ、そんな・・・!!」

セシリアが怯んだ瞬間、ビームライフルを投げ棄て、

対艦刀を一本抜き、瞬間加速<イグニッション・ブースト>を発動、

一気に間合いを詰める。

 

しかし・・・。

 

「かかりましたわね!!ブルー・ティアーズは六基有りましてよ!!」

 

やはりと言うべきか、腰元からノズルの様な物が二本前に突き出してきた、

ミサイルビットだろうが、俺にはそんなもん関係無い。

 

ミサイルビットよりミサイルが発射されるが・・・、

「甘い!!」

飛んでくる二発のミサイルを、対ビームシールドを突き出し、

二つとも爆発させる、それと同時に発生した爆煙にまぎれ、

セシリアの背後に回り込む。

 

「なっ・・・!?」

「俺を甘く見たお前の慢心が、敗北の原因だ。」

 

ミサイルビットを二本の対艦刀で貫き爆発させ、

体勢を崩したセシリアにガトリングとレールガンを立て続けに撃ち込み、

地面へと落下させる。

 

そして、再びイグニッション・ブーストを発動させ、

勢いそのままにセシリアの腹部に蹴りを叩き込んだ。

 

セシリアが地面へと直撃した際、直径約15メートル位のクレーターが、

アリーナの地表に穿たれた。

 

土煙が晴れ、クレーターの中にはブルー・ティアーズが解除されたセシリアが倒れこんでいた。

微妙に呻いている事から、僅かに意識は残っている様だ。

 

『勝者、織斑一夏!!』

 

試合終了のアナウンスと同時にアリーナが割れんばかりの大歓声が起きた。

 

取り敢えず手を振っておき、動けそうもないセシリアをお姫さま抱っこし、

ピットに戻るべく飛翔する。

 

「お前の中にある卑屈な男に対する偏見、別に悪いとは言わんが、

全ての男がそうだと思い込むところがお前の良くないところだ。」

 

セシリアの父親の卑屈さが、セシリアに男に対する嫌悪感を与えていた事ぐらい、

原作を読んでたら分かる事だ。

 

届いているのかどうかなどどうでもいい、

だが、言っておかなければいけない事だ。

 

説教くさくなるし、この辺りにしておくか。

 

ピットに戻った俺を待っていたのは、秋良と箒、

それからストレッチャーの横に立つ駄姉と山田先生だった。

 

四人を一瞥し、取り敢えずセシリアをストレッチャーに乗せ、

待機していた他の教員に預けた後、秋良の所に歩いていく。

 

「時間は?」

「九分ジャスト、賭けは俺の敗けだね。」

「そうかい。」

ま、最初の五分は遊んでたし、まあまあのタイムだな。

 

「待て、賭けとはなんだ?」

ちっ、やっぱり要らん所だけ目敏いな、めんどくさい。

 

「そのままの意味だ、十分以内にオルコットを倒せるか否かを賭けていたにだけだ。」

「で、今回のタイムは九分ジャスト、つまり俺の敗けって事。」

「何故その様な事をした?」

 

うるせぇな、まったくよぉ・・・、

そんなことより自分の生活能力を考えやがれ。

 

「別に、あんな小物、本当なら五分以内でも殺れたさ、

さっきの戦闘だって本気からは程遠い。」

「で、兄さんの楽しみを増やすために俺が敢えて賭けをしてみただけの事だよ。」

「「・・・。」」

 

駄姉と山田先生は俺達の行動に、解せないと言うような表情をしていた。

 

「さてと、俺達はここら辺で失礼させてもらう。」

「そんじゃ、行こっかモッピー?」

「うむ。」

 

何か言いたげな二人を残し、俺は秋良と箒を連れ、ピットから去った。

 

sideout

 

sideセシリア

「うっ・・・?」

身体中に走る鈍い痛みに呻きつつ、私の意識は覚醒しました。

 

目を開けてみると、見知らぬ真っ白な天井が飛び込んで来ました。

ゆっくり身体を起こし、周りを見てみるとどうやら保健室のようでした。

 

(どうして私はこの様な所に・・・?)

私は確か・・・、織斑さんと戦って・・・。

 

『俺を甘く見たお前のその慢心が、敗北の原因だ。』

「ッ!!」

 

あの時、蹴り落とされる直前に聞いた彼の声が、

私の身体を震わせる。

 

何処までも冷たく、突き放す様なその言葉が私の矜持を砕いていく。

恐怖、ただそれだけの感情が私の中に染み渡る、

圧倒的な力量の差、それが絶望に変わっていく。

 

それと同時に、何やら別の感情が心の奥底から這い上がって来る。

それは歓喜、そして女としての悦びでした。

 

何故その様な感情が出てくるのでしょうか・・・?

 

恐い筈なのに、冷たい筈なのに、

それらが私に快感を与える・・・。

 

決して不快な快感では無く、寧ろ、

自ら手にいれたくなるような、甘美な物・・・。

 

そう思った瞬間、身体中に震えが走りました。

そして、理解してしまいました、

私は、織斑一夏という究極に、屈服したいのだと・・・。

 

sideout

 

side一夏

「うーっす。」

「おはよー。」

 

セシリアとの決闘の翌日、俺は秋良を伴い1組に入った。

その瞬間、教室中の視線が俺達に集まる。

 

そりゃそうだろうな、世界初の男性IS操縦者が代表候補生を下したんだ、

注目しない訳が無いわな。

 

「よお、どうしたよ?」

「なんでみんな黙ってるの?」

 

俺と秋良は意地悪く、近くにいた相川さんに聞いてみた。

 

「え!?え~と・・・!」

はははっ、焦ってる所も良いねぇ。

 

「あ、あのッ!!」

「ん?」

後ろから声をかけられ振り向くと、そこにはセシリアがいた。

 

「何か用か?それとも、言い掛かりでもつけに来たのか?」

俺が指を鳴らすと周囲に緊張が走るのが分かる、

そりゃそうか、俺の力が充分過ぎる程に伝わったんだろう。

 

「とんでもございませんわ、私は先日の非礼を詫びに来ただけですわ。」

「ほう?殊勝な心掛けだな?どんな風の吹き回しだ?」

取り敢えず話を聞くために臨戦体勢を解く。

 

「私は貴方様の事を何も知らないのに蔑んでしまいました、

その事を深く反省し、お詫び申し上げますわ、申し訳ありませんでしたわ。」

「そうかい、見た限り反省してくれてるみたいだし、

俺もこれ以上引き摺るのも女々しいからな、これで水に流そう。」

 

詫びを入れてきた相手に対して冷たくしたり蔑ろにしたりするのは、

幾らなんでも大人げないからな。

 

俺が右手を差し出すと、セシリアが何故か俯いた。

どうしたんだ?

 

「その・・・、これを・・・。」

そう言いつつ、セシリアが差し出して来たのはなんと首輪だった、

それも飼い犬に使うようなマジもんのだ。

 

「オイ、なんだこれは?」

「嫌ですわ一夏様、首輪ですわ。」

「そう言う事を聞いてんじゃねえよ、なんで首輪なんかを渡すんだ?」

「いえ、私をペットにしていただきたく・・・。」

 

頬を染めながら変態発言すんじゃねぇよ。

 

「黙れ牝犬が。」

「っ!!!」

 

取り敢えず罵ってみると、セシリアは恍惚の表情で身体を震わせていた。

・・・、どうしてこうなった・・・。

 

秋良、笑うな。

 

sideout

 




はいどーもです!

なんとか上げられました。
後二、三話は連日投稿出来そうです。

最悪、三日に一回は出しますので応援よろしくお願いします。

さて次回予告
クラス代表が決まり、クラスが本格的に動き出す中、
二組に転校生がやって来た。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
鈴イベント

お楽しみに!

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