インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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弾丸よりも速く

side一夏

 

週明けより、俺達は次の日曜日に開催されるキャノンボールファストの為の練習に入る事になった。

 

昨日、結局進展はなかったらしく、

秋良達はかなりの時間を無駄にしたらしい。

 

だから言ったろうが、さっさと逃げろと。

 

言ってなかったか?まあどうでも良いがな。

 

「それではまず模範飛行をしてもらいたいと思います!

一夏君とオルコットさん、お願いします!」

 

いきなり御指名か・・・、

まぁ、そりゃそうか、俺とセシリアがパッケージをインストールし終えているしな。

 

「了解。」

 

「わかりましたわ。」

 

山田先生に促され、俺とセシリアはスタートラインに立ち、

それぞれの機体を展開する。

 

セシリアのブルー・ティアーズは高機動強襲用パッケージ、ストライクガンナーを装備し、

俺のストライクEはスペキュラムストライカーを装備している。

 

I.W.S.P.かエールストライカーでも良いんだが、今回は試しだ。

 

勿論、ガンダムフェイスは展開済みだ、じゃねぇと気持ち悪くなるしな。

 

「一夏様、お手柔らかにお願いしますわ。」

 

「こちらこそ、よろしく頼むぜ。」

 

セシリアと軽く言葉を交わし、俺達はスタート体制を整える。

 

「レースファイト!レディー・・・、ゴー!!」

 

チェッカーフラッグが振られ、俺達は一気に加速する。

 

周りの風景が一瞬にして後方へと過ぎ去っていく、

まるで常時、瞬間加速<イグニッション・ブースト>を発動させている気分だ。

 

良いねぇ、ここまでの速さなら、俺は満足だ。

 

「流石ですわ一夏様、初めてのレース仕様でここまで使いこなせているんですもの。」

 

「セシリアこそやるな、かなり本気で飛ばしてるんだがな。」

 

面白い、なら、少し遊んでやるか。

 

少し速度を速め、

ビームライフルショーティーを二丁ともホルスターより抜き放つ。

 

「セシリア!」

 

ショーティーを手放し、それはそのまま真後ろにいたセシリアの方へと向かっていく。

 

「!」

 

俺の意図に気付いたのか、セシリアは避けることなくショーティーを保持し、

サークルロンドを使いながらも俺にビームを撃ちかけてくる。

 

使用許可は出しているから問題なく使えるだろう。

 

「はっ!」

 

「ふっ。」

 

俺は撃ちかけられるビームをサークルロンドで避け続ける。

 

いい射撃だ、正確にスラスターを狙ってきやがる。

だが、それで良い。

 

そろそろゴールが見えてくるという所で、

俺は振り向きつつ両手の掌からワイヤーアンカーを射出、

セシリアの腕に絡み付かせる。

 

「っ!?」

 

「こっちに来いよ、マイレディ?」

 

腕を引きつつワイヤーアンカーを回収し、

セシリアを俺の方へと引き寄せる。

 

俺の手前までセシリアが引き寄せられ、

そのまま左腕を彼女の膝の下に、右腕を肩に回す。

所謂、お姫様抱っこというところだな。

 

「恋人サービスだ、良いだろう?」

 

「ふふっ、いけずですわね♪」

 

嬉しそうに微笑むセシリアを抱えたまま、

一気にゴールし、その場で着地した。

 

俺達はまったく同時に機体を解除し、

俺はセシリアを地面に降ろした。

 

「ざっとこんな感じですか?」

 

「はっ、はい!ありがとうございました、それじゃあ各自練習に入ってください。」

 

凄く照れてる山田先生の合図と共に、

一組、二組連合はそれぞれの散っていった。

 

sideout

 

side秋良

 

兄さんめ、まさかレース中にお姫様抱っこするとは・・・、

どんだけキザなんだよ。

 

俺にはどう頑張っても出来そうに無いね。

だって恥ずかしいし。

 

さてと、俺も一周して来るかな?

 

でもなぁ、相手いないとつまらないしね・・・。

どうしよう?

 

「秋良、俺で良ければ相手になるぜ?」

 

「ありがとう雅人、それじゃあ行こうか。」

 

俺と雅人はスタートラインに立ち、

まったく同時に機体を展開し、そのまま飛び出した。

 

うげ・・・、案外速い・・・、それと気持ち悪・・・。

 

「ヤバイなこれ・・・、下手すれば吐きそうだ。」

 

「確かにね・・・、よくあんなアドリブ利かせられたと思うよ・・・。」

 

あの人は本当に人間なのかな?

俺達が言えた義理じゃないけど、たまにそう思う。

 

『おい、秋良、雅人、なんでお前らヘッドバイザー下ろしてねぇんだ?下手すりゃ吐くぞ。』

 

「「・・・。」」

 

俺達の初歩的なミスなのね!!この気持ち悪さ!!

 

なんで教えてくれなかったんだよ、あの人は!!

 

『授業聴いとけ、ど阿呆が。』

 

クソッ!凄いムカつく!

なんだよこの謎の敗北感は!?

 

そんな事を思いつつ、やっぱり吐きたくないからガンダムフェイスを展開する。

案の定、凄く楽になったよ。

 

「秋良・・・、やっぱり一夏は冷たいな・・・。」

 

「冷たいというより、キツいって言った方が良いよ。」

 

なんかもう勝てる気しないから何も言わないけどね・・・。

 

謎の敗北感を味わいつつ、

俺達はほぼ同時にゴールインした。

 

「さてと、案外簡単だったね。」

 

「そうだな、もうちょいスピードをあげても良かったな。」

 

ゴールした後、俺達は邪魔にならない所でエネルギー配分と、

速力調整に精を出す。

 

ウィングソーを姿勢制御に使うのも悪くは無さそうだね。

でもそうなるとずっと手に持っとかないといけないしなぁ・・・。

 

まぁ、二者択一なのは分かってるし、なんとかしてみようかな?

 

sideout

 

side一夏

 

秋良と雅人のアホさ加減にため息を吐きつつ、

俺はノワールストライカーを装備したストライクEを展開し、

スタートラインの方へと移動した。

 

感触を掴む為というのもあるし、

何より、複合兵装型のストライカーパックでもそれなりの速度が出せるかという疑問もあるしな。

 

I.W.S.P.は流石に本番では使わないが、

可能性としてノワールストライカーは使えそうだしな。

 

「あ、一夏!良かったら僕と飛ぼうよ!」

 

スタートラインに立った時、シャルが俺の方にやって来た。

 

別に必要ではないが、相手がいるのは有り難い。

 

「そうだな、セシリアだけというのも不公平だしな、相手になってくれ。」

 

「ふふっ、ありがとう♪」

何時ものように満面の笑みを浮かべて、

シャルは自分の機体を展開していた。

 

シャルのリヴァイヴは大気圏離脱用のブースターを装備していた。

爆発的な加速力は得られそうだが、カーブに弱そうだな。

 

ま、そこが落とし処なんだがな。

 

「あれ?ノワールストライカーで飛ぶの?高機動型の方が良くない?」

 

「ちょっとした策が有るんだよ、楽しみにしてな。」

 

「ふふっ、そんなに簡単には引っ掛からないからね♪」

 

「それじゃあ、行くぞ。」

 

「うん!!」

 

軽い言葉を交わし、俺達はスタートラインに立ち、

スラスターを吹かして一気にスタートした。

 

ふむ、スペキュラムよりは劣るが、それでも悪くない加速力だな、

いや、小回りの効き具合を考えたらこっちの方が良いかもな。

 

それに、ノワールストライカーはリニアガンがあるし、

後方への攻撃も容易い。

 

「流石だね一夏!二度目なのにここまで速いなんて!」

 

「ふっ、当然だ、お前達の前で無様を晒すかよ。」

 

驚愕の声と共に、シャルはマシンガンを乱射してくるが、

少し距離が開いているため、俺に直撃する事は無い。

 

しかし、このままやられっぱなしも気分が悪い、

牽制ぐらいはさせてもらおう。

 

フレキシブルバインダーを動かし、リニアガンの砲口を真後ろに向ける。

 

「前方注意だぞ、シャル。」

 

音速を軽く越えて、リニアガンの弾丸はシャルに迫る。

ただでさえ、音速を越えた速度で飛んでいる上、こちらを追いかけている、

そこに音速越えの弾丸が迫って来るとなれば、回避する事は至難の業だろう。

 

「わわっ!?後ろにも撃てたの!?」

 

「何っ!?」

 

マジかよ、サークルロンドとバレルロールを同時に行っただと!?

 

あんな直線加速しか取り柄がない機体でやってのけるとはな、

流石の腕前だな。

 

「これならどうだ!?」

 

回避した先にフラガラッハ3ビームブレイドを放り投げ、

衝突事故を起こさせようとした。

 

流石にこれは避けられんだろう。

 

案の定と言ったところか、

投擲したビームブレイドの切っ先がブースター部に直撃し、

盛大に爆発、コースアウトしようとした。。

 

このままでは何処かの壁に激突してしまうだろうが、

俺はそんな事はさせない。

 

直ぐ様ワイヤーアンカーを射出、

腹部に絡み付かせ、一気に引き寄せる。

 

セシリアとまったく同じと言うのもあまり面白くないので、

シャルはそのままおぶる事にした。

 

「えへへ♪負けちゃったよ。」

 

「だが、やはりいい腕をしてたな、掴まってろよ。」

 

シャルをしっかり掴まらせて、

俺は何の問題もなくゴールインした。

 

sideout

 

side雅人

 

いやいや・・・、あれは無いだろう・・・。

まさかビームブレイドを投擲してブースター部を破壊するなんてよ・・・。

 

俺にも似たような事は出来るが、

それはドラグーンを使っての攻撃に他ならない。

 

対して、一夏はコントロールの効かないビームブレイドを直撃させた、

恐らく、奴は最初からあの瞬間を狙っていた気がしてならない。

 

だが、なんで自分の女にはあんなに気前がいいんだよ、

セシリアはお姫様抱っこ、シャルロットはおんぶって・・・。

 

まぁ、今は人の技術に驚くより先に、

自分の事を考えろってね。

 

大体のコツは分かったし、後は誰かの飛行の癖を学べば勝てるんだがな・・・。

 

そんな事を考えていると、

何処からともなく箒がやって来た。

 

「雅人、手が空いてるなら相手になってくれないか?」

 

「おぉ!良いぞ、こっちから頼みたいぐらいだったんだ、よろしく頼むよ。」

 

「うむ!それでは行くとするか!」

 

俺はドレッドノートを展開し、紅椿を展開していた箒の隣に並ぶ。

 

「「レディー・・・、ゴー!!」」

 

掛け声と共に、俺達は一気にスタートした。

 

相変わらず凄い加速だが、もう慣れつつあるな。

 

さてと、今はイータ形態で飛んでるんだが、

攻撃手段が殆ど無い事が悩みだ。

 

ビームライフルを呼び出しても良いんだが、

当てられる自信が無いし、エネルギーも喰うし・・・。

 

プリスティスにしたって、射程範囲が短いし、

断線されたらドラグーンと同じ様に遠隔操作しなきゃならんし・・・。

 

アレ?ドレッドノートって、レース系にメチャクチャ不利じゃないか?

 

ストライクノワールみたいに後ろに攻撃出来ないし・・・、

って、ゲイルストライクの方が酷いか・・・、遠距離武装無い訳だしな。

 

まあ良い、それは今飛んでる紅椿も同じことだ、

俺だけが不利な訳じゃない。

 

「そこっ!」

 

「何っ!?うおっ!?」

 

失念していた!

紅椿の刀は確かレーザーをばら撒けるんだよな!

 

クソッ!少し被弾しちまった!

 

「ちっ!パクりみたいで嫌だが、やるしかないか!」

 

プリスティスを後方に射出し、多角的攻撃を仕掛ける。

 

「なっ!?うわぁっ!?」

 

まさか俺が振り向かずに攻撃してくるとは思わなかったのか、

箒の紅椿は数発被弾してコースアウトしていった。

 

案外使えるな、この戦法・・・。

まぁ、やるだけやってみるかね。

 

っと、その前に箒を回収してやらねばな。

 

sideout

 

noside

 

「やぁやぁ!亡國企業の諸君!お初~!」

 

「えぇ、こうやって直接会うのは初めてね、篠ノ之 束。」

 

とある広間にて、亡國企業所属のスコール・ミューゼルと、

世界を騒がせている天災、篠ノ之 束が向かい合っていた。

 

先日取り付けた会合の約束が、漸く果たされる事となったのだ。

 

「まさか悪名名高い貴女と直接会えるとは思ってなかったわ。」

 

「それはこっちも同じだよ~、同じ相手に復讐したいって思う人間がいるなんて思ってもみなかったしね。」

 

和やかに笑いあうが、二人の雰囲気は何処か通ずるものがあった。

 

それは恐らく、自分達に仇をなした宿敵、織斑一夏への復讐という点であろう。

 

「利害関係は一致、復讐対象も一致した、という事で良いかしら?」

 

「だね~、これは同盟ってやつかな?私はやっても良いよ~!」

 

「そうね、同盟締結といきましょうか。」

 

どちらからともなく差し出した右手を握り、

ここに同盟関係が結ばれたのだ。

 

「早速だけど、あのちーちゃんに似た子を差し向けて欲しいんだ、

勿論、彼から奪ったデータで造った無人機も差し向けるしさ~!」

 

「えぇ、構わないわ、何と戦うにしても、データは重要だもの。」

 

束が差し出したデータに目を通し、

スコールは部下にマドカの出撃命令を出す。

 

彼女が目を通したデータとは、

文化祭の際に一夏達を襲ったストライクダガーの物だった・・・。

 

sideout




はいどーもです!

陰謀が蠢いてますねぇ・・・。

さて次回予告
ついに開催されるキャノンボールファスト、
だが、レースを妨害するかの様にサイレント・ゼフィルスとストライクダガーの軍勢が迫る。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
進化する者達 前編

お楽しみに!

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