インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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穏やかな気持ちで

side一夏

 

「えーッ!?一夏の誕生日が!?」

 

「もう直ぐですの!?」

 

文化祭から少し経過したある日の夕方、

専用機持ち達との晩飯の時の事だった。

 

何時もの様に他愛の無いやり取りをしつつ食事をしていると、

誕生日は何時?という話になったので、誕生日が近いと言う事を教えた。

 

先程の叫びはシャルとセシリアだ。

 

「あぁ、俺と秋良の誕生日は9月27日だったな。」

 

「まぁ、この世界でのって前提は付くけどね。」

 

そうなんだよな、俺達転生者は現世での誕生日と、

前世での誕生日がそれぞれあるんだよな。

 

雅人みたいな前世のまま転生してくるならまだしも、

俺や秋良の様に、別の人間として転生した為に二つになるんだよな。

 

そんな事はどうでもいいとして・・・。

 

「そうなのか?俺も9月27日だぜ?」

 

「雅人もなの?」

 

「ああ、前世も9月27日だったんだが、

どうやらそのまま持ってきたみたいだな。」

 

雅人も思い出したかの様に呟き、

簪が不思議そうに尋ねていた。

 

なんか変な運命を感じるな、

まあ、別に男と運命感じてもなんとも思わんがな。

 

「一夏ッ!なんでもっと早く教えてくれなかったの?」

 

「そうですわ!一夏様のお誕生日なんですもの!

盛大にお祝いしたいのです!」

 

「落ち着け、頼むから大声を出すな、折角の美人が台無しだぞ。」

 

なんとかシャルとセシリアを宥め、

席に着かせてから食事を再開する。

 

「まあ、弾や数馬達が俺の家で祝ってくれるみてぇだし、

お前達も来てくれ、そっちの方が良いだろう。」

 

「だね、雅人も来なよ、三人一緒の方が手間が省けるしね。」

 

「そうさせてもらうか、だがよ、確かその日って、

キャノンボールファストがあったよな?」

 

そう言えばそうだったな、

やれやれ、面倒な事があるな・・・。

 

「確かキャノンボールファストって、

高速機動形態でのレースだよね、皆はどうするんだい?」

 

「私は本国にあるシュヴァルツァ・ツヴァイクの増設スラスターを借り受けて装備するつもりだ。」

 

「打鉄弐式には追加パッケージは無いけど、増設スラスターで何とかすると思う。」

 

「僕もそんな所かな、リヴァイヴの大気圏離脱用ブースターを調整して使うよ。」

 

ラウラ、簪、シャルの三人は増設スラスター装備組だな。

 

「私は追加パッケージ、ストライクガンナーを使用しますわ、一度っきりも悪いですし。」

 

「俺はエールストライカーか、スペキュラムストライカーを使うとするかね。」

 

「ア、アタシは本国からパ、パッケージが届く!・・・多分・・・。」

 

多分かよ、まぁ、鈴の多分はほぼ確実に届くって事だろうがな。

 

で、パッケージ換装組は俺、セシリア、鈴だな。

 

「俺のゲイルには高機動型のストライカーが無いし、

機体調節でなんとかしてみようかな。」

 

「俺もそんな所だな、ドレッドノートは元々速度が出るしな。」

 

「紅椿もそんな所だな、展開装甲を速度に振り分ければ良い。」

 

秋良、雅人、箒が機体調節組ね、上手いこと三人ずつに別れたな。

何となくだが、面白くなりそうだ。

 

だが、気掛かりな事もある、

亡國企業と無人機、この二つが目下の敵だ。

 

アイツらがこの大きなイベントを見過ごす筈が無いだろう。

 

こちらとしても都合が良い。

そろそろセシリア達の力が覚醒する、

練習台にはうってつけだろう。

 

これからの波乱も、面白くなりそうだ。

 

sideout

 

noside

 

食事を終えて、

一夏はセシリアとシャルロットを伴って自室に戻った。

 

「ふぅ・・・、今日は仕事も無さそうだし、ゆっくり出来るな。」

 

「そうだね、何時もは大変だもの。」

 

「まったくですわ。」

 

ベッドに腰掛け、三人はボヤきつつため息をついた。

 

セシリアが紅茶を用意し、

シャルロットが茶菓子を用意していた。

 

彼等は様々な影の仕事をこなすため、

割と夜食を食べる事が多いが、三人とも全く体型が崩れていない。

 

「あっ、そうだ一夏、次の日曜日に三人で出掛けない?」

 

「日曜か?用事は・・・、無いな。」

 

シャルロットに言われ、一夏は自分の手帳を確認し、

用事が無いことが分かった。

 

「一夏のお誕生日プレゼントをセシリアと選びたいんだ。」

 

「そうですわね、見たところ、一夏様は腕時計をお持ちでない様ですから。」

 

テーブルにクッキーと紅茶を用意し、

シャルロットとセシリアは一夏に向けて話す。

 

実際問題、彼は腕時計等をしていない。

この年頃の男性にしては比較的珍しい部類であると言えるだろう。

 

「腕時計か・・・、なんか貢いで貰うみたいで気が引けるな。」

 

だが、いくら誕生日プレゼントとはいえど、

あまり高価な物を貰うには流石に気が引ける。

 

有り難い事には変わりないが、

対等な贈り物を返せるかどうかが不安なのだ。

 

「ま、お前達に任せる、今は紅茶が飲みたい。」

 

「そうですわね。」

 

「いただきます。」

 

了承した一夏はクッキーに手を伸ばし咀嚼していく。

彼に続き、セシリアとシャルロットも紅茶に口をつけた。

 

sideout

 

side秋良

 

簪達を連れて部屋に戻った俺は、

トランプゲームを四人ですることにした。

 

種目はババ抜きと七並べ、俺も強くないけどぼろ負けしない程度の物を選んだ。

 

で、その目論みは見事に的中し、

誰か一人が勝ちすぎたり負けすぎたりせずに進んでいく。

 

「あ、そう言えば秋良、今度の日曜日に四人で出掛けない?」

 

「うん?どうしてだい?」

 

何か用事でもあったかな?

俺が知る範囲では何も無かったと思うけど?

 

「秋良の誕生日プレゼントを買いたいの。」

 

「だが、何が良いか見当もつかないので、一緒に来てもらった方がいいと思ってな。」

 

あー、そう言う事か、

有り難いんだけど、何となく申し訳無いなぁ・・・。

 

「良いのかい?なんか申し訳無いんだけど・・・。」

 

「秋良が気にする事じゃないよ、私達がしたい事だから。」

 

簪に言われ、何も反論出来なくなってしまった。

なんか俺って押しきられる事多くね?

 

まぁ、なんかそう言う性分って事ぐらい分かってたけどね。

 

「分かったよ、皆に任せるよ。」

 

sideout

 

side雅人

 

何となくコーヒーが飲みたくなったので、

自販機がある休憩所にやって来た。

 

クリームたっぷりのカプチーノが好みだが、

缶コーヒーしか置いてないから我慢だ。

 

ブラックコーヒーを買い、設けられていたベンチに腰かける。

 

この苦味が何とも言えないぐらいに心地いいんだよな。

 

「マスター、カフェオレ一つ~。」

 

「あいよ~・・・、って!?なんで奢らせようとしてんだよ!?」

 

凄まじく上手い流れで持ってこられた為、

危うくマジでカフェオレを購入してしまう所だった。

 

と言うより、何処から現れたんだこの残姉さんは?

 

「にゃはは~、雅人は単純ねぇ、

一夏君なら確実に乗せられない流れよ?」

 

「ほう?では聞くが、楯無、お前は一夏にそのちょっかいをかける勇気があるか?」

 

「・・・、無いわね、ヤったら半殺し喰らいそうだしね。」

 

コイツまでアイツの事を恐れてやがるのか・・・、

何者なんだよここの一夏は・・・。

 

まあ良い、今気になるのは何故コイツがここにいるのかだ。

 

「なんでお前はここにいるんだよ、簪なら秋良の部屋だぞ?」

 

「あー、うん、それは知ってるけど、今日は貴方に用事があるの。」

 

「俺に?」

 

はて?何の用だ?

特に思い当たる節は無いが・・・。

 

「貴方、9月27日に誕生日ですってね?」

 

「聞いてたな?盗み聞きはマナー違犯だぜ?

しかもまだ簪のストーキングしてんのかお前は。」

 

辞めろと言った筈なんだがな、

いい加減にしとかねぇとサポートしねぇぞ?

 

「にゃはは~、聞こえちゃったんだから仕方ないじゃない?」

 

「うやむやにしてんじゃねぇよ。」

 

「まぁ、そんな事は置いといて・・・。」

 

置いとくのかよ、なんかもう、一々ツッコミをいれるのもアホらしくなってきたわ。

 

「良かったら私と買い物しに行かない?

貴方には色々とお世話になってるからそのお礼も兼ねてね?」

 

「は?いや待て、俺は特に何もしてねぇぞ?

そんなお礼なんて受け取る訳には・・・。」

 

流石に気が引けるな、

簪との姉妹仲を改善したとかならまだしも、

なんの進展もしてねぇのにさ。

 

そう思い、慎んで断ろうと思ったが、

楯無の指が俺の唇に当てられた。

 

黙っていろという事か?

 

「私がしてあげたいだけだから、ね?」

 

どうやらかなり本気の様だ、

ここまで言われると断るに断れんな。

 

「分かったよ、美人さんのお誘いを断る訳にはいかんな、

慎んでお受けいたそう。」

 

「ふふっ、ありがとね雅人。」

 

軽妙に笑う楯無の表情に、俺の視線は釘付けになった。

 

敵わねぇな、

俺はこういう笑顔が好きなんだよな。

 

自分でも少しちょろいと思うがな。

 

「それじゃあ日曜日の午前10時丁度に駅前のモニュメント前に集合ね!」

 

「分かったよ、それじゃあな。」

 

楯無と別れ、俺は自室に戻るべく動く。

 

にしても、デートっぽいな・・・、

気分的には最高だ。

 

sideout

 

noside

 

時間は流れて日曜日、

駅前のモニュメント前にはセシリア、シャルロット、簪、鈴、ラウラの五人がそれぞれ一夏と秋良の到着を待ちわびていた。

 

今日、この五人は各々が思いを寄せている男の誕生日を祝うために、

彼等にプレゼントを贈ろうと考え、デートのついでに選ぶ心づもりでいた。

 

何故この五人が同じ場所に居るのかと言うと、

何の因果か、偶然にも集合時間と集合場所が見事に重なったのだ。

 

「なんだかこの五人だけで固まるのって初めてな気がするね。」

 

「そうですわね、私とシャルさんは一夏様と、

簪さん達は秋良さんとご一緒されてますものね。」

 

シャルロットとセシリアが思い出す様に話す言葉に納得し、

簪達は首を縦に振っていた。

 

「まぁしょうがないんじゃないかな?

一夏と秋良って滅多に一緒にいないし。」

 

「そうだな、兄貴と秋良が一緒に来るというのも、些か気味が悪い。」

 

簪とラウラが何か納得する様に言い、

他の三人は少し苦笑していた。

 

和やかな雰囲気が五人の間を流れていた時・・・。

 

「あれ?お前ら何やってんの?」

 

何とも呑気な声で雅人がやって来た。

 

「あれ?なんで雅人がここにいるの?」

 

疑問に思った鈴が一同を代表するように尋ねた。

 

「いや、俺もここでとある奴と待ち合わせしててな、

そろそろ来ると思うんだが・・・。」

 

「「お待たせ~!」」

 

雅人が説明した直後、

男性と女性の声が全く同じタイミングで聞こえて来た。

 

男性が織斑秋良であり、女性が更識楯無である。

 

『あっ・・・!?』

 

その場に集った七人の声が見事にシンクロした、

混声合唱も真っ青である。

 

「すまん、遅れ・・・、あ・・・?」

 

間の悪い事に、一夏も到着し、

同じ様な声をあげていた。

 

「なんで・・・、お前がここにいるんだよ・・・?」

 

「どうして・・・、貴方達がここに・・・!?」

 

一夏と楯無が互いを指差し、

秋良と雅人はしまったという風に額に手を当て、

セシリアとシャルロットは腹部を抑え、

ラウラは顔面蒼白な簪の背をさすり、

鈴は訳が分からないと言った風に首を可愛らしく傾げていた。

 

どうやら、彼等に穏やかな休日と言うものはなかなか来ない様であった。

 

sideout

 




はいどーもです!

修羅場です、違う意味で。

それでは次回予告
今だわだかまりが溶けない更識姉妹の為に、
秋良と雅人が立ち上がる。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ

触れ合う心

お楽しみに!

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