インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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文化祭前日談

side一夏

文化祭一週間前。

 

IS学園では着々と文化祭に向けての準備が進められていた。

 

出す料理も粗方決まり、

後は調理する人員を調整するだけだ。

 

まあ、デザートとしてのパンケーキやプリン、それから簡単なパフェを用意し、

飲み物もコーヒー、紅茶、ミックスジュースぐらいしかメニューに入れて無いんだがな。

 

因みにご奉仕セットなるものは最初からメニューに載せてない。

男子三人が反対したのもあるし、なにしろセシリアとシャルが凄まじい覇気を漂わせていたからでもあるがな・・・。

 

まあそれは置いといて・・・。

 

装飾の方はラウラと秋良が気合い入れてやってるし、

料理に関しては雅人がなんかやる気出してるから俺は口を挟んでいない。

 

遂にイギリスからメイド服と燕尾服が届き、

全員が試着及びカスタマイズを行っている。

 

俺は燕尾服自体に改造は一切加えず、

伊達眼鏡を掛けるだけに留めておいた。

 

変に改造したら折角のイケメンが台無しだ。

 

ナルシスト発言?

気にするな、事実だしな。

 

因みに、秋良は前髪をわざとたらして知的系執事に、

雅人はオールバックにしてワイルド系執事にしていた。

 

俺はクール系といった所だろうが気にする程ではないな。

 

さてと、セシリアとシャルはどんな感じだろうな?

 

見に行ってみるか。

 

「一夏様♪」

 

「此処に居たんだ♪」

 

俺が動こうとすると、

メイド服を着たセシリアとシャルが教室に入ってきた。

 

「よぉ、俺から出向こうと思ったんだが、

その必要も無かったな。」

 

「一夏様のお手を煩わせる訳には参りませんわ♪」

 

「それに早く見て貰いたかったからね♪」

 

まったく・・・、可愛い女だよ、

この二人はな。

 

しかし、よく似合っているな・・・。

 

セシリアはロングスカート、

シャルは若干短めのスカートに白のガーターを合わせているのか、

見事な着こなしだ。

 

「二人ともよく似合っているな、特にシャル、

白のガーターベルトを合わせるとは恐れ入った、

セシリアもスカートの下にガーターベルトは着けてるだろ?それも黒の。」

 

「ふふっ♪よく分かるね一夏、流石だよ♪」

 

「お褒めに与り、至極恐悦ですわ♪御覧になります?」

 

「ベッドの上で見せて貰うさ。」

 

ベッドの上と戦場が何より似合うからな、

セシリアとシャルは。

 

そう思いつつ、俺はかけていた伊達眼鏡を右手の人指し指でクィッと上げる。

 

「一夏も凄くカッコいいよ♪」

 

「フォーマルな衣装がお似合いだとは以前から思っておりましたが、

ここまで凛々しくなるとは思いませんでしたわ!」

 

「そうか?今日は髪型をちゃんとしてないからな、

イマイチだと思ってたんだがな?」

 

悪くないと思ってはいるんだが、

もう少し髪型をきっちり整えれば更に良くなる気がしてならないんだよな。

 

「一夏様は今のままでも、十分に魅力的ですわ♪」

 

「現に、僕達コロッと堕ちちゃってるしね♪」

 

「そうかい、おまえ達の様な美人に言われたら自信が付く、

ありがとな二人とも。」

 

今夜辺り、ご褒美でもやるとするか?

 

ま、そんな事は後で考えるか。

 

「まあ良い、取り敢えずシフトを組むのを手伝ってくれ、

俺一人では手が回らん所があるしな。」

 

「かしこまりましたわ。」

 

「分かったよ。」

 

さてさて、どうした物かね。

 

あ、そう言えば・・・。

 

「お前ら、チケットは誰に渡すんだ?」

 

文化祭の時に、部外者がIS学園に入る為に用いられる物だが、

学生一人につき、一枚しか配布されないのだ。

 

「私はチェルシーに来てもらおうと思っておりますわ、

チェルシーと言うのは、私のメイドでして、姉の様な女性ですわ。」

 

「僕は特にいないかな、

もし一夏がお友達を呼ぶなら僕のチケットあげるよ?」

 

・・・、何故だ、軽く嫌な予感がしてしまった・・・。

 

この時の俺の予感は、

見事という位的中することになってしまうのであった・・・。

 

 

sideout

 

side???

 

「こっ、これは!?」

 

一夏達の会話から三日後、

イギリス某所では、とある女性が何かを握り締め震えていた。

 

「あ、IS学園文化祭の入場チケット・・・!

やった・・・!やったわぁぁぁぁ!!」

 

その歓喜の叫びには、何処か狂喜の様な物が含まれていた。

 

何処かで感じた事がある雰囲気を滲ませ、

彼女は用意を始めるのであった・・・。

 

sideout

 

noside

文化祭五日前、

一夏は現状報告の為に理事長室を訪れていた。

 

「現状で私に挑んで来た命知らずは三名のみです、

その内の一人は手加減が出来ずに右腕の骨を折ってしまいました。」

 

「そうですか・・・、仕方が無いとはいえ、少々面倒ですね。」

 

「申し訳ありません、理事長のお手を煩わせる事になってしまいました。」

 

「いえいえ、構いませんよ、

有言実行、良い事ではありませんか。」

 

一夏を責める気が無いのか、十蔵は朗らかに笑っていた。

 

彼に向けて頭を下げていた一夏は顔を上げ、

背筋を正す。

 

「以上で報告は終了です、

私はこれからクラスの方へ戻ります。」

 

「御苦労様です。」

 

報告を終えた一夏は一礼し、背を向けて去ろうとするが・・・。

 

「ああ、そう言えば一夏君?」

 

「なんでしょう?」

 

何かを思い出したかの様に自分を呼び止める十蔵に、

彼は首を傾げつつも振り返る。

 

「生徒会での出し物は何か決まりましたか?」

 

「あ~、そう言えば決めてませんねぇ・・・、

何をしましょうか?」

 

十蔵の問い掛けに、失念していたと言う風に額に手を当てる。

 

最近それどころではなく、

考えが及ばなかったのである。

 

「後五日しかありませんが、

楽しみにさせていただきますよ?」

 

「かしこまりました。」

 

楽しそうに笑う十蔵に一礼し、

今度こそ一夏は理事長室を後にした。

 

廊下を歩く彼の姿は、

覇王たる雰囲気すら漂っていた。

 

だが、目下の彼の悩みは・・・。

 

「出し物何にすっかなぁ・・・?」

 

演劇も良いが、練習するにも時間が無い。

他の事はあまり目立たないが故の苦悩である。

 

「あ~、そう言えばあいつらいるなぁ・・・、

ちょいと連絡を取ってみるか・・・。」

 

何かを思い付いたかの様に呟き、

懐より携帯電話を取り出し、電話帳の目立つ所にあった番号を選んだ。

 

sideout

 

side弾

 

「暇だなぁ・・・。」

 

「暇だねぇ・・・。」

 

俺の名は五反田弾、

何処にでもいる普通の男子高校生だ。

 

何か特筆すべき事柄があるとすれば、

俺とそして俺の部屋にいるもう一人、御手洗数馬は、

男性IS操縦者として有名な織斑兄弟の友人としか言いようが無いんだよな。

 

まあ、あいつらとはここ数ヵ月連絡が取れていないが、

あいつらの事だ、かなり無茶な事でも平然とこなすだろう。

 

で、俺達の目下の悩みはこの退屈をなんとかしなければいけないと言うことだ。

 

俺はベースを爪弾き、数馬はギターを弾いていた。

 

俺達の腕前は一夏と秋良が仕込んでくれたお陰で、

既にプロとして演奏しても十分通用するレベルになっている。

 

だからというべきか、

大概の曲は楽譜読めばすぐに弾けるから、

余計に退屈が助長されるんだよな・・・。

 

「にしても、一夏のヤロー羨まし過ぎるぜ。」

 

そんな中、数馬が何かボヤきだした。

 

「確かになぁ、でもそれを言うなら秋良もじゃねぇか?

なんせハーレムで選び放題だしな。」

 

「確かにそうだが、これを見て見ろよ。」

 

数馬が見せてくるケータイの画面には、

二人の金髪美少女に挟まれた一夏が写っていやがった。

 

「な、なんじゃこりゃぁっ!?」

 

某警官じゃねぇけど、

思わず叫んでしまった。

 

確かに一夏はイケメンで、中学時代からかなり人気はあったが、

色恋沙汰には最も縁遠いと言われる程で、告白の類いを全部断っていた。

 

なので、この画像が今だに信じられない。

 

「あのヤロー、羨まし過ぎるじゃねぇか・・・!?」

 

羨ましいの羨ましく無いのって、羨ましすぎるわ!!

 

そう思った時だった、

俺の携帯電話に着信が入った。

 

相手は・・・、一夏だと!?

 

驚きつつも電話に出てみる事にした。

 

『もしもし?弾か?』

 

忘れもしない、

この声は俺達がたった今話題にしていた織斑一夏だ!!

 

「てめぇこの色男が!!」

 

『はっはっは!もっと誉めてくれて良いぞ!』

 

「さらっと認めてんじゃねぇよ!!」

 

ったく・・・、こいつには口でも喧嘩でも音楽でも勝てた事がねぇからな、

これ以上こっちが何を言っても、アイツのペースに乗せられるだけの骨折り損だ。

 

「ったく、何の用だよ?」

 

『お前、IS学園に来たがってたよな?』

 

「ああ、そうだけど、それがどうしたんだ?

まさか入場券でも有るのか?」

 

まさかなとは思いつつ、冗談半分で聞いてみた。

いくらなんでも出来すぎてるしな。

 

『ああ、その通りだ、勿論数馬と蘭の分もある。』

 

「マジか!?」

 

『マジだ、その代わり、一つ条件があるが・・・。』

 

「良いぜ!!何でも来いだ!!」

 

女子高に正当な手段で入れるなら、

例え火の中、水の中!!構いはしない!!

 

『話が早くて助かる、

実はな、生徒会で出し物を一つ出すことになってな、

男子メンバーだけでバンドをやりたいんだが、丁度ベースとサブギターが足りなくてな、

お前達二人に来てもらえると凄く助かるんだ。』

 

「ああ、なるほどな、分かった、一応何するかは教えてくれや、

軽く練習はしとくからさ。」

 

『分かった、三日後までにチケットと一緒に、

何の曲をするか書いた紙を送るから。』

 

「分かったぜ、ありがとな!!」

 

「気にするな、それでは仕事があるんで失礼するぞ、じゃあな。』

 

その言葉を最後に、通話は切れた。

 

「一夏はなんだって?」

 

「喜べ数馬!!IS学園に入れるぞ!!」

 

「はっ?」

 

俺の言葉を理解出来なかったのか、

数馬はポカンと口を開けていた。

 

「一夏がな、文化祭でバンド演奏をやるらしくてな・・・。」

 

「なるほどな、力を貸してほしい・・・、って、マジか!!?」

 

「だから言ってんじゃねぇか!」

 

「よっしゃあっ!!我が世の春が来たぁぁあっ!!」

 

っと、騒いでる暇はねぇ、練習しなくちゃな!!

 

sideout

 

side一夏

 

「ふぅ、これで不安要素が一つ無くなったな。」

 

携帯電話を懐のポケットに戻し、

俺は教室に戻るべく歩みを進める。

 

今日は装飾係が飾りつけのプロットを決めてる筈だ、

俺はそれを聞くだけで良いから本当に楽だ。

 

「さて、秋良と雅人に話を通しておくとするか。」

 

どんな曲が目立つだろうか・・・?

 

アニソンは悪くないと思うがインパクトに欠けるし、

普通のバンド曲をやっても面白味に欠ける。

 

何にすっかなぁ・・・?

 

「・・・!そうだ、あれをやるとするか?」

 

丁度良い、ならやるとするか。

 

「兄貴~!」

 

俺が決意を固めた瞬間、

廊下の向こう側からラウラが走ってきた。

 

「ようラウラ、何か用か?」

 

「はい!飾り付けの案が出来上がりましたので持ってきました!」

 

「御苦労、今から戻ろうとしてたんだがな。」

 

ラウラから渡された資料に目を通す。

ふむ、カーテンを使って雰囲気を出してるな。

 

「いい感じだ、やってくれ。」

 

「はい!」

 

ラウラの頭を撫で、

ゴーサインを出した。

 

これなら確実に成功できるな。

 

・・・、いや、まさかとは思うが・・・。

 

「ラウラ?チケットの事だが・・・。」

 

「はい?もう部隊の者に渡してしまいましたが・・・?」

 

頭痛がしてきた・・・。

何故だ・・・。

 

sideout

 

side???

 

「副隊長!!」

 

「どうした!?」

 

「隊長からこれが届きました!!」

 

ドイツ某所・・・。

ラウラから送られて来た手紙を見た女性がいた。

 

「こっ、これは!?IS学園の文化祭の入場チケットだと!?」

 

「はいっ!一枚しかありませんが、確かに本物です!!」

 

「イヤッタァァァァァァァッ!!隊長ォ!!絶対行きますからね!!」

 

何故か何処かで感じた事がある雰囲気を醸し出しながらも、

その女性は準備を始めた。

 

sideout

 

noside

 

「おはようございまーす。」

 

「うぃーっす。」

 

文化祭前日の夜、

IS学園に二人の男が到着した。

 

その二人はギターケースを担ぎ、

迷うことなく、第四アリーナを改造した特設ステージまでやって来た。。

 

「よぉ、弾、それに数馬も、久し振りだな。」

 

「よぉ一夏、連絡ぐらい寄越せよ。」

 

「そうだぜ、俺達は親友だろ?」

 

「悪かった、今まで忙しかったんだよ。」

 

一夏は弾と数馬と再会を喜んでいた。

 

「おー、お前らが弾と数馬か、

加賀美雅人だ、ヨロシクな!腕の良いベーシストとギタリストだって聞いてるぜ。」

 

そこに雅人が寄ってきて、

二人と挨拶を交わしていた。

 

「よろしく雅人、弾で良いぜ。」

 

「よろしくな、数馬でいい。」

 

「おーい、そろそろ音合わせしないと寝れないよ?」

 

和やかな雰囲気に包まれるが、

そんな暇は無いとばかりに秋良が腕の時計を指さす。

 

「そうだな、それぞれポジションに着いてくれ、

今から一時間、ぶっ通しで演奏するぞ。」

 

『おう!』

 

一夏がリードギターに入り、

秋良は今回ボーカルに入ることになった。

 

「一曲目はJack the ripperでいくぞ。」

 

「オーライ!」

 

雅人がスティック同士を叩き、

リズムを取る。

 

数馬がバッキングを始め、それと同時に一夏、弾、雅人も一斉に己の楽器を響かせる。

 

メタル色の濃い音色が空気を切り裂き、

体育館に響き渡る。

 

イントロも終わりに差し掛かる頃、

秋良がシャウトを発した。

 

彼等が奏でるメロディは、

何よりも力強く、何よりも迫力があった・・・。

 

sideout

 

side一夏

翌朝、

遂に文化祭当日になった。

 

昨日は日付が変わるまでずっと演奏してたからな、

少し眠い。

 

弾と数馬は開会式には参加せず、

楽屋で仮眠を取っているらしいが、俺が気にする事でもない。

 

で、俺は開会宣言をしなきゃならんから、

こうやって壇上に立たされるんだよな。

 

ああ、面倒極まりない。

 

さてと、やるとするか。

 

「御早う諸君。」

 

開口一番はまず挨拶から始めなければ失礼という物だ、

別にしなくてもいいとは思っているがな。

 

所々から熱っぽいため息が聞こえるのは気のせいか?

 

確かに燕尾服で伊達眼鏡は掛けているが、

特に変わりはない筈だが・・・?

 

まあ良い、後で考えるか。

 

「これより、文化祭の開幕を宣言する!」

 

宣言し、拳を突き上げた瞬間、

割れんばかりの歓声が響き渡った。

 

さあ、楽しき宴の始まりだ!

 

sideout

 




はいどーもです!

文字で音楽の事を表すのって凄く難しいですね。

最近、何人か喋らせてないキャラがいるんで、
次回からはちゃんと喋らせます、はい。

それでは次回予告
遂に始まった文化祭、
一夏達はそれぞれ思い思いの過ごし方があった。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
文化祭開幕

お楽しみに!

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