インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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夏休みの一幕 映画鑑賞編

side秋良

夏休みが始まって、早二週間が過ぎようとしていた。

 

宿題の類いは最初の一週間の内に終わらせておいたから、

後は学生らしく楽しく可笑しく夏休みを過ごせる。

 

夏休みに入ってからは模擬戦とかを繰り返してばかりだったし、

そろそろ何処かに出掛けてリフレッシュするのも悪くはないかな。

 

なんと都合の良いことに、兄さんから映画のチケットを四枚貰ってるんだよね。

これは使わないとダメでしょ。

 

「と言うわけでやって来ました映画館!」

 

「誰に向かって喋ってるの!?」

 

明後日の方角を向きながら、

どこぞのテレビレポーターが喋りそうな台詞を言ったら、

簪が間髪入れずに突っ込んでくれた。

 

関西人じゃないけど、

ボケたらツッコんでくれるのは本当に嬉しいね。

 

まあそんな事はどうでも良いとして、

現在、俺は鈴、簪、そしてラウラを連れて、

レゾナンス内部にある映画館にやって来たんだ。

 

昨日の内にアクタイオンからIS学園に戻って、

今日遊びに出掛けたんだ。

 

簪がどうしても観たいという、ヒーロー物の映画があるそうで、

この際どうせなら皆で観ようという事になってね。

 

「にしても、映画館に来るのも二十年振り位だね。」

 

あまり映画館とかの暗くて堅苦しい場所には行きたくなかったからね、

最後に行ったのも、前世の15歳位だったね。

 

「・・・、秋良、私達は貴方の正体を知ってるけど、

ぱっと見、十代にしか見えない貴方がそんな事言うと流石に驚くよ・・・。」

 

「あら、そうなのかい?

嫌だわ、まるで俺が年寄りみたいじゃないか。」

 

「もうすぐ四十とか言っていた奴が何をほざく?」

 

「ラウラ・・・?兄さんの言葉使いをそのまま持ってこないでよ・・・。」

 

あの人の罵倒は心を直に突き刺していくからね・・・。

その言葉を学んだラウラの罵倒は、俺の心を貫くのには十分な威力を兼ね備えていた。

 

「と、取り敢えず映画観よ?」

 

「そうだな、鈴の言う通りだ。」

 

鈴が場を纏める様な発言をし、

ラウラも同意する様に頷く。

 

「あ、秋良?そろそろ行こ?」

 

「うん・・・、行こうか・・・。」

 

言葉のアグニをマトモに喰らった俺を、

簪がそっと寄り添いながら声をかけてくれた。

 

まあ良いや・・・、取り敢えず映画を観よう・・・。

 

sideout

 

side簪

と言うわけで、私達は映画館の内部にやって来ました。

 

夏休みと言うことで、やっぱり親子連れが多い中、

私達への視線は凄いものがあった。

 

まあそうよね、高校生が見に来る様な映画じゃないし、

秋良みたいなイケメンに鈴やラウラみたいな可愛い女の子がいたら視線も多くなる。

 

まあそんな事より、今は席を探さないと・・・。

 

「あったあった、此処だ。」

 

秋良が真ん中に座り、

私達はその周りを囲む様に座る。

 

それからポップコーンをつまんでいると、

劇場内が暗くなり、上映開始を報せるブザーがなる。

 

「むっ!?敵か!?」

 

「ラウラ?それは違うからね、今から映画が始まる合図だからね?」

 

瞬時に身を隠すラウラを摘まみ上げ、

秋良は元の席に座らせていた。

 

「むぅ・・・、そうならそうと最初に言ってくれれば良いではないか。」

 

「はいはい、俺が悪かったから、静かにしてね。」

 

ラウラを宥め、秋良はジュースに口を付ける。

 

ラウラって、生まれてからずっと軍属だったせいもあるけど、

流石に常識がすっぽ抜けすぎだよね。

 

一度一般常識と言うものを教え込もうかな?

 

まあ、そう言うのは一夏達に任せれば良いよね?

 

いけないいけない、今は映画を楽しまないとね、

チケットをくれた一夏に失礼だね。

 

sideout

 

side秋良

映画を見終わった後、

俺達はフードコートにて昼食をとっていた。

 

「はぁ~!やっぱり格好よかったぁ~!」

 

「うんうん!やっぱり仮面ライダーは良いよね!!」

 

鈴と簪が表情を輝かせながら、

さっき見た映画の感想を言っていた。

 

個人的な感想を言えば、確かにCG技術や単純な特撮技術はやっぱり圧巻の一言に尽きるけど、

どうしても気になった点があった。

 

「仕方がないとは言っても、やっぱりあの地面はどうにかならなかったのかな?」

 

「同感だ、他は素晴らしいのにどうしても目がいってしまう。」

 

ライダーやスーパー戦隊が一同に会するあのシーンは圧巻なんだけどさ、

やっぱり人数的に無理があったのか、所々乾いた地面と水溜まりの出来た地面とが同じシーンでちぐはぐな感じに撮されてたのが凄く気になった。

 

流石に二百人越えの人数を揃えるのも、

戦わせるのも無茶があるからね。

 

「もうっ!それは気にしちゃいけない所!」

 

「そうだよ!迫力があることには変わりない!」

 

簪と鈴が頬を膨らませながらも反論する。

うん、怒ってるつもりなんだろうけどさ、可愛いだけだよ?

 

「ははは、そうだね、どうしても気になっちゃってさ。」

 

もうこの歳になるといらない所まで気になるたちだからね。

 

そこ、年寄りくさい言わない!

 

「もうっ、確かにもうちょっと各々のヒーローの目立つ場面が欲しかったかな。」

 

「うんうん、アタシとしてはサブライダーとか六人目以降のレンジャーも出して欲しかったよ。」

 

「まあそうだね、それよりこれからどうしようか?

寮の門限にはまだまだ時間があるし。」

 

ちょっと早めの時間から映画を観ていた為、

変に時間が余ってしまった。

 

さてさて、どうしたものか・・・。

 

そうだ、良いことに考えた。

 

「そうだ、ゲーセンに行かないかな?」

 

「あ!良いね!」

「賛成!」

 

俺の提案に、簪と鈴は表情を輝かせて賛成してくれた。

 

簪はゲームとか好きそうだし、

鈴はUFOキャッチャー巧かったしね。

 

「ゲーセンとはなんだ?」

 

ラウラが首を傾げ、

ゲーセンの事を尋ねてくる。

 

うん、可愛いからやめてほしい。

 

「あー、ラウラは知らないか、なら教えるって意味も籠めて行ってみるのも良いね、

それでいいかな?」

 

「「いいとも~!」」

「い、いいとも~?」

 

簪と鈴は楽しそうに、

ラウラはちょっと戸惑いながらも拳を突き上げる。

 

よし、行くとしますか。

 

sideout

 

side簪

・・・、という訳で、私達はレゾナンスではなく、

そこからちょっと歩いた場所にあるゲームセンターにやって来た。

 

久しぶりだなぁ、

最後に来たのって、代表候補生の訓練始まる前だったなぁ。

 

それより、やっぱり今日も何処かの影から視線を感じる。

馴れてるんだけど、今日は何処かいつも違う気がする。

 

なんか、何時もは私だけを見てるんだけど、

今日は私達全員を見てるみたい。

 

まさか、今日は姉さんじゃなくて、

何処かの国家の黒服?

 

確かに秋良は一夏と雅人共々、世界に三人しかいない男性IS操縦者、

普通に考えても、そして学術的にも興味深いと思う。

 

つまり、秋良達は何時、何処で拉致被害に遭うかどうかもわからない。

 

今は傍観しているだけだけど、

一応秋良には伝えておいた方がいいかな?

 

「オーイ、簪~!」

 

トイレに行っていた秋良がこっちにやって来た。

鈴とラウラはUFOキャッチャーの方に行ったらしい。

 

ここだけの話、ラウラの部屋に行った事があるんだけど、

ルームメイトのシャルロットの荷物を含めても殆ど何も無かったの。

 

服はこの際置いといて、

ぬいぐるみや小物類の一つも無かったのは正直驚いたよ。

 

鈴もそれは知ってたから、

ここで何かぬいぐるみをゲットしたいんだと思う。

 

って、そんな事は後で良いの!

今はこの視線の事を・・・!!

 

「秋良・・・、その・・・。」

 

続きを言おうとした私の唇に指を添え、

秋良は静かにするように、という意味のジェスチャーをする。

 

「分かってる、でも放っておいて大丈夫だよ、

もし何かしてきても俺達が黙らせればいいんだからね。」

 

なんだ、秋良も気付いてたんだ・・・。

なら私がとやかく言うことじゃないよね?

 

「まぁ、後で教えてあげるよ、

取り敢えず簪は何がやりたい?」

 

「う~ん・・・、あのカーレースやりたいな!」

 

「良いね!行こうか!」

 

やりたい事で頭がいっぱいだった私は、

秋良が意味深な事を呟いた事に気付かないまま、

ゲームの前に立った。

 

sideout

 

side秋良

 

「ま、また負けた・・・!!」

 

カーレースゲームをやり始めて十数分後、

俺は累計五敗目の敗北を喫し、膝をついて地面を叩いた。

 

正直、俺もカーレースゲームには自信があった、

だけど簪は俺の上を行っていた。

 

「やった~!秋良に勝てた!」

 

くそぅ・・・、簪がこんなにやり込んでるとは思わなかった・・・。

そう言えば、一度凄いレースに強いゲーマーがいるって弾に聞いたことがあったな・・・

それってやっぱり簪の事だったのか・・・!!

そりゃそうか・・・、そこそこやってる奴と、やり込んでる奴とじゃテクニックの差が凄いからね・・・。

 

「ふふっ、秋良もなかなか上手かったけど、

まだ私に勝てるレベルじゃないよ。」

 

「参ったなぁ・・・、まさかこんなに強いとは思わなかったよ。」

 

くそっ、もう一戦挑みたい所だけど、

今月兄さんにポーカーでボロ負けしてピンチなんだよなぁ・・・。

 

どうしたものか・・・。

 

「秋良っ、そろそろ鈴とラウラの所に行こっ?」

 

「あぁ、そうだね、行こうか。」

 

良かった・・・、これでまだ続けるとか言われたら今月の給料全部使っちゃう所だったよ・・・。

 

さてさて、鈴とラウラは何処かなっと・・・?

 

ん?なんだ?

なんだか凄いぬいぐるみの山が見えた様な気がするんだけど?

 

そんな事を考えつつ、

その方へと歩いていくと・・・。

 

「やった!また捕れた!」

 

「凄いぞ鈴!いったいこれで何体目だ!?」

 

「え~っと、十個目だね!」

 

何ぃっ!?こんな短時間で十個も景品を手にいれたのか!?

鈴、昔よりUFOキャッチャーが巧くなってる・・・!!

 

「やった!新記録だ~!」

 

「むぅ、私もやりたいぞ!鈴!どれが捕りやすそうだ!?」

 

ラウラまでヤル気になってるし!?

ラウラは軍人なだけあって順応性が高いからなぁ・・・。

 

下手したらこの店のUFOキャッチャーの景品、

全部無くなっちゃうかもしれないね・・・。

 

まあ良いね、なかなかの物じゃないか。

 

「よ~し!やるわよ~!!」

「うむ!やってやろうではないか!」

 

あら~・・・、凄いやる気だねぇ・・・。

 

さてと・・・、俺は何をしようかね?

 

sideout

 

noside

それから一時間後、

ゲームセンターから大量のぬいぐるみが入った袋を幾つも持った秋良達が、

ほくほく顔をしながら出てきた。

 

ラウラを始め、簪も加わり、あれから更に十個以上のぬいぐるみや、

フィギュアの類いを手に入れる事が出来たのである。

 

「いや~、大漁大漁!!いっぱい捕れたね!」

 

「凄いね二人とも・・・、こんなに捕れるなんて・・・。」

 

ぬいぐるみが入った袋を持った秋良が如何にも愉快といった風に笑い、

簪は感激した様に呟いていた。

 

「流石に捕りすぎたね、ちょっと重いよ。」

 

「確かにね、でも、ラウラの部屋を綺麗に飾り付け出来そうだよ。」

 

鈴が苦笑しながら言い、

秋良もそれに頷きながら答える。

 

「鈴、簪、今日は楽しかったぞ、

二人には感謝してもしきれん。」

 

ラウラは柔和な笑みを浮かべ、

今日という一日を共に過ごしてくれた友に感謝の言葉を述べていた。

 

「良いのよ、ラウラは友達だもん。」

 

「そうよラウラ、友達と楽しく過ごせたのは私達も同じよ。」

 

鈴と簪は彼女の礼に微笑みながらも、

自分達も楽しめたと言うことを伝える。

 

「あの~、俺の事を忘れてないかな?

忘れてた人は手を挙げなさい?」

 

何故か名前を呼んで貰えなかった秋良がすごすごと尋ねる。

 

すると、三人は彼をほったらかしにし、

さっさと歩いて行ってしまう。

 

どうやら完全に存在していた事を忘れていたらしい。

 

「ちょっ!?酷くない!?」

 

批難の声をあげながらも、

秋良は何処か楽しそうに三人を追い掛ける。

 

彼とて、今日という一日が真に楽しかったのだから。

 

彼等の夏は、終わりに近付いていた。

 

sideout




はいどーもです!

今回はほのぼの系を書いてみました。

という訳で、ほのぼの系の次はおバカ系を書いてみたいと思います。

それでは次回予告
秋良達が楽しんでいる裏で、
とある二人の掛け合いが行われていた。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
夏休みの一幕 ストーカー編

お楽しみに!

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