インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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勇敢なる者

side一夏

箒と雅人が戦闘状態に突入したのを、

別室にあるモニターで確認した。

 

箒が振るう日本刀をシールドで防ぎつつ、

ビームライフルで攻撃を仕掛ける。

 

初めてにしては悪くない機動だ。

 

それにしてもドレッドノートとは面白い機体を選んだ物だ。

 

だが、本来ドレッドノートは核分裂炉を動力に動く事を前提に作られている機体だ、

攻撃力、機動力は通常ISを遥かに凌いでいるが、その分、エネルギーの消費量が非常に悪い。

通常バッテリーではとてもではないが戦闘などできる筈もない。

 

まあ、そこは女神がなんとかしているだろうから心配はしない。

 

しかし、何故また転生者が現れる事になったのだろうか?

確かに専用機持ちのタッグトーナメントの人数合わせには丁度よかった。

 

秋良のせいで一人余ってしまう所だったしな、それだけは感謝だ。

 

だが、それ以外に何か裏がある様な気がしてならない、

そう、俺の様にある役割を与えられているのかも知れない。

 

いや、だとしても俺のやるべき事は変わらんな、

たとえ誰が敵になろうともな。

 

sideout

 

side雅人

 

「行けっ!プリスティス!!」

 

ドレッドノートの腰部に装備されている武装、プリスティスを射出し、

紅椿を攻め立てる。

 

元々ドレッドノートはゲイツとフリーダム、ジャスティス、そしてプロヴィデンスを繋ぐ中間に位置する機体だ。

 

このビームライフルとビームサーベル内臓型シールドはゲイツの発展型で、

プロヴィデンスの雛型になった装備だ。

 

そしてこのプリスティスもプロヴィデンスのドラグーンの雛型であり、

ゲイツのクローアンカーの発展型である。

 

強力な兵器ではあるが、やはり操作が難しいな。

ま、慣れれば良いだけの話だ。

 

「くっ!このっ!!」

 

箒は二本の日本刀を振り、

プリスティスのケーブルを破壊した。

 

「やるな!だがまだだっ!!」

 

破壊されたケーブルの先端にあったクローがケーブルを離れ、

ドラグーンと同じ様に攻撃を始める。

 

「なんだとっ!?」

 

俺を攻め立てようとしていた箒は、

予想だにしなかった攻撃に対処しきれずに被弾する。

 

「くっ!ストライクEのアンカーと同じだと思っていた・・・!!」

 

「油断大敵と言う言葉があるぜ?」

 

しかし、連続での被弾はしないようだな。

 

なかなかいい腕をしているじゃないか。

 

そろそろ攻撃パターンが読まれ始めた頃だな、

なら、使うか。

 

「チェンジ!Xアストレイ!!」

 

そう叫んだ瞬間、ノイズの様なものが背後に現れ、

それが晴れた後には、巨大なXを思わせる装備が完成していた。

 

これぞドラグーン特化形態、ドレッドノートガンダムXアストレイ!!

 

「行けっ!ドラグーン!!」

 

sideout

 

side一夏

 

「ほう?Xアストレイにもなれるか、という事はイータにもなれるだろうな。」

 

実に面白い。

いい戦力になりそうだ。

 

「あのお方は何方ですの?」

 

「ストライクに似てるね、あの機体。」

 

モニターを注視しているうちに、

セシリアとシャルが俺の後ろに立っていた。

 

「部屋で待っていていいと言った筈だが?」

 

「貴方様がいらっしゃらないのに、部屋で待っている意味はありませんわ。」

 

「そうだよ、僕達は一夏の隣にいることが絶対でしょ?」

 

フッ、なかなか可愛い事を言ってくれるじゃないか、

やはり、セシリアとシャルは最高だな。

 

「そうだったな、なら、来たついでにこれを見ていけ。」

 

俺の隣に二人を座らせ、モニターを見るように勧める。

 

「彼の名は加賀美雅人、俺や秋良と同じ別世界の住人だった人間だ。

搭乗機はドレッドノートガンダム、ドラグーンや砲撃戦に秀でた機体だ。」

 

「「ドラグーン?」」

 

俺の説明に分からない部分があったのか、

二人は揃って首を傾げていた。

 

「ドラグーン・システム、ビットの近縁種にあたる装備だ、

ビットとの決定的な違いは精神接続か否かだ。」

 

ビットは支援AIの補助を受け、精神に直接接続し動かしているが、

ドラグーン・システム、特にドレッドノートやプロヴィデンスの初期型ドラグーンは空間認識能力が一定以上の数値を誇っていれば操る事ができる装備だ。

 

謂わば、選ばれた者以外使う事が出来ないのだ。

 

しかし、十全に扱えた暁には凄まじい戦闘能力を発揮する。

 

俺にはドラグーンやビット、そしてガンバレルを十全に扱う能力はない、

しかし、その分、対G耐性が秋良と比べても遥かに高い。

 

逆に秋良の動体視力は俺の追随を許さない。

 

そして、雅人は空間認識能力が高いか・・・。

 

なかなか面白い事になって来たな。

 

まあ、能力同じでもつまらんしな。

 

そんな事を考えている内に、

戦局は更に動こうとしていた。

 

sideout

 

side雅人

 

「くっ!!」

 

箒は紅椿のスラスターを吹かし、

ドラグーンから一斉に発射されるビームをなんとか回避していく。

 

おいおい、これがISを動かして一ヶ月の奴の動きかよ?

って、まあ俺も人の事は言えないか。

 

しかし、俺に与えられた力は空間認識能力だったか、

なかなか便利だな。

 

しかし、ドラグーンではそろそろ当たらなくなって来たな。

 

手の内を曝す様な事はあまりしたくはないが、

一度は全部の装備を使っておいた方がいいな。

 

そう思い、ドラグーンを全て戻した。

 

「!!貰った!!」

 

それを反撃の好機だと見た箒が、二本の刀を構え突進してくる。

 

確かに相手が次のモーションに動こうとしている所を狙うのは戦いにおいては当然だろうが、

今、敵の手の内が分からないのに突っ込んで来るのはただの自殺行為だ。

 

「チェンジ!ドレッドノートイータ!!」

 

X字のドラグーンが消え、ギリシャ文字のηを思わせる装備が出現する。

 

これぞ第三のドレッドノート。

ドレッドノートイータだ!

 

イータユニットを両腕に保持し、ビームソードを発生させ、

箒の刀を紙一重で回避し、斬撃を叩き込んだ。

 

「うわぁぁぁっ!!」

 

もろに喰らった箒は、

機体制御が出来ずに落下していく。

 

「おっと、大丈夫かマドモアゼル?」

 

「す、済まない。」

 

箒の腕を掴み、ゆっくりと地面に降りる。

 

お姫様抱っことかはしない、

流石に好きでもない相手にされても喜ばないだろうしな。

 

「ありがとう、いい体験になった。」

 

「礼を言うのは私だ、色々と学ぶ事があった。」

 

「そうか、ならよかった。」

 

そう言い、俺は箒を支えたままピットへと戻った。

 

sideout

 

side一夏

 

「凄い・・・!」

 

「あれが、ドレッドノート、勇敢なる者・・・。」

 

規格外だな、第四世代機の紅椿をいとも簡単に下してしまうとはな。

だが、良いねぇ・・・。

 

ここまで圧倒的な強さを見せられると逆に清々しい。

 

戦ってみてぇな・・・。

 

だが、流石に二時間程前にセシリア達と戦った所で、

機体も調整中だ、すぐには戦えねぇな。

 

「チィーッス、戻ったぜ。」

 

「御疲れさん、何か飲むか?」

 

「じゃあコーラをくれ。」

 

「私はジンジャーエールで頼む。」

 

「あいよ。」

 

面白い戦いが見れたしな、これぐらいはサービスしてやっても良いだろう。

 

冷蔵庫からコーラの缶とジンジャーエールの缶を取りだし、

二人に投げ渡す。

 

「「炭酸飲料を投げるな!!」」

 

「良いじゃねぇか別に。」

 

中身が揺れない様に投げたし、

吹き出す事は無いだろう。

 

二人は缶を受け取った後、缶の周りをデコピンしていた。

でたよ、思いっきり振っても中身が噴き出さない裏技。

 

「この野郎・・・!」

 

「文句があるなら返せ、もっと振ってから渡してやる。」

 

「もうこれで良い!」

 

雅人はプルタブを引き、

一気飲みの如くコーラを飲み干していく。

 

「くぅ~!動いた後のコーラはうまいねぇ!!」

 

「静かに飲め、今から反省会だ。」

 

モニターを操作し、先程の戦闘の映像を映す。

 

「箒はケーブルを切るだけではなく、クロー部も壊しておくべきだったな。」

 

「ああ、分かってる。」

 

「雅人はあれだな、もうちょい操縦技術を向上させろ。」

 

「そう言われると思ってたぜ、

しょうがねぇさ、今さっき転生してきた所なんだしよ。」

 

分かってるなら良いんだがな。

 

さてと、変に時間が余ってるな。

何をすべきか・・・。

 

そう言われると言えば、十蔵の爺さんが戻って来いとか言ってたな。

 

裏の仕事を任されてる身としては、長いこと開ける訳にもいかないか。

 

そのついでに転入手続きをさせちまうか。

 

「取り敢えず、転入手続きをしにいくぞ、

用意をしておけ。」

 

「分かった、シャワーだけ浴びさせてくれ。」

 

「良いだろう、一時間後にロビーに来い、それから出発だ。」

 

「了解した、それじゃあまた後でな。」

 

雅人はそう言うと、モニタールームから出ていった。

箒はジンジャーエールの缶を受け取った後にすぐ出ていった為、

既にこの部屋にはいない。

 

「やれやれ、また面倒な事が増えちまったな。」

 

「ですが、楽しみがまた一つ増えたのではありませんか?」

 

フッ、違いないな。

まったく、コイツらはどうして俺の心を見透かすのが巧いんだろうな?

 

ま、どうでもいい事なんだがな。

 

「お前達も準備をしておけ、

恐らく一週間やそこらはこっちに戻って来れないだろうしな。」

 

「分かりましたわ。」

 

「それじゃあ僕達も用意してくるね。」

 

セシリアとシャルはそう言って部屋を出て行く。

俺も行くべきだな。

 

そう思い、俺も席を立った。

 

sideout

 

noside

それから二時間後、一夏達はIS学園に到着し、

理事長室を訪れていた。

 

IS学園の真理事長である轡木十蔵に、

三人目の男性IS操縦者である雅人の転入の話をする為である。

 

「なるほど・・・、分かりました、転入の手続きは私が通しておきましょう、

一夏君には頼まれて欲しい仕事が幾つもあります、余計な仕事を増やす訳にはいきませんからね。」

 

「ご迷惑をおかけします理事長、

雅人、先にアクタイオンに戻ってくれ、

一週間やそこらはこっちに居るからな。」

 

「分かったよ、それでは失礼します。」

 

雅人は一礼した後、理事長室を去って行った。

 

 

「それで、私に頼まれて欲しい仕事とはいったいなんです?」

 

彼が居なくなったのを確認し、

一夏は十蔵の真意を尋ねる。

 

「今晩辺り、わざと学園の警備を手薄にし、

侵入してくる敵を一網打尽にしたいのです。」

 

「なるほど、そろそろ脅しの、言葉が悪いですね、交渉の材料として使いたいと。」

 

一夏は納得した様に呟き、

十蔵の真意を更に噛み砕いて理解する。

 

「その通りです、私も教員の端くれ、

学園の安全を守りたいとは思っています。」

 

「それは私達も同じ事ですわ。」

 

「そうです、無関係な人達を巻き込む事なんて赦せません。」

 

十蔵の言葉に、セシリアとシャルロットも頷き、

学園を守護する事に対する意欲を見せる。

 

「ですが、私には力が無い、若い時ならいざ知らず、

年老いた今、貴殿方の様に闘う力は無い、ですから、私にできる事は裏への手回しだけです。」

 

十蔵は自分の嗄れた手を見せ、

自分の老いを嘆く様に話す。

 

「それ故、貴殿方三人に動いて貰わなければならない。」

 

「分かっています、俺達には力がある、

敵を討ち、この学園を守る力がね。」

 

「ええ、ですので、今夜もよろしくお願いします。」

 

「了解しました、それでは失礼します。」

 

十蔵に一礼し、一夏達は部屋から辞した。

 

sideout

 

side一夏

 

「やれやれ、二三日依頼が無かったかと思えば、

今日一気に来るのかよ。」

 

「仕方ないよ、一夏は人気者だからね。」

 

「そんな人気者なんかなりたかねぇわ。」

 

人気者は辛いねぇ・・・、

いらん仕事が幾つも増えるしな。

 

それって人気者って言うより、

よろず屋って言うんじゃないか?

 

まあそれはそれで良いんだが。

 

「一夏様、まずは食事を済ませませんか?」

 

「そうだな、そうするか?」

 

「僕もそれが良いな。」

 

セシリアの提案を受け入れ、

彼女達と共に食堂へ足を向ける。

 

俺達の仕事は真夜中、日付が変わる頃だ。

 

それまではいつも通りの日常を過ごせば良いさ。

 

「行くぞ。」

 

「はい。」

 

「うん。」

 

sideout

 




はいどーもです!

次回は雅人のキャラ説明とドレッドノートの機体紹介をしたいと思います。

それでは失礼します!

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