インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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目覚めの前兆 秋良組編

side秋良

兄さん達がやりあった後、

俺と簪と鈴、そしてラウラは訓練場内に入った。

 

簪は打鉄弐式に兄さんが壊したランチャーストライカーを、

鈴は甲龍に俺が貸したマガノイクタチストライカーを、

ラウラはAICをアルミューレ・リュミエールユニットに換装して、

俺の前に立っている。

 

いやぁ・・・、なんか、セシリア達もそうだったけど、

セカンドシフトした時の姿が容易に想像できる・・・。

 

まあ、あてにはならないけどさ。

 

「さてと、三人とも準備はいいかい?」

 

「何時でも良いよ。」

「い、良いよ?」

「無論だ。」

 

アクタイオンの倉庫から見付けたのか、

簪はツインビームスピアを、鈴はトリケロス改を、

ラウラは二丁のビームマシンガンを構え、戦意をたぎらせる。

 

俺はウィングソーを引き抜き両手に保持する。

 

さてと、兄さんみたいに余裕を持って勝てるかなぁ・・・。

 

ま、やってみないと分からないよな。

 

「行くぞ!」

「うん!」

「うん・・・!」

 

三人は散開し、それぞれ俺に向かってくる。

 

「さあ、俺を越えてみな!」

 

sideout

 

side一夏

秋良達がやり始めたのを、

俺達は控え室の様な所でモニターしていた。

 

「にしても、簪がツインビームスピアみたいなマニアックな武装を使うとはなぁ・・・。」

 

元々はコズミック・イラではなく宇宙世紀の兵装なんだが、

何故か知らんが武器庫の中に紛れていた。

 

取り回しが難しい分攻撃力も高い玄人向けの装備なんだが、

そのいぶし銀の風格から俺はけっこう好んでいる。

 

にしても簪の奴、

ランチャーストライカーに打鉄弐式のミサイルって、

遠距離の鬼に、近接格闘用のツインビームスピアを合わせるとはな。

 

悪くはないチョイスだが、確実に扱いが難しくなる。

 

ま、それはアイツの腕の見せ処だな。

 

鈴とラウラの装備はまあ妥当かつ王道だな。

 

面白味にはかけるが、

実際の戦いの上ではそんな事を言っている暇は無い。

 

だが、アルミューレ・リュミエールを使い、どういう戦いを行うかは楽しみだ。

 

仲間を守る戦いをしても良し、攻撃に集中するも良し、

フェイントに使うのも良しだ。

 

ラウラはどの様な闘い方をするのだろうか?

 

ここでそれを見るのも一興だな。

 

「動くか・・・。」

 

簪達が動き、秋良はウィングソーを構え迎え撃つ。

 

簪がミサイルを乱射しつつビームスピアを突き出す。

 

あれは片方を抑え込んでももう片方が相手に襲い掛かる、

なんとも厄介な兵装だ。

 

「ほう?ウィングソーで逸らし、もう片方で斬りかかるのか。」

 

もし俺が相手にしたなら、同じ対処をしただろう。

 

簪を吹き飛ばした秋良は追撃をかけるが、

ステルスを解いた鈴が目の前に現れ、マガノイクタチストライカーを展開、

エネルギーを奪おうとしてきた。

 

咄嗟に反応した秋良はすぐさま身体を捻り回避する。

 

フム、今の鈴の攻撃はいいタイミングだったな、

相手が秋良じゃなかったら確実に決まっていたな。

 

近接格闘では分が悪いと思ったのか、

秋良はビームライフルを呼び出し、中距離射撃を開始する。

 

「お前の腕じゃ、当たるものも当たらねぇよ。」

 

秋良の射撃の腕は格闘専門の鈴にすら劣る。

ゼロ距離ならいざ知らず、中距離より離れると命中確率は非常に低く、悪い。

 

いっその事射撃系の装備全部とっぱらっちまえ、

その方がバッスロットにも空きが出来、効率も良い。

 

なのにアイツが何故それをしないのか謎だ。

 

案の定、簪も鈴も、何の苦もなくビームの光条を回避する。

 

その脇からラウラがビームマシンガンを乱射しながら突っ込んでいく。

 

秋良のヤローは凄まじく苦い表情をしながらも回避に専念する。

アイツ最近弛んでやがるな。

 

一度叩き直してやるか。

 

そんな事を考えてると、戦局が動こうとしていた。

 

sideout

 

side秋良

ヤバイ・・・!!

ヤバイぞ・・・!!

 

全然攻勢に出れない!!

 

流石に三対一は無謀だったかなぁ・・・、

この三人の連携はかなりのモノだ。

 

攻撃に回る簪、奇襲の鈴、防御のラウラ。

 

三位一体の如く、それぞれの役割を全うしている。

 

・・・、いや、俺の腕が堕ちただけか・・・、兄さんに殺されそう・・・。

 

そんな事を考えてる間にも、ラウラがビームマシンガンを乱射しつつ、

アルミューレ・リュミエールをビームソードの様に使いながら接近してくる。

 

「ちっ!!」

 

左手にビームサーベルを保持し、

ラウラの突きを逸らす。

 

しかし、勢いがあったためか俺は弾き飛ばされ、

大きく体勢を崩してしまった。

 

そこに簪のミサイルと、鈴の衝撃砲がゲイルストライクに直撃する。

 

「がはっ・・・!」

 

回避する間も無く、

俺は訓練場の地面に叩き付けられた。

 

くそっ・・・!

油断していたつもりはないけど、

これは予想外だったよ。

 

(まったく・・・、俺はいつからこんなに偉そうになったんだ?

兄さんには勝った事無いし、尚且つ、簪達にすら負けそうになってる。)

 

その癖、今の自分の強さに自惚れていたなんて・・・。

情けない、ああ情けないったらありゃしないよ!!

 

「俺は馬鹿だ・・・、兄さんに追い付くとか、追い越すとか、

俺を越えろとか言ってる癖に、俺は足踏みをしていた・・・!!」

 

漸く目が覚めたよ、まったく・・・、

後で兄さんに殴られとこう。

 

「さて・・・、目も覚めた事だし、今度こそ行くよ!!」

 

ゴメンよゲイルストライク、今こそ、俺に力を貸してくれ!!

 

sideout

 

side一夏

自分の頬を思いっきり叩いた秋良の目の色が変わったのを察し、

俺はモニターを食い入る様に注視する。

 

やっと目が覚めたようだな、まったく、遅すぎるんだよお前は。

 

アイツはラウラの目を覚まさせた後から、

何処か自分の力に自惚れていた様に感じる。

 

それでは後は堕ちていくだけだ、

立ち上がれもしない、そして勝てもしない。

 

俺は自惚れはしない、寧ろ、周りを進化させる為なら俺は更に力をつけ、

越えられるべき壁となり立ちはだかろう。

 

それが俺のあるべき姿だ。

 

「さて秋良よ、お前はどういう姿勢で俺に挑む?」

 

俺の問い掛けに反応したかのように、

ゲイルストライクが動いた。

 

sideout

 

side簪

戦闘開始から数分の間、秋良の動きが何時もより悪かった。

 

どうしてかは分からないけど、攻めこむチャンスを逃さない為に、

私達は波状攻撃を仕掛けた。

 

結果、攻撃らしい攻撃を受けず、秋良を地に着ける事が出来た。

 

でも、全然嬉しくなかった。

 

私達が倒したいのは、強く、そして誇り高い織斑秋良。

 

今の彼は何処か虚ろな感じがした。

 

だから、高揚もなく、ただ虚しさだけが私の胸にあった。

 

「ははは・・・、ははははははっ!!」

 

ゆらりと立ち上がった秋良の口から、

狂った様な笑い声が聞こえてくる。

 

それを聞いて、私は肌が粟立つのを感じる。

 

何時もの一夏と秋良から感じられる感覚が、

漸く私達を襲う。

 

遂に、彼が目覚めたんだ・・・!

 

sideout

 

side秋良

一頻り笑った後、俺はウィングソーを握りしめる。

 

もう無様はしない、自惚れやしない。

俺は俺のあるべき姿を見せればそれでいい!!

 

「待たせたね三人とも・・・、どうやら俺の心の準備が漸く整ったみたいだよ。」

 

ウィングソーの切っ先を、滞空する三人の方へ向け宣言する。

 

「だから、今度こそ本気で行くよ!!」

 

身を沈め、脚力による跳躍とイグニッション・ブーストを同時に行い、

通常時を遥かに上回る速度で飛び上がる。

 

簪達は散開し、先程と同様に俺を狙う。

 

簪がアグニと山嵐を同時に撃ち、俺の行く手を阻もうとしてくる、

山嵐は確かに厄介な兵装だけど、隙間と言うものはどうしても存在する。

 

それに、撃ったアグニの影響で一部が誘爆してしまっている。

 

アグニは掠めただけですら、通常の兵器の直撃と同等の効力がある。

簪はそれを完全に把握しきれていなかった様だ。

 

サークルロンドを行いつつ、

風圧で爆風を払いながら突き進む。

 

「・・・!?」

 

すり抜けて来るとは思っていなかったのか、

簪の目が驚きに見開く。

 

「はっ!」

 

その隙に一気に接近し、ウィングソーを振り抜く。

直撃する事はなかったけど、右手に持っていたツインビームスピアを破壊する事が出来た。

 

「っ!!」

 

簪は後退し、その前方からステルスを解いた甲龍が姿を現す。

けど、それはもう折り込み済みさ。

 

マガノイクタチを向けて来るけどその隙間を縫い、

ウィングソーの切っ先を甲龍の装甲と装甲の隙間を狙い、突き立てる。

 

如何に強固な装甲を持っていようと、隙間を攻撃されれば何の意味も無い。

 

絶対防御を発動させ、追撃をかけようとするけど、

横手からシュヴァルツァ・レーゲンが現れ、アルミューレ・リュミエールを展開して俺の斬撃を受け止める。

 

「ちっ、そう言えばアルミューレ・リュミエールを切った事は無かったね。」

 

だけど、振動数を調整すれば光波シールドも切り裂けるだろう。

データは取れた。

 

なら、次は斬る!!

 

左手に保持したウィングソーを逆手に持ち、

振り向き様に斬りつける。

 

想像通り、振動によって光波シールドが拡散され、

その意味も無くす。

 

「なにっ!?」

 

ラウラが驚愕の表情を見せるが、

防ぐ手だては無い。

 

「おおっ!!」

 

躊躇いなく振り抜き、

シュヴァルツァ・レーゲンのシールドエネルギーを全て奪い切った。

 

「ラウラっ!!」

 

鈴が彼女の援護するかの様にマガノシラホコを射出して来る。

 

ゴールドフレーム系の装備は基本的に奇襲をする時に、

最高の威力を発揮する。

 

真正面から攻めて行くのは、

自身の技量に絶対の自信がある時だけだ。

 

ウィングソーを操り、マガノシラホコを全て切り落とす。

 

そのままの勢いで、遠心力を利用して甲龍に斬りかかる。

 

「はああっ!!」

 

背後に回り込み、スラスターユニットを破壊した。

 

これで戦力を奪ったも同然だ。

後は簪だけが残ってるね。

 

「やっぱり強いね秋良・・・。」

 

簪が何処か安心した様に話しかけて来る。

 

「ゴメンよ、俺は何処か自分の力に自惚れていた。」

 

左手に保持していたウィングソーを格納し、

自嘲しながら話し出す。

 

「だから、君達のその心意気には勝てなかったんだ、

だけど、今は違う!!俺は一人の戦士として、全力で君と戦おう!!」

 

「私も、貴方を倒す!!」

 

俺はウィングソーを構え簪へと猛進する。

簪も夢現を呼び出し、俺に斬りかかって来る。

 

間合いがゼロになり、俺達は互いの得物をぶつけ合い切り結ぶ。

 

簪の使っている夢現も、振動剣の亞種の様なものであり、

振動により、装甲を切り裂く事が出来る。

 

「そうだ、思い出したよ、俺はただ愚直に戦えばいいんだ!!」

 

そうだ、それでいい。

難しい事は全て兄さんに任せればいい、俺はただ剣になればいい!

 

「だから、俺は戦い続ける!!」

 

新たなる決意を籠め、俺はウィングソーを一気に振り抜いた。

 

sideout

 

noside

 

―バキィッ!!―

 

それほど広くないピット内部に、

痛々しい音が響き渡る。

 

なにかが壊れた訳ではない、

何故ならその音の原因は二人の男なのだから。

 

『・・・。』

 

彼らの、いや、一夏に殴られた秋良の周囲にいた簪達は、

秋良に駆け寄ろうとしたが、セシリアとシャルロット、そして秋良自身に制された。

 

「なんだあの無様な戦いは・・・。」

 

彼の兄、一夏が秋良の胸ぐらを掴む。

 

先程の模擬戦は、結果としては秋良が最後の簪を、

ウィングソーの一閃で夢現ごと叩き斬り勝利を掴んだ。

 

だが、彼が言いたいのはそんな事ではない。

 

序盤、秋良は一撃すら与える事が出来ず、

機体に土を付けた。

 

一夏は、彼の心の脆さに怒っているのだ。

 

「テメェはいつから手加減して勝てる程強くなった?

一対一ならいざ知らず、多対一の時に手加減できるほど、テメェは強くねぇ。」

 

一夏は乱暴に秋良を床に叩きつけ、

興味を無くしたかの様に背を向けた。

 

「その驕りを反省し、簪達に謝っとけ。」

 

一夏はそう言い、扉に向けて歩き出した。

 

秋良は口の端から出た血を拭いつつ立ち上がるが、

何も言わず、一夏の後ろ姿を見送っていた。

 

「秋良・・・。」

 

簪が心配そうな表情をし、彼に駆け寄った。

 

「ごめん・・・、君達の事を甘く見ていたのは事実だよ・・・、

弁明する気もない・・・。」

 

ラウラから渡された濡れタオルを受け取り、

腫れた右頬にあてる。

 

「君達の前を走ってる気でいたんだ、

でも、それは間違いだったよ、君達は俺の後ろにはいない、

俺の隣に来たんだ、兄さんに殴られて漸く分かったよ。」

 

秋良は頭を下げ簪達に詫びた。

 

「こんな情けない男で良かったら、これからも俺を支えて欲しい。」

 

「勿論だ秋良。」

「私達は貴方を信じてるから。」

「うん!」

 

秋良の申し出に、ラウラ、簪、鈴は微笑み、

彼を支える事を誓った。

 

「あ、そう言えば、さっき兄さんが俺に胸ぐらを掴んだ時、

これを入れてたな。」

 

何かを思い出したかの様に、秋良が自分の胸ポケットから何やらチケットの様なものを取り出す。

 

「何々?映画のチケットみたいだね、お詫びがてら、

今度四人で行こうか。」

 

秋良の誘いに、三人は笑顔で頷くのであった。

 

sideout

 

sideミーア

 

「あ~!!暇だよぉ~!!」

 

社長室の執務机に突っ伏し、

私は大声をあげる。

 

資料も読み終えたし、会談よ予定も無い。

開発の方は全てエリカ達に一任しているから関係ない。

 

つまり完璧な手持ち無沙汰になっちゃったの。

 

どうするべきかなぁ・・・。

 

そんなとき、私の机に置いていた携帯電話がなる。

 

非通知?何でだろ?

つまり私の知らない人なのかな?

 

まあいいや、出たら分かるし。

 

「はいもしもし?」

 

『あ、ミーアちゃん?久し振り~!!』

 

「ひえっ!?女神様ぁっ!?」

 

忘れもしない、この人は間違いなく神界での私の上司だよぉ!!

 

「おおお、お久し振りです!!」

 

『うん久し振り~、今から暇かなぁ?』

 

「はい!すっごく暇です!!」

 

本当に暇だから、何か用事があるなら今から来てほしいよ。

 

『分かった~、取り敢えず社長室に一夏を呼んどいて~。』

 

よろしくね~、と言って電話は切れた。

 

焦りを抑えながら私は備え付けの社内電話を操作し、

一夏を呼び出した。

 

『なんだよ社長、昼寝したかったのによ。』

 

文句たらたらな一夏の声が聞こえてくるけど、

今はそんな事を気にしてる暇はない!!

 

「ゴメン!!文句なら後で聞くから!すぐに社長室に来て!!」

 

『・・・!何かあったのか!?分かったすぐに行く!!』

 

一夏からの電話が切れた瞬間、私の目の前に光の渦が現れた。

 

sideout

 




はいどーもです!

スランプです・・・。

帳尻合わせにあることをしたいと思います。
そして新しい機体も出します!!

何になるかは次回のお楽しみと言うことで!!

それでは次回
インフィニット・ストラトス・アストレイ
三人目の転生者

お楽しみに!!

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