インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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想いの強さ 中編

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司令室では、千冬や真耶、教員達が福音に対する作戦を立てていた。

 

だが、専用機を持たない教員が挑んでも、福音を止める事が出来るかは分からない。

 

千冬と同等に近い戦力を誇る一夏が戦闘不能な為、

実質上の作戦失敗、これにより、どの様に作戦を進めるかを会議していた。

 

千冬の暮桜はある理由で使用出来ない為、

彼女自身が出撃する事は叶わない。

 

そんな時だった・・・。

 

「お、織斑先生!!大変です!!」

福音の動向をモニタしていた教員が、

息を切らし司令室に入ってくる。

 

「どうしました?」

「せ、専用機持ち全員が無断出撃しました・・・!!」

「なに・・・!?あのバカ共・・・!」

 

千冬は苛立ちながらも真耶を促し、

福音をモニタリングしているディスプレイを映す。

 

そこには福音に攻撃を仕掛ける専用機持ちの面々が映し出されていた。

 

sideout

 

noside

時間は少し巻き戻る。

 

教員に悟られる前にひっそりと出撃した秋良達は、

福音から五キロ離れた岩場に隠れていた。

 

「じゃあ作戦を説明する。ラウラは先の戦闘と同様、

このままでは岩場から福音を狙い撃ってくれ。」

「分かった、兄貴と同じ様に出来るかは分からないが、

仲間のために努力しよう!」

 

秋良の頼みに、ラウラは大きく頷き、ブリッツを構える。

 

「セシリアとシャルロットはステルスモードでラウラの周りに待機、

向かってきた福音を迎撃してくれ。」

「お任せください。」

「分かった。」

 

セシリアとシャルロットはその美しい瞳に闘志をたぎらせ、

力強く頷く。

 

「箒は簪を背中に乗せ、海中で待機、合図と共に飛び出して波状攻撃をかけてくれ。」

「分かった。」

「一夏の仇は私が討つ!!」

 

簪と箒は拳を握りしめ、

一夏の仇を討とうと意気込む。

 

「鈴は俺と一緒に攻めるよ、良いね?」

「わ、分かった・・・!! 」

 

秋良は簪の頭を撫で、落ち着かせるようにする。

 

「さて、そろそろ始めようか。」

 

秋良が言うが速いか、セシリアとシャルロットがステルスモードに入り、

箒と簪が海中に潜り、秋良と簪は福音に気付かれぬ様、上空に回り込む。

 

そして・・・。

 

「作戦、開始!!」

 

sideout

 

side秋良

ラウラのシュヴァルツァ・レーゲンが放った弾丸は、

回復の為に踞り滞空していた福音に直撃、盛大に爆発する。

 

「初弾命中!!続けて第二射を行う!!」

通信を介し、ラウラの声が聞こえる、

 

ラウラの第二射を、福音は身体を沈めて回避し、

目論み通りラウラの方へと突っ込んでくる。

 

「(かかった!!)セシリア!シャルロット!」

福音のアームがラウラを捉えようとする寸前、

ステルスモードを解いたセシリアとシャルロットが福音の上下に現れ、

蹴り落としと蹴り上げを福音の胴体と背中に叩き込む。

 

「私がここにおりましてよ!!」

「一夏を傷付けたんだ、それ相応の事はさせてもらうよ!!」

 

セシリアとシャルロットは怯んだ福音の腹部に、

同時に蹴りを叩き込んで吹き飛ばし、ライフルを呼び出し福音の関節を狙うように撃つ。

 

『敵戦力レベルを修正、現戦域からの離脱を最優先。』

 

福音が銃弾とBTレーザーから逃れようとするが、

それをさせる俺達じゃない。

 

「箒!!簪!!」

「任せろ!!」

 

海中から箒と簪が飛び出し、

山嵐のミサイルを一斉発射する。

 

しかし、福音はシルバーベルを乱射し、

ミサイルを全て撃ち落とす。

 

今のは計算外だな・・・、

そろそろ俺達も行くかな・・・。

 

「鈴、そろそろ行くよ!!」

「う、うん!!」

 

鈴と共に高度を落とし、一気に福音へと迫る。

 

鈴が衝撃砲を撃ち、福音に隙を作ってくれている。

 

その隙に俺は死角より一気に接近、

ビームサーベルを二本抜き放ち、一気に迫る。

 

「墜ちろぉォッ!!」

不意を突かれたのか、福音は反応するものの回避しきれず、

片側のスラスターを破壊された。

 

「ヨシッ!!・・・!!」

羽を切り落とし油断してしまった、

シルバーベルの至近距離射撃を受け、俺は大きく吹き飛ばされた。

 

けど、それは福音も同じ、

今が墜とす好機!!

 

「今だよ!!一斉攻撃!!」

 

俺の叫びと同時に、他の皆から一斉にレーザーや銃弾、ミサイル等が福音に直撃する。

 

盛大に爆発した後、福音は頭から海に墜ちた。

 

「よしっ!決まったね!」

「今回はなんとか勝てたね。」

 

ガッツポーズをする簪に近寄り、

俺は海を見下ろしながら息をつく。

 

だが・・・。

 

突如、海水が吹き上がり、光の繭の様な物が海中より姿を現す。

 

「しまった・・・!これは、セカンドシフトだ!!」

 

詰が甘かった、

なんで忘れてたんだよ!!

 

「来るぞ!!各機散開!!」

 

俺の叫びと同時に、先程までとは比べ物にならない加速で、

福音がこちらに向かってきた。

 

仕方ない!!応戦する!!

 

sideout

 

side一夏

―か

 

誰だ・・・?

 

闇の中を意識だけで漂う俺に、誰かが話し掛けてくる。

―ちか―

 

俺を呼ぶのは・・・、誰だ・・・?

 

聞き覚えがある、だが思い出せない。

―一夏―

誰だ・・・?

 

―私だよ、覚えてないかな?―

「・・・。」

 

その声は、まさか、アンタなのか?

 

漸く記憶の糸を手繰り寄せられた。

 

―そうだよ!―

 

かぁ~、久し振りに聞いたぜ、そのアホみたいにテンションの高い声はよ。

 

―むーっ、なんだよぅ、そんなに私と会うのが嫌なの?―

 

いや、久し振りだから、ちょいと懐かしい。

 

で?俺はどうなったんだよ?

福音に腹をヤられて、頭から堕ちてからの記憶が曖昧なんだが?

 

―そうそう、君はあの女の子を庇って、

普通の人間なら間違いなく死にかけてる位の傷を負ったの―

 

やっぱりそうだろうな、

無茶苦茶痛かったしな。

 

で?何の用だ?

意識だけとは言え、俺を呼び出すんだ。

結構重要な事なんだろ?

 

―うん、そうだよ、君に隠しておいた能力を解放しようと思うの―

 

・・・、分かった、全て受け入れる。

 

―まだ何も言って無いよ?―

 

いいや、分かるんだよ。

こう言う力は強大で、その対価を求められる。

 

そうだろ?

 

―うん、じゃあ言うね?―

 

sideout

 

noside

福音から放たれるシルバーベルの雨霰を、

秋良達は必死に回避する。

 

「クソッ!!さっきとは全然違う!!」

秋良は毒づきながらもビームライフルを呼び出し、

シールドの影に隠れながら福音目掛けビームを連射する。

 

しかし、福音はそれらを回避し、

一気に簪に迫る。

 

「は、速すぎる!!」

牽制の為にミサイルを放つが、

福音の接近を止めることは出来ず、簪はシルバーベルの至近距離射撃をもろに喰らい、頭から海に墜ちる。

 

「簪ぃ!!」

鈴が簪の救出に向かおうとするが、

福音は鈴を追いかける。

 

「させない!!」

セシリアとシャルロットは福音を足留めすべく、

ライフルを連射しながら福音との距離を詰める。

 

『La~♪』

しかし、福音はそれを物ともせず、

セシリアに急接近する。

 

「こ、この速さは・・・!!」

 

その言葉を言い切る前に、セシリアは海に蹴り落とされた。

 

「セシリアっ!!よくもぉ!!」

 

親友が落とされた事に激昂し、

シャルロットはシールドピアースを福音に突き立てるべく、

瞬間加速<イグニッション・ブースト>で急接近する。

 

「よせシャルロット!!駄目だ!!」

 

秋良の制止も聞かず、シャルロットは福音の懐に飛び込みシールドピアースのトリガーを引く、

だが、それが直撃する寸前、福音の翼がシャルロットを包み込み、

全方位からシルバーベルの一斉射がシャルロットを襲う。

 

「シャルロット!!この野郎!!」

 

次々と仲間が落とさた事に激昂し、

秋良はシュベルト・ゲベールを展開し、福音に迫る。

 

「仇討ちは俺が!!」

 

シュベルト・ゲベールを振り下ろすが、

福音は片手で受け止め、空いている左手でシュベルト・ゲベールを叩き折る。

 

「なっ・・・!?」

 

動揺した、その一瞬の隙を突かれ、

秋良は福音に殴り飛ばされ、そこにシルバーベルの一斉射撃を食らう。

 

「ぐぁぁぁっ!!」

 

落下の勢いが更に速まり、

秋良は体勢を立て直す暇もなく海中に没した。

 

秋良にとって海中は前世の死因と深く関わる為、

正直言って心中穏やかではない。

 

だが、恐怖よりも何よりも、

彼の心の内を占めるのはただ一つの感情であった・・・。

 

(すまない・・・、兄さん・・・。)

 

sideout

 

side一夏

女神の頼みを聞いた俺は、

ある考えをしていた。

 

頼み、と言うには明らかに人間一人が抱え込むには大き過ぎた。

 

だが、女神はこの世界をあるべき正しい姿に戻そうとしている。

 

そして、俺はその尖兵として戦えと言われている様な物だ。

 

質問をさせてくれ、

俺はそれを成した後、どうなる?

 

―わからない、君は既に私の想像を越えてる、

だから未来も見えないし、果ても見えない―

 

だから、俺にそんな大厄を押し付けるか・・・。

 

―字が違う気がするんだけど?―

 

あながち間違いじゃねぇだろ?

 

―否定はしないよ、君にとっても、

そして、世界にとっても厄であることには変わりないもの―

 

まあ、気にしてねぇさ。

アンタに見初められた時から、厄を被ってる様な物だ。

 

良いぜ、俺を使え。

アンタが望む世界になるようにな。

 

―うん、お願いするね?

でも君の自我は消える訳じゃないから、君は君のままで戦ってくれれば良いから―

 

どういう意味だ?

 

―君は戦いの最中、何かを壊したくてたまらないでしょう?―

 

まあな、それは俺の基になった人物、

ルカスに起因してるからじゃねぇのか?

 

―半分はそれであってる、もう半分は私が植え付けた本当の力の副作用、

それが原因で君は戦いが楽しくて仕方がないの―

 

なるほどな、それだけで与えられる力がどれ程の物か理解出来たぜ。

 

だが、別に構わんぜ。

それが運命なら、俺は楽しんで見せる。

 

―嫌な役回りを全部君に押し付ける事になるよ?―

 

構わねぇさ、嫌な役回りは全部俺の役目だ。

 

あ、図々しい頼みだが、秋良の能力も解放してやってくれ、

アイツは俺に置いてきぼりを喰らうのを無意識に恐れているからな。

 

―良いの?いつか・・・―

 

そうだろうな、そうなるだろうが、

俺は構わないさ。

 

それがアイツの運命だ。

 

―分かったよ一夏、ううん、零士、君に全て・・・―

 

アイツが何かを言い切る前に、

俺は眩いばかりの光に包まれた。

 

sideout

 

side秋良

海に沈んだ俺の意識は徐々に薄れつつあった。

 

情けない、俺は兄さんと並び立つどころか、

兄さんの仇すら討てなかった・・・。

 

くそ・・・、俺は・・・、弱い・・・!

 

―バカ野郎、この程度で諦めるのか?―

 

誰だ・・・?

 

―お前はここで終わる程度の男じゃねぇだろ?―

 

・・・、でも、俺にはもう・・・、力が・・・。

 

―だからどうした?力が無いから諦めるのか?―

 

・・・。

 

―この程度で諦める奴に興味は無い。

そのまま沈んで行くが良いさ―

 

どうすれば良いんだ・・・!?

俺は戦いたいさ!!けど、ルージュのパワーも性能も!!

アイツには及ばなかった!!

 

―それだけだろう?―

 

え?

 

―力が無いなら、心で補えば良い、

根性見せて見ろよ?―

 

根性・・・、

それが力になるのか・・・?

 

―ああ、お前は戦いたいと願った、なら、その気持ち一つで戦えよ!―

 

ああ!やってやるさ!!

 

俺は、まだ戦える!!

 

 

ルージュ!!俺に力を貸してくれ!!

 

sideout

 

sideラウラ

福音から浴びせかけられるシルバーベルの光弾をAICで防ぎつつ、

後ろにいる簪と鈴を庇い続ける。

 

セシリアとシャルロットは海に沈んだきり浮かんで来ないが、

流石に今は救助にも行けない!

 

クッ!!流石に軍用のISなだけはある!!

 

エネルギー量がトライアル機とは桁違いだ・・・!!

 

箒が今攻めているが、

秋良ですら一撃もいれる事すら出来なかった相手に、

素人同然のアイツが食らい付くのは不可能に近い。

 

だが、私は退かない!!

私が退けば、簪達はこの光弾に晒される!

 

せめて!せめて秋良が戻るまでは堪える!!

 

そう意気込んだ時だった・・・。

 

『ぐあっ!!』

「箒!!」

 

通信回線から箒の悲鳴が聞こえ、

福音が居る方へ目を向けると、喉笛を捕まれていた。

 

「箒!!逃げろ!!」

 

叫んでも無駄だと言うことは分かっている。

だが、それでも叫ばずにはいられなかった。

 

「くっ!箒を離せ!!」

 

私がAICを解き、レールガンを向けるより速く、

何かが飛来し、シルバーベルの発射体勢に入っていた福音を蹴り飛ばした。

 

「あ、あれは・・・!?」

 

夜の闇に溶ける様に黒いボディーに、

巨大な翼を背負った機体・・・。

 

だが、どこか見たことのあるシルエットだった・・・。

 

あれは・・・、

 

「ストライク・・・?」

 

sideout

 

side一夏

間に合ったな。

 

今の所無事なのはラウラと鈴位か・・・。

 

まあ、ここに集う全員、まだ気持ちは折れてねぇな。

 

「大丈夫か?箒?」

「一夏・・・?一夏なのか・・・?」

 

痛みで意識がはっきりしないのだろう、

朧気に俺の顔を見る。

 

「ああ、待たせたな、動けるか?

動けるなら、ラウラの所まで行け。」

 

幸い、福音の意識はこの俺に向けられている、

今ここで箒を落としたとしても、ラウラが拾ってくれるだろう。

 

「すまんが、そろそろアイツとのケリを着けたい、

恨み言なら後で聞く。」

 

そう言って、俺は箒をラウラに向けて放り投げた。

 

さてと、スペックの確認をしておくか・・・。

 

両肩にサブスラスターが追加され、

運動性能も上がった。

 

武装は・・・。

ビームライフルショーティーが二丁。

 

ワイヤーアンカーが六つ。

 

そして、ノワールストライカーか・・・。

 

上々だな、負ける気がしねぇ。

 

奥の手も有ることだ。

さっさとケリを着けるとするか。

 

「秋良、目ぇ覚めてんだろ?とっとと上がって来やがれ。」

「人使いが荒いね兄さんは。」

 

通信を入れたのと同時に、

海水が吹き上がり、中から深紅の機体が飛び出してきた。

 

だが、その姿はルージュではなかった。

 

「漸くお目覚めかい?重役出勤にも程が有るんじゃないか?」

「フッ、今まで落ちてたお前には言われたかねぇよ。」

 

そりゃそうかと肩を竦める秋良を小突きつつ、

秋良の機体の様子を伺う。

 

両肩にエールストライカーの中型スラスターが移植され、

尚且つ、腰には二本の刀が着いた。

 

間違いねぇな、色こそ違うが、

これは正しく・・・。

 

 

『キアァァァア!!』

 

「おっと、のんびりしている暇は無さそうだね。」

「そうだな、行くとするか。」

 

臨戦体勢に入った福音を見て、

秋良は腰から二本の刀を引き抜く。

 

それと同時に、俺も腰のホルスターからビームライフルショーティーを抜き取り、

両手に保持する。

 

さあ、改めて宣言しよう。

俺達の新しい機体の名を・・・!!

 

「織斑一夏、ストライクノワール、行くぞ!!」

「織斑秋良、ゲイルストライク、行くよ!!」

 

sideout

 




はいどーもです!

セカンドシフトしました。
ストライク、ルージュ、お疲れ様でした。

一夏の機体は皆様ご存じのあの機体です。

えー、ゲイルをルージュと同じカラーリングにしたのは私めの趣味です。
石投げてくれても構いません。

『バカ野郎!!ゲイルストライクは青いからカッコいいんだろうが!!』
と言う方、本当にごめんなさい。

えー、因みに、これからもアストレイシリーズやSEED外伝で出た機体の中で、
このキャラにはこの機体が似合うと言う意見が有りましたら、感想に書き込んでください。
作者が大喜びします。

では次回予告
セカンドシフトを果たした一夏と秋良は、
徐々に福音を追い込んでいく。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
想いの強さ 後編

お楽しみに!!

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