インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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静かなる猛獣

noside

秋良が鈴・簪コンビを敗り準決勝に進出、

一夏とラウラのコンビは準々決勝第三試合にて、

一般生徒コンビを敗り準決勝進出を決めた。

 

そして、準々決勝第四試合・・・。

 

『試合終了!!勝者、セシリア・オルコット、シャルル・デュノアチーム!』

 

セシリアとシャルロットも準々決勝で勝利、

準決勝に進出し一夏とラウラのコンビと試合を行う事となった。

 

「やったねセシリア!」

「はい!」

 

シャルロットとセシリアはハイタッチを交わし、

勝利を喜び合う。

 

二人は一頻り観客に手を振った後、

ピットに戻りISを解除し、汗を拭う。

 

「次が一夏とだね、長かったね。」

「そうですわね、もう少し早く戦えると思っていましたが、

まさかここまでかかるとは思いませんでしたわ。」

 

来る決戦に向け、雑談を交わしながらも準備を始める。

 

彼女達の在り方を変えた男、織斑一夏という最凶に挑む為、

自分が持てる全てを賭けた戦いを行う。

 

そこに勝ち負けなどない、彼に自分達の戦いを見せつける。

ただそれだけの思いがセシリアとシャルロットを支配していた。

 

「今思ったんだけど、僕達って一夏に恋してるのかな?」

「どうでしょうか・・・?私は一夏様をご主人様とは思っていますが・・・。」

 

ふとシャルロットが話した言葉にセシリアは首を傾げる。

 

確かにセシリア自身も、そしてシャルロットも一夏を慕っているのは確かであるが、

セシリアは自分の主として、シャルロットは恩人としての情が強いのである。

だが、一人の女として織斑一夏という一人の男を想っている事も確かである。

 

まあ、一夏本人がどう想っているかは別なのだが。

 

「今はまだ分からなくて良い、いつか分かる時が来る、

と一夏様なら言うでしょうね。」

「あはは、絶対言うよね!」

 

何はともあれ、今は分からぬ事を考えるより先に、

前に進む事を選んだ二人は一夏との試合に向け、準備を進めていった。

 

sideout

 

side一夏

漸くか・・・、今まで退屈だったが、

やっと楽しめるぜ。

 

あまりに退屈だったから購買でアイスキャンディーをチマチマ買って食ってたからな、

因みに一、二本ラウラに餌付けしたのは言わずもがな。

 

さてと、やっとあいつらの戦いをこの身を以て感じられる。

これ以上の楽しみは中々無いからな。

 

「兄貴、そろそろ行きましょう。」

「オーライ、行くとするか。」

 

ラウラに呼ばれ、アイスキャンディーを食べきり、

棒を更衣室のゴミ箱に捨ててから移動を始める。

 

「ラウラ、お前に頼みたい事がある。」

「なんでしょう?」

「この準決勝と決勝、俺一人で戦いたい、だから手を出さないでほしい。」

 

ラウラにはちょいと酷な事だが、俺のやりてぇ事は俺一人でやりたいからな。

 

「それは、私に見ていろという事ですか・・・?」

「言い方は悪いがその通りだ。」

 

こいつとの連携も悪くはないが、本当の連携を磨いたセシリアとシャルには勝てないだろう。

それにラウラが先攻しても、露払い程度にしかならないだろうな。

 

ならば最初から俺が本気であいつらとぶつかれば良いんだよ。

 

「分かりました・・・、ですが、絶対に勝ってください!」

「当たり前だ、妹分の前でみっともねぇ戦いなんてするかよ。」

 

分かってくれたラウラの頭を撫ておく。

 

さてと、勝ちに行くとするか。

 

sideout

 

sideシャルロット

遂に運命の時がやって来た。

 

一夏と戦える、

それだけが僕の心を支配していた。

 

デュノアという闇から僕を救い上げてくれた一夏に恩返しが出来る絶好の機会、

ここで僕はシャルロット・デュノアという一人の女に戻る。

 

彼の事が好きかどうかなんて今はどうでも良い、

今はただ一人の戦士として、織斑一夏という最凶に挑むだけだね。

 

「それではシャルさん、お先に行かせていただきますね。」

「うん、お先にどうぞ。」

 

セシリアがブルー・ティアーズを展開してカタパルトから飛び出して行く。

そろそろ僕も行こうかな?

 

リヴァイヴを展開してカタパルトに固定する。

 

『進路クリアー、リヴァイヴ、発進どうぞ!』

「シャルル・デュノア、リヴァイヴ、行きます!」

 

カタパルトから飛び出しアリーナに入ると、

ちょうどラウラが飛び出して来るところだった。

 

ちょっと待っていると、

一夏がカタパルトから飛び出して来た。

 

相変わらずすごい歓声だね、

一夏って色んな意味で人気があるからね。

 

本人はちょっと迷惑そうにしているけどね。

 

「よおセシリア、それとシャルも、調子良さそうだな?」

 

一夏が通信を入れてきた、

本当に余裕そうな声だなぁ。

 

「ご機嫌麗しゅうございます一夏様、

貴方様のお陰で絶好調の一言に尽きますわ。」

「僕も絶好調だね、今までに無いくらいだよ、

これも一夏がヒントをくれたからだね。」

 

今まで僕は何をしてきたんだろうと思うぐらい、

一夏のアドバイスは僕を変えてくれた。

 

「フッ、ならばその力、俺に見せてくれ。」

一夏の身体から覇気が溢れ出す。

 

少しでも気を抜けば一瞬で呑まれそうな圧力、

まるで津波が目の前に迫って来ているような感覚を覚える。

 

だけど僕達は逃げない、

逃げるくらいなら呑まれる方が気分が良いからね。

 

僕がマシンガンを握り直した瞬間、試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

sideout

 

sideラウラ

試合開始直後、

兄貴目掛けてシャルルがマシンガンを乱射しながら突っ込んでくる、

兄貴は何時もと同じ不敵な笑みを浮かべながらシールドを掲げ、

弾丸を防ぎつつシャルルとの間合いを詰めていく。

 

間合いが縮まった瞬間、

兄貴は対艦刀を引き抜きシャルルを狙うが、

シャルルはシールドで剣閃をずらし、兄貴の背後を取る。

 

だが、兄貴はバックパック(確かI.W.S.P.と言っていたか)のスラスターを左側のみ全開にし、

振り向きつつ回し蹴りをシャルルに叩きつける。

 

兄貴は体勢を崩したシャルルに追撃をかけようとしたが、

四方から襲い掛かるレーザーを凄まじい機体制御で避けきる。

 

恐らく今のはセシリアが駆るブルー・ティアーズのビットだろうが、

以前見た入試時の戦闘データよりも遥かに精度が増している。

 

シャルルからセシリアに狙いを変えた兄貴は対艦刀を格納し、

両手にビームライフルを呼び出しセシリア目掛けて撃つ。

 

セシリアは回避しつつもライフルで兄貴を狙撃、

それと同時に二基のビットを使い、レーザーを撃ちかける。

 

良い射撃だが、この程度では兄貴は墜ちないだろう。

 

兄貴は飛んでくるレーザーを紙一重で回避する、

だが、ビットから撃たれたレーザーが急に軌道を変え、

兄貴に襲い掛かる。

 

(あ、あれはまさか!?)

いや、間違いない、

あれはブルー・ティアーズが高稼働時に起きる偏向射撃<フレキシブルショット>!!

 

そんなバカな!データに無いぞ!?

 

不味い!!兄貴もこの事は知らない筈だ!!

いくら兄貴が強いからと言っても、未知の兵器とは戦い辛いはず!

 

「兄貴!!」

 

私は思わず叫んでいた。

気が付けば体勢を立て直したシャルルも、

アサルトライフルとショットガンで兄貴を攻撃していた。

 

時折兄貴の装甲をレーザーや弾丸が掠める。

だが、兄貴は攻める事を止めない。

 

そこで気が付いた、

兄貴の表情が何時もと違う、

あれは、戦うことが愉しくて仕方がないという笑みだった。

 

sideout

 

noside

一夏は攻撃を避けつつも、対艦刀でレーザーや弾丸を切り、

セシリアにレールガンを撃ち、シャルロットにコンバインドシールドのガトリング砲を撃つ。

 

(クッ、流石だよ一夏、こんな隙を突く攻撃を仕掛けてるのに!)

(まだ私達に攻撃する余裕があるのですね!)

 

シャルロットとセシリアは一夏から浴びせかけられる砲弾の嵐を回避しつつ、

自分の得意とする間合いを取ろうとするが、その先を読んだかの如く、

レールガンやビームブーメランが飛んでくる。

 

(チッ!ここまで追い込んで攻撃してんのに、

よく避けやがるぜ、流石と言うべきか!)

 

一夏は自分の想像以上の戦いに、

抑えていた闘争本能を完全に呼び醒ましていた。

 

(だが、良い!良いぞ!このギリギリの攻防!これこそが闘いだ!!)

 

彼は口元を吊り上げ、対艦刀を振るい続ける。

 

「どうだいシャル!俺のたぎりが伝わるかい!?」

「伝わってくるよ!熱く、ギラギラしてるのがね!」

 

一夏の斬撃をシールドを使って防ぎつつ、

ブレッドスライサーで一夏を切りつける。

 

だが、むざむざやられる一夏ではない、

腰部サイドスカートからアーマーシュナイダーを抜き取り、

ブレッドスライサーを防ぐ。

 

「でも、そろそろ終わらせるか!」

一夏はシャルロットの脇腹を蹴りつけ、

体勢を崩した彼女を踏み台代わりにし、一気にセシリア目掛けて跳躍する。

 

セシリアは四基のビットとスターライトMk-Ⅲから立て続けにレーザーを撃ち、

一夏の接近を阻もうとするが、その僅かな隙間を縫って一夏は遂に眼前に接近する。

 

「良いぜセシリアァ!たぎるぜ!」

「身に剰る光栄ですわ!ですが、まだ墜ちませんわよ!!」

 

インターセプターを瞬時に呼び出し、一夏のアーマーシュナイダーと切り結ぶ。

「驚いたぜ!まさか偏向射撃だけでなく、近接格闘も磨いてくるとはな!!

だが、まだ甘い!!」

 

一夏は叫びつつも対艦刀でインターセプターを叩き折り、

肩口にアーマーシュナイダーを突き立てる。

 

「くぅっ!?」

「オラオラ!!行くぜぇぇぇッ!!」

 

コンバインドシールドからビームブーメランを引き抜き、

ビームサーベルの様に切りつける。

 

高エネルギーの塊であるビーム刃をぶつけられ、

絶対防御が発動したブルー・ティアーズは遂に沈黙した。

 

だが・・・。

 

「もらったよ!!」

「何ッ!?」

 

シャルロットの声に振り向くと、

そこには瞬間加速<イグニッション・ブースト>で急接近したシャルロットが、

シールドピアースを展開して突っ込んできていた。

 

(不味い!あんなもん喰らったら一貫の終わりだ!!)

 

盾殺し<シールドピアース>、

現行する実体兵器の中でも最高峰の破壊力を誇る兵装、

如何にストライクでもこれを喰らえばただでは済まない。

 

「「ウゥオォォォォッ!!」」

一夏とシャルロットの叫びが重なった直後、

アリーナに盛大な爆発音が響きわたった。

 

sideout

 

sideシャルロット

「くぅっ!?」

 

いきなりの爆発に吹っ飛ばされ、

僕は地面に叩きつけられてしまった。

 

一夏の背後を取ってのシールドピアースでの攻撃だ、

これでかなりシールドエネルギーを減らせてるだろう。

 

もうもうと立ち上る土煙と爆煙が視界を悪くしている、

飛び出して来る気配は今のところ無い、

と言うことは、一夏はエネルギー切れ?

 

でも油断はしない、なんたって相手は一夏なのだから。

 

それにしても一体何が爆発したんだろう?

 

そう思った瞬間、煙の中から何かが飛び出して来た。

「えっ!?」

 

僕が反応するよりも先に飛び出して来た機体は、

ビームサーベルで切りつけてきた。

 

回避する暇も無く、リヴァイヴのエネルギーはゼロになってしまった・・・。

 

振り向くとエールストライカーに換装したストライクの姿があった。

 

まさか・・・。

 

「い、一体どうやって・・・?」

「お前にシールドピアース喰らわされる直前にI.W.S.P.をパージしてな、

爆煙に紛れたあの一瞬でエールストライカーに換装、爆煙から飛び出してバッサリってとこだな。」

 

は、ははは・・・、敵わないなぁ、一夏には・・・。

 

「良い戦いだったぜ、ギリギリまで俺を追い詰めたんだ、

シャル、セシリア、良い戦い振りだった。」

 

ふふっ、それだけ言って貰えれば満足かな。

 

でも、少し悔しいな。

 

sideout

 

side秋良

すごい試合だったね。

セシリアもシャルルも、兄さんに食らい付いていた。

 

危うく俺まで興奮するところだったよ。

 

だが、これで舞台は整った。

 

あとは兄さんとの一騎討ちだけだ、

今回は必ず勝つ!!

 

sideout

 




はいどーもです!

えー、一夏全然静かじゃねぇ!!
って思った方がいらっしゃいましたら、感想までどうぞ。

それでは次回予告
学年別トーナメント決勝戦、
遂に一夏と秋良が激突する。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
猛獣対猛犬

お楽しみに!

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