インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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紅の戦い

side秋良

俺は兄さんとラウラの試合を更衣室のモニターで見ていた、

相変わらずえげつない戦いをするね。

 

兄さんがレールガンで撹乱したところをラウラが切り込み、

相手が回避したところを兄さんがビームライフルで狙撃、

直撃させて地面に落とす。

 

ラウラももう一人を地面へと叩き落とし、

兄さんがグレネードランチャーで攻撃、二人とも撃墜という、

見事な手際で勝利をその手にした。

 

いやぁ・・・、やっぱりデュエルのビームライフルはえげつないね。

ストライクのビームライフルとは違った戦い方があるね。

 

「秋良、そろそろ私達の試合だぞ。」

「分かったよ、今行く。」

 

箒に促され、更衣室を後にする。

さてと、相手は誰だっけ?

 

「二組と三組のコンビだ。代表候補生では無いらしい。」

「そっか、まあ頑張りましょうか。」

 

何としても勝たないと・・・、

なんせお宝本って凄い金かかるからね。

 

sideout

 

sideセシリア

「うわぁ・・・、一夏も秋良も凄いね・・・。」

「本当ですわね・・・。」

 

私とシャルさんは一夏様と秋良さんの試合をピットより拝見していました、

お二人とも相手を寄せ付けない圧倒的な戦いでした。

 

「それにしても、あのラウラが一夏に懐くなんてね。」

「それは私も驚きましたわ、一夏様の事を兄貴と呼んでいましたし、

何より一夏様との連携にも目を見張りますわ。」

 

やはりあの方は凄まじいと思いますわ、

人の心を畏怖と歓喜で支配するお方、それが織斑一夏という男性。

 

私はとんでもない方に廻り合いましたわね。

 

「さ、そろそろ僕達の番だよ、セシリア。」

「今参りますわ。」

 

シャルさんに呼ばれ、ブルー・ティアーズを展開し、

シャルさんの後に続いてカタパルトに機体を固定、

発進のタイミングを待ちます。

 

『進路クリアー、ブルー・ティアーズ、発進どうぞ!』

「セシリア・オルコット、ブルー・ティアーズ、参ります!!」

 

カタパルトから飛び出し、アリーナに入りますと、

ラファール・リヴァイヴを装着した鷹月さんと相川さんのチームが、

既にいらっしゃいました。

 

お二人には申し訳無いですが、ここは勝たせていただきます。

 

『試合開始五秒前、四・・・、三・・・、二・・・、一・・・、試合開始!!』

ブザーが鳴り響いた直後、私はライフルのトリガーを引きました。

 

sideout

 

side簪

私と鈴は順当に勝ち進んで遂に準々決勝まで上がってきた、

秋良や一夏達、専用機持ちのチームは全て準々決勝に上がり、

この準々決勝第二試合で私達は秋良と戦う事になった。

 

「やっと秋良と戦えるのね、長かったね鈴、・・・、鈴?」

 

鈴に話し掛けようとしたんだけど、鈴が近くにいない事に気付いた。

辺りを見回して探してみると、隅っこで小さくなっているのを見つけた。

 

「どうしたの鈴?」

「簪~!」

 

私が近寄って肩を叩くと鈴は涙目でに抱き付いてきた。

 

「ううぅ~・・・!」

「よしよし、秋良と戦うのが怖いの?」

 

私の問いに鈴は首を横に振る。

 

「じゃあどうして?」

「アタシ・・・、負けるのが怖い・・・。」

「分かるよ、私だって負けるのは嫌だし、怖い、

でもね、今の私達の力じゃあ、まだ秋良と一夏には勝てない。」

 

私は鈴の言葉に答える。

誰しも負けるのは好ましく無いだろう、

私だって負けるのは嫌だし、気分が良いものじゃない。

 

「だけど勝ち負けなんかを気にしてたら、いつまで経ってもあの二人には追いつけない、

秋良と一夏に追いつくためなら、私は負けたって構わない、戦いから逃げたくないの。」

 

嘗て、私は周りから常に姉と比べられてきた、

姉の能力は非常に高く、何をしても完璧だと思っていた。

 

そんな姉の陰に隠れてしまい、自分は誰からも評価されないと思い込んでいた。

そんな時、秋良と一夏に出逢った。

 

彼等にも姉が、それも世界最強の姉が居たけど、

別に何とも思ってないような素振りだった。

 

いつも姉の陰に隠れて怯えているだけの私は、

二人のヒーローの様なその輝きに憧れた。

 

何故そうあれるのと、一度秋良に尋ねたけど・・・、

 

『別に特別な事じゃない、姉は姉、自分は自分って割り切れば良いんだよ、

だってさ、ウチの姉って女らしい事を何一つ出来ないんだよ?

それに超が五つぐらいつくブラコンだし、うざいったらありゃしない、それから―――』

 

こっちが止めたくなるくらい織斑先生の事を散々に言っていた。

 

でもそこで気付いた、お姉ちゃんだって完璧なんかじゃない、

編物全然できないし、玉ねぎ嫌いだし、仕事サボるし、

シスコンだし、ストーカーだし、いつも虚さんに散々怒られてるし。

 

それに気が付いてから、今まで怯えてた自分が馬鹿らしく思えてきた、

自分の心が強くあれば、何も恐れることなんて無いって。

 

「私は私を変えるきっかけを与えてくれた秋良に応えるために、

戦いから逃げたくないの、戦うことが秋良に応える唯一の手段だから。」

「簪・・・。」

「鈴もあるでしょ?秋良に与えてもらった何かが、

それを別の物にして秋良に返すのは今戦うことだと思うよ。」

 

私より二人との付き合いが長い鈴にもそれがあると思い、

勇気づけるつもりで発破をかけた。

 

「ある・・・、いっぱいある・・・!アタシは・・・、秋良に着いて行きたい!」

「それで良いんだよ、そろそろ試合だから行こ?」

「うん・・・!」

 

小声ながらも決意の籠った言葉を聞いて、

私も頷き、鈴と一緒に更衣室を出る。

 

勝ち負けなんてどうでも良い、

私は、秋良の想いに応えるために戦う。

ただそれだけよ。

 

sideout

 

side秋良

さてと・・・。

モッピーの協力もあり、俺達は準々決勝で簪と鈴のコンビと対決する事になった。

 

漸くか・・・、二人とも何かを掴めていれば良いけど、

俺は何もしてあげられなかったんだよね。

 

兄さんはセシリアとシャルルにヒントをあげたんだよね、

あの人も大概お節介だよな。

 

何はともあれ、俺は本気で彼女達にぶつかろう。

それでしか彼女達の成長を感じられないんだから。

 

「さてと、そろそろ行こうか?」

「うむ、私は手を出さないでおこうか?」

「う~ん、じゃあお願いするよ。」

「わかった、決闘に一切手出しはしない。」

「恩に着るよ。」

 

ありがたいね、俺が一人で戦いたい気持ちを見極めてくれたんだろう、

こりゃ少し奮発してあげないとダメかな?

 

そんな事を考えながらもピットに入り、

ルージュを展開し、カタパルトに固定する。

 

『進路クリアー、ストライクルージュ、発進どうぞ!』

「織斑秋良、ルージュ、出るよ!」

 

真耶先生のアナウンスを受け、アリーナへと飛び出す。

 

俺に続いてモッピーがピットから飛び出して来る。

 

アリーナの上空には俺達より先にアリーナに入っていた鈴と簪が、

甲龍と打鉄弐式を展開して俺を待っていた。

 

「やあ、鈴、それと簪、俺は本気でいくよ?」

「い、いつもとは違うんだからぁ・・・!」

「勝てるとは思わないけど、心技体、全てを以て貴方に挑む!」

 

良いねぇ、このピリッとした空気、

兄さん以外で俺を楽しませてくれるのは初めてだね、

にしても鈴、可愛いな~、強がってるけど涙目だよ?

 

兄さんも言ってたけどどうしてあれで代表候補生になれたんだろ?

まあ技量は高いからなるのは当然だけどね。

 

ま、そんなことは今はどうでも良いや。

今は思考の中ではなく、戦いの中で彼女達に向き合おう。

 

「それじゃあいくよ!」

 

試合開始のブザーが鳴り響いた瞬間、

俺はビームライフルのトリガーを引いた。

 

sideout

 

side一夏

遂に始まったか・・・、

秋良の撃ったビームを二人は回避し、

簪が荷電粒子砲を撃ちながら接近、薙刀<夢現>で斬りかかる。

それに合わせる形で鈴も青竜刀で簪の反対側から斬りかかる。

 

戦闘における定石、挟み撃ちか、悪くない、寧ろ良いコンビネーションだ。

だが、お前らの狙う男はその程度じゃ堕ちないぜ?

 

秋良は直ぐに反応し、ビームライフルとコンバインドシールドを投げ棄て、

対艦刀を引き抜き二人の斬撃を受け止める。

 

拮抗状態が暫く続いた直後、秋良が動いた。

身体を捻り、その場で半回転し拮抗状態を破る。

 

鈴は弾かれた瞬間に龍砲を撃つが、

秋良は直ぐに身体を沈め、衝撃砲を回避する。

 

その隙を狙い、簪がショットガンやアサルトライフルを撃つ。

一瞬鈴を追撃しようとした秋良は咄嗟に回避するが、

避けきれなかった弾丸が装甲を掠める。

 

秋良の奴、無駄に愉しそうな顔をしてやがるな、

そりゃそうか、自分の認めた女達との戦いなんだからな。

 

ま、俺も人の事を言える口じゃねぇか。

 

「始まりましたね、兄貴。」

「そうだな、お前は秋良よりあの二人の戦いを見ておけ。」

「何故です?普通なら実力が上の秋良を見るべきでは・・・?」

「四の五の言わずに見とけ、お前が思ってる以上に、あいつらは強い。」

 

訳が分からないと言いたげなラウラの頭を撫で、

俺は画面に意識を向ける。

 

あの二人も何かを掴んだな、雰囲気で分かる。

流石だな、この調子ならセシリアとシャルも掴んでくれただろう。

 

「さてと、鈴と簪は何処まで秋良を本気にさせられるかな?」

そしてセシリアとシャルは何処まで俺を楽しませてくれるかな、

俺はそれだけが楽しみだ。

 

sideout

 

side秋良

こいつは想定外だね・・・!

 

ここまで回避後の僅かな隙を狙って来るなんて思わなかったよ!

 

兄さんの攻撃パターンを学んだみたいだけど、

二人がかりになると更にやりづらい!

 

「ハアァッ!!」

簪が薙刀<夢現>を振るい、鈴が龍砲を撃つ。

なんとか身体を反らして避けるけど、このままじゃ攻撃出来ない、

 

ちっ!せめてソードストライカーに換装できる隙があればなぁ!

 

ストライカーは換装する時、一瞬だけ攻撃、防御、そして回避共に不可能な隙ができてしまう、

その瞬間を攻撃されてしまえば、流石にまずい。

 

こんなことならもう少し考えてくりゃ良かった、

俺にはI.W.S.P.は合わないんだよな。

 

その点兄さんのI.W.S.P.使いの上手さには舌を巻くね。

ま、あの人は生粋の戦闘狂だからね。

 

っと、今はこの状況を切り抜けないとダメか!

 

「ゴメンよ、簪!!」

謝りつつ簪に急接近、腕を掴んで鈴の方に放り投げる。

 

あまりにも唐突だったからか、鈴は俺に攻撃しようか簪を受け止めようか躊躇い、

結局ぶつかってしまい地面に落ちた。

 

「今だ!」

その隙にソードストライカーに換装し、

シュベルト・ゲベールを右手に持ち、左手にビームブーメランを握り締め、

簪と鈴に攻撃を仕掛ける。

 

二人は反応するけど、ソードストライカーに換装した俺の反応速度には敵わない。

 

シュベルト・ゲベールの斬撃が甲龍のシールドエネルギーを削り、

マイダスメッサーが打鉄弐式のシールドエネルギーを削り取る。

 

「くっ・・・!!」

甲龍のシールドエネルギーは全部削れたけど、

簪が山嵐のミサイルを撃ってきたから、完全に削り切れなかった。

 

ルージュのエネルギー残量は約半分、まだ余裕がある、

対して簪はほとんど残って無いだろう。

 

「俺にここまで食らい付けるなんてね、流石だよ簪、

それと鈴もね。」

「でも、勝てそうにないね。」

「勝ち負けなんてどうでも良い、って言ったのは誰かな?」

 

ま、やるからには勝ちたいんだろうけどね。

 

「さてと、ケリをつけようか。」

俺はシュベルト・ゲベールを両手で構え、簪に急接近する。

簪も夢現を構え、俺に向かってくる。

 

対艦刀と薙刀が擦れ違い様に相手を切りつける。

 

結果は・・・。

 

sideout

 

side一夏

秋良と簪が擦れ違い、互いの得物を振るった体勢で止まり、

エネルギーが尽きた打鉄弐式が解除され、簪が地面に膝をついた。

 

つまり、勝者は秋良ということになる。

 

「ま、順当だわな、ラウラ、そろそろ俺達も行くぞ?」

これで秋良とは決勝であたる事になるな、

俺が勝ち進めばという前提付きだが。

 

「兄貴、何故あの二人はあそこまで強くあれたのですか?」

鈴と簪の戦いぶりを疑問に思ったラウラが尋ねてくる。

 

まだこいつは気持ちに応える為の戦い方を知らないんだよな、

いつか教えてやるか。

 

「別に特別な事じゃねぇよ、あいつらは秋良との戦いに自分の持てる全てを賭けただけだ、

あの二人にあったのはただ秋良の気持ちに応えるという純粋な気持ちさ。」

「・・・、兄貴の言うことは私にはまだ理解出来ません・・・、

ですが、それが二人を強くしたのなら、私はそれを知りたいです。」

「フッ、ゆっくり学べば良いさ、なんせお前は若いんだからな。」

 

さてと、俺達は準決勝でセシリア・シャルコンビと対決だ、

鈴と簪があれほど強くなったんだ、

俺を楽しませてくれよ?

 

sideout

 





次回予告
学年別トーナメント準決勝、
一夏はセシリアとシャルロットのコンビと激闘を繰り広げる。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
静かなる猛獣

お楽しみに!

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