インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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一夏と秋良の相方探し

side一夏

さて・・・、

学年別トーナメントまであと数える程しかない、

なのに俺と秋良は今だ相方を見付けられていない。

 

専用機持ちは皆、俺、もしくは秋良と戦う事に深く執着してるから、

既に自分達でタッグを組んでいる。

 

俺達程では無いにしろ、あいつらの技量は高いし、

何しろ延び白がある、こちらがちょっとしたヒントを与えれば必ず物にしてくる、

だから見ていて面白いんだがな。

 

今はまだ余裕が有り余ってるが、

いつか必ず一対一でも苦い顔をしなければならないだろう。

 

それは置いといて。

 

今問題なのは相方を見付ける事だ。

別に秋良と組んでも良いんだが、

そうなると少しつまらんからな。

 

せめて墜とされる恐怖感も味わいたいからな。

 

知り合いにまだ組んでない奴がいないか確かめておくか。

 

やれやれ、面倒だな。

 

sideout

 

side秋良

ヤバイ。

そろそろ相方を決めとかないとまともな訓練が出来ない、

如何に俺が強いとは言っても、所詮一人での事。

 

相手が二人、それも付け焼き刃ではなく、

しっかりとした連携の取れたコンビなら俺や兄さんでも少しばかり苦戦を強いられる。

 

どうしたもんかな・・・。

 

いっその事、兄さんと組むのも一つの手段だ、

ギリギリまで粘って誰も見つからなかったら兄さんに頼んでみよう。

 

取り敢えず、モッピーに頼みに行くとしますかね。

 

sideout

 

noside

そして、タッグトーナメントのチーム申込み締め切り二時間前、

秋良は箒に頼んでコンビを組むことになった。

 

しかし、一夏は誰とも組むことが出来ず途方にくれていた。

 

(なんで皆組んでるんだよ・・・。)

 

一夏は半分ふて腐れ、一人カフェでワッフルを食べていた。

 

彼はイライラしている時は甘い物を食べる事で気を紛れさせている。

 

つまり、バニラアイスやホイップクリーム、

メープルシロップがふんだんに使われているワッフルは彼にとって最高のデザートである。

 

(決まってないのは別に良いんだ、だがな、秋良のあのドヤ顔は凄まじくムカツク。)

 

弟のドヤ顔を思い出し、やけ食いに近い勢いでワッフルを食べる。

 

(どうするかな・・・、いっその事、棄権てのも・・・、

いや、それはセシリアとシャルに失礼だ、俺には出来ん。)

一夏は妙に義理堅いが故にかなり苦悩していたのだ。

 

そんな時・・・。

「ちょっと・・・、良いか・・・?」

「ん?」

一夏に話しかける人物がいた。

 

一夏が顔を上げると、そこには長い銀髪に、

左目に眼帯をした少女がいた。

 

「お前が来るとは思わなかったぜ、ラウラ・ボーデヴィッヒ。」

 

一夏はラウラの姿を確認すると、

一夏は一旦フォークを置き、席につくように勧める。

 

「で?何の用だ?」

「頼みがある、私とタッグを組んでほしい!」

「ほう?」

 

ラウラの唐突な頼みに、一夏は少し面白そうにする。

 

「理由を聞いてやる、話してみろ。」

「秋良に負けて、そして貴方に言われて気付いた!!

私に足りないのは仲間への信頼だ、だからそれを今からでも取り戻したいのだ!!」

 

ラウラの真摯な答えに、一夏はうっすらと微笑んでいた。

 

「よく気付いたな、合格だ、組んでやる。」

「ほ、本当か!?」

「ああ、構わんさ、お前は一つ成長した、

そして学んだ、だから俺はそれを確かめる為にお前と組む、間違った事があるか?」

 

一夏はさも愉快と言った風にラウラの頭を撫で、

豪快に笑う。

「あ、ありがとうございます!兄貴!」

「あ、兄貴?なんだその呼び方は?」

 

ラウラの唐突な呼び掛けに、一夏は少し困惑したような表情を見せる。

 

「?日本では尊敬する男性の事を兄貴と呼ぶのではないのですか?

私は兄貴の様に男らしくなりたいのです!!」

「ラウラ、その知識間違ってるからな?呼び方は別に兄貴で構わんが。」

「はい兄貴!」

 

頭の痛そうにする一夏に笑いかけるラウラに、

一夏は少し父性本能を擽られたらしい。

 

「まあ良い、早く申請しに行くぞ!」

「あ、待ってください!兄貴~!」

 

ワッフルを食べ終わった一夏はさっさとカフェから出ていこうとする、

それを見たラウラは慌てて彼の後を追った。

 

sideout

 

side一夏

タッグトーナメント三日前、

俺はラウラと訓練をしていた。

 

やはりアドヴァンスドと言うべきか、

反射能力や身体能力は俺達コーディネーターに迫る物がある、

だが、やはり若さ故か、直情的な部分が目立つ。

 

俺は前世からなら、もうすぐ四十路だからな、

そう言った衝動はあまり無いんだ。

 

そんな事はどうでもいいとして。

 

俺と訓練を始めて僅か四日とかからない内に、

基本的なコンビネーションプレイは出来るようになった。

 

そんな訳で今日は新しい事をしてやろうと思う。

 

「兄貴、その装備は何ですか?」

ラウラが俺の装備したバックパックを指さしながら尋ねてくる。

 

「こいつか?こいつは昨日アクタイオンから届いた新しいストライカーだ、

その名もガンバレルストライカー、セシリアのブルー・ティアーズのビットの様なオールレンジ攻撃専用装備なんだぜ。」

「つまり、類似品という事ですか・・・?」

「単純に考えたらな、だが、ちょいと違うんだわ、試して見るか?」

「ぜひともお願いします!」

 

ラウラの言葉を受け、俺はスラスターを吹かし飛び上がる、

それを追い駆ける形でラウラも飛び上がってくる。

 

「いくぜ?」

有線式ガンバレルを射出しラウラを取り囲む様に展開、

リニアガンとミサイルで攻撃する。

 

ラウラはオールレンジから迫る弾丸をギリギリのところで捌く。

 

(ちっ、流石にやりにくいな、俺、あんまり空間認識能力高くないんだがな・・・。

だが、装備の不利を言い訳にはしない!)

ガンバレルストライカー本体にはスラスターが装備されてないが故に、

機動力がI.W.S.P.に比べて10%以上も低下している。

 

こいつは乱戦状態になったら間違いなく邪魔だ、

これからは一対一の時に使うとしよう。

 

「くっ!流石ですね兄貴!一度目でここまで扱えるなど!!」

「まあな、だが、避けきれているお前も中々だ!」

 

オールレンジ攻撃の回避法を徐々につかんできたのか、

ラウラの動作に余裕が生まれ始めた。

 

(やるな、だが、ビットとは違う有線式ガンバレルの使い方を教えてやるよ。)

 

両サイドのサイドスカートよりアーマーシュナイダーを取りだし、

逆手持ちでラウラに迫る。

 

それに反応したラウラもプラズマブレードを展開し、

こちらに向かってくる。

だが、俺には切り結ぶ気など、まったく無い。

 

プラズマブレードが振られる刹那、機体を僅かに反らし、

ガンバレルのケーブルにシュヴァルツァ・レーゲンを絡ませる。

その瞬間、ガンバレルストライカーを強制排除する。

 

「しまっ・・・!?」

ラウラはそれを回避出来ずに拘束され、

地面へと落下した。

 

「ゲームオーバーだ、ラウラ?」

俺は今だ動けないラウラにビームライフルを突き付ける。

 

「くっ・・・!参りました・・・!」

ラウラの言葉を受け、俺は左手に持っていたアーマーシュナイダーでケーブルを切断、

拘束を外してやる。

 

「無線式には無線式の、有線式には有線式の使い方があるんだよ。」

「あれは正しい使い方なのですか・・・?」

 

俺の言葉にツッコむ様に、ラウラはぶっ壊れたガンバレルストライカーを指さす。

受領した翌日にぶっ壊すって・・・、流石に不味いよな?

 

「・・・、気にするな。」

 

俺はそうとしか言いようがなかった・・・。

 

sideout

 

noside

時は移ろい、学年別トーナメント当日、

秋良と箒はアリーナの更衣室で待機していた。

 

因みに、箒は秋良に誘われなければトーナメント自体を欠場しようと思っていたが、

秋良にお宝本三冊を餌に誘われ、参加する事にしたらしい。

 

「さてと・・・、兄さん達に勝てるかな・・・、

まさか兄さんがラウラを手懐けてるとは思わなかった。」

「確かにな、初日に頭を踏みつけていた男に懐くとはな。」

「セシリアとシャルル、それに鈴と簪も俺と兄さんに挑んで来るしね。」

 

秋良はベンチに座り込み対一夏用の作戦を考える。

「どう考えてもラウラが曲者だね、前みたいな唯我独尊じゃないからかなりやりにくいと思う。」

「確かにな、お前と一夏を除けば確実に学年最強だろう。」

秋良の説明に納得したように箒は呟く。

彼女とてラウラの強さを知らない訳では無いのだ。

 

「まぁね、モッピーは打鉄で行くのかい?」

「いや、ラファール・リヴァイヴに近接用の装備を幾つか積んで、

その上でショットガンや手榴弾を積もうと思っている。」

「高火力、高機動で攻めるつもりだね、分かったよ。」

「防御力はいささか心許ないがな。」

 

秋良の問い掛けに肩をすくめ、

おどけるような仕草を見せる。

 

「ま、俺はただ戦うしかないんだ、兄さんに勝つためにはね。」

 

sideout

 

side一夏

「ラウラ、準備出来てるか?」

「勿論です兄貴!」

 

秋良達より先に更衣室を出、ピットで待機していた。

 

俺達の試合は一回戦第三試合、

直ぐに順番が回って来るので、更衣室等で長々と待つよりもピットで待つ方が良い。

 

「一回戦の相手は一般生徒だ、あまり本気を出しすぎるな、

お前が本気になれば確実に人が殺せる、たとえISをつけている奴でもな、

それに、妹分が目の前で殺人沙汰起こすのを見るのは勘弁だ。」

「はい!ですが、代表候補生以外の意識の低さは・・・。」

 

あー、やっぱりそうだよな、こいつからしてみればISは戦争の道具、

人を殺めるための手段の一つでしかない。

それを何の躊躇いもなくスポーツだと言い切る者達に戸惑っているのだろう。

 

「分かってる、ここの奴等はまだISがスポーツの道具だと思ってる、

だが、実弾や真剣、ビーム兵器を使うスポーツが存在して良いのか?

俺もつくづく疑問に思う。」

 

それは本心だ、だが・・・。

 

「けどな、批判ばっかりしてても意味がない、

そうやってスポーツだと思ってる奴等は、無意識に平和を望んでるって事だろ?」

「そう・・・、ですか・・・?」

「そう言う事だ、今は分からなくて良いさ。」

 

そう笑いかけ頭を撫でてやると、

ラウラは嬉しそうに目を細めていた。

 

さてと、そろそろ行くか、レディを待たせるのは失礼だしな。

 

ラウラに先じてカタパルトに移動し、機体を固定する。

 

『進路クリアー、ストライク、発進どうぞ!』

「織斑一夏、ストライク、行くぞ!」

 

掛け声と共にカタパルトから飛び出し、I.W.S.P.の推力で飛行する。

 

その直ぐ後にラウラがシュヴァルツァ・レーゲンを展開し、

アリーナに飛び出してきた。

 

相手は一年四組の一般生徒、

両者共に打鉄を装着していた。

 

「ラウラ、俺が援護するからお前は攻めてみろ、

勿論、少し手加減してな?」

「分かりました。」

 

俺は両手にグレネードランチャー装備のビームライフルを呼び出し、

ブザーが鳴るまで待つ。

 

『試合開始五秒前!四・・・、三・・・、二・・・、一・・・、試合開始!!』

 

今、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

sideout

 




はいどーもです!
お待たせしました!

ガンバレルストライカーは僅か一話で犠牲になりました、
うん、もう少し出そうっと・・・。

さて次回予告
順当に勝ち進む一夏と秋良、
ついに秋良が簪と鈴のコンビと対決する。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
紅の戦い

お楽しみに!

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