インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

15 / 116
狂戦士と軍人

side一夏

現在、俺は部屋にセシリアを招き入れ、椅子に座ってもらっている。

 

まさかセシリアがシャルの事を勘づいているとは思えなかった。

 

「ほれ、紅茶だ。」

「ありがとうございます、一夏様。」

「シャルの分もあるぞ、飲むか?」

「ありがとう一夏、頂きます。」

 

セシリアとシャルに紅茶を出し、

俺もマイカップに紅茶を淹れつつ二人と向かい合う。

 

・・・、何でだ、俺が二股掛けたみたいになってる・・・、

いや、あながち間違いじゃないか・・・。

 

「それで、セシリアよ、何故シャルが女だと思った?」

俺は最も気になっていた事をセシリアに尋ねる。

 

論理的に考えてもバレる確率は少ない筈だが、

女の勘とか言われたらそこはもう脱帽だ。

 

「その・・・、一夏様の態度と言いますか・・・、

シャルルさんへの接し方が女性に対する物でしたので、

もしやと思いまして・・・。」

 

・・・、俺かよ、俺が原因かよ!!

 

何故だ?

駄姉や鈴以外には殆ど同じ態度を取っている筈なんだが・・・?

 

「あ、それわかるよ、一夏ってば普段は素っ気ないって言うか、

クールに振る舞ってるけど、然り気無くドアとか開けて待っててくれてるしね。」

「いや、それぐらい普通だろ?」

「まあ私は一夏様と秋良さんのやり取りしか見たことはありませんが、

とても男性に対するような態度ではありませんでしたわよ?」

 

ったく、それ女の勘とか言うやつだろ?

敵わないな・・・。

 

「まあそれは良い、取り敢えずシャルが何故男装させられてここに居るのかだ。」

俺はシャルに確認を取り、セシリアに事情を説明する。

 

自分で話していてなんだが、やはり虫酸が走るな。

 

「――と言うことがあったんだ、シャルを責めないでやってくれ。」

「騙しててゴメンね・・・。」

 

シャルはセシリアに向けて頭を下げていた。

 

「シャルルさん、謝って頂かなくてよろしいですわよ、

貴女は何も悪い事など為されていないではありませんか。」

セシリアはシャルの肩を掴み、

シャルを許すような言葉を投げ掛けていた。

 

「一夏様、何故私に言って下さらなかったのです?

少し酷いではありませんか。」

「悪かったよ。」

 

確かに俺の事を信じていてくれているセシリアに教えなかったのは悪かったな、

それだけは反省しておこう。

 

「悪いとお思いでしたらこれで私を苛めて――」

「いい加減にしろよこの駄犬が。」

「ンハァァッ!!」

 

何故か鞭を手渡されたので罵りついでにひっぱたいておく、

なんて言うか本当に良い反応するよな、

 

嫌いじゃない俺もドSか・・・。

 

さてと、これで一件落着だな。

 

シャルだけじゃなく、たまにはセシリアも構ってやらないとな。

 

sideout

 

noside

翌日、簪と鈴は秋良と共に第三アリーナに居た。

 

二人共、代表候補生として強くなりたいのか、

もしくは別の事情かは判らないが、

秋良に訓練をつけて貰うようだ。

 

「それじゃあ用意は良いかな?」

「勿論。」

「良いわよ・・・!」

 

秋良はルージュを起動させ、

ビームライフルとコンバインドシールドを呼び出し、

二人に掛かってくるように促す。

 

「行くよ!」

 

秋良が動こうとしたその瞬間、

あらぬ方向からレールガンの弾丸が飛来する。

 

「チッ!!」

秋良はコンバインドシールドで弾丸を弾き飛ばす。

 

「何してくれてんのかな?」

秋良が腹立たしそうに飛んできた方向を見ると、

そこにはシュヴァルツア・レーゲンを展開したラウラが居た。

 

「何をだと?貴様らが戦おうとしないからな、

私から仕掛けてやったのだ、まさか断らんだろうな?」

ラウラはあからさまな挑発を秋良に向け投げ掛けていた。

 

「・・・、君の挑発に乗ってあげよう、

但し、どうなっても知らないよ・・・。」

 

ラウラの挑発に、秋良は全身に殺気を纏わせ、

今にも飛び掛かりそうな様子であった。

 

「鈴、簪、危ないから少し下がっていてくれ、

俺は・・・、アイツを倒す。」

 

秋良は二人にそう言い残した直後、

一瞬にしてラウラとの距離を詰める。

 

「なにっ!?」

 

あまりの速さにラウラは対応出来ず、

ハイキックをもろに顔面に喰らい、後方に大きく飛ばされる。

 

「ぐっ!嘗めるなぁ!!」

ラウラは体制を立て直し、

両腕にプラズマブレードを発生させ、秋良に猛然と迫る。

 

「上等!!」

秋良は対艦刀を引き抜き、ラウラを迎え撃つ。

 

プラズマブレードと対艦刀がぶつかり合い、

激しい火花を散らす。

 

ラウラは重さが殆ど無いプラズマブレードによる連続攻撃を仕掛けるが、

秋良はそれ以上の手数を以て攻め立てる。

 

「ほらほらどうしたんだい?俺達が憎いんだろ?

本気で掛かってこないと勝てないよ?」

「ッ!!黙れェェェッ!!」

 

秋良の挑発に激昂し、殆ど無意識にAICを発動させる。

 

AICは対象の物体を拘束、停止させる兵器である。

 

秋良はそれに絡めとられる。

 

「死ねぇッ!!」

ラウラは勝ち誇った様な笑みを浮かべ、

右肩のレールガンを秋良に向けるが・・・。

 

「君だけがレールガンを使えると思ったら大間違いだよ。」

秋良は嘲笑いながらラウラよりも速く、

両肩のレールガンを撃つ。

 

「なにっ!?」

ラウラは驚愕するが、レールガンの発射体制に入っていた為、

避ける事ができずに直撃する。

 

「知ってるよ、AICは対象に集中しないと効果が無いんだよね、

だからこうやって・・・。」

 

秋良は対艦刀を二本とも格納し、

ビームライフルとコンバインドシールドを改めて呼び出す。

 

「連続攻撃を掛ければ弱いんだよね。」

ガトリングを撃ちながらも、回避予想ポイントにビームライフルを撃つ。

 

「ぐあっ!!」

立て続けに襲ってくる弾丸の雨霰を回避しきれず被弾する。

 

「どうしたんだい?まさかもうギブアップかな?

もっと俺を楽しませてよ?」

 

秋良は端整な顔に邪悪な笑みを浮かべつつ、

ラウラに急接近、武器を使わずに攻撃する。

 

ラウラの後頭部を殴り、直後に膝で蹴りあげる。

上がった顔面を掴み、そのまま地面へと叩きつける。

更にバウンドした所を蹴り上げ、宙に浮かせた瞬間、

跳躍し、踵落としを叩き込んだ。

 

ラウラは起き上がる事すら出来ずに呻く事しか出来なかった。

 

「もう終わりかい?そんなんじゃ誰にも勝てないよ、

いや、君にはその誰が無いのか。」

 

秋良はつまらなさそうに呟き、ラウラの髪を掴んで持ち上げる。

 

「俺達に勝ちたいなら、自分に欠けている物を見付けてからにしなよ、

じゃないと、君は永遠に出来損ないのままだ。」

 

髪を掴んでいた手を離し、回し蹴りを腹部に叩き込む。

 

最早体力も尽きかけていたラウラは防御も出来ないまま吹っ飛ばされ、

壁に激突し地面に倒れこんだ。

 

「ちっ、無駄な時間をとっちゃったな。」

秋良が呟き、簪達の下へ行こうとした、正にその時・・・。

 

「ウアアァァァッ!!」

突如ラウラが絶叫し、シュヴァルツア・レーゲンの装甲がドロドロに溶けはじめ、

紫電を放ちながらラウラを呑み込み、別の姿へと変貌していく。

 

その姿は、ブリュンヒルデ、織斑千冬であった。

 

sideout

 

side秋良

まずったな・・・。

本当なら学年別トーナメントで起きる事件を前倒しさせちゃったよ、

これじゃあ大分原作から外れちゃうね。

 

まあこの世界が原作とは違う事位もう分かってるけどね。

 

さてと、どうしましょうかね?

セシリアとシャルルを連れて観客席にいる兄さんは、

恐らく高見の見物を決め込むだろうからあてにしない。

てかあの人本当に何がしたいのか判らない。

 

信じられない事は無いけど、目的が判らないのが恐い。

しないとは思うけどいつか後ろから撃たれるんじゃないかと思ったりもしている。

 

まあそんな事はどうでもいい。

兄さんは動かない。

ならば俺が解決してやりますか。

 

簪と鈴はもう退避している、

なら、存分に暴れてやりましょうかね?

 

物騒な事を考えつつ、I.W.S.P.からソードストライカーに換装し、

シュベルト・ゲベールを両手に持ち、真正面から一気に斬りかかる。

 

「ハアァァァァッ!!」

俺が振り下ろしたシュベルト・ゲベールに反応したのか、

黒い奴は雪片を振り、受け止める。

 

やっぱりね、データだけを真似てるからか、

重くも何ともない、ちょっとしたことで壊せるね。

 

距離を取り、

パンツァーアイゼンを射出して雪片を掴み体制を崩させる。

 

「俺に勝ちたいなら・・・、そんな物に囚われるなぁァァッ!!」

上段から一気に振り下ろし、真っ二つに叩き斬った。

 

黒い装甲が裂け、中から気を失ったラウラが放り出されてきた。

 

俺はシュベルト・ゲベールを地面に突き刺し、

ラウラが地面に叩き付けられる前に受け止める。

 

「君は自分を知らないんだ、だから弱い。

自分を知ってからもう一度俺に掛かってきな。」

 

独り言を呟きながら、

俺はラウラを抱えてアリーナを出た。

 

sideout




次回予告
秋良の代わりにラウラと話す一夏、
一方セシリア達は一夏と戦うためにコンビを組む。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
学年別トーナメントに向けて

お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。