影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
お待たせしました。待たせ過ぎました!!!
本当に申し訳ありません!!
まだ読んでくれるなら、どうかこれからもよろしくお願いします。
ヒュアキントスは驚愕していた。
この目の前にいる男はつい最近レベル2になったばかりのはずだ。
なのに、どうして自分の攻撃についてきている?
打ち出す攻撃を防ぎ、受け流し、回避している?
私はレベル3なんだぞ。
なのに少しずつ私が押され始めている。
攻撃の速度が上がってきている。
━━誰だ?
攻めていたはずの攻撃はいつの間にか攻守交代しており、私が攻撃を防いでいるなんて。
━━誰だ?
そして小さな傷を受け初めて、それが少しずつ大きくなり、だんだん急所を狙われ始めていた。
━━誰だ?
なんなんだ、これは?
これはまるで
「私は、レベル3なんだぞ!!!」
「はい。
……なので
「ッ!!!??」
ふ、ふざけるな……
これが全力ではないというのか……
私が、レベル2に弄ばれていたというのか……
「ふざけるな!!!!」
…………………………
「圧倒的ですね」
「いくらレベルが高くても、いまのベルを止めるのは骨が折れるだろうな」
ハジメが言っていたように近くで援護できるように待機しているが、どうみてもその必要はない。
初めはヒュアキントスの実力を見るために攻撃を受けていたようだが、少しずつ攻撃に出始めたベルは今では完全を押している。
「あのロキ・ファミリアの一級冒険者に手解きを受けたのです。
そしてそれにしがみつき、自分の力の糧にしたベル様にあの人が勝てるとは思いません」
「だな。
まぁ、俺達はベル達の邪魔になる奴等を片付けるとするか」
リリ・ヴェルフの二人の視線の先にはさっきまで気絶していた両ファミリアの冒険者が起き上がり、いまにもこの戦いの邪魔をしようとしていた。
「命様は3時の方を、ヴェルフ様は9時の方を、私は12時の方を対処します。
後方は、まぁハジメ様がいますし問題はないと思いますがリュー様お願いします」
「分かりました」
「任せとけ!!」
「…………」
それぞれの返事を聞いて全員が散り散りに別れて対処することに。
しかしリューに至ってはその場を動かずにベルの後方、リューからして正面で戦っているハジメの姿を見ていた。
もちろんハジメの戦いにも邪魔をしようと両ファミリアの冒険者が攻撃を繰り出しているが、相手はハジメなのだ、攻撃が効くはずがない。
それでも例外がついこの前あったばかりだ。
ハジメも油断はしていないだろうだが、すぐにでも援護出来るように神経を尖らせている。
…………………………
「なんだこいつは!!?」
「攻撃が効かないなんて!!?」
「魔法だ!!魔法を放て!!」
「効きません!!塞がれてます!!」
「この防御も無限じゃないはずだ!!やり続けろ!!!」
ザニスに当たらないようにハジメのみの攻撃が続いている。
しかし一向にハジメにダメージを与えられている感触はない。
それでもいつか来るだろう限界を信じて攻撃を続けているが
「くそが!くそが!!くそがああぁっ!!!!」
「言葉使いが悪いですね。
こんなに1人対複数の戦いでも文句も言わずに戦っている僕に対してもう少し配慮を……」
「黙れッ!!!
その訳の分からない防御壁を破ったときは貴様にこの世では生きられないと思わせるほどの地獄を見せてやる!!!」
「丁重にお断りします」
必死にハジメに攻撃を当てようとするが、等の本人は呑気な表情で……いや、相変わらずに無表情で様々な攻撃を受けながらも平然としている。
それがザニスの怒りを買ったのだろう。
さっきからどれだけ自分が隙だらけの攻撃をしているか。
一撃の攻撃力は確かに強いかもしれないが、なにせ大振りで攻撃をしているため、戦闘に関しては低いハジメでも狙ってカウンターを喰らわせれるぐらい雑なのだ。
まあそんなことしなくても
ならなぜさっさと勝負を決めないかというと、
(……どうやら僕の
リューと同じようにこの多い冒険者の中からハジメに攻撃を喰らわせることが出来る者がいないか確認していたのだ。
今まではどんな攻撃でも防ぐことが出来ると自負していたが、あの戦いでその考えは変わった。
どんな相手でもどんな攻撃をして、どんな力を使っているか、
しかし両ファミリアの冒険者の中にはいないようだ。
それさえ分かればザニスと戦いもこれで終わらせても問題ない。
「これ以上、状況も変わらないようですし、終わらせましょうか?」
「戯れ言を!!
こっちにはまだ奥の手があるッ!!!」
………………………
【我が名は愛、光の
我が太陽にこの身を捧ぐ。】
平行詠唱を始めたヒュアキントス。
この戦いで勝てるとするならばこれしかない。
完全に押されている状況の中で、ベルから距離をとり詠唱を始めたのだが、
【我が名は罪、風の
一陣の突風をこの身に呼ぶ。】
もちろんベルがそれを許すはずはなくヒュアキントスを捕らえようと駆け出してくる。
いまのベルの速度ならあっという間にヒュアキントスとの距離を縮めることが出来る。
しかしその時、ベルの前に複数の冒険者が現れた。
そうヴェルフ達が食い止めていた冒険者が数人突破してきたのだ。
いまのベルにはこの人数ぐらい問題なく捌くことは出来るのだが、その僅かな時間がヒュアキントスの詠唱を完成させることになった。
【放つ
――――来れ、
倒した冒険者をすり抜けてヒュアキントスに向けて左手を突き出した。
【アロ・ゼフュロス】!!
【ファイアボルト】!!
西風の火輪。
太陽光のごとく輝く、大円盤はとっさに放たれたベルの魔法を打ち破りそのままベルに向かっていく。
ギリギリで避けたベルだが、そのヒュアキントスの魔法は自動追尾型であり、弧を描いてベルの元へと戻ってきた。
そこでベルは立ち止まった。
それはヒュアキントスにとって好機であり、諦めたにしろ避けるにしろ防ぐにしろこれで勝ったと悟った。
いまからどうこうしようともあの魔法の
アロ・ゼフュロスは自動追尾の他にもう1つ。
「【
瞬間、円盤は眩い輝き放ち、大爆発した。
それに巻き込まれたベルの姿は見えず、誰もが終わったと思っていた。
だが、
「あれぐらいでベル君が終わるはずがない」
「やな。負けるわけがないわ」
「こういうときのための剣を、あの子は持っていて、そしてそれを正しく使う子なのだから、問題ないわね」
3人の神は慌てる様子もなく、ただ映像に映るものではなくベルを信じ、
「ちぃっ!!」
「あれ、ベート何処にいくのー」
「うるせぇ!!俺の勝手だろうが!!!」
「………ダンジョンね」
「間違いないだろうな」
「ワシも体を動かしたくなったな!!」
「それじゃみんなで行こうか」
「………うん」
あるファミリアはむしろこれで勝利を確信したかのように、いま映る映像から目を放してダンジョンへと向かい、
「さて、宴会の用意をするよ!!」
「気が早くないですか?」
「なに言ってるんだい!!
これから大人数がこの店に来るんだ、さっさと用意しないと地獄をみるよ!!!」
あるお店では勝利を確信したのと同時に、確実に来るとは分からないお客のために料理を作り始めて、
「終わったな」
「終りましたね」
「終わりですね」
「…これで終わりのようですね」
同じ戦場にいる仲間は、ただ一言だけ。
それで全てが終わると、周りの敵を一掃することに専念する。
ベルを知っているものは誰も負けるとは思っていなかった。
むしろその行動がこの戦いを終わらせるものだった。
ヒュアキントスはベルにトドメを刺そうと一歩踏み出そうとしたのだが、その瞬間身体全身が震えだした。
まるで何かを警戒、いや、「死」というものに逃れるための本能的な警告が、本能的にとっさに反応したような……
曇りが晴れたその先に、傷ついたはずの、絶望しているはずの
たった3秒。
しかしその僅かな
「【ファイアボルト】」
…………………………
「……あ、ありえない……」
いまヒュアキントスが倒された。
それも
なのにどうして無傷で立っている。
そして目の前にいる
「……ありえない……ありえない……」
こんなことがあって言い訳がない。
あんな弱小ファミリアがこんなに強いわけが…ない!!
「ありえるわけがないッ!!!!!!」
「ありえない、ことなんて、ありえませんよ」
「ッ!!!??」
気づかないうちに、いや、さっきまで離れていたはずのハジメが
目を離した覚えはない、間違いなくずっと見ていた。
なのに、どうして、目の前にいる!!!??
「何なんだお前らはあああああああぁぁぁ!!!!!」
「貴方たちがバカにしていたヘスティア・ファミリアです。ちゃんと覚えておいてくださいね」
ザニスが奥の手があると言っていたがそんな事は関係ない。
ハジメはただザニスに触れるだけでいい。
それだけでザニスは再び凍りつき、この戦いは呆気なく終わりをむかえたのだった。
タイトルでは「えっ、終わるの?」みたいな風に思うかもですけど、あくまでもこの戦いはということなので!!