影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
速めに更新出来ました。
出来れば今月中にもう一話書きたいですねー❗
影が薄くても出会いのキッカケってこんな感じみたいです。
サポーター。ダンジョンの探索時における非戦闘員。
主に魔石やドロップアイテムといった戦利品を回収し、地上に無事に運び届けることが役目。
前線でモンスターと戦うパーティーに負担をかけぬように、バックアップの全般を担う裏方役。
詰まるところ、サポーターとは、
「おい、何してやがる! とっととしろ!」
「荷物を運ぶくらいでちんたらしやがって、能無しが!」
膨れに膨れた大荷物を背負い、僅かに遅れた足取りを、冒険者である男は
ただの荷物持ちと非難する、傲慢な言葉は横暴な暴力にも変わる。常に上の立場にいる彼等は下敷きにされる者に
冒険者はサポーターを
ましてや、
「碌に仕事もこなせねえ足手纏いに、くれてやる
「いいか、モンスターに囲まれた時くらいはしっかり仕事しろよ───
いざとなればモンスターの囮にちょうどいい。
サポーターのありがたみを、サポーターの存在が冒険者の負担を軽くする一役を買っていることを、そんなことを一抹でも理解してくれる冒険者が、認識してくれるような殊勝な冒険者が、一体どこにいるのだろうか。
(なるほど、なるほど。
本当に、見限るのに困らない
冒険者というのは)
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黄昏の館、ロキの私室。
そこには神であるロキ、ヘスティア、ヘファイストス。
そして各主神のファミリア代表、フィン、ハジメ、椿。
いまからここで話し合う課題は、
「ハジメ君の武器を作ってくれるって本当かいヘファイストス!!!」
「私じゃないわよ、作るのはこの子」
「だとしてもやヘファイストスじゃないとしても団長が作る武器やで。レベル1やというのに……ホンマにハジメは規格外やなー」
神である三人は元々知り合い・腐れ縁なのですぐに打ち解けるだろうが、
「ふむ、こう姿を見えるとなんとも普通だな」
「はい、普通が取り柄みたいなものですから」
「………君が普通というのは僕には到底思えないよ……」
なんか妙な空気の中でも普通に会話しているように見えるが、フィンにいたっては普段はしないツッコミ側に周りすでに疲れている。
「でもいいのヘスティア?この話はロキに教える必要はないはずよ。いくら居候しているとはいえ、ファミリアに関わる話になるのよ」
「別にええやないか、口外することはせんよ」
「ロキ、そういう問題じゃ…」
「うちらの子やって結構な情報を教えたんや。お互いに口外しないならええやろ」
「あなたね……」
頭をおさえるヘファイストスにヘスティアが苦笑いでフォローをいれる
「いいだよヘファイストス。ロキはともかくこっちの団長さんは信用出来るからね。もしもの時はキチンとしてくれるよ」
「ヘスティアがいいなら構わないけど……
でも気を付けることよ、いくら信用出来ても【ファミリア】関係に絶対はないから」
「せっかくまとまったところにいらんことを言わんでもええやないか~」
「そんな風に軽いから言わざるをえないのよ」
「「「「確かに」」」」
「おい」
ここで一致団結したことで「なんでうちだけが除け者なんやー!」と騒ぎ立てていたが、ヘファイストスはもう止めるのも面倒くさくなったのか無視して話を進めた。
「改めてトキサキ・
「どうしてツバッキーは僕の武器を?」
「おい、ツバッキーとは手前のことか!!?」
「はい」
「……もう好きせえ……」
あまりにもハッキリと言われて拒否するのも馬鹿馬鹿しくなった椿はため息をついた後、気持ちを切り替えて話を進める。
「それで
「ど、どうして…じゃと……
手前が、手前が自身を言うのも可笑しいが手前は主神様の次の腕前じゃ。それを
自分の力量をキチンと分かっているからこそ、こんなにもハッキリと言われると堪える。そんなことを知らずにハジメは──
「どうしましたか?」
「……普通なら一級冒険者でもなかなか手が届かない手前の武器を……手前自ら作ってやろうと言っておるのだぞ!」
そうなんですか?と聞こうとしたがその前に椿が「これでもか!!」と言わんばかりに持ってきていた大きな袋の中からあるものを取り出してテーブルの上に置いた。
「これを見てどう感じる?」
それはごく普通の短剣のように見えるが、
だけど
「短剣ですよね」
「他に言うことがあるじゃろう!!」
「………普通ですよね」
「お主は本気で言っておるのか!!!」
いくらハジメが武器に対して無関心だとしてもこうも反応がないと腹が立つ。理屈ではなく感情が、プライドが許さないのだ。
「落ち着きなさい椿。最初から分かっていたことでしょう」
「し、しかし…これは…これは、あんまりではないか……」
「もう…だから止めなさいって言ったのよ……ほら、これから見返せばいいのよ。椿の武器が最高だって言わせればいいのよ」
「………そうじゃな。よし!!絶対に見返してくれるわ!!!
まずはハジメに合う武器を見つけ出さなければならんな!!!」
改めて意気込んだのはいいが椿は大きな袋から次々に武器を取り出した。武器に興味ないハジメがどの武器が合うか分からない今はとにかく手当たり次第に触って経験してもらうことが一番いい。だが椿はまだ知らない。ハジメに合う武器を探しても、いくら一級武器を作ろうが…ハジメには意味がないことを。
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「な、なんじゃそれは……」
「あ、あり得ないわ…本当に
椿・ヘファイストスが
「安心してください。触れてさえいなければ一時停止を解けますので元に戻ります」
「…なるほど、これじゃ武器や防具が意味を成さない」
ハジメが手に取る武器全てがその存在を停められた。触れれば何もかも切り裂くような剣も、硬いものでも粉砕する篭手でも、その武器にある力のようなものが、輝きが、その存在が停められていた。
「これは見事にガラクタになっとるなー」
「武器を必要としない。ではなく必要と出来ないというわけか」
「無意識による
「…………それはホンマか?」
ロキの瞳がハジメを捉える。何かを確信しておりそれを確かめようと、それを聞き出そうとしているそんな鋭い目をしている。
「確かに無意識よる一時停止やからどんな不意討ちでも対応出来る。無意識やから触れたものは一時停止させてしまう。意識しとるわけやないから原因は分からない。せやけど全部が全部一時停止させとるわけやない。さっきまで飲んでいた茶は一時停止しとらん。それは自分に危害がないから一時停止が働かなかったとちゃうか。なら
「ハジメはそれを知っているハズや。いや理解している、本能で感じとるはずや。無意識というの意識しとるより質が悪い。意識なら自分でどうにかできるけど無意識は自覚がない。つまりは本能で動いとるわけや。反射神経がいい例えやな、無意識に身体が動くてそれを意識して止めることは出来ん。つまりは、」
答えを告げようとするロキに割り込んで、本人であるハジメが口を開いた
「無意識で武器を一時停止させている、つまりは
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「お疲れさまです」
「随分と早かったじゃないか。今日は遅れるんじゃなかったのかい?」
「原因は分かったんですけど、それをどうすればいいのか分からない。そんな状況になりましてどうすればいいのか分からなくなって保留になりました」
「なんのことか知らないけど、その分からないことが大切なものならちゃんと解決しな。
さぁ、さっさと着替えて働きな!!今日のリューは使い物にならなくてこっちは困ってるんだ!!」
そういいながら豊穣の女主人のミアは厨房へと戻っていった。
ハジメが触れた武器全て元通りにはなったが、その後話し合いは続かなかった。根本的に武器を拒否している、そんなことを告げられた鍛冶師の二人はショックを隠せなかった。
ハジメがベルに貰った短剣も刀身は死に、ゴライアスを倒したときも短剣ではなく
「お疲れさまですハジメさん」
「シル姉、お疲れさまです」
「ねぇ昨日リューになにしたの?ずっと上の空で何回も仕事をミスしてるの。絶対に昨日のデートで何かあったと思って聞いても核心的なことを話してくれなくて」
「それは…」
と、言おうとした時シルとハジメの間にお盆が物凄いスピードを上げて通りすぎ、そのまま壁にめり込んだ。そのお盆が飛んできた先にいたのはいつものリュー、いや何か威圧感があるリューがそこにいた。
「すみません。手が滑りました」
「リ、リュー??これ手が滑ったどころの話じゃ…」
「すみません。手が滑りました」
これ以上深追いするなと言っているように、「すみません。手が滑りました」という短い言葉に強い警告を込めている。それを感じ取ったシルは「わ、私仕事に戻るわね…」とその場を離れていった。
「お疲れさまです、
「お疲れさまです、
その言葉だけを交わしてリューは仕事に、ハジメは着替えに向かった。まるで周りに見せつけるように、昨日は何もなかったと印象づけるように。
だが逆に周りからは「ちょっ、ちょっと二人かなりヤバイんじゃない!!?」「なんで険悪な雰囲気出してるニャー!!?」と仲が良くなるどころか悪くなったと思われることになったが、そんな二人に周りはどう聞き出したらいいのかと分からずに開店時間を迎えていつも通り慌ただしい仕事が始まった。
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仕事が終わりハジメはいつも通りに帰宅していたが、その隣には落ち込んでいる人が、いつもよりよそよそしかった人がいた。
「今日はすみませんでした。どうも仕事場では、その、
「大丈夫ですよ
「私的にはいまはその方が……いえ、仕事に私情は禁物。………明日私から話しておきます」
そこでため息をつくリュー。昨日の出来事が影響していることは明らかだがそれを言葉に出すのは恥ずかしく、つい高圧的な態度に出てしまったリュー。それを分かっていた上でリューに乗っかったハジメもこれ以上刺激しないように昨日ことは話さないようにしている。
「それでハジメの武器はどうなったんですか?」
「うーん、どうなんでしょうか?作ってくれるようですが僕が使えるかは話が別みたいな感じです」
「……それだけでどんな事があったか想像出来ます。やはり一時停止は良くも悪くもハジメに大きな影響を与えたいるのですね」
それ以上はお互いに言葉を出さなかった。【一時停止】がどういうものか、リューにもハジメにもおおよその検討はついていた。だがそれを言葉にすることはしなかった。お互いに分かっているからこそ踏み出す必要はないと感じれたから。
すると路地の曲がり角からふっと小さな影が目の前を通り過ぎた。一瞬だったのでなんだったのかは分からなかったがリューにはそれが見えたようで、
「あれは…
「よく見えましたね……」
すると今度は同じ所から冒険者らしき人物達がさっきのパルゥムを追いかけるように通り過ぎた。どうやら何かトラブルがあったようだ。こういう時は関わらないようにするのが一番なのだが、
「数人で追いかけ回すなんていけませんね」
「…やっぱりいかれるんですね」
はぁーとため息をつくリュー。知り合いでもない、もしかしたらファミリアのいざこざかもしれない。ここは関わらないのが一番だが、ハジメが動き出したら止められない。それこそ一時停止をもっても止められないだろう。