マクロス-Sword-   作:星々

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24-救世主〈メサイア〉

夜が明けた。

朝焼けはどこか不気味さを帯び、不安な2日目が幕を開けた。

5人は、一斉に目を覚ました。

突然、警戒態勢に設定していた機体のアラートが鳴り響いたのだ。

 

「なな、なんすか⁉︎」

「熱源多数、加えてロックオンアラートまで…こりゃ手厚い洗礼って感じかな」

 

本当に突然だった。

何の前触れもなく現れ、警告もない。

バンデッドたちが現れたのだ。

クロス小隊は、何も知らずに彼らのテリトリーに入ってしまっていたのだ。

 

「各員緊急発進! 未確認機の出方を伺いつつ迎撃行動!」

 

ミランダは指示を出すと、機体をバトロイドに変形させて身構えた。

ここはジャングル。

視界が非常に悪い。

それに加え相手はここをテリトリーに活動しているバンデッドだ。

条件は明らかにこちらが不利だった。

 

「くッ!こちらクロス5、 発砲を確認!」

「了解。クロスリーダーより各機へ、攻撃を許可する。オールウェポンズフリー!」

 

長と思しきVF-14を筆頭に、周囲を数機のVF-11が取り囲んでいた。

 

「正確な頭数と位置を知りたいわね。上空から様子を見つつ狙撃するよー」

「援護する」

「任せたよセルダっち」

 

セルダのVF-22とルーシアのVF-19が上空へ飛び出した。

通常スナイパーがこんなに目立つ場所に出ることはあり得ない。

しかしルーシアは敵群頭上のど真ん中からの高高度対地狙撃を得意としていた。

この場合、敵の数や配置を味方に伝えながら援護射撃で敵を誘導する役回りだ。

そしてセルダはルーシアを守る壁になる。

 

「あら意外。こっちに追ってくる数が少ないわね」

「あくまで自分たちの有利なフィールドで片付けるつもりだな」

「受けて立とう。クロス3およびクロス4は上空から敵機を北側へ誘導して!クロス5は西側から迂回して回り込んで、私とクロス2で押し上げる!」

「包囲網を逆転させるってか、面白ぇ!」

「こちらクロス3。敵機はVF-14と6機のVF-11です。敵じゃありません」

「余裕だな、行くぜェ!!」

 

ブレイブローアのVF-22がガウォークで南側正面へ派手に突っ込んだ。

それをカモフラージュとしてチャーリーのVF-19がすかさず包囲網西側へ飛び出して包囲網を突破、追撃機と付かず離れずの距離を維持しつつ撹乱、誘導していく。

 

「ローア、今!」

「かかった!」

 

ミランダの合図と共にブレイブローアのVF-22は樹々を縫いながら急速に後退し、倒木の陰に潜り込んだ。

脚を失ったが故にできることだった。

敵機はそれを勢いあまって飛び越え、振り向くと既にVF-22のガンポッドが火を噴いており、守ることで精一杯になる。

慌てて左右に分かれるが、その先にはミランダのVF-19とルーシアのターゲットスコープが回り込んでいた。

攻撃を受けつつ仕方なく上昇していく敵機を、今度は下からの集中砲火で押し上げる。

作戦通り、逆包囲網が完成した。

 

「武器を棄て、おとなしく投降しなさい!こちらは新統合軍第727独立部隊レイヴンズである!」

『俺たちのテリトリーに入るのがいけねぇんだよォ!地の利ってもんの重要さ、教えてやらァ!』

 

いかにも、という感じのボスであろうVF-14のパイロットがそう言った。

その瞬間だった。

轟音と共に、何かが放たれた。

 

「ルーシア中尉!」

 

超音速の弾丸はルーシアのVF-19を捉えていた。

が、セルダは神懸かり的な超反射でそれを察知、VF-19を庇いに入ったのだ。

結果、直撃は免れたものの、機体の左半分を失った。

 

「セルダっち!」

 

EXギアで脱出したセルダを受け止めるVF-19。

砲撃があった方向に目を向けると、ずっしりとした巨体がのっそりと姿を現した。

 

「あ、あれは…⁉︎」

「VB-6…ケーニッヒモンスター……バンデッドの分際で何故あんなものを」

「ソーディアのこの荒れようじゃ考えられないことでもないけどよ…勘弁してほしいぜ」

 

VB-6ケーニッヒモンスター。

デストロイドモンスターの欠点である機動力を補う形で局地戦用に再設計された可変爆撃機である。

可変戦闘機に比べて製造および整備にかかるコストが高く配備数の少ない機体であり、また拠点防衛用で運営されることが多く比較的後方での運用が目立つ。

そのため強奪される機会も少ないはずだ。

維持費も高くつくということもあり、野良のバンデッドが扱える代物ではないことは明らかだった。

しかしそれは、ブレイブローアが言うようにこの荒れに荒れた惑星ソーディアでは通じない話だった。

 

『ハッハァ!特殊部隊の首は高くつくんだ、その首狩らせてもらうぜェ!!』

 

セルダのVF-22を失ったことでできたルーシアの壁の穴をすかさずうち破り、ドッグファイトへ持ち込まれた。

おまけにルーシアのVF-19はセルダをその手に抱えたままだ。

ケーニッヒモンスターへの強力な牽制の手を封じられている。

 

「クロス4、援護する!」

「いくぜチャーリー!俺たちはあのデカブツを抑え込む!」

 

ここで素早く分散する判断ができたのは、彼らが優れたパイロットであるが故だろう。

幸い飛び回るバルキリーを撃ち落とせるほどケーニッヒモンスターに精密射撃能力はない。

 

「あーもうしつこい!隊長ちゃん!」

「分かってる!」

 

セルダを受け止めたことで手が埋まったルーシアのVF-19を執拗に追ってくるVF-11。

援護へ向かうため急行するミランダだが、VF-14がそれを阻害した。

 

「ん、やるな」

 

ほんの一瞬のすれ違いだったが、ミランダにはVF-14のパイロットの実力が見えた。

一見すると荒削りにも思える機動だがひとつひとつの動かし方は冷静沈着で確実に殺しにかかってきている。

機体そのものをよくわかっており、長年乗り続けてきた熟練の為せる業とも言える絶妙な操縦桿の傾け方やエンジンの噴かし方、それぞれが美しかった。

とはいえ相手はVF-14バンパイア。

就役自体はVF-11よりも2年早い旧型である。

 

「悪いが性能で圧倒させてもらう」

 

背後をVF-14が追ってくるのを確認すると一気に宙返り、真上に位置どり一気に掃射してそのまま下方へ離脱。

回避行動から攻撃へ転じたVF-14がガウォークに変形すると、すでにVF-19が銃口を向けて待っていた。

 

『甘いなァ!』

「何⁉︎」

 

VF-14は後ろ手でVF-19のガンポッドを押し上げて頭を下にしたまま下へ潜り込むとバトロイドに変形、レーザー機銃で牽制しつつ距離を離して森へ誘い出す。

しかしミランダがまんまと敵の策に乗るわけもなく、冷静に上空から射撃していく。

 

「手応えがない。やはり向こうの方が慣れてるか」

 

しかしこの乱戦状況では敵を好きに動かせておくわけにはいかなかった。

戦線を整え始めれば不利な状況になるかもしれない。

最初から不利ではあったが、損傷も拡大しつつありあまり長引かせたくはなかった。

 

「追うしか…」

 

だが、限界はすぐにやってきてしまった。

 

「メーデー!メーデー!こちらクロス5!」

「クッソしつけぇ!」

「ッ!損傷拡大!そう長くもたないよ!」

「…………」

 

全員防戦一方となり、物量と地の利によって追い込まれていた。

元から万全な状態ならばこんなことにはならなかっただろうが、何せパイロットと機体ともに疲労がたまっていた。

本来ならばこういった突発的な戦闘や暴動などを専門とする部隊ではあったが、やはり疲労は馬鹿にはできなかった。

 

「このままじゃどんどん不利になってく…!」

 

そんな時、新たな熱源を知らせるアラートが鳴り響いた。

今の彼女らにとっては絶望の呼鈴と同義だった。

しかし、それは絶望ではなかった。

 

『んな⁉︎ どっから嗅ぎつけてきやがった!』

『は、速ェ⁉︎』

 

それらはVF-11を次々と攻撃していった。

2つの影が高速で飛び交った。

 

「あれは、AIF-7S⁉︎」

「なんだってゴーストなんかが?」

 

ゴーストがいるということはそれを従えている者がいるということ。

遠かれ近かれ、この戦闘を見ていたということだ。

それはすぐに正体を明かした。

 

「反応1!南方っス!」

 

振り向くと、1機のVF-25が飛来してくるのが見えた。

機体上部には円盤型のレドームが回転しており、腹部にはスタビライザーフィンが取り付けてあった。

2機のゴーストたちとの連携で状況をひっくり返していく。

 

「イージスメサイア…てことはあのゴーストはあのVF-25が操ってるってことか」

「どうするミランダ?敵ってわけじゃないみたいだぜ?」

 

そう、明らかに敵ではなかった。

バンデッドとも違う、軍とも違う異質な存在という印象を受けた。

見境なく攻撃しているわけでもなかった、明らかにこちらを援護している。

疑問を抱いていると、それに答える声が入ってきた。

 

『新統合軍所属機へ。こちらはS.M.Sソーディア支社ミラージュ小隊所属、ジーナ・フォルティ少尉。()()()()()()()()()()()応答してください』

 

濃く鮮やかな青色のラインが入ったVF-25A。

そのパイロットはS.M.Sを名乗った。

 

「S.M.S?とっくに惑星(ほし)から退()いてるって思ってたけど、辛抱強く残ってたみたいだね」

 

ルーシアがそう漏らすと、ミランダはすぐに回線を開き応答した。

 

「こちらは新統合軍第727独立部隊VF-Xレイヴンズ特務小隊クロス小隊隊長、ミランダ・コズミナ・ジーナス大尉。援護感謝する」

 

メサイアの乱入で混乱したのか、バンデッドたちは次第に陣形を崩していった。

やはり訓練されていない者たち、対応力の欠如が露見した。

 

「っしゃ!形勢逆転だ、一気に行くぞ!」

「了解っス!ルーシア中尉は後退を!」

「ありがとチャーリー」

 

こうなってしまえば収束は早いもので、あっという間にバンデッド一味を追い払った。

しかし終わってみればこちらの損傷も甚大と言えるもので、早急に補給等を受けなければ継戦どころか任務続行も困難な状況だ。

そんな時、VF-25Aのパイロット、S.M.Sのジーナが通信を入れた。

 

『ジーナス大尉、私たちはあなた方を保護する用意があります。大体の情報は掴んでいます。非常事態です、賢明な判断を期待しています』

「断ろうにも断れない状況だ、お言葉に甘えさせてもらう。いいな」

 

一応隊員に確認を取るが、返事は決まっていた。

全員迷わずに頷いた。

誰も断ろうなど思わなかった。

例え断ろうと思ったとしても、ミランダの言うことを信頼して従っただろう。

 

『了解しました。では、誘導します』

 

VF-25Aがゴーストを呼び寄せ、先導していく。

彼女の登場により結果としてクロス小隊は救われたのだった。

 

(彼女、さっきミラージュ小隊って言ってたな…………関係ないか)

 

機体もパイロットもボロボロ。

しかし彼女らは生き残った。

まだまだ、戦いは終わらない。




どうも星々です!



今回書いてて思ったこと、

「青多すぎやろ(真顔)」

元々スグミのVF-19はレイヴンズのVF-19に感化されて設定して、その後に本家であるレイヴンズを登場させてしまったということ
さらにS.M.S各員のイメージカラー設定でジーナに青を設定してしまったという…
まぁしょうがないですね、許してください

あとジーナスとジーナがややこしい
あぁ…もっと練らなきゃ…笑

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