マクロス-Sword-   作:星々

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16-決戦、ラフレシア山

決戦の準備は整った。

グライフは万全の状態で空へ舞い上がる。

目指すは敵本拠"ラフレシア山"。

ANUNSがサイコ・バードという大型兵器を保有していることがわかった今、状況の早期解決が重要視されている。

しかし現地軍はANUNS傘下の末端勢力によって多方面的な攻撃を受け続け、その機能を著しく低下させるに至った。

つまり、現時点でANUNSに対抗できるのは、S.M.Sのみ。

 

「作戦を説明します」

 

アライアがブリッジにパイロットたちを集めた。

その言葉は艦内放送されている。

 

「私たちS.M.Sソーディア支社は、ラフレシア山に南部から攻撃を仕掛けるわ。小細工は無し、真っ向勝負よ」

 

作戦の概要が図で示された。

そこには敵本拠地ラフレシア山を表す大きな三角形と、S.M.S母艦グライフを示す長方形。

そして3機編成の2個分隊のバルキリー隊。

アライアの言葉通り、小細工無しの真っ向勝負だ。

 

「正気か? これじゃあ物量で押し戻されるのがオチだ」

 

エドワードが冷静に指摘した。

勿論、このことは言うまでもなく全員が気付いていた。

しかしアライアは自信ありげなに口角を上げると、とある通信回線を開いた。

 

「こちらS.M.Sソーディア支社、アライア・シェルディ。応答してちょうだい」

 

数秒

 

『こちらS.M.Sウロボロス支社、アイシャ・ブランシェット。問題なく到着できたわ』

 

アイシャと名乗った女の声。

それと共に現れた、グライフの同型艦。

その艦は名前を"ゲフィオン"といった。

アイシャ・ブランシェット率いる、S.M.Sウロボロス支社が、惑星(ほし)を渡り合流したのだ。

 

「ゲフィオン⁉︎ 何故ここに⁉︎」

「私がアイシャに頼んだのよスグミ」

『ソーディアが予想以上に大変なことになってるって聞いてね、ウロボロスの方はリーロンに任せて飛んできたってわけ』

 

これで、ソーディアとウロボロスの連合艦隊が完成したのだ。

艦隊といってもたったの2隻だが、それでも十分に心強い味方だ。

 

「さて、ウロボロス支社が加わったことで我が戦力は大幅にパワーアップするわけだけど、作戦は変わらずよ。正面からいくわ」

 

アライアは一人ひとりの目を見た。

みな、決意に満ちた強い目だ。

 

「ただし、これは単なるテロリスト鎮圧作戦ではありません。我々が優先するのは、ミストレーヌ・クルークの救出です」

「アライア……!」

「家族の大事な友達を放っておくわけにはいかないでしょ」

 

アライアはまるで親のような抱擁力のある目で微笑んだ。

そしてすぐ、仕事の顔で作戦の説明を続ける。

 

「敵の目を正面に引きつけその間にスグミが基地内へ突入、少女の救出を行います。異論はないわね」

 

全員が頷く。

スグミは嬉しさのあまり少し涙ぐむ。

その様子を映像越しに見たアイシャは、スグミの人間らしい成長を喜んだ。

 

「では、総員、決戦に備えよ‼︎」

「「「「「「了解‼︎」」」」」」

 

気迫のある掛け声とともに、グライフ艦内が忙しく動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

スグミはハンガーへ走った。

まだ作戦エリアまでは遠かったが、自分の機体、YF-29に飛び乗った。

どうしたのかと驚き、止める人もいたが、スグミはそのまま飛び出した。

向かったのは、ゲフィオン。

以前の職場だ。

 

「おぉおぉ、中々いい機体じゃねぇか!」

 

スグミを出迎えたのは、S.M.Sウロボロス支社(仮)社員であり、エースパイロット、リオン・(さかき)だった。

ハンガーへYF-29を収め、キャノピーを開く。

以前よりも色のある表情を見せたスグミにリオンは驚いたが、その成長を喜びように笑った。

 

「まさかあなたがエクスカリバーを降りるとは思わなかったわ」

 

続いて支社長のアイシャが出迎えた。

アイシャは、スグミがここに預けられてからずっと育て上げてきた、いわば親のような存在だ。

母親の死という事実によって傷つけられた彼女のメンタルのケアもしてきたが、この短い期間で少しだが普通の少女らしくなったスグミに、ソーディア支社への感謝のような念があった。

 

「向こうで色々カスタムしてもらったんだけど壊しちゃって、それで」

「あら、私が設計した武器をもう積んでるのね! さすが仕事が早いわねアライアは」

 

アイシャはスグミのYF-29に興味津々だ。

続いてハンガーにやってきたミーナとも久々の再会を果たす。

 

「久しぶりです、スグミ!」

「あぁ、久しぶりだな。元気そうでよかった」

「はい!」

 

少し前まで家族のように生活を共にしてきた仲間と久しぶりの会話をすると、アイシャはスグミの肩に手を乗せた。

 

「話が弾んできたけど、今あなたの所属はソーディア支社よ。仲間が待ってるわ」

「作戦の準備があるんだろ?」

「作戦が終われば、いつでもゆっくりお話しできますから!」

 

3人の笑顔は懐かしく、またスグミの背中を押してくれるようだった。

 

「………あぁ!」

 

スグミは彼らの言葉に答え、YF-29に飛び乗る。

3人に向かって敬礼をすると、ゲフィオンを後にすべく飛び立つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦の地、ラフレシア山。

それがそびえ立つ一連の山々に向かい合う2隻の艦。

それぞれ、次々と、可変戦闘機が出撃する。

ゲフィオンからはYF-30たった1機だったが、それでも最新鋭機は心強い味方だった。

そしてグライフ。

VF-25S、VF-27β、VF-25A、VF-25F、そして。

 

「YF-29、カタパルトスタンバイ、OK!」

 

アイシャが出撃準備完了のアナウンスをする。

ゆっくりとせりあがってきたYF-29を、燦々と照りつける太陽が照らす。

 

「了解。オーロラ1、スグミ・ドリム。YF-29 デュランダル…出る!」

 

熱核反応タービンが唸り、カタパルトを飛び出した。

青い前進翼はその存在感を強く現出し、禍々しい山々に立ち向かっていく。

そんな印象を受ける。

 

「こ、こちらミラージュ5! 目標は防衛線を展開、迎撃部隊出ました!」

「こちらミラージュ1。了解、全員派手に暴れろ!」

 

エドワードのVF-25SとジーナのVF-25Aがミサイルを放つ。

それをキッカケに、S.M.Sのバルキリー達が乱舞する。

セシル、リュドのVF-27βは、お互いに一糸乱れぬ連携で敵線を一点突破し、内部から撹乱する。

バルトのVF-25Fは、ジーナのVF-25Aとともに右翼から攻め込む。

 

「スグミ! 右翼から僕とジーナが撹乱する!」

「了解した。私は左翼から一気に切り込む。リオン、援護頼む!」

 

スグミ駆るYF-29は、チャンスを伺うように接近と離脱を繰り返し、その変則的なペースで敵防衛線に穴を開けようとする。

しかし敵本拠地であるため一筋縄ではいかない。

 

「スグミ! 俺が下から押し上げる、そこを突け!」

 

リオンのYF-30が地表近くまで高度を下げ、ファイター、ガウォーク、バトロイドを素早く行き来して、単機で敵を押し上げていく。

 

「見えた……! こちらオーロラ1。これより基地内部へ突入する!」

 

青い聖剣が抜かれた。

YF-29は他を寄せ付けない圧倒的な加速で敵防衛網を縫っていった。

主翼の可変ギミックやフォールド・ウェーブ・システムによる大出力を惜しみなく使い、鮮やかに、突破していった。

そのYF-29を追いかけてくる数機のVF-171。

しかし行く手を2機のVF-27βが塞いだ。

 

「「邪魔はさせないよ‼︎」」

 

双子の連携はとても頼りになる。

スグミもこの2人のタッグはとても信用に足る存在だと認識していた。

 

「感謝する」

「いいってことよ!」

「任せなさいっ!」

 

2人に背中を任せ、鮮やかに飛ぶYF-29。

次々と立ちふさがる敵を軽くあしらいながら、激しい機動で突破していく。

時折バトロイドでの空中戦も展開し、その細やかま動きで他を圧倒していく。

 

「遅いな。いや、この機体が早いのか…」

 

YF-29はスグミの反応速度にしっかり対応していた。

そしてスグミもまた、早くもこの機体を手足のように動かしていた。

 

「トンファーガンポッド、試してみるか」

 

YF-29はガンポッドのアタッチメントに固定されているトンファーガンポッドを手に取った。

右手にビームガンポッド、左手にトンファーガンポッドをそれぞれ持ち、両手で複数の敵を同時に撃つ。

ガウォークとバトロイドを行き来しながら、緩急をつけながら、隙あらば

ファイターで一気に突破していく。

 

「見えた……!」

 

そして見えてきた、基地の入口。

真っ二つに割れた火口。

溶岩が赤く蠢いている。

そんな基地入口に、聖剣が突き刺さる。

YF-29は垂直降下で勢いよく火口へ飛び込んだ。

跳ねる溶岩が行く手を阻むように襲いかかるが、入って仕舞えばただの基地。

狭い空間でもスグミの機動は衰えない。

 

「やはり中は簡単ではないか……!」

 

出迎えたのは激しい迎撃の嵐。

バルキリーで通るには狭い通路を埋め尽くさんとする敵。

数だけではない、統率も取れていた。

前衛機3機が、弾幕を盾に同時に襲いかかってきた。

YF-29は素早くバトロイドに変形すると、右手のビームガンポッドと左手のトンファーガンポッドを同時に掃射。

的確に命中させ2機を撃墜すると、残りの1機にシールドの先端を突き立てた。

スグミのYF-29のシールドには、アライアの提案により、"カタール"(ジャマダハルといった方が正確だろうか)が取り付けられていた。

その外縁部にはピンポイントバリアが展開され、装甲を貫くことができる。

勢いよく飛び込んできた敵はいとも簡単に貫かれ、爆散した。

あまりの強さに、迎撃部隊が後ずさりする。

 

「待ってろ、ミストレーヌ!」

 

YF-29は突っ込んだ。

スグミの想いのままに。

帰る場所のない少女に、帰る場所を与えてやりたい。

そんな想いが、スグミにはあった。

自動迎撃ミサイルポッドがいくつも取り付けられた通路を疾走していく。

だがここでスグミは、異変に気付くことになる。

 

「………抵抗が減った…」

 

最初こそ、外部とは比べられないほどの数のバルキリーや、VB-6、ケーニッヒモンスターの姿もあった。

しかしその数は奥へ進むほど減っていき、まるでスグミを受け入れているようだった。

 

「誘われている………ッ⁉︎」

 

ほぼ勘に近かっただろう。

真正面から撃たれたビームを紙一重で回避した。

伏射姿勢から立ち上がった1機の白い可変戦闘機。

それが放つ異彩さに、スグミはYF-29をバトロイドに変形させ、着地した。

 

「……待っていたぞ、スグミ・ドリム」

 

白いVF-27γが、立ち塞がった。




どうも星々です!

ついにその火蓋が切られました、最終決戦!
膨大な敵に立ち向かうS.M.S連合部隊
基地に突入したスグミに立ちはだかる白い影!

次回もお楽しみに!

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