ある日の事であった。
夕暮れ時、空に21の線が走りそれは日本のとある地域にまとまって降り注いだ。
【速報】海鳴に魔法物体が21個降ったことが確認されました。我が社はこれを危険物と判断したため緊急クエストを発行します。
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《【緊急クエスト】魔法物体を確保せよ。》
添付ファイルより封印術式をインストールし魔法物体の確保をしてください。
なお、この物体は非常に不安定なものと考えられます、高エネルギー体のため刺激は控え、早急に封印しACの本社、支社にお持ちください。
《報酬》
魔法物体、高エネルギー結晶体一つに付きチューンアップポイント:100
なお、封印及び防御の術のみ市街地での使用を解禁します、問題が発生した場合は本案件の窓口までご連絡を、常に対応いたします。
すべてのユーザーのホームに窓口への連絡先ショートカットを作成します。このショートカットは事件の解決と同時に削除されます。
皆様のご健闘による脅威の早期排除を期待しています。
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この日から2・3日海鳴全域にて、SRADを武装モードで展開し、うろつく集団が目撃された。
「ようこそ御出で下さいました、本日のご用件は何でしょうか」
「魔法物体の提出だ、ついでに後何個残って居る?」
「ありがとう御座います。確認後、チューンアップポイントをお渡しいたします」
受付嬢は皿の上にひし形のエネルギー結晶体を受け取り、機械に仕舞う。
「はい、確かにシリアルナンバー20を確認しました、こちらがポイントになります、この場で魔道器に移しますか?」
「ああ、頼む。ところで後何個だ?」
「ポイントの移行終了しました。のこりの結晶体は6つと成っています。我が社は早急な発見・確保を望んでいます、先ほど魔道器に送られたメッセージに従い探索エリアの入力をお願いします。こちらで観測した落下ポイントと合わせ、探索済み、未探索エリアを出し、正午に皆様に詳細を送る予定と成っております、情報は多いほど特定がしやすくなるため、よろしくお願いします」
「あいよ、しっかしまあ、やっぱり一つで100ももらえると人が多いな……運が良かったぜ」
「確認出来ているだけで1000を超えるソーサラーが着ています。残りの発見も時間の問題化と」
「マジか、こりゃ一個見つけただけでも儲けもんか」
「なお、上の見解ではこれを持ち込んだ、もしくはこれの持ち主が一緒に落下してきている可能性があるとされています」
「なんだと?」
「個人ランク6720、崎元衛様、よろしければ特殊クエストをお受けになりますか?」
「特殊クエスト?」
「はい、先ほど申しました、結晶体に関わりの深いと考えられる生物の保護、もしくは捕獲です。その生物から得られる情報によってポイントが変動しますが、最低でも50ポイントは堅いと思われます」
「マジかなにか情報は有るのか?」
「結晶体とともにおそらく子供と思われる人型が落ちました、その後、人型は何かに変形、変身したものと思われます。不思議な動植物に封印術式をぶつける、もしくは念話で呼びかけることで反応があるものと思われます」
「……一斉送信ではなく俺個人に持ちかけたということは何か有るのか?」
「対象が敵対し、襲ってくる可能性が考慮されます。そのため、こちらがアリーナランクとは別に設けた個人戦闘ランクもしくは団体戦闘ランクで5000以内に居る個人もしくはチームにのみ、このクエストは発行する予定です」
「ということは俺は個人戦闘では5000以内に居るということか?」
「ちょうどランク5000になります、堅実で面白みはありませんが安定した戦闘スタイルと、護りのうまさが評価されました」
「ははは、嬉しいじゃないか、今BH人口はどれだけだったか……」
「昨日の時点で晴れて100,000人を突破しました、これからもよろしくお願いします」
「VRの方はとんでもない数だけど、リアルは思ったより少ないな……」
「なにぶん、魔導器が高価ですので……それに、人を傷つけうる可能性もあるため適正検査もあり……最もアマチュアはこの百倍近く居るんですが、プロとの間にある壁が高いようで」
「はは、そりゃそうだ、ある意味プロは特権階級、権利も義務も生じるんだ」
「……今回の件でもしかすると外との関わりが出来るかもしれません、あちらへ移住すれば、ただの仕事としてその力を使うことが出来るようになりますよ?」
「いかねえよ、キナ臭ぇ、やっぱりこの世界が一番、人が住めない環境になるならまだしも、あんたらのお陰でむしろ環境が良くなってきてるらしいじゃねえか」
「安心しました、それよりも、そろそろ正午になります、マップ情報が送信されると思うので、あまり長居していると……遅れますよ?」
「マジで!?やっべ!!」
「またのご来店をお待ちしています」
「あ、さっきの件、ついでに探してみるわ」
「よろしくお願いします」
「うーん……送られてきたはいいが……残った地域って……海しかなくね?なに、潜るの?潜るしかないの?」
周りを見渡せば、ちらほらと魔導器を持った人が集まっている。
「チクショウ、陸戦用の装備しかもって来てねえや……こっちは置いておいてもう一個の方を探してみるか……」
肩を落としながら海を後にする。
「しっかし、小動物だと探すのが大変だな……無差別な念話は迷惑行為になって文句いわれかねん、あの頭の中で鐘が鳴る様な頭痛は体験はしたくない」
しかし、指向性の念話となると、範囲を絞る必要がある……仕方ない、足で探すか……
「なに、魔力感知能力は高い方だ、気をつけて探ればそのうち見つかるだろう」
残り三日の滞在期間中に見つかるといいのだが……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
わたし、高町なのはは遂にBHを始めました……といってもVRの方なんですけどね……
親友のアリサちゃんが海鳴のBH競技場のオーナーであるバニングスグループの社長令嬢だったのには驚きです。
すずかちゃんも大地主さんで、結構なお金持ちなので、知ったときはびっくりしました。
え、知らなかったのはアンタぐらいだって?
だってアリサちゃんはアリサちゃんですし、すずかちゃんはすずかちゃんだよね?
実は私たちはちょっとクラスから浮いちゃっているところがあります。
私たちだけ、SRADいえ、魔導器を持っているんです。
私のはあの日、執事さんがくれたもの、アリサちゃん、すずかちゃんは物心ついたときから持っていたそうです、魔導適正向上のためだそうです。そのため、機能は魔導適正向上以外にちょっとした障壁を展開する程度らしいです。
「いや、そうじゃないでしょ、確かに私たちのは少し高性能だけど、魔導器は結構な数の子が持ってるから」
……新事実です!!
「なのは、アンタ少し天然でしょ」
「天然ってどう言う意味?」
「あーうん、もう良いわ、それより、帰りにVRBHやりましょ」
「うん、もちろん」
「わたしは新しい武器に手を出してみようかな」
「すずか、まだ武器決まらないの?」
「うん、なんだか銃器は会わないんだ」
「なのはは遠距離砲撃一辺倒なのよね、そういえばどうして?」
「えへへ、実は昔BHの大会で見た巫女さんのアレにあこがれまして……」
「大会の巫女さんって……まさか!!初代世界大会優勝チーム梅組の!?」
「うん」
「個人ランクでは10001位だけど、射撃に限ればトップ10で『個人対艦砲』『遠距離パイルバンカー』『クリティカルズドン巫女』『何あの人、弓で障壁無視するんですけど』とかの異名を持つあの浅間さん!?」
「相変わらずよく知ってるね」
「この程度も調べとらんのかい!!」
「あいた」
スパンッと頭をはたかれた。
「まったく、憧れてるんだったら情報収集くらいしなさいよ!!」
「むー」
「まあまあ、アリサちゃんその程度にしてね、なのはちゃんのこれは今に始まったことじゃないでしょ?」
「それもそうね」
「すずかちゃんも酷い!!」
「さて、今日こそはあいつも連れて行くわよ」
「あいつって、匠君だよね?」
「そーよ、そういえば理由を言ってなかったわね、前偶然、あいつがやっていること見ちゃったのよ、なんだったと思う?
新武器案ってタイトルの計画書だったのよ!!」
「え?良くあるこんな武器があったらって奴じゃないの?」
「普通はそう思うわよね、でも違うの、小学生に出来ないぐらいに細かく仕様が、設計図が書かれていたのよ!!」
「……いや、でも」
「あーもう!!唯気に成ったからです!!最初は私より成績が良いからだったけど、気に成ったから声をかけるんですよーう!!」
「……アリサちゃんが素直になった……ッ!!」
「そこ!!何で驚くの!!」
「いや、だって……ねぇ?」
「そーだよね」
「あーもう!!私声かけてくるからちゃんと準備しておくのよ!!」
「アリサちゃんかっわいー」
「可愛い~」
「shut up!!」
真っ赤になって目的の人物へ向かって歩き始めるアリサちゃんをからかうと怒られてしまった。
でも、あそこまで別の意味で頭に血が上ったアリサちゃんはきっと……
「匠!!……って……ぇ」
ポカをする!!
そして呼ばれて振り向いた匠君に向かって倒れ込む。
「やった!!すずかちゃんやったよ!!」
「きゃー、さすがアリサちゃん、私には出来ないことをやってのける!!」
アリサちゃんは匠君に確りと抱きとめられて転んではいない。怪我なんてしてないだろうけど、もし漫画やアニメだったらきっと煙を噴き上げているだろう。
「ッ~~~!!」
「おい、大丈夫か?」
「……だ、大丈夫よ」
「そうならいいんだが、無理するなよ、バニングス」
アリサちゃんが匠君の胸に手を当てた常態でなにやら言っています。
さすがにこれ以上は逆襲が怖いのでおとなしくしておきますが、ちょっと気に成ります。
あ、離れた。
「きょ、今日帰りに私たちVRBHやりに行くんだけど一緒に来ない?」
「ん?今日か……そうだな、たまにはやってみるのもいいかもな」
「……来てくれるの?」
「いや、そっちが誘ったんだろ?」
「だって今までは素っ気無く断られていたから……」
「……すまん、ちょっと忙しかったもんでな」
匠君があちゃーといった顔をしています。
アリサちゃんの表情が気になります。
わたし、すっごく気になります!!
「……おそいね」
すずかちゃんがボソッと言います。だけど、言いたい事は分かりました。
「そうだね、待ってたら台が埋まっちゃうよね」
「うん」
イイ笑顔ですずかちゃんが同意してくれます。
ぱっと荷物を手にとって、アリサちゃんを迎えに行くことに!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「匠!!……って……ぇ」
後ろで聞きなじみがあるが、幼い声で呼びかけられる。
なんだと、振り向いてみれば、アリサが机に足を引っ掛けてこっちに向かって倒れこんできている。
避けると逆に危ないし、そもそも避ける選択肢が有る時点で駄目だ。
俺は一歩踏み込みアリサを受け止める。
倒れ始めてからそうたたない間に、アリサの頭を胸で受け止める位置で転倒をとめる。
「ッ~~~!!」
「おい、大丈夫か?」
「……だ、大丈夫よ」
「そうならいいんだが、無理するなよ、バニングス」
「アリサでいいわよ、アリサって呼びなさい」
「いや、しかしだな」
「アリサよ、ちゃんと名前で呼んで」
「………」
おかしいな、この時期、こんなに
あ、どうも、いつもニコニコあなたを隣に取り寄せる召還師、本多匠です。
何でかリスタートをかましました。
変態共も初期組がリスタートしたみたいで歴史が大いに変わっておりまする。
両親?もちろんリスタート組ですよ。
他の人たちにリスタートが見られないから、また変態が実験でなにやらやらかしたものと断定していたのだが……
アリサ、戻ってきてないか?それとも何らかの影響で少しだけ戻ってきているとか?感情だけとか、そんな感じで……
「あ~……アリサ?なんだかよく倒れこんでくるけど、本当に大丈夫か?」
「ぁ・・・な、なんで」
「ん?今週だけでもう三回目だぞ?毎日じゃないか……疲れているとか、そういうのは……見た感じでは大丈夫そうだな」
「……」
「負けん気が強いのはいいが、無理をしすぎるなよ」
ポンポンといつもの感じで頭を撫でる……そういえば、アリサ何時からか髪短くしちゃったんだよな~
なでなでと無意識にちっさいアリサを愛でていると、アリサが胸をぐっと押して離れる。
「きょ、今日帰りに私たちVRBHやりに行くんだけど一緒に来ない?」
「ん?今日か……そうだな、たまにはやってみるのもいいかもな」
「……来てくれるの?」
「いや、そっちが誘ったんだろ?」
「だって今までは素っ気無く断られていたから……」
「……すまん、ちょっと忙しかったもんでな」
ちょっと新武器の案出せってせっつかれたんだよなーいろんな世界と繋がりあるからネタが豊富と思われたんだろうけど……需要がないものを創るわけにも行かないわけですし……
で、ちょっと悩んでいたもんで直帰していろいろやってたんだよな……何とか纏まったから今晩父さんに渡しておけばいいだろう。
久しぶりにゲームでもするかー……外のだとデータ作ってないや、どうしよう……
アリサ(幼)が可愛い今日この頃
用語辞典
・ソーサラー
魔導器を用いて魔導を使うことを許された者、一般的にはBHプロプレイヤー。
時々発令されるクエストや試合をこなして報酬を得ることで生計を立てている人も居る。
クエストの報酬はチューンアップポイント(以下TUP)で表記されるが、1TUPで一万のリアルマネーに換金して受け取ることも可能。
しかし、TUP自体の価値が高いため、換金する人は少ない模様。
・魔導器
TRADの一般名称。
価格は\10,000~青天井
競技用は最低100,000~
実際はもっと高くなるが、ACが管理下において、機能を制限しているため、この価格。次元世界におけるアームド、ストレージデバイスのようなもの、固有言語でプログラムされており、クラッキングしたところで文字化けしかしない。
・チューンアップポイント
魔導器のチューンアップを行うのに必要なポイント、リーグの順位でもらえたりと入手が難しい、純粋に強化ポイントと言え、有ればそれだけ武器を強く出来る。
ただし、強化しすぎてピーキーになったからと言って戻してもポイントは戻ってこないため、慎重に少しずつ割り振るのが基本。強化では必要だが、弱化では不要である。
100有ればライフルがアンチマテリアルライフルに、ただし威力のみのため、反動で酷い目にあう、そんな改造が出来る。
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