INFINITE EVOLVE   作:00G

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久しぶり。

文字数少ないけど我慢してちょ。


産声

「だから何度も言っているだろう! ()()は早急に駆除するべきだと!」

『しかしですね、()()は地球上で未だ4体しか確認されていない貴重な生物ですよ? ()()は今後の地球の生物テクノロジーを発展させる貴重な存在、云わば金の卵を産むガチョウです。 殺すなんて勿体ない』

 

 無数の機械があちこちに並べられ、道具やコードで床が埋め尽くされているお粗末にも作業できるような環境じゃない一室で、激しく口論する声が聞こえる。

 口論する声の中心には何日も風呂に入っていないのかボサボサの頭と薄汚れた白衣を着た男性と、その男性とは対照的に清潔に保たれた白衣を着た若い青年がモニターに映し出されていた。

 彼らは科学者。

 この際名前は伏せておくが、彼らは自分たちが所属する国の政府から各地で猛威を振るっているモンスターに対抗できる兵器を製造しようとしていた。

 因みに彼らはそれぞれ所属する国は違うが、一度軍用IS製作を共同で行った経歴があるので製作した兵器のデータの共有と合同製作を行っている。

 

「何が金の卵を産むガチョウだ! むしろパンドラの箱の間違いじゃないか!」

『これだから戦うことしか能のない人は頭が固いんですよ。 いいですか?()()は重症を負った体をたった1週間程度で完全に治癒させて、尚且つその体を2倍近くまで成長させたんですよ。 その細胞の秘密を解明することが出来れば、未だ不治の病とされている病気や人類の宇宙進出に繋げることができる、つまり人類の進化をより促すことができるんですよ』

「何が人類の進化だ! そんなことを言って生物兵器を造ろうなんて考えているんだろ!」

 

 口論は次第にヒートアップしていき、離れた所で作業している作業員たちは手を止めて冷や冷やしながらその口論を見守る。

 彼らが所属する国ではモンスターたちの処遇に付いて非常に問題となっていた。

 これはどの国でも言えることだが、政府の右翼側と左翼側でモンスターを駆除しようと主張する側と生きたまま捕獲しようと主張する側で激しく討論が行われている。

 人への被害が出ているため武力を持って殺処分を。

 貴重な生物であるため生きたまま捕獲を。

 簡単に言えば、これが両者の考えである。

 

「ええいお前と話しても埒があかん! こっちで勝手に造らせてもらうぞ!」

『構いませんよ。駆除用と捕獲用の2種類があれば機転は効きますしね。 でも()()の情報はこちらにも渡してくださいよ?』

 

 青年はそう言って通信を切った。

 男性は青年との通信が切れると、苛立った感情を隠さず舌打ちをする。

 確かに捕獲をすることへの理解はできるが多くの人間を殺し、尚且つ餌として食すモンスターの行動は嫌悪を通り越して憎悪にまで至る。

 それが旅行中だった男性の弟を喰い殺したとなれば尚更だ。

 

 不運だった。

 一言で片付けてしまえば簡単なことだが、家族が殺されて黙っていられるほど人の感情は単純ではない。

 さらに、男性は科学者。

 主に兵器系の知識を持つが故に、モンスターへの憎悪を今開発している兵器にぶつけているのだ。

 

 男性はまだ苛つきながらも目の前のキーボードを叩き始め、作業を始める。

 キーボードを叩く度に数値が打ち込まれていくモニターに、蛇腹のような剣と武骨な人型の機械を映し出しながら。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「行きなさい!ブルー・ティアーズ!」

「そのまま追い込んでセシリア!」

 

 所変わって場所はIS学園第1アリーナ。

 そこでは青い機体とオレンジの機体が宙を舞っていた。

 青い機体はイギリスの代表候補生セシリア・オルコットが操る第3世代IS『ブルー・ティアーズ』。

 オレンジの機体はフランスの代表候補生のシャルロット・デュノアが使う第2世代ISラファール・リヴァイブをカスタムした『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』。

 両者とも自身の専用機を高速で移動しながら戦闘を行っているが、二人が銃を向ける先には何もいない。

 別に普通の人には見えない何かを相手しているわけではなく、二人が行っているのは『バーチャルシュミレート』と呼ばれる訓練方法である。

 

 ISにはIS同士で訓練する方法以外にVRを利用したバーチャルシュミレート訓練というものがある。

 VRバイザーを装着してISに接続することで、ISに入力された仮想標的をバイザー越しに撃破するという内容だが『ゲームのような感覚でISを動かすとは何事か』という意見が出たせいであまり実用されてはいない。

 対戦相手となるモンスターは用意できないので、データがあれば再現できるので日の目に出ることになったのだ。

 訓練方法はまだ他にもあるが、ここでは省く。

 

 セシリアとシャルロットは頭に装着したバイザーに映し出された仮想標的を追いかけるように移動し、銃を突き付け引き金を引く。

 バーチャルシュミレート用に二人が使う武器の安全装置はしっかりと掛けられているので発砲する危険はない。

 そして引き金から指を離すと、二人は動きを止めてバイザーを上げる。

 

「撃破成功。 やったねセシリア」

「これくらいなんてことはありませんわ」

 

 仮想標的の撃破を互いに称えながらセシリアとシャルロットの二人はゆっくりとピット内に戻っていく。

 第1アリーナではセシリアたち以外にもバーチャルシュミレート訓練を行っている生徒がまだいる。

 先日のIS学園へのモンスターの襲撃を切っ掛けに学園に何時でも守ってもらえないと理解させられた生徒たちが『自分の命くらい自分で守れるようにならねば』と思うようになりIS学園全アリーナでバーチャルシュミレート訓練を行っている。

 アリーナは広いので生徒同士がぶつかるなどというアクシデントはあまり発生しないが、訓練を終えた者が何時までも居座るわけにもいかない。

 バーチャルシュミレート訓練を開始した当初は、撃破に成功した生徒が喜んでいたら別内容で訓練していた別の生徒と衝突するという事件が発生したので訓練を終えた者はすぐさまピットに戻ると決められたのだ。

 

「二人ともお疲れ」

 

 ピット内に戻ったセシリアとシャルロットを出迎えたのは、スポーツドリンクを差し出す織斑一夏だった。

 セシリアとシャルロットは意中の男性の気遣いに少しのうれしさを覚えながら、差し出されたスポーツドリンクを受け取った。

 

「二人ともすごいな……えーっと」

「『リーパー』ですわ。一夏さん」

「そうそう、そのリーパー相手の撃破率が80%越えなんてすごいじゃないか」

「えへへ、リーパーはあの瞬間移動と分身能力に気を付けていれば一夏でも勝てるよ」

 

 リーパー。

 IS学園を襲撃したモンスターWraith(レイス)の呼称として名付けられた名前だ。

 巨大な鎌状の腕とそれを振り回す様子から『刈る者』という意味を込められリーパーと名付けられた。

 セシリアとシャルロットはこのデータ上のリーパー相手の勝率が8割を越えている。

 燃費が非常に悪い機体を使っている一夏を除いた専用機持ちたちも7割~8割を越えているが。

 

 セシリアとシャルロットは一夏と少しだけ会話をすると、ISを解除して着替えるために更衣室に移動した。

 後に制服に着替えた二人が一夏と合流し、今回のバーチャルシュミレート訓練の様子を一夏の部屋で見ているときに、何時もの取り巻きたちが乱入して一騒ぎが起こるのだがそれはご愛嬌。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 暗い、暗い森の中で、黒い巨体はただただじっと見つめていた。

 見つめる先には黒い巨体よりも少し小さいくらいの赤い卵。

 その卵がゆっくりと脈動するかのように光る。

 次第にその光はゆっくりと強くなり、バキッという音をたてて卵にヒビが入った。

 そのヒビは次第に面積を増やし、ボロボロと固い卵殻を落としていく。

 そして、卵の中から豪腕が飛び出し、卵を完全に破壊した。

 黒い巨体はその様子を黙って見届け、卵の中からソレが完全に出てくるのを待つ。

 近くには次々とヒビが入っていく赤い卵が無数にあった。

 最初に卵から現れたソレは、世界に己の存在を刻み付けるかのように咆哮という名の産声を上げた。




久々にやったポケモンにドハマりして執筆を蔑ろにしてました。

ゲームってヤバイね。

次に第2章に突入します。

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